TOP > 国内特許検索 > 脱水縮合反応により相転移を生じ得る分子集合体およびその相転移方法

脱水縮合反応により相転移を生じ得る分子集合体およびその相転移方法 コモンズ

国内特許コード P110004065
整理番号 K053P107
掲載日 2011年7月6日
出願番号 特願2007-500435
登録番号 特許第4787818号
出願日 平成17年12月12日(2005.12.12)
登録日 平成23年7月22日(2011.7.22)
国際出願番号 JP2005023196
国際公開番号 WO2006080157
国際出願日 平成17年12月12日(2005.12.12)
国際公開日 平成18年8月3日(2006.8.3)
優先権データ
  • 特願2005-021241 (2005.1.28) JP
発明者
  • 国嶋 崇隆
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 脱水縮合反応により相転移を生じ得る分子集合体およびその相転移方法 コモンズ
発明の概要 本発明は、相転移を生じ得る二分子膜ベシクルを提供し、該二分子膜ベシクルは、(a)炭素数6から20までの脂肪酸塩;(b)炭素数6から20までの脂肪族鎖を有するアルコールまたはアミン化合物;および(c)二分子膜を形成し得る人工合成脂質またはリン脂質を膜の構成成分として含む。好適には、この二分子膜ベシクルは、さらに(d)3級アミンを膜の構成成分として含む。本発明はまた、二分子膜ベシクルの相転移を誘起させる方法を提供し、この方法は、上記の二分子膜ベシクルに界面集積性の脱水縮合剤または脱水縮合剤前駆体を添加する工程を含む。本発明によれば、分子集合体を形成している脂質の化学的変化によって、その物理的性質や形態を変化させ、膜融合などの相転移のタイミングなどを調節することが可能である。また、例えば、膜融合の際には、二分子膜ベシクル内の内容物も漏出することなく融合され得る。
従来技術、競合技術の概要


分子集合状態の変化を起こすためには、一般的には、界面活性剤の濃度や温度を変化させている。ミセルなどの平衡系においては、異なる種類の界面活性剤を添加すれば、状態変化が速やかに起こる。



一方、リポソームに代表される二分子膜ベシクルのような分散系では、これらを構成している脂質は、比較的安定な状態にあるため、その移動は非常に遅い。これらの集合体の融合や分裂を誘起するために、一般的には、界面の物理的な状態変化を起こしている。この場合、用いる脂質や反応条件などに依存性が高く、制限がある場合が多い。



例えば、ホスファチジルセリンなどから構成されるリポソームは、Ca2+の添加によって膜融合などの相転移が誘起される(Duzgunesら、Biochemistry,1987年,26巻,8435-8442頁)。これは、Ca2+によって、電荷の中和、脂質間の架橋、脱水和などが起こり、膜が不安定になるためと考えられる。しかし、この方法は、中性リン脂質のみから構成されるリポソームには適用できない。また、ホスファチジルコリンからなるリポソームに高濃度のポリエチレングリコールを添加することによって、膜融合が起こることが報告されている(Lentzら、Biochemistry,1992年,31巻,2643-2653頁およびYangら、Biophysical Journal,1997年,73巻,277-282頁)。これは、膜の自由水が消失することによって膜が不安定になるために起こる。さらに、ウイルスを利用する膜融合法も提案されている(Blumenthalら、Chemistry and Physics of Lipids,2002年,116巻,39-55頁)。この方法では、膜の外側に、ウイルスに対するレセプターが必要である。電気パルスによる物理的刺激を介する膜融合誘起法(Sugarら、Biophysical Chemistry,1987年,26巻,321頁)あるいは接触させたリポソームにUV光を当てることによる膜融合法(Kulinら、Langmuir,2003年,19巻,8206-8210頁)も報告されている。タンパク質またはペプチドを添加することによって、pH依存的なプロトン化による高次構造の変化を引き起こし、それによって膜融合を誘起する方法もある(Kimら、Biochemistry,1986年,25巻,7867-7874頁)。



これらの種々の融合方法は、いずれも分子集合体を形成している脂質の物理的状態変化に基づくものであり、融合の前段階で凝集を生じている必要がある。すなわち、単独で分散している場合には、分子集合体の脂質は、全く活性化していない状態にある。



一方、化学反応に基づく膜の相転移、例えば、融合および分裂についての報告がある(Takakuraら、Chemistry Letters,2002年,404-405頁およびToyotaら、Chemistry Letters,2004年,33巻,1442-1443頁)。具体的には、ベシクルの二分子膜中での脱水縮合によるイミン形成およびその加水分解反応により、ベシクルの形態変化が生じ、それによって膜融合および分裂が生じる。例えば、疎水性反応性基(アルデヒド基)を有する両親媒性脂質で形成されたベシクルの分散液中に親水性反応性基(アミノ基)を有する両親媒性脂質のミセルの分散液を加えると、二分子膜中で反応性基間の可逆的な脱水縮合反応によってイミンが生じて、ベシクルが大きくなる(Takakuraら、前出)。また、これらの各反応性基を有する脂質と脱水縮合した両親媒性脂質との存在比に応じて、ベシクルの可逆的な形態変化が観察されている(Toyotaら、前出)。しかし、これらの方法では、ベシクルの二分子膜の状態を制御することはできない。



酵素を用いた生物学的手法によって脂質構造を変化させることによって、融合を起こす方法もある。具体的には、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンをホスホリパーゼCで(Nieva, J.-L.ら、Biochemistry,1989年,28巻,7364-7367頁)、あるいはスフィンゴミエリンをスフィンゴミエリナーゼで(大木和夫、生物物理,2004年,44巻,161-165頁)それぞれ加水分解することによって、ベシクルの二分子膜を構成しているリン脂質のリン酸基を除去し、それぞれジアシルグリセロールまたはセラミドを生成する方法である。いずれも分子の形が、逆コーン型から極性頭部の分子面積が小さい円柱型へ変化し(臨界充填パラメータが変化し)、曲率が変わって融合が生じる。



生物学的な研究として、膜の融合や分裂を起こす際に、一本鎖のリン脂質をアシル化して二本鎖リン脂質へと変化させる酵素の活性が上昇することが報告されている(Schmidt, A.ら、Nature,1999年,401巻,133-141頁)。すなわち、神経終末のシナプスにおいて、シナプス小胞の再形成の際に、リゾホスファチジン酸(LPA)アシル基転移酵素が必須であることが示されている。この酵素は、リン酸が結合したモノアシルグリセロール(一本鎖のリン脂質)であるLPAにアシル基を転移して、二本鎖のリン脂質へと変化させる。膜の変化が起きる際にこの反応が行われているため、このような酵素的化学反応による膜の曲率変化が重要であることが示唆されている。

産業上の利用分野


本発明は、水界面での脱水縮合反応により相転移を生じ得る分子集合体およびその相転移方法に関する。より詳細には、リポソームなどの水界面の分子集合体の融合や分裂を誘起させる方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
(a)炭素数6から20までの脂肪酸塩;
(b)炭素数6から20までの脂肪族鎖を有するアルコールまたはアミン化合物;および
(c)二分子膜を形成し得る人工合成脂質またはリン脂質
を膜の構成成分として含む、二分子膜ベシクルであって、
該(b)アルコールまたはアミン化合物が、以下の式I:
-NH-CH-CH(OH)-CHOH (I)
(式中、Rは、炭素数6から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアルケニル基、または炭素数6から20までのアルキニル基である)で表される二価アルコールであり、さらに(d)以下の式II:
【化1】


(式中、R、R、およびRのうちの1つまたは2つは、メチル基であり、そして残りのR、R、およびRは、それぞれ独立して、-CHCOOC2n+1、-C2n+1、または-C-p-C2n+1であり、ここでnは6から20までの整数であり、-C2n+1は直鎖状である)で表される3級アミン;
を該膜の構成成分として含む、二分子膜ベシクル

【請求項2】
前記(a)脂肪酸塩と前記(b)アルコールまたはアミン化合物とのモル比が1:1である、請求項1に記載の二分子膜ベシクル。

【請求項3】
前記(a)脂肪酸塩と前記(b)アルコールまたはアミン化合物と前記(c)二分子膜を形成し得る人工合成脂質またはリン脂質とのモル比が1:1:1である、請求項1または2に記載の二分子膜ベシクル。

【請求項4】
前記(c)二分子膜を形成し得る人工合成脂質またはリン脂質が、リン脂質である、請求項1からのいずれかの項に記載の二分子膜ベシクル。

【請求項5】
二分子膜ベシクルの相転移を誘起させる方法であって、該方法が、
二分子膜ベシクルを調製する工程であって、該二分子膜ベシクルが、
(a)炭素数6から20までの脂肪酸塩;
(b)炭素数6から20までの脂肪族鎖を有するアルコールまたはアミン化合物;および
(c)二分子膜を形成し得る人工合成脂質またはリン脂質;を膜の構成成分として含む、工程;および
該二分子膜ベシクルに脱水縮合剤または脱水縮合剤前駆体を添加する工程;
を含み、そして
該(b)アルコールまたはアミン化合物が、以下の式I:
-NH-CH-CH(OH)-CHOH (I)
(式中、Rは、炭素数6から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアルケニル基、または炭素数6から20までのアルキニル基である)で表される二価アルコールである、方法。

【請求項6】
前記二分子膜ベシクルが、さらに(d)以下の式II:
【化2】


(式中、R、R、およびRのうちの1つまたは2つは、メチル基であり、そして残りのR、R、およびRは、それぞれ独立して、-CHCOOC2n+1、-C2n+1、または-C-p-C2n+1であり、ここでnは6から20までの整数であり、-C2n+1は直鎖状である)で表される3級アミンを、前記膜の構成成分として含み、そして
前記脱水縮合剤前駆体が、以下の式III:
【化3】


(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、炭素数2から5のヒドロキシアルキル基、-(CHCHO)(ここで、mは1から120までの整数であり、そしてRは、水素原子、メチル基、エチル基、またはプロピル基である)、-(CHCHNRH(ここで、mは1から120までの整数であり、そしてRは、炭素数が2から5のアルキル基、N,N-ジアルキルアミノエチル基、または-CHCH(CHである)、-CHCHSO、-CHCH(CH、または炭素数6から20のアルキル基であるが、RおよびRは同時に炭素数6から20のアルキル基ではなく、そして;Xがハロゲン原子である)で表される、シアヌル酸誘導体である、請求項に記載の方法。

【請求項7】
前記式IIIにおけるRおよびRの少なくとも一方がメチル基またはエチル基である、請求項に記載の方法。

【請求項8】
前記式IIにおけるnが12から16である、請求項またはに記載の方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ 変換と制御 領域
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close