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安定同位体標識脂肪族アミノ酸、その標的蛋白質への組み込み方法並びに蛋白質のNMR構造解析方法 コモンズ

国内特許コード P110003685
整理番号 A202P07
掲載日 2011年6月28日
出願番号 特願2006-050926
公開番号 特開2007-230876
登録番号 特許第5137168号
出願日 平成18年2月27日(2006.2.27)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発明者
  • 甲斐荘 正恒
  • 寺内 勉
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 安定同位体標識脂肪族アミノ酸、その標的蛋白質への組み込み方法並びに蛋白質のNMR構造解析方法 コモンズ
発明の概要 【課題】高分子量タンパク質、特に60kDaを超える高分子量タンパク質の構造解析を可能にする安定同位体標識脂肪族アミノ酸の組み合わせを提供すること。
【解決手段】アルギニン(Arg)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)が、次の標識パターンを満たすことを特徴とする安定同位体標識アミノ酸の組み合わせ。
(b)一ヶ所以上のメチレン基のメチレン水素のうちの一つが重水素化され、一ヶ所以上のメチレン基の2つのメチレン水素の両方が重水素化されている、
(d)メチル基が存在する場合には、該メチル基の一つの水素を残して他は重水素化されているか、又は該メチル基が完全に重水素化されている。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


NMR法は、溶液中でのタンパク質の立体構造やその動きを原子レベルでの分解能で観測する現在唯一の方法である。このタンパク質の立体構造にもとづく研究は、大学や研究機関などの基礎研究分野のみならず、現在創薬などへの産業利用も盛んに行われている。しかしながらNMR法は、僅か20年ほど前に開発されたばかりの新しい技術であり、今後乗り越えなければならない壁をいくつも抱えている。それらの問題の1つに、NMR法が抱える分子量限界の問題がある(非特許文献1)。
NMR法によるタンパク質の構造決定において分子量の増大は、シグナル数の増大と急速な緩和によるシグナル強度の低下からシグナルの重なり合いを招き、特に分子量が2万を超えてくると誤りのない解析には熟練した技術が必要になってくる。
高度安定同位体標識タンパク質を用いた構造解析法「Stereo-Array Isotope-Labeling法(SAIL法)」は、タンパク質(SAILタンパク質)を徹底的な選択的重水素化により不要な1H-NMR構造情報を削減し、NMR構造解析に必要且つ十分な情報のみを残すことにより、測定・解析に要する時間を著しく短縮することを可能にした方法である。特許文献1及び2に記載の方法は、高精度で構造決定可能であるだけでなく、分子量限界を超えた分子量4万程度のタンパク質の高精度自動解析を可能にする技術である。今後は、60kDaを超える高分子量タンパク質や膜タンパク質の精密構造自動解析が可能な新しい技術の開発が求められている。
SAIL法では、タンパク質の重水素密度を効率的に向上させることにより、タンパク質の残余シグナル感度をさらに向上させ、分子量限界を従来の30kDaから40kDa以上に拡張させた(非特許文献2)。しかしながら60kDaを超える高分子量タンパク質の構造解析は、分子の運動性の低下によるシグナル線幅の増大やシグナル数増大によるシグナル同士の重なり合いのため、従来のSAILアミノ酸を適用しただけでは容易には解析することができない。また、膜タンパク質においては、タンパク質自体の分子量は大きくなくても脂質や界面活性剤の存在下で溶解させるために、実質的な分子量が大きくなりタンパク質の運動性が低下することから、NMRを用いた解析は高分子量タンパク質と同様に容易ではない。それらの理由により現在は薬剤開発の対象となる膜タンパク質や高分子量タンパク質の構造情報の取得手段の開発が待たれている。



【特許文献1】
国際公開WO03/053910A1公報
【特許文献2】
国際公開WO2005/042469A1公報
【非特許文献1】
Wuthrich K (1986), NMR of proteins and nucleic acids. Wiley, New York、Wuthrich K (1991), タンパク質と核酸のNMR-二次元NMRによる構造解析, 東京化学同人
【非特許文献2】
Kainosho M, Torizawa T, Iwashita Y, Terauchi T, Ono M, Guntert P. Nature 2006; in press.

産業上の利用分野


本発明は蛋白質のNMR構造解析に有用な安定同位体標識脂肪族アミノ酸、その標的蛋白質への組み込み方法並びに蛋白質のNMR構造解析方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
安定同位体標識アミノ酸として、アルギニン(Arg)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)、スレオニン(Thr)、及びバリン(Val)から選ばれる脂肪族アミノ酸が、次の標識パターンを満たすことを特徴とする安定同位体標識アミノ酸を含む組成物
(a)水素原子を2つ有するメチレン基が1つ存在する場合には、メチレン水素のうちの一つが重水素化されている、
(b)水素原子を2つ有するメチレン基が2つ以上存在する場合には、一ヶ所以上のメチレン基のメチレン水素のうちの一つが重水素化され、一ヶ所以上のメチレン基の2つのメチレン水素の両方が重水素化されている、
(c)プロキラルなgem-メチル基が存在する場合には、一方のメチル基の全ての水素が完全に重水素化され、他方のメチル基の水素が部分重水素化されている、
(d)上記以外のメチル基が存在する場合には、該メチル基が部分重水素化されているか、又は該メチル基が完全に重水素化されている、
(e)メチン水素は重水素化されている。

【請求項2】
アルギニン(Arg)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)が、次の標識パターンを満たすことを特徴とする安定同位体標識アミノ酸を含む組成物
(b)一ヶ所以上のメチレン基のメチレン水素のうちの一つが重水素化され、一ヶ所以上のメチレン基の2つのメチレン水素の両方が重水素化されている、
(d)メチル基が存在する場合には、該メチル基が部分重水素化されているか、又は該メチル基が完全に重水素化されている。

【請求項3】
(f)重水素化された後において、水素原子を持つメチレン基および/またはメチル基の炭素の全てが13Cに置換されている、請求項1又は2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項4】
(g)完全に重水素化されたメチレン基の炭素が13C及び/又は12Cに置換されている、請求項1又は2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項5】
(h)完全に重水素化されたメチレン基の炭素が12Cに置換されている、請求項1又は2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項6】
全ての炭素が13Cである請求項2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項7】
β位のメチレン基の水素原子の一方が重水素化されている請求項2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項8】
水素原子を2つ有するメチレン基が1つ存在するか又は1つも存在しないアミノ酸が、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)、スレオニン(Thr)又はロイシン(Leu)であり、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)及びスレオニン(Thr)のβ位及びロイシン(Leu)のγ位のメチン基の水素原子が重水素化されている請求項1記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項9】
イソロイシン(Ile)、バリン(Val)及びスレオニン(Thr)のβ位及びロイシン(Leu)のγ位のメチン基の炭素原子が12Cである請求項8記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項10】
アミノ酸を構成する窒素原子の全て、或いは一部が15Nに置換されている請求項1又は2記載の安定同位体標識アミノ酸を含む組成物

【請求項11】
下記一般式(1)~(13)で表される請求項1記載の安定同位体標識脂肪族アミノ酸。
[化1]


[化2]


[化3]


[化4]


[化5]


[化6]


[化7]


[化8]


[化9]


[化10]


[化11]


[化12]


[化13]


(式中、炭素は12C又は13Cを示し、窒素は14N又は15Nを示し、Hは水素原子、Dは重水素原子を示す。)

【請求項12】
標的蛋白質を構成する脂肪族アミノ酸が、請求項1~11のいずれか1項記載の安定同位体標識脂肪族アミノ酸であり、標的蛋白質を構成する芳香族アミノ酸が、下記から選ばれる安定同位体標識芳香族アミノ酸であることを特徴とする標的蛋白質を構成する安定同位体標識アミノ酸を含む組成物
式Aで表されるアミノ酸残基に結合するフェニル基の炭素原子が13Cであり、該フェニル基を構成する残り5つの炭素原子のうち2~4個の炭素原子が12Cであり、これに重水素が結合し、残りの炭素原子が13Cであって、これに水素原子が結合していることを特徴とする安定同位体標識フェニルアラニン、
式Aで表されるアミノ酸残基に結合するフェニル基の炭素原子が13Cであり、該フェニル基のヒドロキシル基(OH基)に結合する炭素原子が12C又は13Cであり、該フェニル基を構成する残り4つの炭素原子のうち2~4個の炭素原子が12Cであり、これに重水素が結合し、残りの炭素原子が13Cであって、これに水素原子が結合していることを特徴とする安定同位体標識チロシン、
式Aで表されるアミノ酸残基に結合するインドリル基の炭素原子が13Cであり、該インドリル基を構成する残り7つの炭素原子のうち1~5個の炭素原子が12Cであり、これに重水素が結合し、残りの炭素原子が13Cであって、これに水素原子が結合しており、該インドリル基を構成するNH基の窒素原子が15N又は14Nであることを特徴とする安定同位体標識トリプトファン、及び
式Aで表されるアミノ酸残基に結合するイミダゾリル基の炭素原子が13Cであり、該イミダゾリル基を構成する残り2つの炭素原子の両方の炭素原子が13Cであってこれに水素原子が結合しているか、片方の炭素原子が12Cであってこれに重水素が結合しており、残りの炭素原子が13Cであって、これに水素原子が結合しており、該イミダゾリル基を構成する2つの窒素の1つが15Nであり残りが14Nであって、NH基を構成する水素原子が重水素ではないことを特徴とする安定同位体標識ヒスチジン。
*1C(X)(Y)-*2C(Z)(15NH)(*3COOH) - - - (A)
(式中、*1C、*2C及び*3Cは、それぞれ12C又は13Cを示し、X、Y及びZは、それぞれ水素原子又は重水素原子を示す。)

【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項記載の安定同位体標識脂肪族アミノ酸の標的蛋白質への組み込み方法であって、該アミノ酸を添加した培養液を用いて微生物又は動植物細胞を培養し、標的タンパク質をコードする遺伝子を組み込むことを特徴とする安定同位体標識アミノ酸の標的蛋白質への組み込み方法。

【請求項14】
請求項12記載の安定同位体標識アミノ酸の標的蛋白質への組み込み方法であって、該アミノ酸を添加した培養液を用いて微生物又は動植物細胞を培養し、標的タンパク質をコードする遺伝子を組み込むことを特徴とする安定同位体標識アミノ酸の標的蛋白質への組み込み方法。

【請求項15】
無細胞蛋白質合成により組み込む請求項13又は14記載の安定同位体標識アミノ酸の標的蛋白質への組み込み方法。

【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項記載の安定同位体標識脂肪族アミノ酸を用い、化学合成法により標的タンパク質を合成することを特徴とする標的蛋白質の合成方法。

【請求項17】
請求項12記載の安定同位体標識アミノ酸を用い、化学合成法により標的タンパク質を合成することを特徴とする標的蛋白質の合成方法。

【請求項18】
請求項1~11のいずれか1項記載の安定同位体標識脂肪族アミノ酸を標的蛋白質に組み込みNMRスペクトルを測定して構造解析することを含む蛋白質のNMR構造解析方法。

【請求項19】
標的蛋白質を構成する全てのアミノ酸が請求項12記載の安定同位体標識アミノ酸で置換されてなる標的蛋白質の構造をNMRスペクトル測定により解析することを含む標的蛋白質のNMR構造解析方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム(たんぱく質の機能発現メカニズムに基づく革新的な新薬、診断技術及び物質生産技術の創製を目指して) 領域
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