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哺乳動物の虹彩色素上皮細胞由来の神経幹細胞の生産方法、および該神経幹細胞から神経系細胞を生産する方法 コモンズ

国内特許コード P110003003
整理番号 K052P04
掲載日 2011年6月10日
出願番号 特願2002-136321
公開番号 特開2003-325167
登録番号 特許第3723152号
出願日 平成14年5月10日(2002.5.10)
公開日 平成15年11月18日(2003.11.18)
登録日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明者
  • 小阪 美津子
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 哺乳動物の虹彩色素上皮細胞由来の神経幹細胞の生産方法、および該神経幹細胞から神経系細胞を生産する方法 コモンズ
発明の概要 【課題】 中枢神経系再生における細胞移植による免疫拒絶の問題、倫理的問題、移植細胞源の需要と供給のアンバランスなどの問題を解決し得る哺乳動物の虹彩色素上皮細胞由来の神経幹細胞の生産方法、およびその方法により得られる神経幹細胞を提供する。
【解決手段】 神経幹細胞は、哺乳動物の眼球から単離した虹彩色素上皮細胞を浮遊凝集魂培養方法により選択的に培養することにより生産される。
従来技術、競合技術の概要


近年、脳、脊髄における神経幹細胞の存在が認められ、またES細胞が特定の中枢神経系細胞へ分化することが報告されており、中枢神経系再生医療への期待が高まっている。また、神経幹細胞の分離および選択的培養方法として、neurosphere法(浮遊凝集魂培養法)が確立されている。さらに、上記浮遊凝集魂培養により神経幹細胞が形成するsphere(凝集魂)を接着培養法にて培養することによって、神経幹細胞を神経系細胞に分化誘導する神経幹細胞の分化誘導法も報告されている。



また、脳、脊髄由来の神経幹細胞またはES細胞を生体内に移植することにより、該移植した細胞が環境に適応して特異的な神経細胞へと分化することが報告されている(Nature(2001)414,112-117 review(文献(1)))。



しかしながら、脳、脊髄由来の神経幹細胞やES細胞の医療への応用を考えた場合には、細胞移植による免疫拒絶の問題、倫理的問題、移植細胞源の需要と供給のアンバランスなどの多くの問題が生じる。



そこで、移植対象となる個体自身に由来する細胞を中枢神経系再生のための移植源として用いることが可能となれば、自家移植が可能となり上記の問題を解決することができる。このような中枢神経系再生のための移植源として利用が期待されている細胞としては、眼球の虹彩色素上皮細胞がある。虹彩色素上皮細胞は、患者本人からその細胞の一部を採取することが可能である。



虹彩色素上皮細胞は、光量に応じて瞳孔を開いたり、狭めたりして網膜に届く光量を調節するための組織である虹彩を構築している細胞のひとつである。上記虹彩色素上皮細胞の発生起源は、網膜色素上皮細胞および毛様体上皮細胞と同様に神経板に由来する。網膜は複数の細胞層から構築されており、上記網膜色素上皮細胞は、網膜の最も外側の細胞層である受容器層を被っている。毛様体上皮は、虹彩と網膜との中間的位置に存在する組織である。



有尾両生類の成体イモリの眼においては、上記網膜を構築している複数の細胞層に存在する細胞が、網膜色素上皮細胞の分化転換により完全に再生されることが知られている。また、成体イモリの眼においては、レンズ(水晶体)が再生することも古くから知られている。このイモリの眼におけるレンズの再生は、虹彩色素上皮細胞がレンズ細胞へ分化転換することにより成立する。



一部の両生類だけではなく魚類、および発生期の鳥類ならびに発生期の哺乳類の網膜色素上皮細胞についても、これまでに、レンズや神経細胞への分化転換能を有することが試験管内の培養実験により示されている。



例えば、哺乳動物においては、培養下の実験によって、胎児期の限られた時期ではあるものの、その網膜色素上皮細胞は、神経細胞への分化転換能を有することが報告されている(Brain Res.(1995)677:300-310(文献(2)))。しかしながら、上記文献(2)においては、哺乳動物の胎児期の限られた時期以降の時期における網膜色素上皮細胞の神経細胞への分化転換能は否定されている。



胎児期においては、発生過程であるために比較的未分化な細胞が各組織に多く存在しており、網膜色素上皮細胞においても胎児期の限られた時期であれば、比較的未分化な細胞が存在している可能性が高い。このように比較的未分化な細胞であれば、神経細胞へ分化誘導することは可能である。



しかしながら、哺乳動物成体の各組織において、比較的未分化な細胞が存在していることは稀である。また、哺乳動物成体の網膜色素上皮細胞は、高度に分化した細胞であるために細胞の分離・培養は困難である。このため、哺乳動物の胎児期の限られた時期以降の時期における網膜色素上皮細胞を神経細胞に分化転換させることは困難である。すなわち、現在のところ、哺乳動物成体の網膜色素上皮細胞は、中枢神経系再生のための移植源とすることができない。



また、毛様体上皮細胞についての以前の研究においては、哺乳類成体由来の毛様体上皮細胞を、上記浮遊凝集魂培養により培養することによってsphere(凝集魂)が形成されることが示されており、さらに該凝集魂を接着培養法にて培養することによって、ロドプシン陽性細胞が得られることが報告されている(Science 2000 March 17;287(5460):2032-2036,Tropepe V ら(文献(3)))。



しかしながら、医療への応用を考えた場合、患者本人の毛様体上皮細胞を得ることは、非常に困難である。また、上記文献(3)においては、哺乳類成体由来の毛様体上皮細胞に網膜の幹細胞が存在すると主張されているのみであり、神経幹細胞との関連についての記載はない。



また、虹彩色素上皮細胞は、組織が小さく細胞数も少ない。このため、該虹彩色素上皮細胞の単離培養は困難とされてきたが、本発明者は以前、ニワトリの雛の虹彩色素上皮細胞を単離培養することに成功したことを報告している(Experimental Cell Res.(1998)245,245-251(文献(4)))。上記文献(4)には、培養下の実験により、ニワトリの雛の虹彩色素上皮細胞がレンズへの分化転換能を有することが示されている。



さらに、本発明者は以前、上記文献(4)の方法に改変を加えることにより、哺乳動物(マウス、ラット、ヒト胎児)の虹彩細胞の単離培養を可能とした(nature neuroscience(2001)4(12),1163(文献(5)))。



上記文献(5)においては、成体ラットの虹彩組織を単離し、初代培養したところ、一部の細胞が神経マーカーを発現することが確認されたが、特異に分化した神経マーカーは検出されなかった。そこで、網膜の視細胞を得るため、培養した虹彩細胞に、視細胞の発生時期に重要な働きをすることが示唆されているCrx遺伝子を強制発現させると、上記培養した虹彩細胞は、光受容機能に必須のロドプシンタンパク質を産生することが確認された。

産業上の利用分野


本発明は、哺乳動物の虹彩色素上皮細胞由来の神経幹細胞の生産方法、およびその方法により得られる神経幹細胞、ならびに該神経幹細胞から神経系細胞を生産する方法、およびその方法により得られる神経系細胞に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物の眼球から単離した虹彩色素上皮細胞を浮遊凝集魂培養方法により選択的に培養することを特徴とする神経幹細胞の生産方法。

【請求項2】
前記虹彩色素上皮細胞が、非ヒト哺乳動物の眼球から虹彩組織を摘出する虹彩組織摘出工程と、
摘出した上記虹彩組織から虹彩色素上皮を分離する虹彩色素上皮分離工程とにより単離されることを特徴とする請求項1に記載の神経幹細胞の生産方法。

【請求項3】
前記哺乳動物は哺乳動物成体である、請求項1または2に記載の神経幹細胞の生産方法。

【請求項4】
哺乳動物の眼球から単離した虹彩色素上皮細胞を浮遊凝集魂培養方法により選択的に培養することにより神経幹細胞を生産する神経幹細胞生産工程と、
上記神経幹細胞生産工程により得られた神経幹細胞を神経系細胞に分化させる神経幹細胞分化工程とを含むことを特徴とする神経系細胞の生産方法。

【請求項5】
哺乳動物の眼球から単離した虹彩色素上皮細胞を浮遊凝集魂培養方法により選択的に培養することにより神経幹細胞を生産する神経幹細胞生産工程と、
上記神経幹細胞生産工程により得られた神経幹細胞を接着培養法により培養する接着培養工程とを含むことを特徴とする神経系細胞の生産方法。

【請求項6】
前記虹彩色素上皮細胞が、非ヒト哺乳動物の眼球から虹彩組織を摘出する虹彩組織摘出段階と、
摘出した上記虹彩組織から虹彩色素上皮を分離する虹彩色素上皮分離段階とにより単離されることを特徴とする請求項4または5に記載の神経系細胞の生産方法。

【請求項7】
前記哺乳動物は哺乳動物成体である、請求項4ないし6の何れか1項に記載の神経系細胞の生産方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ タイムシグナルと制御 領域
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