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スギ花粉由来の新規アレルゲン 新技術説明会

国内特許コード P110003500
整理番号 RX04P23
掲載日 2011年6月22日
出願番号 特願2005-201947
公開番号 特開2007-014311
登録番号 特許第4732040号
出願日 平成17年7月11日(2005.7.11)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
登録日 平成23年4月28日(2011.4.28)
発明者
  • 小埜 和久
  • 重田 征子
  • 秋 庸裕
  • 河本 正次
  • 島田 弥生
  • 力丸 智史
  • 大西 伸和
  • 大磯 勲
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
  • 国立大学法人広島大学
  • 西川ゴム工業株式会社
発明の名称 スギ花粉由来の新規アレルゲン 新技術説明会
発明の概要

【課題】 スギ花粉症に関するCry j 1、Cry j 2以外の新規アレルゲン、それらを用いたアレルギーの診断薬、予防薬、および治療薬等を提供する。
【解決手段】 スギ花粉中に含まれ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると分子量50,000~60,000ダルトンを示し、等電点電気泳動法により測定すると3.5~5.0付近に等電点を示すスギ花粉アレルゲンCPA63を見出した。また質量分析によって、その部分アミノ酸配列を明らかにし、さらにはCPA63をコードするcDNA配列およびCPA63の全アミノ酸配列を明らかにした。天然型CPA63および組換え体CPA63のスギ花粉症患者血清との反応頻度を示し、CPA63が既知のアレルゲンCry j 1、Cry j 2とは免疫学的特性の異なる新規なアレルゲンであることを明らかにした。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


アレルギー疾患の罹患率および死亡率は、食生活や居住環境の変化などに伴い、近年、世界的にも増加傾向にある。民間調査(新薬開発の現状と将来展望 91年度版、(株)シードプランニング)によると、我国で3人に1人は、スギ花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などの典型的なIgE依存型(I型)アレルギー疾患の症状を示しているという。これは2003年の調査結果でも同様で、約4万1000人を対象として行われた 平成15年保健福祉動向調査 アレルギー様症状(厚生労働省大臣官房統計情報部)によれば、皮膚・呼吸器・目鼻のアレルギー様症状のうち、過去1年間にいずれかの症状があった者は35.9%であった。アレルギー疾患は、直接生命に関わることがない反面、ごく若い世代に突然発症し、早い時期での自然治癒はまず期待できず慢性に経過することによって、本人や家族の負担は勿論のこと、長期に亘って社会的活動にも大きな影響を及ぼしていると考えられる。



スギ花粉症は、日本国民の10人に1人が罹患していると言われてきたが、実際には次のような疫学的データがある。1998年に獨協医科大学耳鼻咽喉科の馬場廣太郎らによって行われた約1万7,000名を対象とした疫学調査によると、スギ花粉症の有症率は18.1%であった。また、科学技術庁振興調整費 生活者ニーズ対応研究「スギ花粉症克服に向けた総合研究」第II期成果報告書によると、2001~2002年において行った客観的診断基準による疫学調査では、スギ花粉症の有症率は、都市部(東京都品川区)で33.8%、地方(山梨県牧丘町)で26.7%であった。とりわけ、花粉の飛散する春の時期には、多くの患者がこのアレルギー症状に苦しめられている。



花粉症の治療に最も有効な方法は、アレルゲンとの接触を避けることであるが、居住環境の至る所に遊離して存在するアレルゲンで感作、発症している患者では、抗ヒスタミン剤などの副作用もある、対症療法剤を用いた一時的な解決策に依存せざるを得ないのが実状である。このため、これを使用し続けない限り発症を繰り返すことになり、財政的にも、肉体的にも大きな負担を強いられ、使用を中止するとリバウンドによる症状の悪化も懸念されるという問題を抱えている。



一方、アレルギーの原因物質であるアレルゲン自体を、患者に繰り返し投与して根治しようとする、減感作療法の試みがなされてきている。ホヤ喘息における減感作治療では90%以上の患者で症状の改善がみられたとの報告もあり(例えば、非特許文献1参照)、欧米ではアレルギーの標準的な治療方法の1つとして確立されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、使用抗原の選択を誤るとアナフィラキシーショックなどの副作用もあるため、患者個々に対する適切な診断が求められている。



スギ(Cryptomeria japonica)花粉のアレルゲンには、主要アレルゲンとして、抗原性の異なる2つの分子種、Cry j 1とCry j 2が知られている。Cry j 1は、安枝らによって報告されたもので(例えば、非特許文献3参照;本文献ではCry j 1はSBP(Sugi basic protein)と呼ばれていた)、分子量が45,000~50,000ダルトン、等電点が約9.0のタンパク質である。Cry j 2は、坂口らによって報告された分子量が約37,000ダルトン、等電点が約9.5のタンパク質である(例えば、非特許文献4参照)。Cry j 1をコードするcDNAの塩基配列およびCry j 1のアミノ酸配列が明らかとなり(例えば、非特許文献5参照)、またCry j 2をコードするcDNAの塩基配列およびCry j 2のアミノ酸配列が明らかとなった(例えば、非特許文献6参照)。これら2つの主要アレルゲンは、スギ花粉症患者血清中のIgEと高頻度に反応する。



スギ花粉症の減感作療法においては、上記主要アレルゲンCry j 1とCry j 2のみでは、充分な治療効果が得られていない。治療のためには、まず、的確な診断が重要であるが、現状においては主要アレルゲン以外での診断は殆どなされていない。このような状況の下、近年、Cry j 1とCry j 2以外のスギ花粉アレルゲンタンパク質の詳細な免疫化学的特性の解明が望まれている。



これまでにCry j 1とCry j 2以外のスギ花粉アレルゲンがいくつか報告されてきた。河本らによって、イソフラボンレダクターゼと高い相同性を示すスギ花粉由来タンパク質CJP-6のcDNA配列およびアミノ酸配列が明らかにされ、CJP-6がスギ花粉症患者IgEによって認識される新規なアレルゲンであることが示された(例えば、非特許文献7および特許文献1参照)。 一方、藤村らは、キチナーゼと高い相同性を示すスギ花粉由来タンパク質CJP-4を単離するとともに、そのcDNA配列およびアミノ酸配列を明らかにし、CJP-4がスギ花粉症患者IgEによって認識される新規アレルゲンであることを示した(例えば、非特許文献8および特許文献2(本文献ではCJP-16と呼ばれている) 参照)。小埜らによって、β-1,3-グルカナーゼと高い相同性を示すスギ花粉由来タンパク質CPA39のcDNA配列およびアミノ酸配列が明らかにされ、CPA39の天然型と組換え体がスギ花粉症患者IgEによって認識される新規なアレルゲンであることが示された(特願2005-36507号)。



井川らは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した分子量が57,000~67,000ダルトンで等電点が7.0~9.0の範囲にあるスギ花粉由来のタンパク質が、新規なアレルゲンを含むことを見出した(例えば、特許文献3参照)。該アレルゲンは、質量分析による該アレルゲンのペプチド断片のアミノ酸配列の解析結果から、ピルビン酸キナーゼであると推定された(澤崎健、(財)広島県産業技術振興機構研究交流推進部「緊急共同研究・戦略的権利化プロジェクト」第3回研究推進会議 (第3回プロテオームプロジェクト全体会議)(広島)、2001年3月15日)。しかしながら、該アレルゲンの全アミノ酸配列や該アレルゲンをコードするcDNA配列等の、該アレルゲンの分子種を特定する情報は得られていない。



二村らは、スギ花粉cDNAライブラリから、マウンテンセダー(Juniperus ashei)のアレルゲンとして知られるJun a 3と相同性のある、3つのタンパク質のcDNA (Cry j 3.1、Cry j 3.2、およびCry j 3.3)を単離し(例えば、非特許文献9参照)、さらにその後、同じくJun a 3と相同性のあるCry j 3.4、Cry j 3.5、および Cry j 3.6 のcDNAの単離も報告した(例えば、非特許文献10参照)。彼らは、これら6つの遺伝子のうち、Cry j 3.5の遺伝子だけが発達中の雄性球果と花粉で発現レベルが高いことを示し、該遺伝子がコードするタンパク質がアレルゲン活性を有する可能性を示唆した(例えば、非特許文献11参照)。一方、宮原もJun a 3と相同性を有するCry j 3a、Cry j 3b、およびCry j 3cのcDNA配列を開示した(例えば、特許文献4参照)。これらのcDNAによってコードされるCry j 3タンパク質の、スギ花粉症患者血清との反応性等の免疫学的特性が明らかとなれば、これらのCry j 3あるいはこれらCry j 3のいくつかは、スギ花粉症の重要なアレルゲンに含まれる可能性がある。



このように、Cry j 1とCry j 2以外の多くのスギ花粉アレルゲンの存在とその重要性が示唆されているにもかかわらず、その分子種の同定ならびに免疫学的特性の評価がなされているものは少ない。




【特許文献1】特開2002-58487号公報

【特許文献2】特開2005-65536号公報

【特許文献3】特開2001-151797号公報

【特許文献4】特開2004-89103号公報

【非特許文献1】Shigeta S. et al., Arerugi, 39(3), 313-21, 1990.

【非特許文献2】Bousquet J, et al., J. Allergy Clin. Immunol. 102, 558-62, 1998.

【非特許文献3】Yasueda, H. et al., J. Allergy Clin. Immunol. 71, 77-86, 1983.

【非特許文献4】Sakaguchi, M. et al., Allergy, 45, 309-312, 1990.

【非特許文献5】Sone, T. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 199: 619-625, 1994.

【非特許文献6】Komiyama, N. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 201: 1021-1028, 1994.

【非特許文献7】Kawamoto S. et al., Clin. Exp. Allergy, 32(7), 1064-70, 2002.

【非特許文献8】Fujimura T. et al, Clin. Exp. Allergy, 35(2), 234-43, 2005.

【非特許文献9】Futamura. N. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 66, 2495-2500, 2002.

【非特許文献10】Futamura. N. et al., 7th International Congress of Plant Molecular Biology (Barcelona), 講演番号S10-87, 2003年6月25日

【非特許文献11】篠原健司ら、スギ花粉症克服に向けた総合研究(第II期成果報告書)、218-226、2003

産業上の利用分野


本発明は、スギ花粉に由来する新規なアレルゲンタンパク質、およびこれを用いたアレルギーの診断、予防および治療等に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
スギ花粉中に含まれるタンパク質で、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると分子量が50,000~60,000ダルトンを示し、等電点電気泳動法により測定すると等電点が3.5~5.0示し、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項2】
スギ花粉粗抗原から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮および透析からなる群から選ばれる方法によって得られたことを特徴とする請求項1に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項3】
配列番号2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸分子。

【請求項4】
スギ花粉アレルゲンタンパク質をコードする配列番号1に記載の塩基配列を含む核酸分子。

【請求項5】
スギ花粉またはスギ雄花に由来する単離された請求項3または4に記載の核酸分子。

【請求項6】
請求項3または4に記載の核酸分子で形質転換された宿主細胞において産生された請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項7】
無細胞発現系によって調製された請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項8】
化学的な合成によって調製された請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項9】
スギ花粉症患者血清中のIgEと反応する請求項1、2および6~8のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。

【請求項10】
請求項1、2および6~8のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質に特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体。

【請求項11】
請求項1、2および6~8のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質を含む花粉症患者用の診断薬。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 高分子化合物
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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