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表面加工が施された試料保持面を有する試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置

国内特許コード P110003840
整理番号 RX03P38
掲載日 2011年7月1日
出願番号 特願2006-510453
登録番号 特許第4512589号
出願日 平成17年2月24日(2005.2.24)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
国際出願番号 JP2005003055
国際公開番号 WO2005083418
国際出願日 平成17年2月24日(2005.2.24)
国際公開日 平成17年9月9日(2005.9.9)
優先権データ
  • 特願2004-052521 (2004.2.26) JP
  • 特願2004-052522 (2004.2.26) JP
発明者
  • 奥野 昌二
  • 和田 芳直
  • 荒川 隆一
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
  • 地方独立行政法人 大阪府立病院機構
発明の名称 表面加工が施された試料保持面を有する試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置
発明の概要

マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とする質量分析において、イオン化の効率性及び安定性を向上し、その実用性をより高めることができる試料ターゲットおよびその製造方法を提供する。試料ターゲットは、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、ナノメートルないし数十マイクロメートルオーダーの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が金属で被覆されている。また、上記試料保持面の凹凸構造が、1nm以上30μm未満の間隔を有する凹部を規則的に形成した構造となっていることが好ましい。この試料ターゲットにおいて、上記凹部は、溝型、格子型、あるいは円柱または角柱状の穴型の形状を有している。この試料ターゲットは、リソグラフィー技術を用いて製造される。

従来技術、競合技術の概要

質量分析法は、試料をイオン化し、試料あるいは試料のフラグメントイオンの質量と電荷の比(以下、m/z値と表記する)を測定し、試料の分子量を調べる分析法である。その中でも、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法は、マトリックスと呼ばれる低分子量の有機化合物と試料とを混合し、さらにレーザーを照射することにより、当該試料をイオン化する方法である。この方法では、マトリックスが吸収したレーザーのエネルギーを試料に伝えることになるので、試料を良好にイオン化することができる。


MALDI法は、熱に不安定な物質や高分子量物質をイオン化することが可能であり、他のイオン化技術と比較しても試料を「ソフトに」イオン化できる。それゆえ、この方法は、生体高分子や、内分泌攪乱物質、合成高分子、金属錯体など様々な物質の質量分析に広く用いられている。


しかしながら、上記MALDI法では、有機化合物のマトリックスを用いるために、当該マトリックスに由来する関連イオンにより、試料イオンの解析が困難となることがある。具体的には、有機化合物のマトリックスを用いると、このマトリックス分子のイオン、マトリックス分子が水素結合で結合したクラスターのイオン、マトリックス分子が分解して生成するフラグメントイオン等のマトリックス関連イオンが観測されるため、試料イオンの解析が困難になる場合が多い。


そこで、従来から、上記マトリックス関連イオンの妨害を避けるための技術が種々提案されている。具体的には、マトリックス関連イオンを生成させないように,マトリックス分子を固定する技術が知られている。


例えば、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸やシンナムアミドなどのマトリックスをセファロースのビーズに固定する技術が開示されている(例えば、文献1:T.W.Hutchens and T.T.Yip,Rapid Commun.Mass Spectrom.,7,p.576-580(1993)参照。)。また、ターゲットである金の表面に、マトリックスであるメチル-N-(4-メルカプトフェニル-カーバメート)の自己組織化単分子膜を形成する技術が開示されている(例えば、文献2:S.Mouradian,C.M.Nelson,and L.M.Smith,J.Am.Chem.Soc.,118,p.8639-8645(1996)参照。)。さらに、ゾルゲル法により、マトリックスである2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)をシリコンポリマーシート中に固定する技術が開示されている(例えば、文献3:Y.S.Lin and Y.C.Chen,Anal.Chem.,74,p.5793-5798(2002)参照。)。特に、文献3の技術では、低分子領域にマトリックス関連イオンを発生させることなく、低分子量の有機物、アミノ酸、ペプチドを高感度で測定できることが報告されている。


しかしながら、上記のようにマトリックス分子を固定する方法は、検出感度や耐久性が実用上十分ではないという問題が生ずる。また、検出時には、フラグメントイオンによるノイズを回避できないという問題もある。


そこで、最近では、マトリックスを用いない技術が提案されている。具体的には、多穴性の表面を有する半導体基板(文献中では、porous light-absorbing semiconductor substrateと記載)を試料ターゲットとして用いる技術が開示されている(例えば、文献4:米国特許公報:USP6288390(2001年11月9日)参照。)。この試料ターゲットは、半導体基板における試料保持面を、多穴性(porous)構造すなわち微細な凹凸構造となるように加工している。同文献では、このような試料保持面に試料を塗布し、当該試料にレーザー光を照射すると、マトリックスが無くても高分子量の物質がイオン化されると報告している。この方法は、DIOS(Desorption/Ionization on Porous Silicon)法と名付けられている。


なお、用いられる上記試料ターゲットにおいては、微細な凹凸構造を有する試料保持面が酸化されると試料のイオン化効率が低下する。そこで、当該表面の酸化を抑制するために有機化合物で化学修飾することが行われる。しかしながら、試料保持面の酸化による試料のイオン化効率の低下を回避するために、試料保持面を有機化合物で化学修飾すると、酸化は抑制されるが、化学修飾前と比較して試料のイオン化効率が低下する。そこで、化学修飾によるイオン化効率の低下を回避するために、照射するレーザー光の強度を上げると、試料のイオンが分解しやすくなるため、正確な分析結果を得ることが困難となる。


このように、イオン化効率の低下を抑制する目的で試料ターゲットの試料保持面を化学修飾すると、化学修飾によりイオン化効率の低下が生じ、これを回避しようとすると、安定したイオン化が困難となる。したがって、DIOS法によるレーザー脱離イオン化質量分析では、イオン化の効率性および安定性を向上し、その実用性をより高めることが求められていた。


本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とする質量分析において、試料をより効率的かつ安定的にイオン化することができる試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とを提供することにある。


また、DIOS法による質量分析では、用いられる上記試料ターゲットは、試料保持面の微細な凹凸構造を電解エッチング法により形成している(例えば、上記文献4、文献5:J.Wei,J.M.Buriak,and G.Siuzdak,Nature,399,p.243-246(1999)、文献6:Z.Shen,J.J.Thomas,C.Averbuj,K.M.Broo,M.Engelhard,J.E.Crowell,M.G.Finn,and G.Siuzdak,Anal.Chem.,73,p.612-619(2001)参照。)。図7には、このDIOS法で用いられる従来の試料ターゲットの断面の加工状態を示す。図7に示すように、この試料ターゲットの試料保持面には、不規則な凹凸構造が形成されている。


しかしながら、このように試料保持面に不規則な凹凸構造が形成された上記DIOS法による質量分析では、得られる分析結果の安定性に欠ける傾向にあるという問題を生じている。


具体的には、DIOS法で用いられる試料ターゲットを製造する段階では、試料保持面の凹凸構造の形成は、電解エッチング時の諸条件、例えば、半導体材料の抵抗率、エッチング時の電流密度、光の強度、電解の時間等により大きく影響を受ける。換言すれば、電解エッチング法により微細な凹凸構造を形成するときには、これらの多くの条件を制御する必要がある。それゆえ、同様の凹凸構造を高い再現性で形成することが困難となり、これが試料のイオン化の性能にも影響する。図7には、実際にDIOS法において用いられている従来の試料ターゲットの断面の一例を示しているが、このように、試料保持面の凹凸構造は不規則な形状となっている。


その結果、試料のイオン化の安定性が不十分となり、得られる分析結果の安定性が低下してしまう。したがって、DIOS法による質量分析は、その実用性の更なる向上が求められていた。


本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、DIOS法による質量分析において、得られる分析結果の安定性を向上し、その実用性をより高めることができる試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とを提供することにある。

産業上の利用分野

本発明は、質量分析法に用いられる試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とに関するものであり、特に、マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とする試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とに関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】 レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、
上記試料保持面の凹凸構造は、円柱状または角柱状の形状を有する複数の凹部を規則的に形成した構造となっており、
隣接する各凹部の間隔は10nm以上1μm未満であり、上記凹部の幅は10nm以上1μm未満であるとともに、上記試料保持面の表面が金属で被覆されていることを特徴とする試料ターゲット。
【請求項2】 上記金属が、白金(Pt)および金(Au)の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の試料ターゲット。
【請求項3】 レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、
上記試料保持面の凹凸構造が、円柱状または角柱状の形状を有する複数の凹部を規則的に形成した構造となっており、
隣接する各凹部の間隔は10nm以上1μm未満であり、上記凹部の幅は10nm以上1μm未満であることを特徴とする試料ターゲット。
【請求項4】 上記凹部の深さは、10nm以上1μm未満となっていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の試料ターゲット。
【請求項5】 マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とすることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の試料ターゲット。
【請求項6】 上記試料ターゲットにおける少なくとも試料保持面の材質は半導体であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の試料ターゲット。
【請求項7】 上記半導体がシリコンであることを特徴とする請求項に記載の試料ターゲット。
【請求項8】 レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備え、上記試料保持面の凹凸構造は、円柱状または角柱状の形状を有する複数の凹部を規則的に形成した構造となっている試料ターゲットの製造方法であって、
上記試料保持面の表面を金属で被覆する工程を含み、上記試料保持面の表面を金属で被覆する工程の前に、リソグラフィー技術を用いて、基板の表面に、隣接する各凹部の間隔が10nm以上1μm未満であり、上記凹部の幅が10nm以上1μm未満であって、円柱状または角柱状の形状を有する複数の凹部を規則的に繰り返し形成することによって、当該表面に試料保持面を形成することを特徴とする試料ターゲットの製造方法
【請求項9】 レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットの製造方法であって、リソグラフィー技術を用いて、基板の表面に10nm以上1μm未満の間隔、および、10nm以上1μm未満の幅を有する凹部であって、円柱状または角柱状の形状を有する凹部を規則的に繰り返し形成することによって、当該表面に試料保持面を形成することを特徴とする試料ターゲットの製造方法
【請求項10】 上記リソグラフィー技術として、電子ビーム描画装置を用いて上記凹部形成することを特徴とする請求項8または9に記載の試料ターゲットの製造方法。
【請求項11】 請求項1~7のいずれか1項に記載の試料ターゲットを用いることを特徴とする質量分析装置
【請求項12】 測定対象となる試料にレーザー光を照射することによって、当該試料をイオン化してその分子量を測定するレーザー脱離イオン化質量分析装置であることを特徴とする請求項11に記載の質量分析装置
産業区分
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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