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非天然型チロシン誘導体組み込みタンパク質の発現方法

国内特許コード P110003437
整理番号 E048P15
掲載日 2011年6月21日
出願番号 特願2004-548112
登録番号 特許第4467435号
出願日 平成15年10月31日(2003.10.31)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
国際出願番号 JP2003014028
国際公開番号 WO2004039989
国際出願日 平成15年10月31日(2003.10.31)
国際公開日 平成16年5月13日(2004.5.13)
優先権データ
  • 特願2002-318846 (2002.10.31) JP
発明者
  • 横山 茂之
  • 白水 美香子
  • 坂本 恵香
  • 坂本 健作
出願人
  • 独立行政法人理化学研究所
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 非天然型チロシン誘導体組み込みタンパク質の発現方法
発明の概要

(A)大腸菌由来のチロシルtRNA合成酵素の変異体であって、チロシンに対する特異性に比べて非天然型のチロシン誘導体に対する特異性が高められた変異チロシルtRNA合成酵素と、(B)上記変異TyrRSの存在下で上記チロシン誘導体と結合可能な、バチルス属、マイコプラズマ属、又はスタフィロコッカス属真性細菌由来のサプレッサーtRNAと、(C)所望の位置にナンセンス変異を受けた所望のタンパク質遺伝子とを動物細胞中で発現させて、上記タンパク質のナンセンス変異の位置に上記チロシン誘導体を取りこませることを特徴とする、非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の発現方法である。

従来技術、競合技術の概要


タンパク質中の所望の位置のアミノ酸残基を、通常のタンパク質合成に関わる20種類以外のアミノ酸(以下、非天然型アミノ酸という)で置換した、非天然型アミノ酸組み込みタンパク質(以下、アロタンパク質ともいう)は、タンパク質の機能・構造解析の有効な手段となり得る。



アミノアシルtRNA合成酵素(以下、aaRSという)はアミノ酸とtRNAとを特異的に結合させる酵素であり、生物種ごとに、一部の例外を除き天然に存在する20種類のアミノ酸それぞれに対応して20種類存在する。細胞内にはこのようなaaRSが基本的にアミノ酸ごとに存在することで、遺伝暗号に割り当てられるアミノ酸の種類が決まっている。例えば、aaRSの一つであるTyrRS(以下、TyrRSという)は、チロシンtRNA(以下、tRNATyrという)を他のアミノ酸のtRNAから識別してこれにチロシンにしか結合させず、他のアミノ酸とは結合させない。



アロタンパク質を生産するための手法としては、従来より、大腸菌内で生産する方法[コイデ(Koide)ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、USA、第85巻、1988年、p.6237-41(文献1)]、及び無細胞翻訳系で生産する方法[ノーレン(Noren)ら、サイエンス(Science)、第244巻、1989年、p.182-8(文献2)]が知られていた。



非天然アミノ酸を含む21種類のアミノ酸を含んだタンパク質をさらに大量に調製するためには、非天然型アミノ酸を結合するtRNAが、翻訳反応を行なう系の中で専用のaaRSによってアミノアシル化される人工遺伝暗号系を構築することが必要である。



このような人工遺伝暗号系の構築のためには、以下の条件を満たす、aaRS・tRNAの組を見出すことが必要である:
(1)aaRSは、通常の20種類のアミノ酸のいずれかではなく、所望の非天然型アミノ酸と特異的に反応するaaRS変異体であること;
(2)tRNAは、通常の20種類のアミノ酸に割り当てられたコドンではないコドン(例えば、ナンセンスコドンまたは4塩基コドンなど)に割り当てられ、かつ、上記非天然型アミノ酸特異的なaaRS変異体にのみ認識され、宿主の通常のaaRSには認識されない(orthogonal tRNA)ものであること。



このような条件を満たす、人工遺伝暗号系として、非天然型アミノ酸を結合してメッセンジャーRNA上のナンセンス・コドンまで運搬する分子(サプレッサーtRNA分子)と、サプレッサーtRNA分子に非天然型アミノ酸を結合させる酵素(aaRS)を用いることができる。このメカニズムについては、[ワング(Wang)ら、サイエンス(Science)、第292巻、2001年、p.498-500(文献3)]及び[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)、第124巻、2002年、p.1836-1837(文献4)]に記載されている。
そして、このメカニズムによる、具体的な人工遺伝暗号系が、大腸菌内の系、及び小麦胚芽抽出液を利用した無細胞タンパク質合成系で確立されている。



すなわち、大腸菌において、任意の指定する部位に非天然型アミノ酸を含有するタンパク質を生産するシステムとしては、O-メチルチロシンを特異的にアミノアシル化するように改変したメタノコッカスジャナシイ(Methanococcus jannaschii)由来のTyrRS変異体と、同生物由来のチロシンtRNAを改変したアンバーサプレッサーtRNAを発現させ、O-メチルチロシンがアンバーコドンに対応して特異的に導入されることが報告されている(文献3)。
また、任意の部位に非天然型アミノ酸を含有するタンパク質を小麦胚芽抽出液中で生産するためのaaRSが開発されている[キガ(Kiga)ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceedings of the National Academy of Sciences)、USA、第99巻、2002年7月23日、p.9715-9723(文献5)]。



このように、大腸菌や無細胞タンパク質合成系では、アロタンパク質生産系が開発されてきたが、これらをそのまま動物細胞内に用いることはできない。すなわち、大腸菌用に開発されたこれらの分子は、いずれもそれらの分子の性質そのものによって動物細胞内では使用することはできない。動物細胞内で任意の指定する部位に非天然型アミノ酸を含有したタンパク質を合成するためには、別途、適当なサプレッサーtRNAと、このサプレッサーtRNA分子と非天然型アミノ酸の両方に特異的なaaRSを開発し、かつ、動物細胞内においてそれら分子の発現が実現されなければならない。



また、上記小麦胚芽抽出液中での無細胞タンパク合成系で用いられたaaRSは、その基質特異性から考えて動物細胞内で使用可能であると予想された。しかし、使用するためには、組み合わせるべきサプレッサーtRNAとその発現系の開発が必要であった。

産業上の利用分野


本発明は、タンパク質中の所望の部位に、非天然型アミノ酸を取りこませて、非天然型アミノ酸組み込みタンパク質を発現させる方法、並びに上記タンパク質を発現させるために用いるDNA、発現ベクター、及び動物細胞に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】 (A)大腸菌由来のチロシルtRNA合成酵素の変異体であって、チロシンに対する特異性に比べて非天然型のチロシン誘導体に対する特異性が高められた変異チロシルtRNA合成酵素と、
(B)上記変異チロシルtRNA合成酵素の存在下で上記チロシン誘導体と結合可能な、バチルス(Bacillus)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、又はスタフィロコッカス(Staphylococus)属真性細菌由来のサプレッサーtRNAと、
(C)所望の位置にナンセンス変異を受けた所望のタンパク質遺伝子
とを動物細胞中で発現させて、上記タンパク質のナンセンス変異の位置に上記チロシン誘導体を取りこませることを特徴とする、非天然型チロシン誘導体組み込みタンパク質の発現方法。
【請求項2】 上記チロシン誘導体が、3位置換チロシンまたは4位置換チロシンである、請求の範囲第1項記載の発現方法。
【請求項3】 上記(B)サプレッサーtRNAがバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のサプレッサーチロシンtRNAである請求の範囲第1項または第2項に記載の発現方法。
【請求項4】 (A)変異チロシルtRNA合成酵素が、チロシルtRNA合成酵素の37位チロシン及び195位グルタミンに相当する位置に改変を受けた変異TyrRSである請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか一項に記載の発現方法。
【請求項5】 (A)変異チロシルtRNA合成酵素が、チロシルtRNA合成酵素の37位チロシン(Y)に相当する位置が、バリン(V)またはアラニン(A)により置換され、かつチロシルtRNA合成酵素の195位グルタミン(Q)に相当する位置が、アラニン(A)、システイン(C)またはアスパラギン(N)で置換された変異TyrRSである請求の範囲第4項に記載の発現方法。
【請求項6】 上記動物細胞が、哺乳類細胞である請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか一項に記載の発現方法。
【請求項7】 請求の範囲第1項乃至第6項のいずれか一項に記載の方法にしたがって発現させたタンパク質を回収し、精製することを特徴とする、非天然型チロシン誘導体組み込みタンパク質の製造方法。
【請求項8】 (A)大腸菌由来のチロシルtRNA合成酵素の変異体であって、チロシンに対する特異性に比べて非天然型のチロシン誘導体に対する特異性が高められた変異チロシルtRNA合成酵素を動物細胞内で発現させる発現ベクターと、
(B)上記変異チロシルtRNA合成酵素の存在下で上記チロシン誘導体と結合可能な、バチルス属、マイコプラズマ属、又はスタフィロコッカス属真性細菌由来のサプレッサーtRNAを、上記動物細胞内で発現させる発現ベクターと、
(C)所望の位置にナンセンス変異を受けた所望のタンパク質遺伝子を上記動物細胞内で発現させる発現ベクター
とを含有し、上記タンパク質のナンセンス変異の位置に上記チロシン誘導体を取りこませることができる動物細胞。
【請求項9】 上記チロシン誘導体が、3位置換チロシンまたは4位置換チロシンである、請求の範囲第8項に記載の動物細胞。
【請求項10】 上記(B)サプレッサーtRNAがバチルス・ステアロサーモフィラス由来のサプレッサーチロシンtRNAである請求の範囲第8項または第9項に記載の動物細胞。
【請求項11】 上記(A)変異チロシルtRNA合成酵素が、チロシルtRNA合成酵素の37位チロシン及び195位グルタミンに相当する位置に改変を受けた変異チロシルtRNA合成酵素である請求の範囲第8項乃至第10項のいずれか一項に記載の動物細胞。
【請求項12】 上記(A)変異チロシルtRNA合成酵素が、チロシルtRNA合成酵素の37位チロシン(Y)に相当する位置が、バリン(V)またはアラニン(A)により置換され、かつチロシルtRNA合成酵素の195位グルタミン(Q)に相当する位置が、アラニン(A)、システイン(C)またはアスパラギン(N)で置換された変異TyrRSである請求の範囲第11項に記載の動物細胞。
【請求項13】 哺乳類細胞である請求の範囲第8項乃至第12項のいずれか一項に記載の動物細胞。
【請求項14】 配列番号1、配列番号30、配列番号31、及び配列番号32からなる群から選ばれる一の配列を有するDNA。
【請求項15】 動物細胞内で認識される制御配列から発現可能に、配列番号1、配列番号30、配列番号31、及び配列番号32からなる群から選ばれる一の配列を含有してなる発現ベクター。
【請求項16】 配列番号1の配列を有するDNAが同方向に9個配列されてクローン化された、請求の範囲第15項に記載の発現ベクター。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 横山情報分子プロジェクト 領域
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