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多数種モチーフ配列のランダム重合による人工遺伝子及び人工タンパク質集団の作製法 コモンズ

国内特許コード P110003910
整理番号 N051P27
掲載日 2011年7月4日
出願番号 特願2006-527869
登録番号 特許第4568723号
出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
国際出願番号 JP2005013913
国際公開番号 WO2006011589
国際出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
国際公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
優先権データ
  • 特願2004-224554 (2004.7.30) JP
発明者
  • 芝 清隆
  • 齊藤 博英
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 多数種モチーフ配列のランダム重合による人工遺伝子及び人工タンパク質集団の作製法 コモンズ
発明の概要 【課題】 機能性人工遺伝子或いは機能性人工タンパク質の創出を目的として、多種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団、及びその作製法を提供するものである。任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、該一本鎖DNA配列の末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成できるように、相補的塩基配列を導入し、該方法により構築した多種の一本鎖DNAを任意の割合で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させ、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団を作製する。本発明の人工遺伝子集団を翻訳し、人工タンパク質に変換することにより、多数種モチーフ配列をコードする人工タンパク質集団を作製することができる。
従来技術、競合技術の概要


近年、創薬分野等への利用を中心に、ヒトゲノム遺伝子やタンパク質の機能解明の研究が進む中で、ポストゲノム研究として、新規遺伝子の機能の解析とタンパク質の機能解明が大規模に進行しつつあり、その成果として多くの遺伝子やタンパク質の機能が明らかにされつつある。この遺伝子やタンパク質の機能の解明により、その知識が蓄積するに伴って、合理的に新しい機能を持った人工の遺伝子及びタンパク質をデザイン・創製することへの期待と機運が高まってきた。この「合理的に新しい機能を持った人工の遺伝子及びタンパク質をデザイン・創製する」ことへの研究は、1980年代に蛋白工学(プロテイン・エンジニアリング)として誕生した(Science,219,666-671,1983)。しかし、その後、いくつかの人工タンパク質が創製されたものの、いまだに自由に新しいタンパク質をデザインできるといったレベルには達していない。



1990年代に入り、進化分子工学(試験管内分子進化法)が、人工分子の創製分野で大きな流れとなった。この進化分子工学においては、合理的に人工分子を設計するのではなく、予め無作為に準備したランダムな配列集団の中から、「選択」により目的とする機能・活性をもつ分子を得る戦略が採用されている(科学、67,938-947,1997)。すなわち、進化分子工学とは、(1)様々な配列多様性を持つコンビナトリアルな分子集団(DNAやタンパク質)から、目的の活性を持つわずかな分子を選択し、(2)その遺伝子を遺伝子増幅反応(PCR)により増幅した後に同様の反応を繰り返し、(3)目的の反応活性を有する人工分子を進化させるという手法である。現在この手法では、リボソームディスプレイやmRNAディスプレイなどの遺伝子-タンパク質融合技術を利用して機能性人工タンパク質の創製が試みられている。しかしながら従来の技術には以下のような問題点が存在する。(i)配列多様性を持ち、かつ目的の実験に適したDNA集団の有効な構築手法が確立されていない、(ii)リボソーム(mRNA)ディスプレイで選択できる人工タンパク質は、標的分子に結合する物質に限られ酵素活性や生体内で機能する分子の選択には不適である。



天然には存在しない非凡な機能を持った人工タンパク質を進化分子工学的に創製する場合には、スクリーニングの母集団となる人工遺伝子多様性集団(ライブラリー)を、いかに巧妙に調製するかが成功の鍵を握る。このため、機能性分子を効果的に創出することを目的とした、人工遺伝子及び人工タンパク質集団作成法の開発が不可欠となる。人工遺伝子集団の調製法としては、error prone PCR法(PCR Methods Appl, 2:28-33, 1992)、DNA シャフリング法(Nature, 370:389-391, 1994)、又は、天然の遺伝子配列の一部若しくは全てをランダマイズ化した化学合成法が現在汎用されている。



error prone PCR法は、親遺伝子を鋳型としてマンガンイオン存在下でPCR増幅をおこなうことにより、親遺伝子にランダムに塩基置換を導入して変異体集団を調製する方法である。しかし、error prone PCR法で塩基置換変異導入効率を上げた場合に、アミノ酸置換のみならず、アミノ酸をコードするコドンがストップコドンに置換されてしまう確率も高くなってしまうといった問題が存在する。また、このerror prone PCR法では、変異の割合を上昇させるような条件では意図しない欠失変異が起こりやすく( Trends Biochem. Sci. 26:100-106, 2001)、その結果、他の読み枠にコードされているストップコドンが出現してしまう問題点を有している。そのため、error prone PCR法は、通常は低い変異導入率、すなわち、遺伝子あたり2から3塩基の置換、アミノ酸として1残基の変異率が導入されるような条件で行われる。このため、機能や基質親和性を大きく変化させる人工分子を創出することは難しいと考えられる。



DNAシャッフリング法は、あるタンパク質をコードする遺伝子DNA及び配列相同性を持つ1つまたは複数の類似DNAを用いて、それらを試験管内で相同組み換えさせることにより、変異体集団を調製することができる。しかしながら、DNAシャッフリング法は相同組み換えを基本としているため、比較的類似した配列間での組み換えに限定される。即ち、配列類似性の低いDNA間でシャッフリングさせることは困難である。さらに、目的の変異体集団を得るためには、DNAの切断、連結といった一連の煩雑な操作が要求される。



化学合成により天然の遺伝子配列の一部もしくは全てをランダマイズ化した遺伝子集団を用いる手法は、人工RNA酵素(リボザイム)など機能性核酸の作成において有効な効果を示しているが、機能性人工タンパク質の創製には至っていない。その理由としては、(1)ランダムに変異を導入した集団には、タンパク質翻訳を停止するストップコドンが高頻度で出現するため、長いORF(Open Reading Frame)をもつ遺伝子の作製は難しい、(2)20種類のタンパク質が構成する配列空間は、4種類の塩基から構成される核酸の配列空間と比較して広大なために、ランダムな配列集団から機能性タンパク質を選択することが極めて困難である、ことなどが挙げられる。



近年、核酸やタンパク質の機能や構造に重要な役割を果たす短い配列(モチーフ配列)の役割に注目が集まっている。モチーフ配列を利用して人工遺伝子集団を作成する手法として、本発明者の発明した高分子マイクロ遺伝子重合体の作製手法(特許3415995号公報; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3805-3810, 1997)が挙げられる。この手法を用いることにより、全ての翻訳読み枠のストップコドンが排除された人工遺伝子を準備することができる。この方法は、あらかじめ終止コドンが排除された短いDNA配列(マイクロ遺伝子)をタンデムに重合し大きな翻訳読み枠を調製する方法である。更に、繰り返しの単位となるマイクロ遺伝子を、本発明者の発明した多機能塩基配列設計法(特開2001-352990号公報)を用い、三つの読み枠に目的の機能や構造に対応したモチーフ配列をコードするようにデザインすることから、潜在能力の高い人工遺伝子集団を調製することができる。



しかしながら克服すべき課題として、(1)人工遺伝子集団に導入できるモチーフの数が、読み枠の数に対応した三つに限定される、(2)配列多様性をもつ人工遺伝子集団作成のためには、マイクロ遺伝子重合反応の際に生じるランダムなフレームシフトに依存する、(3)目的の実験に応じてモチーフ配列の出現頻度を調節することが困難である、ことが挙げられる。 また、上記のマイクロ遺伝子重合体の作製手法(特許3415995号公報)は、マイクロ遺伝子の繰り返し重合体の作成を目的とするため、複数種のモチーフ配列をランダムに重合した遺伝子集団を作製するには至っていない。



以上の背景から、天然には存在しない非凡な機能を持った人工タンパク質を進化分子工学的に創製する場合の成功の鍵となる人工遺伝子多様性集団(ライブラリー)を効果的に創出するために、複数種のモチーフ配列を少なくともその一部でコードするDNAのランダムな組み替え技術で、かつ用いるDNAの全体にわたっての配列類似性を必要としない組み替え技術及び長い翻訳読枠(Open Reading Frame;ORF)を有し、目的の実験に適応して自在にモチーフ配列の出現頻度を制御できるコンビナトリアルな人工遺伝子集団及び人工タンパク質集団作成技術の開発が求められている。



【特許文献1】
特許3415995号公報。
【特許文献2】
特開2001-352990号公報。
【非特許文献1】
Science,219,666-671,1983。
【非特許文献2】
科学、67,938-947,1997。
【非特許文献3】
PCR Methods Appl, 2:28-33, 1992。
【非特許文献4】
Nature, 370:389-391, 1994。
【非特許文献5】
Trends Biochem. Sci. 26:100-106, 2001。
【非特許文献6】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3805-3810, 1997。

産業上の利用分野


本発明は、機能性人工遺伝子或いは機能性人工タンパク質の創出を目的とする、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団、及びその作製法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
(1)任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、(2)該一本鎖DNA配列の3´末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成し、かつ該相補的塩基対の両端に相手の塩基と対にならない塩基が1塩基以上存在するように、相補的塩基配列を導入し、(3)該方法により構築した多種の一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応をランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールして進行させることを特徴とする多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項2】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても4種以上のDNA配列を構築し、該一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする請求項1記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項3】
相補的塩基対の数が、6塩基以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項4】
相補的塩基対の両端に、相手の塩基と対にならない塩基を1~3のいずれかの塩基数、存在させたことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項5】
多種の一本鎖DNAの相補的塩基対の組合わせを調節して、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項6】
ランダム重合反応系に加えられる多種の一本鎖DNAの濃度が、0.2μM~20μMの範囲で変動することを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項7】
構築した多種の一本鎖DNAを反応液に混合し、該導入した一本鎖DNAの相補的塩基配列を鋳型として、3´末端から5´末端方向に作用するエキソヌクレアーゼ活性を含む耐熱性DNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項8】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列に基いて構築されたマイクロ遺伝子であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項9】
マイクロ遺伝子の構築に際して、合成する一本鎖DNA配列内で、予め各翻訳読み枠で、停止コドンを排除しておくことを特徴とする請求項記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項10】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAに制限酵素認識配列を付加することで、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度を制限酵素反応により直接モニターできるように構築されていることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。

【請求項11】
請求項1~10のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法により作製した遺伝子を組込んだベクターを、宿主細胞に導入し、発現することを特徴とする多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。

【請求項12】
多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入することなくランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存せず多様性分子集団をえることを特徴とする請求項11記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。

【請求項13】
多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入しつつランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存して多様性分子集団をえることを特徴とする請求項11記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。

【請求項14】
請求項1~10のいずれか記載の作製方法により作製された、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、又は請求項11~13のいずれか記載の方法により作製された、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団について、機能性遺伝子或いは機能性タンパク質をスクリーニングすることを特徴とする機能性人工遺伝子又は機能性人工タンパク質の創出方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 医療に向けた自己組織化等の分子配列制御による機能性材料・システムの創製 領域
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