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プルキンエ細胞指向性ウイルスベクター

国内特許コード P110004268
整理番号 B116-01WO
掲載日 2011年7月11日
出願番号 特願2008-505175
登録番号 特許第4975733号
出願日 平成19年3月7日(2007.3.7)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
国際出願番号 JP2007055017
国際公開番号 WO2007105744
国際出願日 平成19年3月7日(2007.3.7)
国際公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
優先権データ
  • 特願2006-062192 (2006.3.8) JP
  • 特願2006-198398 (2006.7.20) JP
発明者
  • 平井 宏和
  • 寅嶋 崇
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 プルキンエ細胞指向性ウイルスベクター
発明の概要

本発明は、ウイルス由来プラスミドベクターに改変型L7プロモーターと治療用遺伝子を機能しうる態様で連結してなるプルキンエ細胞指向性ウイルスベクターに関する。

従来技術、競合技術の概要


小脳は複数の筋肉が関与する歩行などの協調運動に重要な役割を果たしている。小脳に損傷があると、協調運動の調節がうまく行かず、なめらかな動きができなくなる。大脳皮質からの運動の指令は脳幹を通って、脊髄、筋肉に伝達されるが、同時に脳幹(橋)から苔状線維を介して小脳皮質にも伝達される。苔状線維を介して伝達された信号は、小脳皮質の神経細胞である顆粒細胞に入力される。そして、顆粒細胞はその軸索である平行線維を介してプルキンエ細胞に信号を伝える。
一つのプルキンエ細胞は平行線維との間に10万個以上のシナプスを形成し、そこからの入力情報を統合し、小脳の深部にある小脳核へ情報を出力する。プルキンエ細胞は小脳皮質からの唯一の出力神経細胞であり、小脳において非常に重要な役割を果たしているが、脆弱であり、小脳出血、外傷、小脳腫瘍や遺伝性神経変性疾患により障害を受けやすい。
近年のゲノム科学の発展によりヒトやマウスの全ゲノム配列が決定され、生命科学研究は同定された遺伝子の役割解明へと向かっている。神経細胞に野生型や変異遺伝子を導入し、その影響を調べる手法は、神経科学分野の研究面において非常に効果的であるが、遺伝子治療としての臨床応用面からも、神経細胞への遺伝子導入は注目を集めている。
しかしながら、神経細胞は非分裂細胞であり遺伝子導入が難しい。なかでも、プルキンエ細胞への遺伝子導入は極めて困難であり、2000年以前まで効率的な遺伝子導入の成功例も報告されていなかった。最近ウイルスベクターの開発が進み、プルキンエ細胞への効率的な遺伝子導入が可能になってきたが、それでもわずか4編の論文が報告されているにすぎない(非特許文献1~4)。
プルキンエ細胞に効率的に遺伝子導入するには、レンチウイルスやアデノ随伴ウイルスなどの神経に対して高親和性を持つウイルスベクターを使う必要がある。ちなみに、これまでの報告では、プルキンエ細胞への遺伝子導入には、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス由来レンチウイルスが用いられている。
ところで、野生型のレンチウイルスはCD4受容体を持つリンパ球にしか感染しない。そのため、現在使われているレンチウイルスベクターは神経細胞にも感染するように、そのエンベロープがVesicular somatitis virus glycoprotein(VSV-G)に置換されている。このVSV-Gは細胞膜の構成成分であるリン脂質(フォスファチジルセリン)に結合能を持つため、神経以外のグリア細胞、血管内皮細胞などにも非特異的に感染する。また小脳においては、レンチウイルスはプルキンエ細胞以外にも、星状細胞(Stellate cell)、籠細胞(Basket cell)、ゴルジ細胞(Golgi cell)、バーグマングリア(Bergmann glia)にも感染する。
上述のとおり、アデノ随伴ウイルスベクターやレンチウイルスベクターは神経細胞に外来遺伝子を導入し発現させる能力を持つが、パッケージング能力の問題から発現可能な遺伝子サイズに制限がある。発現可能遺伝子サイズはアデノ随伴ウイルスベクターとレンチウイルスベクターにおいて、プロモーター領域と合わせてそれぞれ4kbと8kbといわれている。しかしこれは理論的な値であり、レンチウイルスベクタープラスミドでは安全性を増すためさまざまな改良がなされていることから、使用するベクタープラスミドによって異なるが、発現は5kb前後が限界であることが多い。
一方、L7プロモーターはプルキンエ細胞特異的に活性を持ち、プルキンエ細胞だけに外来遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作出に利用されている。しかしながら、L7プロモーターは全長約3kbと大きく、アデノ随伴ウイルスベクターやレンチウイルスベクターに組み込んで用いる場合、発現可能な外来遺伝子のサイズは大きな制限を受ける。また、そのプロモーター活性はCMVやMSCVプロモーター等の非特異的プロモーターに比べて著しく低い。
小脳プルキンエ細胞への効率的かつ特異的な遺伝子導入は、トランスジェニックマウスを作出するしか方法がなかった。しかしウイルスベクターを用いて、プルキンエ細胞に特異的に高効率で遺伝子導入することができれば、これまでできなかったさまざまな研究が可能となり、小脳を対象とする研究の進展に大きく寄与すると考えられる。また、プルキンエ細胞が障害される脊髄小脳変性症などの遺伝子治療への応用も期待される。
また、最近、ウイルスベクターを遺伝子治療としてヒトに用いる場合、牛海綿状脳症をはじめとする感染が近年、大きな問題となっている。これは、現在のプロトコールではウイルス産生時の培地にウシの血清を加えることが必要であるためである。このようなことから、特に血清を用いることなく、プルキンエ細胞に高効率で遺伝子導入できるウイルスベクターを産生できれば、その臨床応用はより広がることが期待される。

【非特許文献1】Agudo M.,Trejo J.L., Lim F.,Avila J.,Torres-Aleman I.,Diaz-Nido J.& Wandosell F.(2002)Highly efficient and specific gene transfer to Purkinje cells in vivo using a herpes simplex virus I amplicon.Hum.Gene Ther.,13,665-674.

【非特許文献2】Alisky J.M.,Hughes S.M.,Sauter S.L.,Jolly D.,Dubensky T.W.Jr.,Staber P.D.,Chiorini J.A.& Davidson B.L.(2000)Transduction of murine cerebellar neurons with recombinant FIV and AAV5 vectors.Neuroreport,11,2669-2673.

【非特許文献3】Kaemmerer W.F.,Reddy R.G.,Warlick C.A.,Hartung S.D.,McIvor R.S.& Low W.C.(2000)In vivo transduction of cerebellar Purkinje cells using adeno-associated virus vectors.Mol.Ther.,2,446-457.

【非特許文献4】Xia H.,Mao Q.,Eliason S.L.,Harper S.Q.,Martins I.H.,Orr H.T.,Paulson H.L.,Yang L.,Kotin R.M.& Davidson B.L.(2004)RNAi suppresses polyglutamine-induced neurodegeneration in a model of spinocerebellar ataxia.Nat.Med.,10,816-820.

産業上の利用分野


本発明は、改変型L7プロモーターを利用したプルキンエ細胞指向性ウイルスベクターに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】 ウイルス由来プラスミドベクターに改変型L7プロモーターと外来遺伝子を機能しうる態様で連結して成る小脳プルキンエ細胞指向性ベクターであって、前記改変型L7プロモーターが下記a)又はb)のDNAからなることを特徴とする前記ベクター:
a) 配列番号3又は4に示される塩基配列からなるDNA
b) 少なくとも配列番号4に示される塩基配列を含む、配列番号3に示される塩基配列のうち連続した1006~1319bpの断片からなるDNA。
【請求項2】 前記ウイルスが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス、及びレンチウイルスから選ばれるものである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】 前記ウイルスがレンチウイルスである、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】 前記ベクターが、プロテアーゼ阻害剤を含む培養液中で産生されたものである、請求項1~のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項5】 前記プロテアーゼ阻害剤がカテプシンK阻害活性を有するものである、請求項に記載のベクター。
【請求項6】 前記ベクターが、pH7.2~pH8.0の培養液中で産生されたものである、請求項1~のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項7】 前記ベクターが、血清を含まない培養液中で産生されたものである、請求項1~のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項8】 前記外来遺伝子がプルキンエ細胞障害性疾患の治療用遺伝子又は当該疾患遺伝子である、請求項1~のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項9】 前記治療用遺伝子が、GTPase CRAG、ubiquitin chain assembly factor E4B (UFD2a)、ATPase VCP/p97、HDJ-2、HSDJ及びBiPを含む分子シャペロン、YAPdeltaCを含む細胞死抑制分子、ER degradation enhancing alpha-mannosidase-like protein (EDEM)を含む小胞体蛋白質分解促進分子、CREB/ATF family member OASIS、IRE1、PERK及びATF6を含むERセンサー分子、スフィンゴミエリナーゼ、AT-mutated(atm)、Reelin、Bcl-2、ネプリライシン、BDNF、ならびにNGFをコードする遺伝子から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上、あるいはataxin-1、ataxin-2、ataxin-3、α1a電位依存型カルシウムチャネル、及びPKCγをコードする遺伝子から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上のsiRNAである、請求項に記載のベクター。
【請求項10】 前記疾患遺伝子が、異常伸長したCAGリピートを持つataxin-1、ataxin-2、ataxin-3、huntingtin、及びα1a電位依存型カルシウムチャネルコードする遺伝子、ならびに変異を持つPKCγをコードする遺伝子から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上である、請求項に記載のベクター。
【請求項11】 請求項1~10のいずれか1項に記載のベクターを導入された非ヒト哺乳動物。
【請求項12】 異常伸長したCAGリピートを持つataxin-1、ataxin-2、ataxin-3、huntingtin、及びα1a電位依存型カルシウムチャネルコードする遺伝子、ならびに変異を持つPKCγをコードする遺伝子から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上を導入され、小脳プルキンエ細胞障害性疾患のモデル動物である、請求項11に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項13】 ウイルス由来ベクタープラスミドに、a) 配列番号3又は4に示される塩基配列からなる改変型L7プロモーター、又はb) 少なくとも配列番号4に示される塩基配列を含む、配列番号3に示される塩基配列のうち連続した1006~1319bpの断片からなる改変型L7プロモーターを、外来遺伝子に機能しうる態様で連結して宿主細胞に導入し、前記細胞をプロテアーゼ阻害剤を含む培養液中で培養して、ウイルスを産生させることを特徴とする、プルキンエ細胞指向性ウイルスベクターの作製方法。
【請求項14】 前記プロテアーゼ阻害剤がカテプシンK阻害活性を有するものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】 前記培養液がpH7.2~pH8.0である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】 前記培養液が血清を含まないものである、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 畜産
  • 薬品
  • 工業用ロボット
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) SORST 平成17年度採択課題
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