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植物体の脱分化方法及びこれを用いて得られるカルス、並びにその利用

国内特許コード P110003725
整理番号 A181P203
掲載日 2011年6月28日
出願番号 特願2006-126920
公開番号 特開2006-325588
登録番号 特許第5083792号
出願日 平成18年4月28日(2006.4.28)
公開日 平成18年12月7日(2006.12.7)
登録日 平成24年9月14日(2012.9.14)
優先権データ
  • 特願2005-133405 (2005.4.28) JP
発明者
  • 高木 優
  • 岩瀬 哲
  • 小山 知嗣
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明の名称 植物体の脱分化方法及びこれを用いて得られるカルス、並びにその利用
発明の概要 【課題】脱分化(カルス化)が誘導されるように改変された植物体の生産方法を提供する。
【解決手段】DST依存mRNA分解経路で制御される転写因子であって、脱分化に関与する転写因子をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを植物細胞に導入して、上記転写因子を植物細胞内で生産させることにより脱分化が誘導されるように改変された植物体を生産する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


植物は分化全能性を持ち、高度に分化した体細胞からカルスを形成(脱分化)させることができ、また、カルスを一定条件下で培養すれば、不定胚や不定芽および不定根の分化を経て、植物個体を再生させることができる。カルス培養は、1)無限増殖能を有し、2)カルスの細胞塊から様々な組織や個体へ分化させることができる、3)植物体では得にくい増殖細胞を均一かつ多量に得られる、4)細胞の質や量に季節変動がなく実験材料として適している、5)培地に加えた物質の植物に対する影響を直接に見ることができる、6)植物によってはカルス化を経ることにより遺伝子の変異が誘発されやすく育種などに利用できる等の点で優れている。そのため、カルス培養は、有用物質の生産、新品種の開発、植物体への遺伝子導入および形質転換体の再生、人工種子の生産等に広く利用されている。



一般的に植物の分化・脱分化は、オーキシンやサイトカイニン等の植物ホルモンの組成と培地への添加量によって制御することができる。一般的に、培地に与えたオーキシンの比率が高いと不定根の形成(分化)、サイトカイニンの比率が高いと不定芽の形成(分化)、両者の適当な存在比ではカルス(脱分化)が維持されることが知られている。



また、脱分化(カルス化)の誘導は、植物ホルモンによるほか、ウイルスや細菌の感染、傷害(UV、X線、物理的傷害などを含む)によっても低頻度であるが起こることが知られている。



細菌感染によるものとしては、例えば、Agrobacterium tumefaciensの感染によるクラウンゴールの生成が知られている。これは、Tiプラスミド中のT-DNA領域に含まれるオーキシン合成遺伝子およびサイトカイニン合成遺伝子の発現によって感染した植物の細胞中で両植物ホルモンが生産され植物組織に腫瘍細胞(カルス)が生じるためである。生じたカルスは外部からの植物ホルモンの添加なし(植物ホルモンフリー)で培養可能である。



また、脱分化はウィルスによっても起こることが知られている。2本鎖RNAを有する腫瘍ウィルス(Aureogenus magnivena)をクローバー類(Trifolium)やヒメスイバ(Rumex acetosella)の傷を付けた部分に接種すると葉の奇形や根の腫瘍を生じる。このウイルス腫瘍は動物のRNA腫瘍ウィルスとは異なり宿主に形質転換を起こさない。



また、親植物には見られないが特定の組み合わせの種間雑種だけにみられる遺伝的腫瘍が知られている。この遺伝的腫瘍は、Brassica(アブラナ)属、Datura(チョウセンアサガオ)属、Lilium(ユリ)属、Nicotiana(タバコ)属などで生じることが報告されている。生じる腫瘍細胞はオーキシンに対して自律的に増殖する。Nicotiana(タバコ)属の研究から、ゲノム間の不和合と特定の染色体の機能とが結びついて腫瘍の形成を引き起すことが示されている。遺伝的腫瘍の形成は、外的ストレス(傷害、X線、機械的刺激、化学物質など)とともに、内的ストレス(側根の形成、頂芽優勢の減少、葉の喪失、密植など)によっても誘発される。



さらに、遺伝子組み換え技術により植物細胞の脱分化が誘導および促進された例がいくつか報告されている。これらは主に植物ホルモン応答機構に関与する遺伝子の解析から偶発的に脱分化が誘導および促進された例であり、いずれも植物ホルモンへの応答経路が増幅されたことが原因となっていると考えられる。しかし、これらの報告では、生じた脱分化した細胞が継代可能であるかについては言及されていない。



シロイヌナズナcDNAのファンクショナルスクリーニングにより、ESR1(Enhancer of Shoot Regeneration)遺伝子が単離されている(例えば、非特許文献1等参照)。ESR1遺伝子は、アグロバクテリウムを用いて根片にcDNAライブラリを形質転換し、選択マーカーとなる抗生物質を含むサイトカイニンフリーの茎葉誘導培地(オーキシンは含まれる)でシュートまたは緑色カルスを形成するものから単離された。この遺伝子を根の外植片で発現させると、サイトカイニン非依存的にシュートを分化する。また、低いサイトカイニン濃度でもシュートの形成が促進される。ESR1遺伝子を過剰発現させた植物体(35S:ESR1植物体)をMS培地(植物ホルモンフリー)で培養すると、正常な発達が見られず、濃緑色のカルスが茎頂分裂組織周辺で形成される。



また、サイトカイニンに対する初発応答遺伝子の転写活性化を担う転写因子であるARR1(Arabidopsis Response Regulator1)タンパク質についての報告がある(例えば、非特許文献2等参照。)。このARR1タンパク質はシロイヌナズナのタイプBレスポンスレギュレーターに属する。胚軸断片を用いた緑色カルスの誘導実験では、機能欠損型の突然変異体で、サイトカイニンに対する感受性の低下が起こり、逆に過剰発現体では感受性の増加が見られることが報告されている。ARR1タンパク質のリン酸レシーバードメインを欠損させたタンパク質を過剰発現させた植物体は、子葉からの異所的なシュート形成や茎頂のカルス化などの著しい形態変化が見られる。



さらに、細胞周期におけるG期からS期への移行を制御する転写因子であるE2Faタンパク質について報告されている(例えば、非特許文献3等参照。)。E2Faタンパク質は、E2Fa-DPa複合体となることで、DNAへのより親和性の高い、配列特異的な結合が可能となる。シロイヌナズナのE2FaとDPaをタバコで過剰発現させると、細胞分裂が促進し、核内倍加が起こる。またカルス誘導培地で葉片から誘導したカルスは、植物ホルモン無添加の培地でもしばらくは増殖を続けることが報告されている。またシュートを分化させるための植物ホルモン組成培地でも、シュートへの分化は見られず、胚性カルス(embryonic callus)の状態が維持される。



また、RAP2.4タンパク質は、RAP2タンパク質ファミリーに属するタンパク質であることが知られている(例えば、非特許文献4等参照。)。このRAP2.4タンパク質は、他のRAP2ファミリータンパク質と同様、野生型(Ler)の花、葉、茎及び根で発現が見られていることが報告されている。また、本発明者らの基礎的な実験から、植物体に比べて複数のカルス株で発現が上昇している転写活性化因子の遺伝子であることが明らかになっている。しかし、このタンパク質の機能についてはほとんどわかっていない。
【非特許文献1】
Banno H,Ikeda Y, Niu QW, Chua, NH(2001) Overexpression of Arabidopsis ESR1 induces initiation of shoot regeneration. Plant Cell.13:2609-2618
【非特許文献2】
Sakai H, Honma T, Aoyama T, Sato S, Kato T, Tabata S, Oka A(2001) ARR1, a transcription factor for genes immediately responsive to Cytokinins. Science. 294: 1519-1521
【非特許文献3】
Kosugi S, Ohashi Y(2003) Constitutive E2F expression in tobacco plants exhibits altered cell cycle control and morphological change in a cell type-specific manner. Plant Physiol. 132: 2012-2022
【非特許文献4】
Okamuro JK, Caster B, Villarroel R, Van Montagu M, Jofuku KD(2001) The AP2 domain of APETALA2 defines a large new family of DNA binding proteins in Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci U S A. 94: 7076-7081

産業上の利用分野


本発明は、植物体の脱分化方法及びこれを用いて得られるカルス、並びにその利用に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(b)~()のいずれかに記載の遺伝子が発現するように、該遺伝子を含む組換え発現ベクターを植物細胞に導入する形質転換工程と、
上記形質転換工程によって得られた形質転換体を植物ホルモンを含有していない培養培地を用いて培養する培養工程と、
を含んでいることを特徴とする植物体の脱分化方法:
(b)配列番号1、3または5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、
(c)配列番号1、3または5に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、脱分化を誘導する活性を有しているタンパク質をコードする遺伝子、
(d)配列番号2、4または6に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。

【請求項2】
さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の植物体の脱分化方法。

【請求項3】
上記培養工程において、選択マーカーの試薬である抗生物質を上記培養培地に添加して上記形質転換体を培養することを特徴とする請求項1または2に記載の植物体の脱分化方法。

【請求項4】
上記培養工程において、選択マーカーの試薬である抗生物質を上記培養培地に添加せずに上記形質転換体を培養することを特徴とする請求項1または2に記載の植物体の脱分化方法。

【請求項5】
請求項4に記載の植物体の脱分化方法により生産され、表面が一部分化し、表面が一部分化した状態のまま増殖させることができるカルス。

【請求項6】
カルス内の内因性のオーキシンの濃度が、脱分化が誘導される前と比較して、有意に増加していないことを特徴とする請求項5に記載のカルス。

【請求項7】
請求項1から4の何れか1項に記載の植物体の脱分化方法を行うためのキットであって、
上記(b)~()のいずれかに記載の遺伝子と、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴とする植物体の脱分化誘導キット。

【請求項8】
さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含むことを特徴とする請求項7に記載の植物体の脱分化誘導キット。

【請求項9】
請求項3に記載の植物体の脱分化方法により生産されたカルスを、植物ホルモンの添加なしで培養し、二次代謝産物を生産させることを特徴とする有用物質の生産方法。

【請求項10】
請求項4に記載の植物体の脱分化方法により生産されたカルス、または請求項5若しくは6に記載のカルスを、上記選択マーカーの試薬である抗生物質および植物ホルモンの添加なしで培養し、二次代謝産物を生産させることを特徴とする有用物質の生産方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 植物の機能と制御 領域
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