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ジョセフソン量子計算素子及びそれを用いた集積回路 コモンズ

国内特許コード P110003921
整理番号 A241P57
掲載日 2011年7月4日
出願番号 特願2006-529319
登録番号 特許第4609733号
出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
登録日 平成22年10月22日(2010.10.22)
国際出願番号 JP2005013585
国際公開番号 WO2006011451
国際出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
国際公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
優先権データ
  • 特願2004-219284 (2004.7.27) JP
  • 特願2004-375008 (2004.12.24) JP
発明者
  • 前川 禎通
  • 山下 太郎
  • 高橋 三郎
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 ジョセフソン量子計算素子及びそれを用いた集積回路 コモンズ
発明の概要 ジョセフソン量子計算素子と、2ビットによる制御付き否定論理演算を行うことができる、ジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路であって、ジョセフソン量子計算素子(1)は、π接合(6)及び0接合(7)を有する超伝導リング部(10)と、超伝導リング部の外側に配設される超伝導量子干渉素子からなる量子状態検出部(20)と、を備え、超伝導リング部(10)のエネルギー的に縮退した2状態である|↑>,|↓>間のトンネル効果により生じる結合・反結合状態を量子ビットとし、量子ビットの結合・反結合状態が、量子状態検出部(20)により読み出される。この量子ビットからなる2量子ビットにより2ビットによる制御付き否定論理演算を行うことができる。
従来技術、競合技術の概要


量子計算機は、従来の古典的計算機では事実上計算不可能な特定の問題に対して圧倒的に早い計算速度を持つ計算機である。この量子計算機では、古典的計算機のビットに対応するものとして、量子ビットと呼ばれる量子2準位系が用いられる。演算には多数の量子ビットが用いられるが、もっとも基本的な動作は、任意の一つの量子ビットに対するユニタリー変換操作と、操作終了後の量子ビットの読み出しを行う量子演算素子によって行われる。固体電子素子において、このような量子ビットとして利用できると提案されている物理状態は、超電導状態、電子の状態及び原子核のスピン状態などである。



最初に、量子ビットの基本事項を説明する。
一般に、|0>と|1>とに対応する2つの物理状態がある場合に、これらを重ね合わせた|0>+|1>で与えられる重ね合わせ状態が、量子ビットとして機能する。すなわち、古典ビットは0か1のいずれかであるが、量子ビットでは|0>か、|1>以外に、|0>と|1>の中間の状態が無数にあり、さらに、位相の異なった状態も無数に存在する。このある状態|s>を何らかの作用によって別の状態|s’>に変化させることをユニタリー変換と呼ぶ。



量子計算機を構成する量子ビットにおいては、とくに、以下の4つの機能を備える必要がある。
第1は初期化であり、量子ビットの初期状態を、よく定義された状態、例えば、|0>または|1>に初期化する手段を有することである。
第2は状態の制御(量子演算ゲート)であり、用意された初期状態(例えば、|0>または|1>)を任意の重ね合わせ状態|s>にユニタリー変換する手段を有することである。
第3は読み出しであり、ユニタリー変換した状態|s>を測定する手段、即ち、|0>及び|1>の振幅値の値を決定する検出手段、を有することである。
第4は拡張性に関し、最初に2ビットについて条件付き状態制御(controled not gate)が要求され、集積化によるさらに多数の量子ビットへの拡張が要求される。



超伝導量子ビットを用いた量子演算素子として、異なる電荷状態を有する二つの超伝導状態である電子対箱を利用する提案がある。異なる位相状態を有する超伝導状態である超伝導量子干渉計(SQUID)を利用する提案もある。



非特許文献1乃至3においては、3つのジョセフソン接合を含んだ超伝導リングからなる量子ビットの理論的な提案と提案された量子ビットにおける結合・反結合状態の検出が報告されている。この量子ビットでは、単位磁束の半分に対応する外部磁場を超伝導リングに印加した場合に、エネルギー的に縮退した2状態が実現される。その結果、上記量子ビットの第2の機能である任意の重ね合わせでなる結合・反結合状態が形成される。この縮退状態においては、互いに逆向きの電流が超伝導リング中を流れている。そのため、単位磁束の半分に対応する磁場近傍の外部磁場を印加した状態で結合・反結合状態のエネルギー差に対応するマイクロ波を照射し、超伝導リングからなる量子ビットの周囲に配置された超伝導量子干渉素子により間接的に超伝導リング中の電流を測定することで結合・反結合状態の検出がされている。



非特許文献4においては、異方的(d-wave)超伝導体と等方的(s-wave)超伝導体とからなるジョセフソン接合を用いた量子ビットの理論的な提案がされている。このジョセフソン接合では、異方的(d-wave)超伝導体の効果により超伝導ギャップの位相差が±π/2の場合に、自由エネルギーが最小になり、系が安定となる。提案された量子ビットは、これらの縮退した2状態によって形成される結合・反結合状態を上記量子ビットの第2の機能である任意の重ね合わせに用いている。



非特許文献5においては、1つの強磁性π接合と4つの0接合を含んだ超伝導リングからなる量子ビットの理論的提案と、非特許文献3における異方的超伝導体を用いた量子ビットとの関連が報告されている。この系の自由エネルギーは、ジョセフソン結合の大きいπ接合が2組の0接合の間に配置されているため、超伝導ギャップの位相差が±π/2の場合に最小値を有することが示されている。提案された量子ビットは、これらの縮退した2状態によって形成される結合・反結合状態を量子ビットの第2の機能である任意の重ね合わせに用いている。



【非特許文献1】
J.E. Mooij他5名, "Josephson Persistent-Current Qubit", SCIENCE vol. 285, pp. 1036 (1999)
【非特許文献2】
Caspar H. van der Wal 他7名, "Quantum Superposition of Macroscopic Persistent-Current States", SCIENCE vol. 290, pp. 773 (2000)
【非特許文献3】
I. Chiorescu他3名, “Coherent Quantum Dynamics ofa Superconducting Flux Qubit", SCIENCE vol. 299, pp. 1869 (2003)
【非特許文献4】
Lev B. Ioffe他4名, "Environmentally decoupled sds-wave Josephson junctions for quantum computing", Nature vol. 398, pp. 679 (1999)
【非特許文献5】
G. Blatter他2名, "Design aspects of superconducting-phase quantum bits", Physical Review B vol. 63, pp. 174511-1 (2001)

産業上の利用分野


本発明は、π接合を含むジョセフソン素子を利用し、量子計算機に用いることができる、ジョセフソン量子計算素子及びそれを用いた集積回路に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】 ジョセフソン接合からなるπ接合と、ジョセフソン接合からなる第1の0接合又は第1及び第2の0接合と、を有する超伝導リング部と、
上記超伝導リング部の外側に配設される超伝導量子干渉素子からなる量子状態検出部と、を備え、
上記超伝導リング部のエネルギー的に縮退した2状態である|↑>,|↓>間のトンネル効果により生じる結合・反結合状態を量子ビットとし、
上記量子ビットの結合・反結合状態が、上記量子状態検出部により読み出されることを特徴とする、ジョセフソン量子計算素子。
【請求項2】 前記超伝導リング部は、略半円帯状の2つの超伝導体と、該2つの超伝導体の隣接する両端部にそれぞれ挟まれて配設される強磁性金属と、絶縁体と、からなり、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記強磁性金属とでπ接合を形成し、かつ、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記絶縁体とで0接合を形成することを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項3】 前記超伝導リング部は、全体がリング状に配置されていて、リングをほぼ3分割し互いに隙間を開け配設されている帯状の第1~第3の超伝導体と、それぞれが上記隙間に配設される、強磁性金属と第1の絶縁体と第2の絶縁体と、からなり、
上記第1の超伝導体と上記第1の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第1の0接合を形成し、
上記第2の超伝導体と上記第2の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第2の0接合を形成し、
上記第1の超伝導体と上記強磁性体とさらに上記第2の超伝導体とで、前記π接合を形成することを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項4】 π接合及び0接合を有する超伝導リング部と、
上記超伝導リング部の外側に配設される超伝導量子干渉素子からなる量子状態検出部と、を備え、
上記超伝導リング部のエネルギー的に縮退した2状態である|↑>,|↓>間のトンネル効果により生じる結合・反結合状態を量子ビットとし、
上記量子ビットの結合・反結合状態が、上記量子状態検出部により読み出されることを特徴とする、ジョセフソン量子計算素子。
【請求項5】 前記超伝導リング部は、略半円帯状の2つの超伝導体と、該2つの超伝導体の隣接する両端部にそれぞれ挟まれて配設される強磁性金属と、絶縁体と、からなり、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記強磁性金属とでπ接合を形成し、かつ、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記絶縁体とで0接合を形成することを特徴とする、請求項4に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項6】 前記超伝導リング部の前記結合・反結合状態が、前記π接合と前記0接合とにおけるジョセフソン結合定数の比(γ)により制御されることを特徴とする、請求項4又は5に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項7】 前記量子ビットの結合・反結合状態の前記量子状態検出部による読出しが、外部磁場の印加により行われることを特徴とする、請求項4又は5に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項8】 前記量子ビットの結合・反結合状態を、前記量子ビットに照射されるマイクロ波により任意の重ね合わせ状態とすることを特徴とする、請求項4に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項9】 ジョセフソン接合からなる第1及び第2の0接合及びπ接合を有する超伝導リング部と、
上記超伝導リング部の外側に配設される超伝導量子干渉素子からなる量子状態検出部と、を備え、
上記超伝導リング部のエネルギー的に縮退した2状態である|↑>,|↓>間のトンネル効果により生じる結合・反結合状態を量子ビットとし、
上記量子ビットの結合・反結合状態が、上記量子状態検出部により読み出されることを特徴とする、ジョセフソン量子計算素子。
【請求項10】 前記超伝導リング部は、全体がリング状に配置されていて、リングをほぼ3分割し互いに隙間を開け配設されている帯状の第1~第3の超伝導体と、それぞれが上記隙間に配設される、強磁性金属と第1の絶縁体と第2の絶縁体と、からなり、
上記第1の超伝導体と上記第1の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第1の0接合を形成し、
上記第2の超伝導体と上記第2の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第2の0接合を形成し、
上記第1の超伝導体と上記強磁性体とさらに上記第2の超伝導体とで、前記π接合を形成することを特徴とする、請求項9に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項11】 前記超伝導リング部の前記結合・反結合状態が、前記第1及び第2の0接合と前記π接合におけるジョセフソン結合定数の比(γ)により制御されることを特徴とする、請求項9に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項12】 前記量子ビットの結合・反結合状態の前記量子状態検出部による読出しが、外部磁場の印加により行われることを特徴とする、請求項9に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項13】 前記量子ビットの結合・反結合状態を、前記量子ビットに照射されるマイクロ波により任意の重ね合わせ状態とすることを特徴とする、請求項9に記載のジョセフソン量子計算素子。
【請求項14】 ジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路であって、
上記ジョセフソン量子計算素子のそれぞれが、ジョセフソン接合からなるπ接合と、ジョセフソン接合からなる第1の0接合又は第1及び第2の0接合と、を有する超伝導リング部と、
上記超伝導リング部の外側に配設される超伝導量子干渉素子からなる量子状態検出部と、を備え、
上記超伝導リング部のエネルギー的に縮退した2状態である|↑>,|↓>間のトンネル効果により生じる結合・反結合状態を量子ビットとし、
上記量子ビットの結合・反結合状態が、上記量子状態検出部により読み出されることを特徴とする、ジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項15】 前記超伝導リング部は、ジョセフソン接合からなるπ接合と、ジョセフソン接合からなる第1の0接合からなり、該超伝導リング部は、略半円帯状の2つの超伝導体と、該2つの超伝導体の隣接する両端部にそれぞれ挟まれて配設される強磁性金属と、絶縁体とからなり、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記強磁性金属とでπ接合を形成し、かつ、上記略半円帯状の2つの超伝導体と上記絶縁体とで0接合を形成することを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項16】 前記超伝導リング部は、ジョセフソン接合からなるπ接合とジョセフソン接合からなる第1及び第2の0接合とからなり、該超伝導リング部がリング状に配置されていて、リングをほぼ3分割し互いに隙間を開け配設されている帯状の第1~第3の超伝導体と、それぞれが上記隙間に配設される、強磁性金属と第1の絶縁体と第2の絶縁体と、からなり、
上記第1の超伝導体と上記第1の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第1の0接合を形成し、
上記第2の超伝導体と上記第2の絶縁体とさらに上記第3の超伝導体とで、前記第2の0接合を形成し、
上記第1の超伝導体と上記強磁性体とさらに上記第2の超伝導体とで、前記π接合を形成することを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項17】 前記超伝導リング部の前記結合・反結合状態が、前記第1及び第2の0接合と前記π接合におけるジョセフソン結合定数の比(γ)により制御されることを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項18】 前記量子ビットの結合・反結合状態の前記量子状態検出部による読出しが、外部磁場の印加により行われることを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項19】 前記隣接する2つの量子ビットが磁気的な相互作用を生じるように配設され、該2量子ビットが制御付き否定論理演算を行うことを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
【請求項20】 前記量子ビットの結合・反結合状態が、前記量子ビットに照射されるマイクロ波により制御されて任意の重ね合わせ状態とされ、制御付き否定論理演算がされることを特徴とする、請求項14に記載のジョセフソン量子計算素子を用いた集積回路。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 新しい物理現象や動作原理に基づくナノデバイス・システムの創製 領域
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