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肝疾患治療用又は予防用の血中滞留型多相エマルション製剤及びその製造方法

国内特許コード P110003528
整理番号 RJ008P29
掲載日 2011年6月23日
出願番号 特願2005-317608
公開番号 特開2007-119436
登録番号 特許第5028564号
出願日 平成17年10月31日(2005.10.31)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
登録日 平成24年7月6日(2012.7.6)
発明者
  • 清水 正高
  • 坪内 博仁
  • 有森 和彦
  • 山崎 啓之
  • 西片 奈保子
出願人
  • 宮崎県
  • 国立大学法人 宮崎大学
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 肝疾患治療用又は予防用の血中滞留型多相エマルション製剤及びその製造方法
発明の概要 【課題】代謝・消失速度が非常に速く、重篤な副作用の危険も大きい生理活性物質の薬効向上を図るため、生体への安全性が高い乳化型キャリア(運搬体)を使って標的細胞組織部位にターゲッティングできる新しい製剤を開発する。
【解決手段】本発明の肝実質細胞を標的とするキャリアには、1)50~300nmの粒径、2)細網内皮系(RES)回避、3)レセプターと特異的に結合する分子鎖(ターゲッティングリガンド)を利用したターゲッティングの三位一体となる機能が必要である。1)については画期的なS/OサスペンションとS/O/Wエマルションの調製技術を見出したことにより、2)は乳化製剤に適した自己配向型RES回避誘導物質を探索し、その導入技術を開発したことにより、3)は乳化製剤に適した自己配向型肝実質細胞指向性物質を探索し、その導入技術を開発したことにより解決する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


極めて低濃度で生体の様々な生理現象に影響を与える生理活性物質は、有力な薬物として多種多様なものが探索され、医薬品として製品化に至っているものが多い。例えば、インターフェロン、インスリン、各種の抗癌剤等が挙げられる。また、その大きな生理活性効果が注目され、製品化が進められている新たな生理活性物質も少なくない。ところが、これらには体内投与後の代謝・消失速度が速いという共通の欠点がある。これを補うために投与量を増加すると、重篤な副作用に見舞われることもある。例えば、肝細胞増殖因子(Hepatocyto Growth Factor、HGF)を単独で投与しても数分で血中から消失するため、医薬品として利用することが困難とされている。その血中クリアランスには肝臓が主に関わっていることが既に知られており,細網内皮系(RES)に取り込まれて瞬時に分解される。また、肝臓治療のために注射剤として単独で患者に投与した場合、半減期が短いことから肝臓での効果を得るためには頻回投与あるいは持続投与が必要になり、それだけ患者の苦痛等の治療上の負担が大きくなることが予想される。このため、血中滞留性を向上させ、肝実質細胞に特異的かつ持続的に効果をもたらす製剤の開発が必要とされている。



生理活性物質は、そのほとんどが水溶性であり、これらを薬物として応用するためには、単独で投与する方法に代わり何らかのドラッグデリバリーシステム(薬物送達システム、以下、DDS)のキャリア(運搬体)を利用する手法が考えられる。ここでDDSキャリアは、代謝・消失が起こりにくく、生理活性物質を目的組織へ送達し、その後に放出する機能を有することが必要である。具体的には、脂質二分子膜リポソーム、高分子粒子、脂質粒子等の既存DDSキャリアを利用する方法、あるいは分子複合体にして副作用低減を目指す手法等が盛んに検討されている。しかし、次のような問題から、個々の生理活性物質に適合したDDSキャリアを開発するだけで膨大な時間と経費を費やしているのが現状である。



共通する手順で多種類の生理活性物質を封入することができ、体内に送達する有効なキャリアが存在しない。ある生理活性物質をキャリア化したい場合、既存DDSキャリアであるリポソーム、高分子粒子、脂質粒子又は分子複合体のそれぞれについてキャリア化の可能性を検討し、適合する製法を開発しなければならない。すなわち、既存DDSキャリアは封入や送達等の自由度が小さい。



また、既存DDSキャリアは、材質的に抗原となる可能性が高く、安全性確保に多大な労力が必要である。



さらに、貴重な生理活性物質では、DDSキャリア製造段階で効率よく封入し、生理活性物質のロスを小さくすることが必須である。しかし、リポソーム、高分子粒子、脂質粒子等では、これを実現することは非常に難しい。



加えて、生理活性物質の送達場所等を考慮してDDSキャリアに細網内皮系(RES)回避機能又はターゲッティング機能を賦与する必要がある。しかし、既存DDSキャリアや分子複合体では、これらの機能賦与が構造や特性を抜本的に変化させることにつながり、製法の自由度が極めて乏しくなる。



上述したような既存DDSキャリアや分子複合体の欠点を克服する新たなDDSキャリアとして多相エマルションが挙げられる。例えば、多相エマルションの代表であるW/O/Wエマルションでは、生理活性物質の水溶液を油相に分散する1次乳化によってW/Oエマルションを調製し、このエマルションを外水相に分散する2次乳化によって生理活性物質水溶液が油滴に封入されたW/O/Wエマルションを調製することができる。ここでは、1)生理活性物質の種類にかかわらず同じ手順で生理活性物質水溶液を油滴に封入することが可能であり、2)既存DDSキャリアや分子複合体に比べて封入の自由度が大きい。また、3)油相は生体に安全な油脂が主成分であり、抗原性や毒性の問題を回避できる。さらに、2段階乳化の手順は、油滴を微細化しない場合には、4)生理活性物質を効率よく封入できるため生理活性物質のロスを小さくできる。



しかし、上記1)~4)のような特徴がありながらW/O/Wエマルションは薬物のDDSキャリアとしてこれまでほとんど現実的な検討が行われていない。これは、次に示す幾つかの重大な問題が存在するためである。



1.滴径がサブミクロンのW/O/Wエマルションを効率よく調製する技術が存在しない。



2.O/Wエマルションを機械的に微細化する技術はあるが、これをW/O/Wエマルション生成に使用するとW/O/W構造が破壊される。また、こうした機械的な微細化技術では極めて高い剪断力を作用させる場合が一般的であるが、高い剪断によって生理活性物質が変質するか、発生する熱によっても変質が起こりやすい。



3.W/O/Wエマルションは液滴合一と封入物質放出の2点で安定性に乏しく、数ヶ月の長期保存に耐えられない。



4.また、これまでのエマルション製剤では、RES回避機能や肝実質細胞指向性を賦与する技術も確立されていない。
【特許文献1】
特開2003-267891号公報
【特許文献2】
特開2001-131056号公報
【特許文献3】
特開平10-7587号公報

産業上の利用分野


本発明は、肝疾患治療用又は予防用の血中滞留型多相エマルション製剤及びその製造方法に関する。特に、細網内皮系を効率的に回避しながら肝実質細胞に特異的に生理活性物質を送達し得る機能性乳化製剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
油剤及び油性乳化剤を含む油相中に生理活性物質が封入されてなる油滴が外水相に分散している多相エマルションであって、
(1)前記生理活性物質が、水への溶解度が1μmol/L以上であり、かつ、油水分配係数が0.001以下であり、
(2)前記生理活性物質が、油滴中0.01~25重量%の範囲で封入されており
下記I)~IV)の特徴を有する物質a;
I)水酸基を有する分子鎖をもつ、
II)油相への溶解度が1μmol/L以上である、
III)油水分配係数が1000以上である、
IV)油相中において前記水酸基を有する分子鎖を外水相に向けて自己配向する、
がさらに油相中に含まれ、
下記i)~iv)の特徴を有する物質b;
i)肝実質細胞表面上のレセプターと特異的に結合する分子鎖を有する、
ii)油相への溶解度が1μmol/L以上である、
iii)油水分配係数が1000以上である、
iv)油相中において前記分子鎖を外水相に向けて自己配向する、
がさらに油相中に含まれる
ことを特徴とする、肝疾患治療用又は予防用の血中滞留型多相エマルション製剤。

【請求項2】
前記物質aが、コレステロールPEG(polyoxyethanyl-cholesteryl sebacate)、ジステアリン酸フォスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE-PEG)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ポリオキシエチレンPOE(3)ヒマシ油、ポリオキシエチレンPOE(5)硬化ヒマシ油及びPCA(ピロリドンカルボン酸)イソステアリン酸テアリン酸PEG-40水添ヒマシ油の少なくとも1種である、請求項に記載の多相エマルション製剤。

【請求項3】
前記物質bが、下記の少なくとも1種;
1)プルラン誘導体、ガングリオシド誘導体、アシアロトランスフェリン誘導体、アシアロフェツイン誘導体、ラクトノラクトン誘導体及びラクトース誘導体ならびに
2)低比重リポ蛋白及び高比重リポ蛋白
である、請求項1又は2に記載の多相エマルション製剤。

【請求項4】
前記油滴の平均滴径が、1)動的散乱式粒度分布測定による値で50~500nmの範囲又は2)レーザー回折散乱式粒度分布測定による値で500~1000nmである、請求項1~のいずれかに記載の多相エマルション製剤。

【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の静注用多相エマルション製剤。

【請求項6】
肝疾患治療用又は予防用の血中滞留型多相エマルション製剤を製造する方法であって、
(1)生理活性物質の水溶液を油相に分散させることによりW/Oエマルションを調製する第1工程、
(2)前記W/Oエマルション中の水分の全部又は一部を除くことによりS/Oサスペンションを調製する第2工程、
(3)前記S/Oサスペンションを外水相に分散させることによりS/O/W系多相エマルションを得る第3工程、
(4)前記S/O/W系多相エマルションを多孔質膜を用いて膜透過させることにより、前記油相の平均滴径が50~1000nmである多相エマルション製剤を得る第4工程
含み、
第2工程に先立って、請求項1又は2に記載の物質a又はその溶液をあらかじめ油相へ溶解又は分散させる工程をさらに含み、
第2工程に先立って、請求項1又は3に記載の物質b又はその溶液をあらかじめ油相へ溶解又は分散させる工程をさらに含む、
多相エマルション製剤の製造方法。

【請求項7】
第3工程及び/又は第4工程において、前記物質aの水酸基を有する分子鎖を外水相に自己配向させる、請求項に記載の製造方法。

【請求項8】
第3工程及び/又は第4工程において、前記物質bの当該分子鎖を外水相に自己配向させる、請求項6又は7に記載の製造方法。
国際特許分類(IPC)
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