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メッセンジャーRNAの分離方法 実績あり

国内特許コード P110003470
整理番号 B18P24
掲載日 2011年6月21日
出願番号 特願2005-097147
公開番号 特開2006-271292
登録番号 特許第4764966号
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発明者
  • 新海 征治
  • 木村 太郎
  • 櫻井 和朗
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
  • 福岡県
発明の名称 メッセンジャーRNAの分離方法 実績あり
発明の概要

【課題】 生体由来のmRNAを迅速かつ簡単に高純度で単離する。
【解決手段】 mRNA及び水を含有する出発材料からmRNAを単離する方法であって、(a)出発材料に水溶性溶媒を添加してサンプル溶液を調製する工程、(b)前記サンプル溶液をmRNA結合性固相と接触させて固相-mRNA複合体を形成する工程、(c)固相-mRNA複合体と溶媒とを分離する工程。(d)固相-mRNA複合体を洗浄する工程、(e)固相-mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、を含むことを特徴とする方法を用いる。
【選択図】 図4

従来技術、競合技術の概要


遺伝子操作やヒトゲノム解析をはじめとする近年のバイオテクノロジーの進歩には、目を見張るものがある。特に遺伝子を含むDNAやRNAといった核酸は、生命活動の本質をつかさどる物質として医学、化学、農学といった広い領域において研究されている。また、学術的な知見をもとに産業界への応用も急速に広まっている。このようなバイオテクノロジー興隆の時代においては、生物の核酸を分離抽出する技術が必要となっている。特に生命活動全般に関する遺伝情報を直接的にコードするmRNAを簡便かつ安価に分離精製する為の技術が重要課題となっている。



一般に、生体内に含まれるmRNAは、そのコードする遺伝情報により様々な種類が存在する。例えば酵母には、約6000種類の異なるmRNAが存在すると言われている。従って、ある生体試料中に含まれるmRNA全般を抽出するという場合、塩基配列や分子長の異なる様々なmRNAの混合物として抽出することになる。以下、本発明においてmRNAには、単一のmRNAの他、このような、ある生体試料中に含まれる様々なmRNAの混合物をも含むものとする。



一般に、細胞抽出液や血液といった生体試料からRNA混合物(トータルRNA)を抽出する方法としては、RNAとその他の成分(DNA、タンパク質、細胞膜等)の化学的な性質の違いにより分離するものが用いられている。例えば、生体試料を酸性条件下でフェノールと接触させることで、RNAは水相へ、それ以外の成分はフェノール相へそれぞれ分配され、結果としてRNAのみを分離抽出する事ができる。また、高濃度のカオトロピック塩存在下においてRNAがシリカやガラス微粒子表面に吸着することを利用して、RNAを選択的に分離抽出する方法も知られている。この場合はDNAも吸着し得るが、前もってDNA分解酵素処理を行っておくことでRNAのみの抽出が可能となる。



しかし、次の段階であるトータルRNAからmRNAを分離、抽出することは以下の理由で困難であった。(1)一般にmRNAは、トータルRNA全体のわずか数%しか占めていない。(2)mRNAは、同じRNAの一種であるリボソーマルRNAやトランスファーRNAと区別され、分離されなくてはならない。(3)一つの細胞種に含まれるmRNAは、非常に種類が多く多様性に富んでいる(例えば酵母のmRNAは約6000種類あるといわれている)。つまり非常に似通った性質の混合物中から、微量のしかも多様性に富むmRNAという一群の核酸種を、高収率かつ高精度に抽出することが要求されるのである。更に、mRNAはRNA分解酵素に対して極めて不安定であるので、簡便、迅速な処理操作で分離抽出が行われなくてはならない。



現在、mRNAの分離方法としては、以下に示す方法が挙げられる。ほぼ唯一実用的に使用されている方法としては、オリゴdTというDNAを支持体に固定化した1種のアフィニティー分離法が報告されている(例えば、非特許文献1及び2等)。一般に、真核生物のmRNAの3’末端には、ポリAテイルと呼ばれるアデニル基が数10~300塩基程度連続した配列を持つことが知られている。このポリAテイル配列が支持体に固定化したオリゴdTと相補的塩基対を形成することにより、mRNAを分離することができる。しかし、この方法はDNAを材料とするため、高価であるという欠点がある。また、DNAを素材とすることで、DNA加水分解酵素による分解を受けやすい為に寿命が短いこと、溶液中で保存しなければならないので保管、管理が面倒であること、といった欠点がある。



また、特許文献1及び2等で報告されているように、β-1,3-グルカン類がmRNAと選択的に複合体を形成することを利用して、他のRNAから分離抽出する技術が知られている。しかしこれらの方法においては、いくつかの問題点が指摘される。例えば、特許文献1に記載された方法では、β-1,3-グルカン類が支持体に固定化されているために、核酸との複合体形成速度が遅く、分離抽出に要する時間が非常に長くかかる場合がある。例えば、mRNAを分離するには、サンプル溶液をカラム中に入れた状態で6時間以上熟成させなければならない場合がある。また、β-1,3-グルカンを固定化したアフィニティーカラムを調製する際にも手間と費用がかかり、必ずしも経済的な分離方法とはいえない。同様に、特許文献2の方法においても、β-1,3-グルカンにマトリックスとの結合サイトを付与する必要があり、その調製コストは核酸分離コストを上昇させる要因となる。これらの核酸分離剤は、その調整過程において手間と調製費用がかかるという欠点があり、これらを根本的に改善することは困難であると考えられる。



一方、物質の分離精製を行う為の手段として、逆相カラム、イオン交換カラムといったカラムクロマトグラフィー技術がよく知られている。これらは分離対象となる試料中に含まれる物質とカラム充填剤との間の親和性が、疎水性/親水性の程度、水素結合部位の有無、電荷量等によりそれぞれ異なることを利用して分離する方法である。



非特許文献3には、クロマトグラフィー技術を用いた核酸の分離分析例が記載されている。例えば、逆相カラムを用いると、12量体から18量体のオリゴチミジル酸が独立したピークとして検出された例が報告されている。しかし、このような手法を用いることができるのは塩基数が数10量体のオリゴヌクレオチドのみである。



また、イオン交換カラムを用いて、トランスファーRNAの分離分析を行った例も報告されている。しかしながら、本報告例は高速液体クロマトグラフィー装置を使用し長時間かけて溶出操作を行う性質のものであり、バイオ実験に使用するための核酸の分離手法としては不適当である。



実際のところ、逆相カラム又はイオン交換カラムによりトータルRNA中のmRNAを定量的に分離抽出することは、今までのところ報告されていない。これは、mRNAとその他のRNA(リボソーマルRNA、トランスファーRNA)の化学的な性質が非常によく似ており、カラムクロマトグラフィーの分離原理上分離効率が極めて低くなることが理由の一つとなっている。更に、mRNAは一種類の塩基配列ではなく、実際は数10から数1000種類以上の分子種の混合物であることが多い。mRNA分子に共通する性質として、3’末端にアデニル基が数10から300塩基程度連続するポリAテイルと呼ばれる配列が存在することが挙げられる。しかし、mRNA分子の全長の塩基数は数100から数1000塩基であるので、ポリAテイルの存在がmRNA分子全体の化学的な性質及びカラム担体に対する親和性に及ぼす影響は極めて小さい。従って、従来の逆相及びイオン交換カラムクロマトグラフィーの原理に基づいて、トータルRNA中のmRNAを定量的に分離抽出することはほぼ不可能といえる。ましてや、実用上様々なバイオテクノロジー実験に用いるために適した、高濃度且つ破損の少ないmRNAを簡便且つ迅速に分離抽出する方法としては、これらの通常の使用法によっては実現されていない。



カラムクロマトグラフィー技術の一つに、分子サイズで分画を行うゲルカラムクロマトグラフィーという技法も知られている。しかし、mRNAの塩基数が数100から数1000と広範囲に分布していること、リボソーマルRNAと分子量の重なるmRNAが一部存在することから、mRNAの定量的且つ実用的な分離抽出に用いることは出来ない。

【特許文献1】特開2003-35704号公報

【特許文献2】特開2003-137904号公報

【非特許文献1】栗林、日方、他、生化学.60巻、967ページ、1988年

【非特許文献2】アビブ、レーダー、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、69巻、1408ページ、1972年

【非特許文献3】「新生化学実験講座 核酸I 分離分析」(東京化学同人、1991年、p129-p168)

産業上の利用分野


本発明はメッセンジャーRNA(mRNA)を含有する出発材料から、mRNAを迅速かつ簡便な操作で単離するための方法及びキット、並びに、該方法により得られたmRNAからDNAを製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、RNA混合物(トータルRNA)等のようなmRNAを含有する生物材料から、mRNAを単離するための方法及びキット等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
mRNAを含有する出発材料からmRNAを単離する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加してサンプル溶液を調製する工程、
(b)前記サンプル溶液をmRNA結合性固相と接触させて固相-mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相-mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相-mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
を含み、
前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
前記方法。

【請求項2】
前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記水溶性溶媒が、DMSO及び/又はホルムアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
(a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=99:1~50:50の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。

【請求項5】
(a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=75:25~55:45の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。

【請求項6】
(c)工程において、固相-mRNA複合体と液体成分との分離が、フィルター透過、遠心分離、沈澱、及び磁気吸着からなる群より選択される少なくとも1種により行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。

【請求項7】
(d)工程において、mRNAを溶出用緩衝液により溶出することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。

【請求項8】
(c)工程の後に、(c-1)固相-mRNA複合体を洗浄する工程、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。

【請求項9】
(c-1)工程において、固相-mRNA複合体を洗浄用緩衝液により洗浄することを特徴とする、請求項に記載の方法。

【請求項10】
(1)DMSO、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性溶媒、
(2)シリカの表面を直鎖状アルキル基による化学修飾で疎水加工したmRNA結合性固相、
(3)固相-mRNA複合体洗浄液、及び
(4)mRNA溶出液、
を含むことを特徴とするmRNA単離キット。

【請求項11】
前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のキット。

【請求項12】
mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
(b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相-mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相-mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相-mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
(e)溶出したmRNAからDNAを逆転写する工程、
(f)DNAを増幅する工程、
を含み、
前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
前記方法。

【請求項13】
前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。

【請求項14】
mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
(b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相-mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相-mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相に結合したmRNAからDNAを逆転写する工程、
(e)DNAを増幅する工程、
を含み、
前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
前記方法。

【請求項15】
前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の方法。

【請求項16】
(c)工程の後に、(c-1)固相-mRNA複合体を洗浄する工程、
をさらに含むことを特徴とする、請求項12~15のいずれかに記載の方法。

産業区分
  • 微生物工業
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) SORST 平成13年度採択課題
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