TOP > 国内特許検索 > 哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置

哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置 コモンズ 実績あり

国内特許コード P110002804
整理番号 RJ002P49
掲載日 2011年6月8日
出願番号 特願2000-312882
公開番号 特開2002-122568
登録番号 特許第3693907号
出願日 平成12年10月13日(2000.10.13)
公開日 平成14年4月26日(2002.4.26)
登録日 平成17年7月1日(2005.7.1)
発明者
  • 珠玖 仁
  • 白石 卓夫
  • 大矢 博昭
  • 末永 智一
  • 阿部 宏之
  • 星 宏良
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置 コモンズ 実績あり
発明の概要 【課題】 哺乳動物胚の形態観察と代謝活性の指標である酸素消費量の計測を行い、個々の哺乳動物胚の生存性や正常性を、早期に正確に把握できる哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 哺乳動物胚の無侵襲的品質評価のために、(a)単一哺乳動物胚の形態観察を行うための顕微鏡と、(b)単一哺乳動物胚の酸素消費量の計測を行う電気化学顕微鏡と、(c)培養液に準ずる計測溶液3と、(d)上記(a),(b),(c)を用いて単一胚近傍の酸素濃度変化を高空間分解能で定量する手段と、(e)上記(d)によりあらかじめ作出した哺乳動物胚の大きさと酸素消費量の関係および哺乳動物胚のその後の発生結果を集計する手段と、(f)上記(e)により哺乳動物胚の正常性を判定する手段とを具備する。上記電気化学顕微鏡は、顕微鏡ステージ15上に設置した微小電極1、電極位置決め装置6、微小電流計測装置8、温度制御装置10、培養気相条件(酸素、二酸化炭素)制御装置を有する。
従来技術、競合技術の概要


近年、培養技術の目覚ましい進歩により、多くの哺乳動物胚(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヒトなど)の体外培養が可能となってきた。体外培養された胚はレシピエント(雌仮腹)の子宮に移植され、産仔の誕生も可能となっている。



しかしながら、作出した胚が生存し、しかも正常に発生が進行しているかどうかの判断基準は、一般的に形態観察のみに基づいている。このような形態的評価では、低品質と判定した胚が移植後に受胎したり、高品質と判定した胚が受胎しない例が報告されている〔F.Shea,Theriogenology,15,31-42(1981)〕。また、形態的評価法と胚の生存性との間に相関関係が見られないことも報告されている〔D.S.Visser et al.,Hum.Reprod.,8,1719-1722(1993)〕。これらのことは、形態的観察による胚評価法だけでは、必ずしも正確に胚の生存性や品質を判断できないことを示唆している。



胚の品質評価において、形態的評価法の他に、胚のグルコースやアミノ酸代謝活性を指標とした品質評価法の試みも行われてきた〔D.K.Gardner and H.J.Leese,J.Exp.Zool.,242,103-105(1987);M.Rondeau et al.,Theriogenology,44,351-366(1995)〕。



これらの方法では、計測にラジオアイソトープを用いなければならなかったり、複数個以上の胚が必要であるなどの欠点があった。一方、細胞や胚などの代謝活性や特異的な生体反応を評価する手法として、少数の細胞数でも無侵襲に計測可能な電気化学的手法が注目されつつある。



以下、その関連技術について説明する。



(1)クラーク型酸素電極をはじめとする、精密位置決め機能を有さない固定型/通常サイズの電極が細胞呼吸活性評価に広く適用されている。空間分解能を有さない従来型の酸素電極を工夫することにより、培養したままリアルタイムで細胞呼吸活性を計測可能な装置は既にある。ウシ初期胚に関して、通常サイズのクラーク型酸素電極を用いて、単一の胚盤胞期胚の酸素消費量を定量した報告がある〔E.W.Overstorm et al.,Theriogenology,37,269(1992)〕。胚盤胞期胚において、形態的に正常/異常に分類した2グループ間で、正常胚のグループが酸素消費量も多く、その後の胚発生能も高かったと報告している。しかしこれは明らかに形態観察のみで判定可能な基準であり、酸素消費量計測の意義は極めて小さい。



この手法は、桑実胚と胚盤胞期胚の酸素消費量の差を検出していない。しかも空間分解能を有さない計測法は、胚表面の濃度が場所により異なる場合に局所の濃度を正確に検出できない。したがって、局所の濃度差情報を胚の品質判定に利用できないという欠点がある。



(2)電気化学顕微鏡(Scanning electrochemical microscopy)は、精密位置決め機能を有し、マイクロ(微小)電極を探針とする計測装置であり、探針を試料表面に近接し走査することにより、試料の放出/吸収する分子種の検出や、分子種の分布の画像化を可能にする〔A.J.Bard et al.,Anal.Chem.,61,132-138(1989);R.C.Engstrom et al.,Anal.Chem.,58,844-848(1986)〕。



球状の単一細胞が特定の分子種を放出/吸収する際に、細胞近傍に形成される濃度分布を電気化学顕微鏡類似の装置で直接計測した研究が既にある。マイクロ電極を細胞表面に向かって近接/遠ざけることにより計測した電流プロファイルから、細胞表面濃度と細胞から十分離れた位置の濃度の差(ΔC)が求められている。



さらに、濃度の差(ΔC)より、試料1個あたりの特定分子種放出/吸収速度が定量されている〔T.Yasukawa,et al.,Biophys.J.,76,1129-1135(1999)〕。この方法で、酸素還元電流プロファイルを計測し、生体からの酸素放出/吸収量を定量することも可能となっている 〔T.Yasukawa et al.,Denki Kagaku,66,660-661(1998)〕。しかし、この方法で体外培養胚の酸素消費量の定量化に成功した例は報告されていない。



(3)自己参照電極法(Self-referencing ion-selective microelectrode/Self-referencing polarographic oxygen-selective microelectrode)は、電気化学顕微鏡類似の計測装置である〔P.J.S.Smith et al.,Microsc.Res.Tech.,46,398-417(1999);S.C.Land et al.,J.Exp.Biol.,202,211-218(1999)〕。電極の位置を周期0.3Hz振幅10μm程度で振動させ、電流信号をロックイン検出することにより高感度化が図られている。



この方法の欠点として、検出原理や出力信号の解釈が複雑であること、また、計測に余分な時間を要することが挙げられる。



この方法は、本来、イオン選択性電極を探針とする電位感応型の計測法であるが、近年では微小酸素電極を探針として電流検出も行っている。最近、自己参照電極法がマウス体外培養胚の酸素消費量の定量に適用された〔J.R.Trimarchi et al.,Biol.Reprod.,62,1866-1874(2000)〕。この報告では自己参照電極法が無侵襲であることに言及し、計測に供した胚がその後も正常に発生することも確認している。しかし、酸素消費量と発生率の関係については相関が得られなかったと明言している。つまり、彼らの用いた計測法では、胚の酸素消費量からその後の発生過程を予測する基準を設定することができていない。さらに、彼らは、マウス初期胚の酸素消費量計測に際し胚細胞を包む透明帯の除去を施しており、このような損傷を与えた胚は継続して培養する目的に適さない。



(4)ヒトの体外培養胚の評価法として、個々の胚につき形態観察と酸素消費量の対応付けを試みた研究例がある〔C.Magnusson et al.,Hum.Reprod.,1,183-184(1986)〕。形態観察において品質の劣った胚と正常胚との間には、酸素消費量に有為な差が見られた。しかしながら、形態観察で正常と判別された胚の中では、酸素消費量とその後の胚発生率の関係において相関性は見られなかった。また、酸素消費量計測の原理は、オキシヘモグロビンがヘモグロビンに変換する時の吸収スペクトル強度変化に因るものであり、空間分解能は期待できない。さらに、計測は、検出試薬の存在下でしかも、低酸素濃度で行う必要があり、胚を損傷する可能性も否定できない。



(5)計測技術が空間分解能を有する利点は、上記(1)で述べた「局所の濃度差情報を胚の品質判定に利用できる」他に、「試料近傍に形成される酸素濃度勾配を直接計測できる」、「複数の試料でも画像化等により1本のプローブで定量的計測が可能である」、「任意に電極の位置を胚から十分離れた位置に移動し、ベースラインの濃度を参照できる」こと等が挙げられる。

産業上の利用分野


本発明は、哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法及びその装置に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法において、
(a)顕微鏡により単一哺乳動物胚の大きさの計測と、形態観察を行う工程と、
(b)前記顕微鏡による単一哺乳動物胚の大きさの計測と形態観察に基づいて、前記単一哺乳動物胚に関して、すみやかに酸素消費量を計測する工程と、
(c)上記工程(a)および工程(b)により、あらかじめ単一哺乳動物胚の大きさ・形態と、単一哺乳動物胚の溶液中と単一哺乳動物胚表面の酸素濃度差に基づく酸素消費量の関係、さらに単一哺乳動物胚のその後の胚半径、胞胚腔形成率/脱出胚盤胞到達率発生過程を記録するとともに、判定基準を設定する工程と、
(d)上記工程(c)を参照し、単一哺乳動物胚の品質を判定する工程とを施すことを特徴とする哺乳動物胚の無侵襲的品質評価方法。

【請求項2】
哺乳動物胚の無侵襲的品質評価装置において、
(a)単一哺乳動物胚の大きさの計測と形態観察を行うための顕微鏡と、
(b)前記顕微鏡による単一哺乳動物胚の大きさの計測と形態観察に基づいて、単一哺乳動物胚の溶液中と単一哺乳動物胚表面の酸素濃度差に基づく酸素消費量の計測を行う電気化学顕微鏡計測装置と、
(c)培養液に準ずる計測溶液と、
(d)上記(a),(b),(c)を用いて単一哺乳動物胚近傍の酸素濃度変化を高空間分解能で定量する手段と、
(e)上記(d)によりあらかじめ作出した単一哺乳動物胚の大きさ・形態と酸素消費量の関係および単一哺乳動物胚のその後の胚半径、胞胚腔形成率/脱出胚盤胞到達率発生結果を集計する手段と、
(f)上記(e)の集計データとの比較により、単一哺乳動物胚の正常性を判定する手段とを具備することを特徴とする哺乳動物胚の無侵襲的品質評価装置。

【請求項3】
請求項2記載の哺乳動物胚の無侵襲的品質評価装置において、前記電気化学顕微鏡計測装置は、顕微鏡ステージ上に設置した微小電極、電極位置決め装置、微小電流計測装置、温度制御装置、培養気相条件(酸素、二酸化炭素)制御装置を含むことを特徴とする哺乳動物胚の無侵襲的品質評価装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2000312882thum.jpg
出願権利状態 登録
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close