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結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法および製造装置

国内特許コード P110004329
整理番号 RX04P33
掲載日 2011年7月12日
出願番号 特願2009-013295
公開番号 特開2010-168485
登録番号 特許第5339350号
出願日 平成21年1月23日(2009.1.23)
公開日 平成22年8月5日(2010.8.5)
登録日 平成25年8月16日(2013.8.16)
発明者
  • 鷲山 潤一郎
  • 木村 秀治
  • 山田 浩司
  • 中島 武
  • 大坪 彰博
  • 彦坂 正道
  • 岡田 聖香
  • 渡辺 香織
出願人
  • サンアロマー株式会社
  • 国立大学法人広島大学
発明の名称 結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法および製造装置
発明の概要

【課題】機械的特性、耐熱性、透明性等の特性が優れた結晶性樹脂フィルムまたはシートを大量にかつ連続的に製造するための製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法は、溶融状態のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂Bを一対の挟持ロール50a,50bに挟んで圧延する方法であり、挟持ロール50a,50bに供給するフィルム状またはシート状の結晶性樹脂Bの厚みを、得られるフィルムまたはシートCの厚みの1.3~8.0倍に、圧延時のシート状の結晶性樹脂の温度を結晶化温度以上融点以下に、ロール速度を、下記式(1)で表されるZが0.09以下になるように調整する。式(1) Z=[(挟持ロール50a,50bの半径[mm]×得られるフィルムまたはシートCの厚み[mm])1/2]/ロール速度[m/分]
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


ポリエチレン(以下「PE」という)やポリプロピレン(以下「PP」という)やポリスチレン(以下「PS」という)やポリ塩化ビニル(以下「PVC」という)等をはじめとする、いわゆる「汎用プラスチック」は、非常に安価であるだけではなく、成形が容易で、金具およびシェラーミックスに比べて重さが数分の一と軽量であるゆえに、袋や各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品材料や自動車、電気などの工業部品や日用品、雑貨用等の材料として、よく利用されている。



しかしながら、当該汎用プラスチックは、機械的強度が不十分で耐熱性が低い等の欠点を有している。そのため、自動車等の機械製品や、電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を上記汎用プラスチックは有していないために、その適用範囲が制限されているというのが現状である。例えばPEの場合、軟化温度が通常90℃で程度である。また比較的耐熱性が高いとされるPPであっても、通常130℃以下で軟化してしまう。またPPは、ポリカーボネート(以下「PC」という)、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)やPSなどに比して透明性が不十分であるので、光学用材料やボトルや透明容器としては使用できないという欠点を有している。



一方、PET、PC、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)やナイロン、ポリメチルペンテン、ポリオキシメチレン、アクリル樹脂等のいわゆる「エンジニアリングプラスチック」は、機械的特性と耐熱性や透明性等に優れており、通常150℃では軟化しない。よって、エンジニアリングプラスチックは、自動車や機械製品および電気製品をはじめとする高性能が要求される各種工業製品用材や光学用材料として利用されている。
しかしエンジニアリングプラスチックは、比較的比重が大きく、高価であり、ライフサイクルアセスメントにおける二酸化炭素排出量が多く、しかもモノマーリサイクルが困難または不可能なために環境負荷が大変大きいこと等の重大な欠点を有している。



したがって、汎用プラスチックの機械的特性、耐熱性、および透明性等の材料特性を大幅に改善することによって、当該汎用プラスチックがエンジニアリングプラスチックの代替、さらには金属材料の代替として利用可能となれば、高分子製や金属製の各種工業製品や生活用品のコストを大幅に削減し、軽量化により大幅に省エネルギーし操作性を向上させることが可能になると期待できる。例えば、PETは現在、清涼飲料水をはじめとする飲料等のボトルとして利用されているが、かかるPETをPPに置き換えることが可能になれば、大幅にボトルのコストを削減することが可能となる。また、PETはモノマーリサイクルが可能ではあるが容易ではないために、使用済みのPETボトルは裁断された後に、衣料用繊維等やフィルム等の低品質な用途に1、2度再利用された後に廃棄されている。一方、PPはモノマーリサイクルが容易なため、完全なリサイクルが実現可能となり、石油などの化石燃料の消費および二酸化炭素(CO)の発生を抑えることができるというメリットもある。



上記のように、汎用プラスチックの機械的特性、耐熱性、および透明性等の特性を向上させてエンジニアリングプラスチックや金属の代替として汎用プラスチックを利用するためには、PPやPEにおける結晶の割合(結晶化度)を著しく高める、より好ましくはPPやPEの非晶質を殆ど含まない結晶だけからなる結晶体を作製することが求められる。



ここで高分子の結晶性を向上させる方法としては、高分子の融液の冷却速度を低下させる方法が知られている(非特許文献1参照)。しかし当該方法では、結晶化度の増加が全く不十分なばかりでなく、製品の生産性が著しく低下したり、結晶粒径が粗大化して機械的特性が低下したりするという欠点がある。またその他の方法としては、高分子の融液を高圧下で冷却して結晶化度を増大させるという方法が提案されている(非特許文献1参照)。しかし、当該方法は、高分子の融液を数百気圧以上に加圧する必要があり、理論的には可能であるが、工業規模生産では製造装置の設計が困難な上に、生産コストが高くなってしまう。よって、上記方法の実現は、現実的には困難である。また、高分子の結晶性を向上させるその他の方法としては、核剤を高分子融液に添加する方法が知られている(非特許文献2参照)。しかし現行の当該方法では、(a)不純物である核剤の混入を避けることができない、(b)結晶化度の増加が十分でなく、核剤が樹脂よりも著しく高価なのでコストアップしてしまう等の欠点がある。したがって、汎用プラスチック等の高分子において結晶化度を飛躍的に向上させる方法、および高分子の結晶体を生産する方法は、これまでに完成されていなかった。



ところで、これまでの多くの研究により、融液中の分子鎖が無秩序な形態(例えば、糸鞠状(ランダムコイル))で存在する高分子の融液(「等方融液」という)を、せん断流動場において結晶化させることによって、流れに沿って配向した太さ数μmの細い繊維状の特徴的な結晶形態(shish)と、それに串刺しにされた十nm厚の薄板状結晶と非品とがサンドイッチ状に積層した形態(kebab)とが、融液中にまばらに生成することが明らかにされている(非特許文献3参照)。上記の状態は、「shish-kebab (シシ-ケバブ=焼き鳥の“串”と“肉”との意)」と称される。



shish-kebab生成初期にはshishのみがまばらに生成する。shishの構造は分子鎖が伸び切って結晶化した「伸びきり鎖結晶(Extended chain crystal:ECC)」であり(非特許文献4参照)、kebabの結晶部分の構造は、分子鎖が薄板状結晶の表面で折りたたんでいる「折りたたみ鎖結晶(Folded chain crystal:FCC)」であると考えられている。shish-kebabの分子論的生成メカニズムは、速度論的研究に基づく研究例が無く、明らかではなかった。折りたたみ鎖結晶は、高分子結晶で最も広く見られる薄板状結晶(ラメラ結晶という)である。また、金型へ射出成形した場合に、表面に“skin”と呼ばれる数百μm厚の薄い結晶性皮膜と、その内部にcoreと呼ばれる折りたたみ鎖結晶と非晶との「積層構造(積層ラメラ構造という)」の集合体とが形成されることは良く知られている(非特許文献5参照)。skinはshish kebabからなっていると考えられているが、shishはまばらにしか存在していないことが確認されている。



本発明者らは、shishの生成メカニズムを初めて速度論的に研究し、融液中の一部の分子鎖が、異物界面において、界面との「トポロジー的相互作用」のために伸長して互いに液晶的に配向秩序を持った融液(「配向融液」または「Oriented melt」という)になるために、shishが融液の一部に生成する、というメカニズムを明らかにした(例えば非特許文献6および7参照)。ここで、「トポロジー的相互作用」とは「1次元のトポロジー(数学の位相幾何学)で特徴付けられるひも状の高分子鎖は、互いに絡まり合っているために、流動場において高分子鎖がお互いに引っ張り合ったり滑り合ったりする」効果のことであり、高分子固有の相互作用として公知のことである。本発明者らは、高分子のトポロジー的結晶化メカニズム理論を初めて提唱し、伸びきり鎖結晶と折りたたみ鎖結晶の起源を解明した。この理論は「滑り拡散理論」と呼ばれ、世界的に認められている(非特許文献8参照)。



また本発明者らは、高分子の低せん断ひずみ速度=0.01~0.1s-1のせん断流動結晶化において発見した、「渦巻き結晶(spiralite)」の生成メカニズム解明から、せん断結晶化において、異物界面において分子鎖が伸長されて配向融液が発生していることを実験的に初めて検証し、核生成および成長速度が著しく加速される、という普遍的メカニズムを提唱した(非特許文献9参照)。



よって、高分子融液全体を配向融液にすることができれば、高分子の結晶化が著しく起こり易くなり、結晶化度を高めることができるといえる。ここで高分子融液全体が配向融液となったものを「バルクの配向融液」という。さらに高分子融液全体を配向融液の状態のままで結晶化することができれば、高分子の大部分の分子鎖が配向した構造を有する結晶体(これをバルクの「高分子配向結晶体」と呼ぶ)を生産し得ることが期待される。この場合にはさらに核生成が著しく促進され、核剤を添加せずとも分子鎖間で核生成が無数に起こる「均一核生成」へと激変するため、不純物の混入を回避することができるとともに、結晶サイズをナノメートルオーダーにすることが可能となり、高い透明性を有し、飛躍的に機械的特性と耐熱性が増大した高分子を得ることができるということも期待される。ここで「均一核生成」とは、よく知られた古典的核生成理論において、核剤等の異物の助けを借りずに自発的に核生成する場合を指す(非特許文献10参照)。これに対して、核剤などの異物の助けを借りて異物表面に核生成する場合は「不均一核生成」と呼ばれる。従来は、全ての物質において、バルクの融液からの結晶化は「不均一核生成」であった。



特許文献1には、結晶化温度にしたロッド状のポリプロピレンを高速で押しつぶして、結晶体を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ロッド内の歪み速度のばらつきが生じ、均一性が低い上に、高分子の結晶体を大量にかつ連続的に製造することは困難であり、工業的ではなかった。
特許文献2には、高い結晶性の高分子結晶体について記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の高分子結晶体は、核剤を含んでいるため、融液と結晶化温度の差が小さくなり、成形条件が狭くなるという欠点を有していた。



ところで、特許文献3には、超高分子量粉末ポリプロピレンを連続的にロールで狭窄移送してシートを得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、昇温時に得られる、融解を示すDSC曲線ピークの温度以上ではあるが、結晶融点よりも低い温度で加工しており、結晶融点以上に加熱しないため、完全に融解していない結晶が存在していた(ここで、結晶融点とは、DSC曲線にて結晶が完全に融解したピーク高温側の裾の温度、すなわち融解終了温度を示している。)。そのため、プロセシングスピードに制限が生じ生産性が低く、また、上記「バルクの配向融液」を生成できず、不均一核生成を生じるため、充分な透明性および剛性を発現することは困難であった。
特許文献4には、スメチカ構造のポリプロピレンを形成し、その後、圧延して、透明なシートを製造する方法が記載されている。すなわち、特許文献4に記載の方法では、スメチカ構造のシートを得る工程と、圧延する工程との少なくとも2つの工程を有するが、スメチカ構造のシートを得る工程では、ポリプロピレンのエチレン共重合体を使用し、石油樹脂を添加し、急冷する必要があった。このような工程を経て最終的に得られたシートでは高い剛性を発現することは困難であった。
特許文献5では、ポリプロピレンの原反シートを一対のロールで挟んで圧延する方法が記載されている。しかしながら、ポリプロピレンの原反シートを得る際および圧延する際に、バルクの配向融液から均一核生成を発生させることは困難であった。したがって、高い透明性および剛性を得ることは困難であった。

産業上の利用分野


本発明は、機械的特性、耐熱性、透明性等の特性が優れ、例えば包装材、建材や工業用途等に使用される結晶性樹脂フィルムまたはシートを製造するための方法および装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
溶融状態のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂を一対の挟持ロールに挟んで圧延する結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法であって、
挟持ロールに供給するフィルム状またはシート状の結晶性樹脂の厚みを、得られるフィルムまたはシートの厚みの1.3~8.0倍に、圧延時のシート状の結晶性樹脂の温度を結晶化温度以上融点以下に、ロール速度を、下記式(1)で表されるZが0.09以下になるように調整することを特徴とする結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法。
式(1) Z=[(挟持ロールの半径[mm]×得られるフィルムまたはシートの厚み[mm])1/2]/ロール速度[m/分]

【請求項2】
溶融状態のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂は、溶融させた結晶性樹脂を、スリット状の開口部を有するダイから吐出させて得ることを特徴とする請求項1に記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法。

【請求項3】
圧延後のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂を挟持ロールから剥離させ、圧延後のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂が挟持ロールから離れる部分に向けて気体を噴射することを特徴とする請求項1または2に記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法。

【請求項4】
各挟持ロールの周面をあらかじめ離型処理することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法。

【請求項5】
圧延時のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂の温度をT、結晶化温度をT、融点をTとした際に、下記式(2)で求められるXの値の範囲を0.05~0.90にするように結晶性樹脂の温度Tを調整することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造方法。
式(2) X=(T-T)/(T-T

【請求項6】
結晶性樹脂を溶融しながら供給する押出機と、
該押出機より下流側に設けられたギアポンプと、
該ギアポンプより下流側に設けられた、スリット状の開口部を有するダイと、
該ダイから吐出された溶融状態のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂を、結晶化温度以上融点以下に冷却する冷却手段と、
該冷却手段を通過したフィルム状またはシート状の結晶性樹脂を挟んで圧延する一対の挟持ロールとを具備し、
前記一対の挟持ロールは、冷却手段を通過したフィルム状またはシート状の結晶性樹脂の厚みが得られるフィルムまたはシートの厚みの1.3~8.0倍になるように配置されていることを特徴とする結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造装置。

【請求項7】
下記式(1)で表されるZが0.09以下であることを特徴とする請求項6に記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造装置。
式(1) Z=[(挟持ロールの半径[mm]×得られるフィルムまたはシートの厚み[mm])1/2]/ロール速度[m/分]

【請求項8】
一対の挟持ロールの下流側に、圧延したフィルムまたはシートを引き取る引き取り手段を具備することを特徴とする請求項6または7に記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造装置。

【請求項9】
圧延後のフィルム状またはシート状の結晶性樹脂が挟持ロールから離れる部分に向けて気体を噴射させる巻き付き防止手段を具備することを特徴とする請求項8に記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造装置。

【請求項10】
各挟持ロールの周面が離型処理されていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の結晶性樹脂フィルムまたはシートの製造装置。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 食品
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2009013295thum.jpg
出願権利状態 権利存続中


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