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カーボンナノチューブの構造選択分離と表面固定 コモンズ

国内特許コード P110003658
整理番号 K053P98
掲載日 2011年6月27日
出願番号 特願2005-517986
登録番号 特許第4519071号
出願日 平成17年2月10日(2005.2.10)
登録日 平成22年5月28日(2010.5.28)
国際出願番号 JP2005002085
国際公開番号 WO2005077827
国際出願日 平成17年2月10日(2005.2.10)
国際公開日 平成17年8月25日(2005.8.25)
優先権データ
  • 特願2004-039100 (2004.2.16) JP
発明者
  • 村越 敬
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 カーボンナノチューブの構造選択分離と表面固定 コモンズ
発明の概要

本発明の課題は、カーボンナノチューブ特有の構造敏感な特性を利用して、均一な所望の物性(直径、カイラルベクトルなど)を有するカーボンナノチューブを高選択的に分離、濃縮または精製する方法および装置を提供することにある。本発明によれば、以下の工程:a)カーボンナノチューブを含む試料に光を照射する工程;およびb)所望の所望の物性(直径およびカイラルベクトルの少なくとも一方を含む)を有するカーボンナノチューブを選択する工程、を包含する、試料中の所望の物性を有するカーボンナノチューブを分離、濃縮または精製する方法が提供され、これによって上記課題が解決される。

従来技術、競合技術の概要


カーボンナノチューブは、1991年に飯島澄夫氏によって発見された新物質であり、その直径とチューブの巻き具合によって金属性と半導体性の性質を示すものがある。このような物性はチューブの構造によって一本一本で全く異なり、この分野に関する研究が現在盛んに行われている。また、カーボンナノチューブはデバイスなどの次世代材料としてエレクトロニクスやエネルギー分野への応用が非常に期待されている物質である。



単層カーボンナノチューブの生成法に関する研究により、フェロセンなどを触媒に用いた炭化水素の分解(例えば、非特許文献1参照)のような工業的に低コストで大量合成が可能な方法(Chemical vapor deposition,CVD法)が確立されつつある。また、市販されている。単層カーボンナノチューブの合成方法の代表例としては、アーク放電法およびレーザー蒸発法があげられる(例えば、非特許文献2参照)。これらは更に限外ろ過(例えば、非特許文献2参照)などを用いて精製されている(純度90%以上が可能)。



アーク放電により作製される単層カーボンナノチューブの直径分布は、合成で使用する金属触媒の種類に依存して異なる。このように金属触媒の種類を選択することで平均直径を制御することができ、それによって作製されるナノチューブの直径分布は、平均直径±0.4nmの範囲で制御することができる。しかし、現在の作製方法ではいずれの方法を用いても単層カーボンナノチューブを個々の直径ごとに分けて合成することはできない。



そこで上記方法で作製した単層カーボンナノチューブを用いて、各チューブに固有な物性を調査することを目的として、分離精製する方法を確立するための研究がなされている。



一例として、P.UmekおよびD.Mihailovicは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液に分散させた単層カーボンナノチューブ溶液を用いてアガロースゲル電気泳動を行い、得られたフラクションを塩酸処理、SDS除去(脱イオン水)、乾燥後ラマンスペクトルを測定し、単層カーボンナノチューブが部分的に直径と長さで分別されていることを確認した(例えば、非特許文献3参照)。



また、Stephen K.DoornらはSDS溶液に分散させたカーボンナノチューブ溶液を用いてキャピラリー電気泳動を行い、分離後の吸収スペクトル、ラマンスペクトルから、長さの違いによる溶出時間の変化によって単層カーボンナノチューブを分別できることを見出した(例えば、非特許文献4参照)。以上のような研究から、カーボンナノチューブを長さごとに分けるといった方法が確立されつつある。



しかし、カーボンナノチューブの物性はカーボンナノチューブ自身の直径、カイラル角などの物性によって決定され、カーボンナノチューブを長さで分別するということが、必ずしも物性ごとに分別するということにはつながらず、これまでに報告されているカーボンナノチューブを長さによって分別する方法は、物性によってカーボンナノチューブを分別しているということにはならない。



これまでに、カーボンナノチューブについては多くの研究がなされているが、全く同じ直径、キラリティ、仕事関数、バンドギャップを有する単一チューブのみの調製あるいは精製分離は未だその精度は非常に低い(例えば、非特許文献5~12参照)。直径による分離についての結果は、DNA分散カーボンナノチューブのイオン交換クロマトグラフィーによる分離を開示する非特許文献9が先行競合技術として挙げられるが、原理は全く異なり、その分離精度も本手法に比べて劣る。さらに、これまでにカーボンナノチューブの精製方法に関する特許出願がいくつかなされている(例えば、特許文献1~5参照)。しかしながら、これらの特許文献1~5はいずれも、不純物の除去に関する技術であり、従って、直径およびカイラル角などの物性が揃ったカーボンナノチューブの分離は行っていない。



カーボンナノチューブの構造に依存した電子構造の詳細については多くの研究によりその特徴が明らかとなっているものの、それらのエネルギーレベルの絶対電位についての情報は限られており、単一個々の、いわば単分子のカーボンナノチューブについては構造が変化しても“フェルミ準位の絶対電位は同じぐらい“との認識が大勢を占めていた。本発明者は、これまでに孤立分散させた金属性および半導体性の単一のカーボンナノチューブについて、そのラジアルブリージングモード(w=150~240cm-1)のラマン散乱強度の電位依存性を検討することによりフェルミ準位がカーボンナノチューブの径の減少により非常に大きくポジティブシフトすること、すなわち仕事関数が大きく構造に依存することを世界で初めて見出した。また、その変化の度合いは、半導体性カーボンナノチューブよりも金属性カーボンナノチューブの方が顕著であることも示された。仕事関数が大きく異なるということは、例えばある特定の直径のカーボンナノチューブは金属でいえば貴金属(Au、Ptなど)より安定であり、また一方、より直径の太いカーボンナノチューブはMgやAlと同等の電子の出しやすさを有するということを意味している。これらの検討により、単一のカーボンナノチューブにおいて、その直径、カイラリティなどに依存して、大きく物性が変化することが初めて明らかとなった。



次世代材料として期待されるカーボンナノチューブを利用するには、直径およびカイラリティなどで支配される物性をコントロールする必要がある。そこで利用したい物性に狙いをつけて、カーボンナノチューブを分類することができる新たな分別方法を確立する必要がある。

【特許文献1】特開平8-198611号公報

【特許文献2】特開2003-81616号公報

【特許文献3】特開2003-300714号公報

【特許文献4】特開2003-212526号公報

【特許文献5】特表2002-515847号公報

【非特許文献1】田中一義編「カーボンナノチューブ ナノデバイスへの挑戦」化学同人(2001)

【非特許文献2】斉藤弥八、坂東俊治 共著「カーボンナノチューブの基礎」コロナ社(1998)

【非特許文献3】P.Umek and Mihailovic,Synthetic Metals.121,1211-1212(2001)

【非特許文献4】Stephen K.Doorn,Robert E.Fields,III,Hui Hu,Mark A.Hamon,Robert ,C.Haddon,John P.Selegue,and Vahid Majidi J.Am.Chem.Soc.,124,3169-3174(2002)

【非特許文献5】R.Kfupkeら,Science,301,344-347(2003)

【非特許文献6】G.S.Duesbergら,Chem.Comm.,435-436(1998)

【非特許文献7】G.S.Duesbergら,Appl,Phys,A67,117-119(1998)

【非特許文献8】D.Chattopadhyayら,J.Am.Chem.Soc.,124,728-729(2002)

【非特許文献9】M.Zhengら,Science,302,1545-1548(2003)

【非特許文献10】H.Dodziukら,Chem.Comm.,986-987(2003)

【非特許文献11】D.Chattopadhyayら,J.Am.Chem.Soc.,125,3370-3375(2003)

【非特許文献12】Z.H.Chenら,Nano Lett.,1245-1249(2003)

産業上の利用分野


本発明は、カーボンナノチューブを高選択的に分離、濃縮または精製する方法および装置に関する。本発明はまた、本発明の方法により分離された高純度のカーボンナノチューブ、ならびにその薄膜およびアレイに関する。本発明はさらに、カーボンナノチューブ薄膜を使用する光学デバイスまたは電子デバイスを提供する。

特許請求の範囲 【請求項1】以下の工程:
a)金属イオンおよび電子ドナーを含むカーボンナノチューブの水分散液または水溶液の試料に、カーボンナノチューブ上に金属を析出させるような、近赤外から紫外までの領域の特定波長を有する光を照射する工程;および
b)所望の物性を有するカーボンナノチューブを集積させるような所定の磁場を与える工程、
を包含する、試料中の所望の物性を有するカーボンナノチューブを分離、濃縮または精製する方法。
【請求項2】前記物性が、直径およびカイラルベクトルの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記カーボンナノチューブは、単層構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】前記光は、前記特定波長を有する単色光またはレーザー光である、請求項に記載の方法。
【請求項5】前記金属は、アルカリ金属;アルカリ土類金属;IIIA族~VIIA族、VIII族および1Bの元素からなる群から選択される遷移元素;ならびに希土類元素からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】前記工程b)は、クロマトグラフィーによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】前記試料は、界面活性剤をさらに含む溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリトンX、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテルおよびセチルポリオキシエチレンエーテルからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】前記カーボンナノチューブは、分子内にカルボキシル基またはアミノ基を置換基として有する飽和または不飽和炭素鎖分子で、共有結合、イオン結合、水素結合または分子間相互作用によって表面修飾されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】前記金属イオンの濃度は、0.001~10%である、請求項に記載の方法。
【請求項11】前記電子ドナーの濃度は、0.001~10%である、請求項に記載の方法。
【請求項12】前記電子ドナーは、アルコール類、アミン類、アルギニン、ベンズアルデヒド、ヒドラジン、カルボン酸類、アミノ酸、トルエン、アルキルベンゼン類、テルペン類、エーテル類、シラン類およびチオール類からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項13】以下の工程:
a)金属イオンおよび電子ドナーを含むカーボンナノチューブの水分散液または水溶液の試料に、カーボンナノチューブ上に金属を析出させるような、近赤外から紫外までの領域の特定波長を有する光を照射する工程;および
b)所望の物性を有するカーボンナノチューブを集積させるような所定の磁場を与え、該所望の物性を有するカーボンナノチューブの集積物または濃縮物を生成する工程
を包含する、所望の物性を有するカーボンナノチューブの集積物または濃縮物を生成する方法。
【請求項14】以下の工程:
a)金属イオンおよび電子ドナーを含むカーボンナノチューブを含むと予想される水分散液または水溶液の試料に、カーボンナノチューブ上に金属を析出させるような、近赤外から紫外までの領域の特定波長を有する光を照射する工程;
b)所望の物性を有するカーボンナノチューブを集積させるような所定の磁場を与える工程;および
c)該選択されたカーボンナノチューブを同定する方法、
を包含する、試料中の所望の物性を有するカーボンナノチューブを分析する方法。
【請求項15】前記物性が、直径およびカイラルベクトルの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】A)金属イオンおよび電子ドナーを含むカーボンナノチューブの水分散液または水溶液を含む試料の導入部;
B)該試料に該カーボンナノチューブ上に金属を析出させるような、近赤外から紫外までの領域の特定波長を有する光を照射する手段;および
C)所望の物性を有するカーボンナノチューブを集積させるような所定の磁場を与える手段、
を備える、試料中の所望の物性を有するカーボンナノチューブを分離、濃縮または精製する装置。
【請求項17】前記物性が、直径およびカイラルベクトルの少なくとも一方を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】前記手段B)は、カーボンナノチューブ上に金属を析出させるような、近赤外から紫外までの領域の多波長光源である、請求項16に記載の装置。
【請求項19】前記手段C)は、所望の物性を有するカーボンナノチューブを集積させるような所定の磁場を与える、磁力制御可能な電磁石である、請求項16に記載の装置。
【請求項20】前記手段C)は、クロマトグラフィーである、請求項16に記載の装置。
【請求項21】前記試料は、界面活性剤をさらに含む溶液である、請求項16に記載の装置。
産業区分
  • 無機化合物
  • 高分子化合物
  • その他機械要素
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ 変換と制御 領域
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