TOP > 国内特許検索 > 制御装置、原子間力顕微鏡、制御方法およびプログラム

制御装置、原子間力顕微鏡、制御方法およびプログラム

国内特許コード P110003630
整理番号 2495
掲載日 2011年6月27日
出願番号 特願2009-180137
公開番号 特開2011-033482
登録番号 特許第5283038号
出願日 平成21年7月31日(2009.7.31)
公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発明者
  • 大藪 範昭
  • 木村 建次郎
  • 井戸 慎一郎
  • 鈴木 一博
  • 小林 圭
  • 山田 啓文
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 制御装置、原子間力顕微鏡、制御方法およびプログラム
発明の概要

【課題】 振動体の変動周波数に距離や、経過時間や雰囲気温度に依存するゆらぎがあっても、ゆらぎによってアプローチ動作が終了することなく、かつプローブと試料間に設定値以上の短距離力が働くことを避けながら、原子間力が働く距離まで振動体と試料とを正確に接近させることができる制御装置、原子間力顕微鏡、制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 粗動機構制御部153は、プローブ12に接近する方向への試料2の移動の開始を粗動機構部20に指示した後、予め定める条件が満たされる度に、予め定める条件が満たされた時点に、周波数検出装置10からの電気信号が示す変動周波数Δfに、設定されているオフセット周波数を加算した値をセットポイントの値に再設定する。そして、変動周波数Δfがセットポイント以上になると、試料2の移動を停止するように粗動機構部20を制御する。
【選択図】 図1

従来技術、競合技術の概要


周波数変調方式原子間力顕微鏡(Frequency-Modulation Atomic Force Microscope:略称FM-AFM)は、カンチレバーなどの振動体の共振周波数が、カンチレバーの先端部に設けられるプローブ(以下「探針」ともいう)と試料表面との間で働く力によって変化するという原理を利用して、カンチレバーの共振周波数の変化に基づいて、プローブと試料表面との距離を一定に保ちながら試料表面を走査して、試料表面の凹凸を測定するものである。



図4は、第1の従来の技術であるFM-AFM9の構成を模式的に示す図である。カンチレバー11が共振する共振周波数は、カンチレバー11に設けられたプローブ12と試料表面3との距離に応じて変化する。共振周波数が変動するカンチレバー11の変位は、変位検出計14によって検出される。変位検出計14によって検出された変位を表す信号は、周波数検出装置10に送られる。周波数検出装置10は、変位検出計14から受け取る変位を表す信号から、基準となる基準周波数f0に対して共振周波数fが変動する変動周波数Δfを表す電気信号を生成し、制御コントローラ95の距離制御部151および粗動機構制御部953に送る。



微動機構部(図4では「Z piezo」と記す)16は、圧電素子によって構成され、距離制御部151の指示によって、試料2を載置するテーブル18を鉛直方向、つまりZ軸方向に移動し、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を変化させる。XY軸方向移動部(図4では「XY piezo」と記す)17は、圧電素子によって構成され、XYスキャン部152の指示によって、テーブル18をZ軸に直交する方向に移動し、試料表面3の全面の測定を可能とする。



距離制御部151は、周波数検出装置10からの変動周波数Δfを表す電気信号が一定の値になるように、すなわち、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が一定になるように、微動機構部16を制御する。制御コントローラ15は、試料2をXY軸方向に移動させるとき、Z軸方向のテーブル18の位置、すなわちプローブ12の先端部と試料表面3との距離を記憶しておき、記憶したZ軸方向の位置をXYZ座標系でプロットすることによって、試料表面3の凹凸を画像として出力することができる。



図5は、粗動機構部20による試料2の移動範囲を示す図である。カンチレバー11および試料2をFM-AFM9に設置するとき、プローブ12の先端部と試料2とは数cm~数mm離れた状態であり、たとえば距離L1=数mmである。FM-AFM9で試料表面3を観測するためには、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を、短距離相互作用力(以下「短距離力」ともいう)が働く距離L2、たとえば数nmまで接近させる必要がある。



粗動機構部20は、試料2をプローブ12に接近および離反させる方向、つまりZ軸方向に移動させる機構である。粗動機構部20は、試料2を移動するが、図5では、カンチレバー11を相対的に移動したように示している。粗動機構部20は、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を数cmから数nmまで接近させることができる。



図6は、粗動機構制御部953による粗動基本処理を示すフローチャートである。粗動機構制御部953は、図示しない操作部から、試料2のアプローチが指示されると、ステップB1に移る。アプローチとは、カンチレバー11および試料2がFM-AFM9に設置されたときの位置から、つまり図5に示した距離L1離れた位置から、プローブ12の先端部と試料表面3との間に短距離力が働く距離L2まで、粗動機構部20によって、試料2をプローブ12に接近させることである。



ステップB1では、粗動機構制御部953は、粗動機構部20に、プローブ12に近接する方向への試料2の移動の開始を指示した後、粗動機構部20を用いて試料2をプローブ12に接近させる。ステップB2では、粗動機構制御部953は、微動機構部16の制御距離範囲内で入力がセットポイントを超えるか否かを判定する。判定方法には、微動機構部16を縮めた状態で粗動機構部20を用いて試料2を接近させ、粗動機構部20による移動停止後に、微動機構部16を伸ばし微動機構部16が伸びきるまでの間で、入力がセットポイントを超えるか否かを判定する方法と、距離フィードバック機能を用いて微動機構部16を伸ばした状態にして、粗動機構部20を用いてプローブ12と試料表面3間距離を接近させたとき、入力がセットポイントを超えないようにするため、距離フィードバック出力が微動機構部16を伸ばしきらない状態になったか否かを判定方法があり、いずれの判定方法としてもよい。



微動機構部16の制御距離範囲は、一般に数μmである。入力は、周波数検出装置10からの変動周波数Δfを表す電気信号である。セットポイントは、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が、短距離力が働く距離、つまり距離L2になったと粗動機構制御部953が判定するための変動周波数Δfの閾値周波数である。セットポイントは、たとえば粗動機構制御部953のメモリなどに記憶され、予め図示しない操作部から操作者によって設定される。粗動機構制御部953は、周波数検出装置10からの変動周波数Δfを表す電気信号に基づいて、変動周波数Δfがセットポイント以上になったか否かを判定する。



粗動機構制御部953は、変動周波数Δfがセットポイント以上になったとき、微動機構部16の制御距離範囲内で入力がセットポイントを超えたと判定し、移動を停止するように粗動機構部20を制御した後、粗動基本処理を終了する。粗動機構制御部953は、変動周波数Δfがセットポイント未満であるとき、微動機構部16の制御距離範囲内で入力がセットポイントを超えていないと判定し、ステップB1に戻る。



図7は、変動周波数Δfとセットポイントとの関係を示す図である。横軸が試料2の微動機構部16による移動距離z(nm)であり、縦軸が変動周波数Δf(Hz)である。図7では、移動距離zの基点は、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が数nmである位置を0としている。変動周波数Δfは、移動距離zが0nm~2.5nmの範囲では、ほぼ-250Hzから250Hzの範囲で変動しているが、移動距離zが2.5nmを超えると、短距離力が働き、急激に上昇している。



セットポイントは、短距離力が働き始め、変動周波数Δfが急激に上昇しているときの周波数に設定される。たとえば、セットポイントを、微動機構部16による移動距離zが0nm~2.5nmの範囲での最大の変動周波数Δfから大きく離れた周波数SP1、たとえば約1700Hzに設定した場合、粗動機構制御部953は、微動機構部16による移動距離zがz2=2.9nmで距離L2になったと判定する。また、セットポイントを、微動機構部16による移動距離zが0nm~2.5nmの範囲での最大の変動周波数Δfからあまり離れない周波数SP2、たとえば約450Hzに設定した場合、粗動機構制御部953は、微動機構部16による移動距離zがz1=2.7nmで距離L2になったと判定する。



実験では、試料2の厚さのばらつきなどにより、遠い距離、たとえば距離L1=数mmからプローブ12に近づける場合、どれだけ接近させたときに短距離力が働くかを事前に知ることは困難である。



短距離力が働く距離で表面観察が可能となるが、アプローチ時にセットポイントが大きいと、プローブ12と試料表面3間の相互作用力が大きい距離になるまで両者が接近したと判断されないので、大きな相互作用力によってプローブと試料表面の破壊が引き起こされる可能性が高くなる。そのためアプローチ時のセットポイントは、小さいことが望ましい。しかしながら、セットポイントが小さすぎると、入力信号のノイズなどによってアプローチが終了したと判断される場合があるため、入力に対して適切な差を持ったものをセットポイントとする必要がある。



特許文献1に記載される第2の従来の技術である非接触型原子間力顕微鏡は、試料の表面を走査するとき、往復時の測定信号の相関とエラー信号とをモニタしながら、最適な測定条件を探索する。測定条件は、セットポイント、フィードバック系のゲイン、走査速度および励振強度などの条件である。エラー信号は、カンチレバー振幅の設定値からのずれを示す信号である。第2の従来の技術でのセットポイントは、フィードバック系により一定に保つべきカンチレバーの振幅値である。



特許文献2に記載される第3の従来の技術である走査プローブ顕微鏡は、変位検出機構によってカンチレバーの振幅を検出しながら、粗動機構によって探針とサンプルつまり試料とを近接させるとき、変位検出機構によって検出される振幅が設定された振幅量になった時点で、粗動機構を停止させる。振動方式でカンチレバーを加振する周波数を低周波側動作点にする場合、振幅量は、探針サンプル間距離が少なくなるとき、徐々に減少し、変曲点付近で増加した後、変曲点を過ぎると急激に減少する。設定する振幅量を、振幅が増加するときの振幅量とする。振幅が増加しないことがあり得るときは、振幅が急激に減少するときの振幅量を用いる。



特許文献3に記載される第4の従来の技術である走査プローブ顕微鏡の探針接近方法は、粗動機構部によって、試料を高さ方向に相対的に大きな距離で移動させながら、微動機構部によって、探針を3次元方向に相対的に微小な距離で、試料と探針との間に働く原子間力が一定に保たれる距離まで移動させる。粗動機構部は、試料を高さ方向に移動させるとき、1回の移動で、微動機構部による最大変位量よりも小さい単位変位量だけ移動させ、微動機構部による移動によって原子間力が一定に保たれる距離まで移動させることができないときは、さらに単位変位量だけ移動させることを繰り返す。



特許文献4に記載される第5の従来の技術である走査プローブ顕微鏡は、ピエゾ駆動素子によってz方向の移動が行われるカンチレバーに設けられる探針によって、試料表面の凹凸を測定するとき、レバー変位検出機構によって検出されるカンチレバーの振動振幅に対応する電圧と、セットポイントを規定する電圧との差をアンプで増幅し、積分回路を通してz駆動電圧としてピエゾ駆動素子に供給する。この走査プローブ顕微鏡は、測定した後測定場所を移動するとき、セットポイントを変更することによって探針を退避させ、試料ステージによって探針を次の測定場所に移動し、アンプのゲインを下げる。そして、セットポイントを測定時の値に戻して探針を試料に接近させた後、ゲインを測定時の値に戻して測定する。アンプのゲインを下げることによって、探針と試料とが急激に接近し、瞬間的に探針が試料と接触することを防止するものである。

産業上の利用分野


本発明は、振動体と試料とを原子間力が働く距離まで接近させる制御を行う制御装置、原子間力顕微鏡、制御方法およびプログラムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
試料と振動体とを接近させる方向に移動する機構部による試料または振動体の移動を制御する制御部と、
予め定める基準周波数に対して変動する振動体の変動周波数を検出する検出部とを含み、
制御部は、試料または振動体の移動を開始するように機構部を制御した後、予め定める条件が満たされる度に、前記予め定める条件が満たされた時点で検出部によって検出された変動周波数に予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数として設定し、設定した後、検出部によって検出される変動周波数が閾値周波数以上になると、試料または振動体の移動を停止するよう機構部を制御することを特徴とする制御装置。

【請求項2】
前記予め定める条件は、前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させたとき、または前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させた後、前記予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数としたときから、前記機構部が試料または振動体を予め定める距離移動したという条件であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。

【請求項3】
前記予め定める条件は、前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させたとき、または前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させた後、前記予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数としたときから、予め定める時間が経過したという条件であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。

【請求項4】
前記予め定める条件は、前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させたとき、または前記制御部が前記機構部による試料または振動体の移動を開始させた後、前記予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数としたときから、前記変動周波数の変動量がゆらぎによる変動周波数Δfの上昇幅を超える変動幅となる第1の変動量以上であり、かつ短距離力が働き始めてからプローブの先端部と試料表面とが接触する第2の変動量未満であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。

【請求項5】
振動体と、
試料と振動体とを接近させる方向に移動する機構部と、
請求項1~4のいずれか1つに記載される制御装置とを備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。

【請求項6】
試料と振動体とを接近させる方向に移動する機構部による試料または振動体の移動を制御する制御部と、予め定める基準周波数に対して変動する振動体の変動周波数を検出する検出部とを含む制御装置が機構部を制御する制御方法であって、
機構部による試料または振動体の移動を開始する開始ステップと、
開始ステップで機構部による試料または振動体の移動が開始された後、予め定める条件が満たされる度に、前記予め定める条件が満たされた時点で検出部によって検出された変動周波数に予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数として設定する閾値設定ステップと、
検出部によって検出される変動周波数が閾値設定ステップで設定された閾値周波数以上になると、機構部による試料または振動体の移動を停止する停止ステップとを含むことを特徴とする制御方法。

【請求項7】
予め定める基準周波数に対して変動する振動体の変動周波数を検出する検出部と、コンピュータとを含む制御装置のコンピュータに、
試料と振動体とを接近させる方向に移動する機構部による試料または振動体の移動を開始する開始ステップと、
開始ステップで機構部による試料または振動体の移動が開始された後、予め定める条件が満たされる度に、前記予め定める条件が満たされた時点で検出部によって検出された変動周波数に予め定めるオフセット周波数を加算した周波数を閾値周波数として設定する閾値設定ステップと、
検出部によって検出される変動周波数が閾値設定ステップで設定された閾値周波数以上になると、機構部による試料または振動体の移動を停止する停止ステップとを実行させるためのプログラム。
産業区分
  • 電子部品
  • 電子管
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2009180137thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close