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差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置及びその測定方法 実績あり

国内特許コード P110003300
整理番号 Y03-P334
掲載日 2011年6月20日
出願番号 特願2004-029060
公開番号 特開2004-340922
登録番号 特許第4076962号
出願日 平成16年2月5日(2004.2.5)
公開日 平成16年12月2日(2004.12.2)
登録日 平成20年2月8日(2008.2.8)
優先権データ
  • 特願2003-118565 (2003.4.23) JP
発明者
  • 今任 稔彦
  • 浅野 泰一
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置及びその測定方法 実績あり
発明の概要 【課題】安価・小型のうえ操作に熟練を要しないユビキタスな計測器として構築される差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置及びその測定方法を提供する。
【解決手段】一定波長を持つ光源からの光41を、プリズム42とガラス基板44からなるセンサに、線焦点を結ぶように当て、この線焦点上に一定間隔を保って配置された試料セルと参照セルの感応部で生じた表面プラズモン共鳴現象により強度の減少した反射光を、前記試料セルと参照セルの感応部の中心の間隔と同じに保持しながら、互いに角度の異なる光分割ミラー52を用いて反射させ、試料光と参照光の2光路に分割して、一つのCCDラインセンサ56の異なる二つの領域で検出する光学系を用いて、プリズム42の上にこのプリズム42とその屈折率を整合させた粘着力を持つ光インターフェイス膜43に試料部と参照部に対応した感応膜を併せ持った電極式複合型センサセル47を押し付けることによって、センサ、光インターフェイス膜43およびプリズム42間の光整合性を保ち、試料セルと参照セルで生じる表面プラズモン共鳴現象を測定する。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要


20世紀後半の我が国における産業の高度発展は、我々の生活に物質的な豊かさをもたらしたが、一方ではその負の遺産として大気、水質、土壌汚染や青少年への乱用薬物の蔓延など人間社会に深刻な影響をもたらした。これらの中、無機物による大気、水質汚染についてはかなりの改善がなされたが、1990年代の初頭に明らかにされた生体への影響が心配されるダイオキシンなどに代表される環境ホルモン類、すなわち、ある種の人工低分子有機化合物による環境汚染や乱用薬物による心身の汚染、土壌汚染の解決は21世紀へ委ねられ、現在早急に解決されなければならない社会問題とされている。このことを計測化学上からみると、これらの有機化合物の測定は、濃度が極微量であり、かつ測定結果の信頼性が要求されるため、現在のところ高価でしかも操作に熟練を必要とするガスクロマトグラフィー・質量分析法で実施されている。そのため、その汚染実態を知るための情報量が少ないことも解決に至っていない大きな要因である。



一般に有機物を計る方法としては、上記したガスクロマトグラフィー・質量分析法のほか、液体クロマトグラフィー、蛍光試薬や発光試薬を用いて化学反応に基づく光を計測する方法、酵素イムノアッセイ、表面プラズモン共鳴測定法などがある。これらの方法の中で操作の簡便さを満足する方法は、表面プラズモン共鳴測定法であると考えられる。その理由を以下に述べる。



表面プラズモン共鳴測定法は、プラズマ化された金表面に光を当て、物質の相互作用に基づき100nmの領域で起こる光の共鳴現象(表面プラズモン共鳴現象;surface plasmon resonance:SPR)を測定する方法である。この方法は、
(1)センサ表面で起こる化学反応をリアルタイムで追跡することができる。
(2)物質相互間の相互作用が100nmの領域で起こるので分析用試料が微量でよい。
(3)上記(2)の理由より、少ない試料で高感度濃縮が可能である。
(4)検出系の材料にガラスプリズムを使用しているので、検出器を限りなく小さくできる。
(5)プラズモン共鳴を起こすために金薄膜を用いているので、抗体など感応物質の固定化が容易で、測定対象を選択的に検出する検出系を構築することができる。



以上の理由により、表面プラズモン共鳴測定法はパームサイズを指向する環境汚染低分子有機化合物を計測するためのユビキタスなフィールド機器を開発するために最適な方法と考えた。



表面プラズモン共鳴とは、金属膜を蒸着したプリズムに光を入射すると、プリズム表面において常時発生しているエバネッセント波と金表面において励起された表面プラズモン波が共鳴し、反射光が減少する現象である。この表面プラズモン共鳴現象を起こす入射角度は試料溶液の誘電率によって変化するので、金属薄膜の表面に測定対象物と相互作用する物質を機能性膜として固定化することで、様々な有機物を測定するための化学センサを構築することが可能である。



この現象は応用物理の光学分野では古くから知られていて、1902年にWoodによって見出され、1982年にはNylanderによってセンサ化された。これが科学的に応用されたのは最近で、金表面に抗体等を固定することによって生体膜と物質の相互作用をリアルタイムに計測することが可能になった。従来、生体膜と物質の相互作用を計測する方法としては、数日かけて相互の平衡状態を測る平衡法が一般的だったが、表面プラズモン共鳴測定法ではそれをリアルタイムで測定することができるので、免疫反応を測定する免疫センサ、蛋白質の相互作用の解析など、分析化学・生化学・薬品化学・医療計測などの広範囲な科学・産業分野で多彩な展開が図られている。



ここで、表面プラズモン共鳴現象の原理について更に詳しく説明する。



金あるいは銀のような金属をガラス基板の片面に蒸着して数十nmの箔状にして金属が蒸着されていないガラス基板側から光を当てると、表面プラズモンと呼ばれる波動が発生する。表面プラズモンとは、金属中における拘束の度合いが小さい、自由電子群のゆらぎを量子化したものをいう。これは音波と同じ粗密度で金属表面を接線方向に伝播することができる。そこで、伝播速度が同一の電磁波でゆさぶってやると共鳴して表面プラズモンが発生する。



金属は陽イオンの周囲を電子が自由に動くため、固体プラズマと見なすことができる。このような固体プラズマの表面付近には電子の集団励起である表面プラズマ振動(この量子が表面プラズモン)が存在している。表面プラズモンは金属表面付近のみに局在する表面波で、その波数Kspと振動数ωの関係は金属の誘電率εm だけでなく、金属の接している媒質(試料)の屈折率ns にも依存し、次式で与えられる。



【数1】


ここでcは真空中の光速である。



上記(1)式より、試料に接する金属(誘電率εm が既知)の表面上での、振動数ωの表面プラズモンの波数Kspを知れば、試料屈折率ns が得られる。



図18は表面プラズモン共鳴現象の原理を示す模式図である。



この図において、1はプリズム(屈折率nD )、2は金属薄膜(誘電率ε)、3は溶液試料、4は入射光(波数Kp )、5はエバネッセント波(波数Kev)、6は反射光、7はCCD検出器、8は表面プラズモン(波数Ksp)である。



この図に示すように、プリズム1に金属薄膜2を蒸着し、これを試料(ここでは溶液試料)3と接触させる。プリズム1側から臨界角以上の角度でプリズム1底面(センサ面)に入射光4を入射すると、エバネッセント波5が試料3中にしみだす。入射光4として平面波(波数Kp )を入射角θで入射すると、エバネッセント波5の波数Kevは入射光4の空間周波数のプリズム底面方向成分
ev=Kp sinθ …(2)
となる。臨界角以上の入射角ではKp sinθ>Ks (Ks は試料3中を伝搬する光の波数)なので、
ev=Kp sinθ>Ks …(3)
となる。すなわち、エバネッセント波5の波数Kevは試料3中を伝播する光の波数Ks よりも大きい。このため、Kev=Kspを満足する入射角θspが存在し、その角度θspで入射した光4は、そのエバネッセント波5によって表面プラズモン8を共鳴励起する。エバネッセント波5により表面プラズモン8が励起されると光のエネルギーの一部が表面プラズモン8に移り、プリズム1中に戻る反射光6の強度が減少する。このため、プリズム1側での反射率のエバネッセント波5の波数Kev依存性または平面波入射時の入射角依存性を測定すると、吸収ピークとして表面プラズモン8の励起が観測される。この吸収ピークの位置(波数Kevまたは入射角θsp)が表面プラズモン8の波数Kspを与え、これから上記(1)式と(2)式をもちいて試料屈折率ns を知ることができる。溶液試料3においてはその屈折率ns は溶液の濃度に依存するため屈折率測定より濃度の測定を行うことができる。



また、図19に示すように、金属薄膜2表面上に測定物質と相互作用する物質を機能性膜9として固定化することで、この機能性膜9の誘電率と厚さは変化(各種の反応・結合)し、共鳴角は変化する。この角度変化をリアルタイムで測定することで各種の反応・結合の様子、速度、量およびサンプル濃度等を測定することができる。なお、図19は表面プラズモン共鳴現象を利用する免疫計測の例を示している。



次に、従来のプラズモン共鳴現象測定装置について説明する。



図20は差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置の概要図である。



この図において、11は光源、12はビームスプリッター、13はSPR検出器、14は試料用光検出器、15,18はプリアンプ、16,19はA/Dコンバータ、17は参照用光検出器、20はインターフェイス(I/F)、21はコンピュータである。



図20に示すように、従来の光学系は光源11からの光をビームスプリッター12で二光路に分けて、プリズムで構成されるSPR検出器13の定められた2点にあて、表面プラズモン共鳴現象によって生じた光の減少を二つの独立した光検出器14,17で検出し、各々プリアンプ15,18で増幅するという方式がとられていた。



図21は従来の表面プラズモン共鳴測定装置の検出系を示す図である。



この図において、22はプリズム、23は光インターフェイスオイル膜、24はセンサ、25は試料、26は送液ポンプ、27はフローセル、28はフローセルホルダー、29は光である。



この図に示すように、従来の検出系は、送液ポンプ26、フローセル27、セルホルダー28、センサ24、及びプリズム22との光整合性を保つための光インターフェイスオイル膜23で構成されていた。
【特許文献1】
特開2000-039401号公報
【特許文献2】
特開2001-183292号公報
【特許文献3】
特開2001-255267号公報
【特許文献4】
特許第3356212号公報
【特許文献5】
特開2003-185572号公報

産業上の利用分野


本発明は、差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置及びその測定方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
(a)入射光の入射角が共鳴角を含んだ前後の角度になるような入射光学系と、
(b)一束の入射光の照射範囲にプリズムに蒸着した薄膜上の試料溶液固定部と参照溶液固定部がともに含まれるように配置される試料セット装置と、
(c)前記試料溶液固定部と参照溶液固定部からの反射光をそれぞれ分離し、それらの反射光の向きを変え1ライン上に投影する複数個のミラーを具備する投影光学系と、
(d)前記反射光を1ライン上のCCDで受光するリニアCCDセンサとを具備することを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置。

【請求項2】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置において、前記複数個のミラーは、前記試料溶液固定部からの反射光を第1の角度で反射する第1のミラーと、前記参照溶液固定部からの反射光を第2の角度で反射する第2のミラーとを具備することを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置。

【請求項3】
請求項1記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置において、前記プリズムの上に該プリズムとその屈折率を整合させた粘着力を持つ光インターフェイス粘着膜を具備することを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定装置。

【請求項4】
一定波長を持つ光源からの光をプリズムとガラス基板からなるセンサに線焦点を結ぶように当て、該線焦点上に一定間隔を保って配置された試料セルと参照セルの感応部で生じた表面プラズモン共鳴現象により強度が減少した反射光を、前記試料セルと参照セルの感応部の中心間隔と同じに保持しながら、互いに角度の異なる光分割ミラーを用いて反射させ、試料光と参照光を2光路に分割して、一つのCCDラインセンサの異なる二つの領域で検出する光学系を用いて、前記プリズムの上に密着させた、該プリズムとその屈折率を整合させた粘着力を持つ光インターフェイス粘着膜に試料部と参照部に対応した感応膜を併せ持った電極式複合型センサセルを押し付けることによって、前記センサ、前記光インターフェイス粘着膜およびプリズム間の光整合性を保ち、前記試料セルと参照セルで生じる表面プラズモン共鳴現象を測定することを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項5】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、前記光インターフェイス粘着膜が高分子光インターフェイス粘着膜であることを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項6】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、前記高分子がポリ塩化ビニールであることを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項7】
請求項又は記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、前記光インターフェイス粘着膜上に前記プリズム及びガラス基板と同一の屈折率を持つマッチングオイルなしで前記試料セルを設定することを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項8】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、機能性物質と相互作用があり、かつその結果屈折率が変化するような物質の化学センサ化を行うことを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項9】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、前記試料セルに抗体を固定することによって抗原-抗体反応を測定する免疫センサ化を行うことを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。

【請求項10】
請求項記載の差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法において、前記電極式複合型センサセルの押し付けは20ニュートンの力によることを特徴とする差動式表面プラズモン共鳴現象測定方法。
国際特許分類(IPC)
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