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ノックアウト動物

国内特許コード P110002862
整理番号 V102P001
掲載日 2011年6月8日
出願番号 特願2001-157567
公開番号 特開2002-345477
登録番号 特許第3711367号
出願日 平成13年5月25日(2001.5.25)
公開日 平成14年12月3日(2002.12.3)
登録日 平成17年8月26日(2005.8.26)
発明者
  • 井出 博之
  • 山村 研一
  • 荒木 喜美
出願人
  • 株式会社トランスジェニック
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 ノックアウト動物
発明の概要 (57)【要約】【課題】 ノックアウトマウスの提供【解決手段】 逆反復配列1、スペーサ ー配列及び逆反復配列2の順で構成される1oxP配列のうち逆反復配列1及び/又は逆反復配列2の一部の配列に変異が導入された変異型1oxPを含むトラップベクターが導入されたノックアウトマウスであって、Tubedown-1遺伝子が破壊されたノックアウトマウス。
従来技術、競合技術の概要
ヒトゲノムプロジェクトの進展で、ヒトゲノムの構造解析は2003年又はそれ以前に終了すると言われている。したがって、個々に遺伝子を単離し、構造解析を行なう時代ではなく、ゲノムの「機能解析」の時代に入ったといえる。
【0003】
しかし、ゲノムの塩基配列のみでは、機能に関する情報は十分でないため、機能解析のための新しい解析系が必要である。さらに、ヒトゲノム解析の一つの大きな目標はヒト疾患の原因遺伝子の解明であるが、原因遺伝子の構造だけでは病気を説明することはできない。また、ヒト患者を用いて実験することはできず、発症機構を解析することはできない。
したがって、原因遺伝子の同定後の発症過程の解析と新たな治療法の開発のためには、モデル個体の作製が必須課題となっている。
【0004】
一方、ゲノムを、その構造から遺伝子部分とそれ以外の部分に分けるとすれば、それぞれ別個の機能を有すると考えられ、両者の機能を解析することが必要である(図1)。ゲノム全体から見れば、個々の遺伝子は一部の機能しか果たしておらず、ゲノムは単に遺伝子の集合体ではなく、まだ知られていない機能を有しているとも考えられる。事実、position effect mutationという新しい概念が成立したことから、ゲノムには機能が未知の領域を有するものと推察される。
【0005】
遺伝子部分については、調節領域とコード領域があるが、現在ゲノム機能解析の標的となっているのは、コード領域である。ヒトとマウスを比べてみても、遺伝子の種類はほぼ同じであるため、調節領域の機能解析は重要である。但し、ヒトの遺伝子とマウスの遺伝子との間には、種の相違がある。この違いは、タンパク質の違いではなく、遺伝子発現の調節の違いによるものと思われる。
【0006】
発現調節にあずかる転写因子等の機能は、遺伝子のコード領域の配列から解明することができる。その転写因子が結合するエレメントの解析は、一つの遺伝子の調節領域内に多数存在するので、機能の解明は現在のところ極めて困難である。但し、機能解析の一手法として、細菌人工染色体を用いる方法等が考え得る。
【0007】
コード領域の機能解析のレベル(対象)は、mRNAレベル、蛋白レベル、細胞レベル、組織・臓器レベル、個体レベルが考えられる。mRNAレベルは、DNAチップで対応できると考えられる。他方、mRNA以外のレベルの解析を考えるとき、胚幹細胞(ES細胞)を利用するのが最も良い方法と思われる。なぜなら、ES細胞から直接in vitroで、各種細胞や組織の誘導糸が開発されているものもあるし、今後開発され得る可能性のあるものも多いからである。また、個体レベルの解析系が樹立できる利点もあるためである。
【0008】
上記から、ゲノムの機能解析を考える上でも、ES細胞レベルでの遺伝子破壊とそのマウスの作製は極めて重要であることがわかる。
これまでは、ES細胞を用いた相同遺伝子組換え法が、遺伝子破壊マウス作製において主役を演じていたが、これを個々の遺伝子破壊マウスを作製するという戦術としてではなく、網羅的に作製するという戦略的な立場からみたとき、大きな問題点がある。
【0009】
第1は、時間がかかりすぎることである。遺伝子破壊マウス作製において、ES細胞を用いた相同組換えによるノックアウトESクローンを単離することが律速段階となっている。1人の熟練した研究者でも、ノックアウトESクローンを単離するには最低3ヵ月かかるので、年間4遺伝子を破壊できるにすぎない。従って、10万個の遺伝子にそれぞれ一つの変異を導入する場合は、1年あたり25,000人が必要とされる。現在世界中で、1年間に約1000系統の遺伝子破壊マウスが作製されていると見積もられている。そうすると、ノックアウトESクローンを10万種類作製するのに100年かかることになる。これでは、2003年に終了するといわれているヒトゲノムの構造解析の進展と比較しても、現実的ではない。
【0010】
第2は、コストがかかりすぎることである。1系統の遺伝子破壊マウス作製のため、人件費及び減価償却費を除いても、最低200~400万円必要である。したがって、10万個の単純な遺伝子破壊マウス作製だけで2,000~4,000億円必要となる。以上のように、従来のES細胞を用いた相同遺伝子組換えには問題点があり、また、ゲノムは巨大ではあるが、数は決まっている。従って、この中から重要な機能を持つ遺伝子を単離することが必要となる。遺伝子の機能については、遺伝子破壊マウスを作製して初めて明らかになることが多いことから、遺伝子破壊マウスは将来画期的な薬剤の開発等にも直結し、極めて付加価値が高い。従って、「ランダム」かつ「大規模」にマウスの変異体作製を行なうのが世界の「戦略」となっており、現在のところ、以下に述べる3つの方法が、ランダム変異マウス作製において、もっとも妥当であると考えられている。
【0011】
第1は、変異原物質であるエチルニトロソウレア(ethylnitrosourea:ENU)を用いる方法である。ENUを用いた方法による大規模な突然変異体作製のプロジェクトがヨーロッパで開始されている。ドイツではヒトゲノムプロジェクトの一貫として哺乳類遺伝学研究所のパリング博士を中心として1997年度に開始した。英国においてもスミスクライン社が資金を提供し、Harwe11にあるMRCのマウスゲノムセンターにおいてブラウン博士を中心として主に脳・神経系の突然変異マウスを樹立することを目的として開始している。現在までに、両者併せて、優性遺伝を示す変異マウスが約200系統樹立され、予想よりもよい効率でプロジェクトが進行している。米国においてもケースウエスタンリザーブ大学やオークリッジ国立研究所を中心として、膨大な予算(年間60億円)でマウスゲノムの構造解析やENU法による変異体作製が始まることとなった。
【0012】
ENUを成熟雄マウスに投与すると、減数分裂前の精原細胞に作用し、1細胞当たり約50-100カ所に点突然変異をランダムに引き起こす。そして、1つの遺伝子座につきおよそ1/1,000/配偶子の頻度で突然変異が起こる。したがって、1匹の処理マウスを雌マウスと交配することにより、F1世代で多種類の変異マウスを作製できる。また、ENUを用いる方法は、特定の遺伝子座について1,000匹をスクリーニングすれば、1匹はその遺伝子に変異が生じている確率となるため、極めて効率がよいと考えられている。
【0013】
第2は、やはり変異原物質であるクロラムブシルを用いる方法である。この方法によれば、ENU法と同じ頻度で精原細胞に突然変異を引き起こす。ただし、この場合は時に1メガベースに及ぶ欠失変異が生じる。
第3は遺伝子トラップ法によるものである。遺伝子トラップ法とは、マーカー遺伝子を含むトラップベクターをES細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として未知遺伝子の探索を行なうことを目的として開発された方法である。トラップベクターの組み込みはランダムであり、その組込みにより、殆どの場合内在性遺伝子(本来、その細胞や組織に存在する遺伝子)は破壊される。したがって、そのES細胞を用いてキメラマウスを作製することにより、種々の遺伝子破壊マウスを作製できる。
しかしながら、これら変異原物質を用いる方法及び遺伝子トラップ法は、それぞれ利点と欠点を有する(表1)。
【0014】
【表1】
【0015】
ENU法は、変異マウスの作製は容易であるが、個々の変異系統の樹立は、交配により分離を行わなければならない。また、変異した遺伝子の同定には、まず多型DNAマーカーを用いた連関解析により遺伝子座を同定し、その後にポジショナルクローニング法により遺伝子を単離しなければならない。従って、ENU法は操作が煩雑である。
【0016】
クロラムブシル法は、変異マウスの作製は容易であるが、欠失部位を同定しなければならず、そのためには多数の多型DNAマーカーを用いて解析する必要がある。また、一般的に、クロラムブシル法などの変異原物質法では、大規模の飼育室を必要とするため、費用及び労力がかかる。
【0017】
遺伝子トラップ法は、変異マウスの作製に手間と技術を要するが、変異遺伝子の同定は容易であり、飼育室の規模に応じて実験可能である。遺伝子トラップESクローンはそれ自体ゲノム機能解析のための貴重なリソースとなり、この点も他の方法と際立って異なる点である。
【0018】
遺伝子トラップ法についても、世界のいくつかの研究室で変異体作製が始まっている。米国では、民間のレキシコンジェネティクス社がレトロウイルスベクターを用いた遺伝子トラップによるランダム破壊を行なっている。しかし、遺伝子をトラップできていても、内在性遺伝子を破壊できているかどうかが定かでないこと、生殖キメラマウスが作製できるかどうかが不明であること、キメラマウス作製は別料金を要求されること、利用するに当たって相当な金額を要求していることなどから、一般の研究者にとっては殆ど利用できない状況である。また、ドイツではENUプロジェクトの一貫としても12,000クローンを目標として遺伝子トラップが行なわれている。いずれにしても、マウス系統の樹立よりも、トラップした遺伝子の解析を先行させる方法で進められている。
産業上の利用分野
本発明は、遺伝子トラップ法によるランダム変異ESクローン技術により得られた胚幹細胞及びノックアウト動物に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 配列番号7に示すTubedown-1遺伝子が破壊されたノックアウトマウス。
【請求項2】 前記遺伝子の破壊が、
SA-lox71-IRES-M-pA-loxP-pA-PV
(ここで、SAはスプライスアクセプターを、IRESは分子内リボゾームエントリー部位を、Mはマーカー遺伝子を、pAはポリA配列を、PVはプラスミドベクターをそれぞれ表す。)
を含むトラップベクターの導入によって行われる、請求項1記載のノックアウトマウス。
【請求項3】 前記lox71配列が配列番号1に示されるものである、請求項2記載のノックアウトマウス。
【請求項4】 配列番号7に示すTubedown-1遺伝子が破壊されたノックアウトマウスの作製方法であって、
SA-lox71-IRES-M-pA-loxP-pA-PV
(ここで、SAはスプライスアクセプターを、IRESは分子内リボゾームエントリー部位を、Mはマーカー遺伝子を、pAはポリA配列を、PVはプラスミドベクターをそれぞれ表す。)
を含むトラップベクターをマウス胚幹細胞に導入して前記遺伝子が破壊された胚幹細胞を選別し、
前記遺伝子が破壊された胚幹細胞からキメラ胚を作製し、
前記キメラ胚を仮親マウスの子宮に移植し、出産により仔マウスを得て、前記遺伝子が破壊されたキメラマウスを選別し、
前記キメラマウスの雌と雄の交配によって前記ノックアウトマウスを得る、
工程を含む方法。
【請求項5】 前記lox71配列が配列番号1に示されるものである、請求項4記載の方法。
【請求項6】 前記選別された胚幹細胞が寄託クローンFERM P-18341である、請求項4又は5記載の方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 畜産
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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