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リン化合物または窒素化合物を触媒として用いた新規リビングラジカル重合法

国内特許コード P110003613
整理番号 1684
掲載日 2011年6月27日
出願番号 特願2009-514123
登録番号 特許第5850599号
出願日 平成20年5月2日(2008.5.2)
登録日 平成27年12月11日(2015.12.11)
国際出願番号 JP2008058438
国際公開番号 WO2008139980
国際出願日 平成20年5月2日(2008.5.2)
国際公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
優先権データ
  • 特願2007-125099 (2007.5.9) JP
発明者
  • 後藤 淳
  • 福田 猛
  • 辻井 敬亘
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 リン化合物または窒素化合物を触媒として用いた新規リビングラジカル重合法
発明の概要 安価で、活性が高く、環境に優しいリビングラジカル重合触媒を提供すること
リビングラジカル重合方法のための触媒であって、窒素またはリンから選択される中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む触媒が提供される。この触媒の存在下で、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合反応させることにより、分子量分布の狭いポリマーを得ることができ、リビングラジカル重合のコストを劇的に低減することができる。本発明は、触媒の低毒性、低使用量、高溶解性、温和な反応条件、無着色・無臭(成形品の後処理が不要)などの利点を有し、従来のリビングラジカル重合方法に比べて格段に環境に優しく経済性に優れる。
従来技術、競合技術の概要


従来から、ビニルモノマーを重合してビニルポリマーを得る方法として、ラジカル重合法が周知であったが、ラジカル重合法は一般に、得られるビニルポリマーの分子量を制御することが困難であるという欠点があった。また、得られるビニルポリマーが、様々な分子量を有する化合物の混合物になってしまい、分子量分布の狭いビニルポリマーを得ることが困難であるという欠点があった。具体的には、反応を制御しても、重量分子平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として、2~3程度にまでしか減少させることができなかった。



このような欠点を解消する方法として、1990年頃から、リビングラジカル重合法が開発されている。すなわち、リビングラジカル重合法によれば、分子量を制御することが可能であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能である。具体的には、Mw/Mnが2以下のものを容易に得ることが可能であることから、ナノテクノロジーなどの最先端分野に用いられるポリマーを製造する方法として脚光を浴びている。



リビングラジカル重合法に現在用いられる触媒としては、遷移金属錯体系触媒が知られている。



遷移金属錯体系触媒としては、例えば、Cu、Ni、Re、Rh、Ruなどを中心金属とする化合物に配位子を配位させた錯体が使用されている。このような触媒は、例えば、以下の文献に記載されている。



特許文献1(特開2002-249505号公報)は、Cu、Ru、Fe、Niなどを中心金属とする錯体を触媒として使用することを開示する。



なお、特許文献1は、その請求項1において、重合開始剤として、有機ハロゲン化物を用いると記載している。この記載は、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒として作用することを意味するものではない。特許文献1の発明においては、遷移金属を中心金属とする金属錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用されている。特許文献1の発明においては、有機ハロゲン化物が、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。



特許文献2(特開平11-322822号公報)は、ヒドリドレニウム錯体を触媒として使用することを開示する。



なお、特許文献2は、その請求項1において、「ヒドリドレニウム錯体およびハロゲン化炭化水素の組み合わせからなるラジカルリビング重合用触媒」と記載している。この記載は、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒として作用することを意味するものではない。特許文献2の発明においては、ヒドリドレニウム錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用されている。特許文献2の発明においては、ハロゲン化炭化水素が、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。その触媒とドーマント種との組み合わせを特許文献2では触媒と記載しているものであって、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒となることを記載しているのではない。



非特許文献1(Journal of The American Chemical Society 119,674-680(1997))は、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジンを臭化銅に配位させた化合物を触媒として使用することを開示する。



なお、非特許文献1は、スチレンの重合の際に1-フェニルエチルブロミドを用いたことを記載している。すなわち、特許文献2の発明においては、臭化銅錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用され、1-フェニルエチルブロミドが、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。



しかしながら、このような遷移金属錯体触媒を用いる場合には、使用量として多量の遷移金属錯体触媒が必要であり、反応後に使用された大量の触媒を製品から完全に除去することが容易でないという欠点があった。また不要となった触媒を廃棄する際に環境上の問題が発生し得るという欠点があった。さらに、遷移金属には毒性の高いものが多く、製品中に残存する触媒の毒性が環境上問題となる場合があり、遷移金属を食品包装材、生体・医療材料などに使用することは困難であった。また、反応後に製品から除去された触媒の毒性が環境上問題となる場合もあった。さらに、導電性の遷移金属がポリマーに残存するとそのポリマーに導電性が付与されてしまって、レジストや有機ELなどの電子材料に使用することが困難であるという問題もあった。また、錯体を形成させないと反応液に溶解しないため、配位子となる化合物を用いなければならず、このために、コストが高くなり、かつ、使用される触媒の総重量がさらに多くなってしまうという問題もあった。さらに、配位子は、通常、高価であり、あるいは煩雑な合成を要するという問題もあった。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点があった(例えば、上記非特許文献1では、110℃において重合を行っている)。



なお、触媒を用いる必要がないリビングラジカル重合方法も公知である。例えば、ニトロキシル系、およびジチオエステル系の方法が知られている。しかし、これらの方法においては、特殊な保護基をポリマー成長鎖に導入する必要があり、この保護基が非常に高価であるという欠点がある。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点がある。さらに、生成するポリマーが好ましくない性能を有しやすいという欠点がある。すなわち、生成するポリマーがその高分子本来の色と異なる色に着色されたものになりやすく、また、生成するポリマーが臭気を有するものになりやすいという欠点がある。



他方、非特許文献2(Polymer Preprints 2005, 46(2), 245-246)および特許文献3(特開2007-92014号公報)は、Ge、Snなどを中心金属とする錯体を触媒として使用することを開示する。



非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒では、ポリマー1kgを重合する際に必要とされる触媒の費用がおよそ数千円になっていた。これに対して、ゲルマニウム触媒においては、約千円程度にまで費用が低減されるので、非特許文献2の発明は、触媒の費用を顕著に低減させるものであった。しかしながら、リビングラジカル重合を汎用樹脂製品等に応用するためには、さらなる低コストの触媒が求められていた。



一般に、遷移金属、あるいは遷移金属元素の化合物が、各種化学反応の触媒として好ましいことが知られている。例えば、J.D.LEE 「無機化学」(東京化学同人、1982年4月15日第1版発行)311頁は、「多くの遷移金属とその化合物は触媒作用をもつ。…ある場合には、遷移金属はいろいろな原子価をとり、不安定な中間体化合物をつくることがあり、また他の場合には、遷移金属は良好な反応面を提供しこれらが触媒作用として働くのである」と記載している。すなわち、不安定な様々な中間体化合物を形成できるなどの遷移金属に特有の性質が、触媒の機能には欠かせないことが当業者に広く理解されていたのである。



そして上述した非特許文献2に記載されたGe、Sn、Sbは遷移金属ではないが、周期表の第4周期および第5周期に位置する元素であって、大きい原子番号を有し、多数の電子および多数の電子軌道を有する。従って、Ge、Sn、Sbにおいては、これらの原子が多数の電子および多数の電子軌道を有することが、触媒として有利に作用していることが推測される。



このような従来技術の各種触媒に関する技術常識によれば、周期表の第2周期および第3周期に位置する典型元素は少数の電子および電子軌道しか有さず、触媒化合物に用いることは不利であり、これらの典型元素を用いた化合物に触媒作用は期待できないと考えられていた。
【特許文献1】
特開2002-249505号公報
【特許文献2】
特開平11-322822号公報
【特許文献3】
特開2007-92014号公報
【非特許文献1】
Journal of The American Chemical Society 119,674-680(1997)
【非特許文献2】
Polymer Preprints 2005, 46(2), 245-246, 「Germanium- and Tin-Catalyzed Living Radical Polymerizations of Styrene」、American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry

産業上の利用分野


本発明は、リビングラジカル重合に用いられる高活性触媒およびそれを用いた重合方法に関する。より具体的には、本発明は、窒素またはリンを中心元素として有する触媒をリビングラジカル重合に用いる。

特許請求の範囲 【請求項1】
リビングラジカル重合法において成長ラジカルからドーマント種を可逆的に生成させるための触媒であって、
ここで、該リビングラジカル重合法は、該触媒、ラジカル反応開始剤および有機ハロゲン化物の存在下にラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合反応させる工程を包含する方法であり、
ここで、該触媒が窒素またはリンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子または臭素原子とを含む、以下の一般式(Ic)または(Id)で示される化合物からなり:
1aPX1a(=O) (Ic)
1bNX1b (Id)
ここで、一般式(Ic)において、R1aはアルコキシ、アリールまたは置換アリールであり、
nは0~2の整数であり、
1aはヨウ素または臭素であり、
mは1~3の整数であり、
kは0~1の整数であり、
一般式(Id)において、X1bはヨウ素または臭素であり、
1bはアルキルカルボニルであり、2つのR1bが窒素原子と一緒になって環を形成する、
触媒。

【請求項2】
請求項1に記載の触媒であって、X1aはヨウ素であり、X1bはヨウ素である、触媒。

【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の触媒であって、nは0であり、mは3である、触媒。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒であって、ここで、該触媒が一般式(Ic)で示される化合物である、触媒。

【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒であって、ここで、該触媒が一般式(Id)で示される化合物である、触媒。

【請求項6】
リビングラジカル重合を行う工程を包含する重合方法であって、該リビングラジカル重合工程が、請求項1~5に記載の触媒の存在下で行われ、前記有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用される、方法。

【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、触媒濃度が、反応溶液のうちの0.75重量%以下である、方法。

【請求項8】
請求項6または7に記載の方法であって、反応温度が、20℃~100℃である、方法。

【請求項9】
リビングラジカル重合を行う方法であって、
ラジカル反応開始剤から生じたラジカルと、触媒前駆体化合物とを反応させて活性化ラジカルを生じさせる工程、および
該活性化ラジカルを用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーを重合してポリマーを得る工程を含み、
ここで、該前駆体化合物が、窒素またはリンから選択される少なくとも1つの中心元素を含み、ただし、該中心元素にはハロゲン原子が結合しておらず、
ラジカル反応開始剤から生じたラジカルは、該前駆体化合物から水素原子を引き抜いて、該活性化ラジカルを生じさせ、
該活性化ラジカルは、該モノマーの重合反応のリビングラジカル触媒として作用し、そして
該リビングラジカル重合反応において炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が使用され、該有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用され、
ここで、該前駆体化合物の中心元素がリンである場合、該活性化ラジカルは、以下の一般式(Ic)で示される化合物から重合反応の際に発生する活性化ラジカルと同じであり、そして該前駆体化合物の中心元素が窒素である場合、該活性化ラジカルは、以下の一般式(Id)で示される化合物から重合反応の際に発生する活性化ラジカルと同じであり、
1aPX1a(=O) (Ic)
1bNX1b (Id)
ここで、一般式(Ic)において、R1aはアルコキシ、アリールまたは置換アリールであり
1aはヨウ素または臭素であり
kは0~1の整数であり、
一般式(Id)において、X1bはヨウ素または臭素であり、
1bはアルキルカルボニルであり、2つのR1bが窒素原子と一緒になって環を形成する、
方法。

【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記中心元素が5価のリンである、方法。

【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、前記触媒前駆体化合物がホスファイトである、方法。

【請求項12】
ブロック共重合体を合成する方法であって、該ブロック共重合体の少なくとも1つのブロックが、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法により重合される、方法。

【請求項13】
リビングラジカル重合法における触媒の使用であって、該触媒が、請求項1に記載の触媒であり、
ここで、該重合法が、該触媒および炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物の存在下でリビングラジカル反応を行う工程を包含する、使用。

【請求項14】
請求項6~12のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機ハロゲン化物中のハロゲンが結合している炭素に、2つまたは3つの炭素が結合している、方法。

【請求項15】
リビングラジカル重合法のための原料組成物であって、
窒素またはリンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子または臭素原子とを含む化合物からなる、触媒と、
ラジカル反応開始剤と、
ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーと、
炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物と
を含み、
ここで、該触媒が以下の一般式(Ic)または(Id)で示される化合物であり:
1aPX1a(=O)k (Ic)
1bNX1b (Id)
ここで、一般式(Ic)において、R1aはアルコキシ、アリールまたは置換アリールであり、
nは0~2の整数であり、
1aはヨウ素または臭素であり、
mは1~3の整数であり、
kは0~1の整数であり、
一般式(Id)において、X1bはヨウ素または臭素であり、
1bはアルキルカルボニルであり、2つのR1bが窒素原子と一緒になって環を形成する、
原料組成物。
国際特許分類(IPC)
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