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タンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法

国内特許コード P110004378
整理番号 S2011-0112-N0
掲載日 2011年7月13日
出願番号 特願2010-281562
公開番号 特開2012-127904
登録番号 特許第5821127号
出願日 平成22年12月17日(2010.12.17)
公開日 平成24年7月5日(2012.7.5)
登録日 平成27年10月16日(2015.10.16)
発明者
  • 若松 孝
  • 丸山 智章
  • 大西 裕季
出願人
  • 独立行政法人国立高等専門学校機構
発明の名称 タンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法
発明の概要 【課題】高感度なタンパク質結晶化分析装置を提供する。
【解決手段】
タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析装置Xを用いる。測定試料部3は、タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルを固定する。この測定試料部3の溶液セルに光源1から、入射光調整部2を介して入射光を導入する。測定散乱光導入部7は、測定試料部3の溶液セルからの散乱光のみを散乱光検出部5へと導く。測定散乱光導入部7により導かれた結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光は、散乱光検出部5で検出する。制御解析部9は、散乱光検出部5で検出された小角散乱光又は後方小角散乱光の強度を解析し、前記結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


従来から、タンパク質に代表される生体高分子の機能を解明するために、結晶構造解析の技術が必要不可欠となっている。
生体高分子の結晶構造は、核磁気共鳴(NMR)測定、X線回折測定、また中性子線回折測定等を用いて解析される。
解析された結晶構造のデータを用いて、生体高分子の高次構造や機能の解析を行うことができる。
このような結晶構造の解析及び評価は、いかに良質の生体高分子の結晶を作製するかに大きく依存する。



ここで、タンパク質の結晶作製は、通常、タンパク質の過飽和溶液に沈殿剤(結晶化剤)等を添加して行われる。
しかしながら、タンパク質の結晶化条件は、タンパク質の溶液濃度、沈殿剤(結晶化剤)の種類や濃度、緩衝液の種類、pH値、溶液温度等の、様々な要因を考慮する必要がある。



このため、従来から、試行錯誤を繰り返し、又は網羅的に試験を行い、対象のタンパク質を結晶化させるための結晶化条件を探索する方法が用いられていた。
たとえば、従来、タンパク質の濃度を一定にし、沈殿剤(結晶化剤)の濃度を変化させた溶液試料について、結晶化要件を求める試験をしていた。また、例えば、沈殿剤(結晶化剤)の濃度を一定にして、タンパク質の濃度を変化させた溶液試料について、試験をしていた。その他にも、例えば、沈殿剤(結晶化剤)の種類を変えた場合の溶液試料に対して試験をしていた。



しかしながら、溶液中におけるタンパク質の結晶成長速度は、一般的には大変遅い。
従って、結晶化する条件下であっても、光学顕微鏡等で結晶生成が確認できるまでには、少なくとも数日から数週間が必要である。
また、タンパク質の種類や作製条件によっては、数ヶ月以上を要することもある。
ところが、従来は、実際に結晶を作成することで、対象となる個々のタンパク質にとって最適な結晶化条件の探索をしていた。



このように、一般的に、タンパク質結晶の作製は、網羅的な非能率的手法によって行われている。
この効率を高めるため、従来から、タンパク質濃度と沈殿剤(結晶化剤)濃度との関係を調べた図、いわゆる「相図」が作成されてきた。



たとえば、特許文献1及び非特許文献1を参照すると、タンパク質の結晶化状態を表す相図として、ニワトリ卵白リゾチームの相図が記載されている。
特許文献1及び非特許文献1に記載の相図は、タンパク質濃度及び沈殿剤(結晶化剤)濃度を用いた相図である。
この相図では、結晶化条件を示す状態として、結晶化溶液のpH値と温度が一定である場合の、沈殿剤(結晶化剤)濃度に対するリゾチームの濃度の関係が、相図として記載されている。この相図は、タンパク質結晶作製の方針として利用されている。



より具体的には、特許文献1及び非特許文献1を参照すると、ニワトリ卵白リゾチームの結晶化溶液の相図が記載されている。
特許文献1に記載の相図は、pH4.7に調整された酢酸―酢酸ナトリウム緩衝液を使用して、温度295K(22℃)でニワトリ卵白リゾチームとその沈殿剤(結晶化剤)の塩化ナトリウムを含む結晶化溶液に対して、リゾチームが結晶化するか否かが、結晶化法の一つである透析法によって調査されたものである。
また、非特許文献1に記載の相図は、pH4.5に調整されたリン酸緩衝液を使用して、温度293K(20℃)でニワトリ卵白リゾチームとその沈殿剤(結晶化剤)の塩化ナトリウムを含む結晶化溶液に対して、リゾチームが結晶化するか否かが、結晶化法の一つである透析法によって調査されたものである。
これらの相図においては、結晶化が進行せずタンパク質の結晶作製に適さない濃度条件、及び溶液中に一度に多数のタンパク質微結晶が生成される濃度条件が記載されている。
そして、上記の2つの濃度領域に挟まれた中間領域である準安定領域では、例えば、結晶核形成の原因となる埃などの混入や、振動、圧力、磁界、電界、光等の結晶化に影響を及ぼす外部からの刺激がなければ、結晶化が進行しない。また、この準安定領域では、溶液中に少数個のタンパク質微結晶が形成されると、結晶が大型化しやすいという特徴がある。
従って、NMRやX線や中性子線によりタンパク質を構造解析するために用いる大型で良質な結晶を作製するためには、この準安定領域の濃度条件下で行うことが好ましい。よって、この準安定領域の濃度領域を見出すことが、タンパク質結晶を作製する上で最も重要である。



従来の相図は、結晶化のための条件が分かっているタンパク質の結晶を大量に作成するといった分野では、非常に有効な方法である。
しかしながら、相図を作成するためには、各溶液の濃度条件を変化させて、実際にタンパク質結晶を作製することが必要である。このため、様々な各濃度条件について結晶化するかどうかを調べなければならず、タンパク質の結晶化を時間経過で観察する必要があった。
よって、相図の作成自体に多大な時間と労力が必要である状況は変わらず、相図は、新規のタンパク質の結晶を製造する用途にはあまり用いられていなかった。



このように、非能率的で多大な時間を要するタンパク質の結晶作製において、タンパク質結晶化溶液の状態を正確に把握し分析できれば、効率的な結晶作製が可能となる。



ここで、従来から、溶媒中でブラウン運動している微粒子からの散乱光を計測し、その散乱光の時間的振舞いから、微粒子の粒度分布を調べる動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)法(光子相関法)が、コロイド等のような微粒子の分析に用いられている。
このような粒子ブラウン運動によるDLS法では、粒径の大きな粒子はゆっくり揺らぎ、小さな粒子は速く揺らぐという特性を測定する。この特性から、粒子サイズが評価できる。
DLS法は、タンパク質分子が含まれる溶液の計測・評価にも用いられている。DLS法によれば、溶液中におけるタンパク質分子の状態を、光散乱計測によって非破壊的に測定が可能である。



また、特許文献2を参照すると、生体高分子含有溶液からの生体高分子の結晶化条件を探査する方法であって、生体高分子含有溶液と半透膜で隔てられた溶液に、溶液の物理化学的性質を変化させる物質を連続的又は断続的に添加して、前記生体高分子含有溶液の物理化学的性質を連続的又は断続的に変化させ、その間の、生体高分子含有溶液の状態を、連続的又は断続的にモニターすることで、生体高分子の結晶化条件を探査する方法が開示されている(以下、従来技術1とする)。
具体的には、従来技術1は、光散乱法によって、タンパク質を含む溶液の状態をモニターする方法とその装置について開示されている。従来技術1では、結晶化条件を連続的に最適化しながら検索するため、結晶化条件を見逃す可能性が、従来法に比べて低いという効果がある。



また、特許文献3を参照すると、目的タンパク質を結晶化するタンパク質結晶化過程を解析するタンパク質溶液結晶化過程の解析装置であって、目的タンパク質を含む溶液が収容されている容器を支持する支持部と、該支持部に支持されている前記容器内の観測対象に対してラマン励起用レーザ光を照射するレーザ部と、共焦点ラマン分光分析顕微鏡と、該共焦点ラマン分光分析顕微鏡からのラマン分光光をスペクトル解析するスペクトル解析部とを有するタンパク質溶液結晶化過程の解析装置が記載されている(以下、従来技術2とする。)。
すなわち、従来技術2では、物質に光を入射した際に、散乱光に入射光の波長とは異なる波長の光であるラマン分光光が含まれる「ラマン効果」を用いた、タンパク質溶液の結晶化過程を解析する装置が開示されている。
従来技術2では、従来は人の目で行っていたタンパク質結晶化判別作業を分光学的に行うことができるようになるため、タンパク質結晶化段階の客観的な判断を行うことができるという効果がある。



一方、上述のDLS法のような動的光散乱法以外に、従来より静的光散乱(Static Light Scattering、SLS)法が用いられている。これは、タンパク質溶液からの散乱光をある散乱角度、例えば、特に、溶液に照射する光に対し直角、すなわち、散乱角90°において散乱光を測定し、その溶液濃度と散乱光強度の関係に基づいて、タンパク質溶液を分析する。
たとえば、非特許文献2及び非特許文献3には、SLS法による装置を用いたタンパク質溶液の分析について記述されている。

産業上の利用分野


本発明は、タンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法に係り、特にタンパク質溶液の光散乱計測による結晶化状態の分析を行うタンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析装置において、
タンパク質結晶化溶液の前方小角又は後方小角の散乱光を、散乱光検出部へと導く測定散乱光導入部と、
前記測定散乱光導入部により導かれた前記散乱光を検出する散乱光検出部と、
前記散乱光検出部で検出された前記散乱光の強度を解析し、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する制御解析部とを備え、
前記タンパク質結晶化溶液へ、コリメート光を入射させ、
前記散乱光は、前記タンパク質結晶化溶液へ入射する光の透過光に対する散乱角度が1°~10°の前方小角散乱光、又は前記タンパク質結晶化溶液へ入射する光の反射光に対する散乱角度が1°~10°の後方小角散乱光であり、
前記測定散乱光導入部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を導き、
前記タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルの光路長は1mm以下であり、
結晶化の前段階状態にあるタンパク質凝集体の散乱特性を測定し、
前記コリメート光は、レーザ光源により発生され、広がり角が全角度で1mrad以下であり、垂直入射で前記タンパク質結晶化溶液へ入射され、
前記測定散乱光導入部が導く前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光は、測定する散乱光取込み角度が調整された散乱光のみが取り出され、
前記制御解析部が分析する前記散乱光の強度は、前記散乱光検出部が所定の微小角ずつ回転されて測定された前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光である
ことを特徴とするタンパク質結晶化分析装置。

【請求項2】
測定する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の散乱角度を変化させる測定散乱角制御部を備え、
前記制御解析部は、前記測定散乱角制御部の散乱角度を制御し、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値を解析し、
前記測定散乱角制御部の散乱角度に対する前記タンパク質結晶化溶液の光散乱強度のデータ群を取得する
ことを特徴とする請求項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項3】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数により求める
ことを特徴とする請求項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項4】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から求めた前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の平均値である
ことを特徴とする請求項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項5】
前記制御解析部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する
ことを特徴とする請求項2乃至のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項6】
前記測定散乱光導入部は、前記タンパク質結晶化溶液と前記散乱光検出部の間に配置され、少なくとも2つ以上のスリット、ピンホール、又は虹彩絞りを含む
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項7】
前記溶液セルを固定する、透明ブロック及び支持台を含む測定試料部を備え、
前記透明ブロックは、前記溶液セルを光学的に密着させる
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項8】
前記透明ブロックは、半円柱形プリズムであり、前記溶液セルへ平行光を入射するためのレンズ部を備える
ことを特徴とする請求項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項9】
前記溶液セルに入射する光の入射角度を調整制御するための入射角制御部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項10】
前記タンパク質結晶化溶液に光を照射する光源を備える
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項11】
前記光源は、単一光の光源であり、タンパク質分子に固有の光吸収帯から離れた波長領域の光源である
ことを特徴とする請求項10に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項12】
前記光源は、ダイオード励起固体レーザである
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項13】
前記光源から出射される光の偏光状態を調整し、
前記散乱光の検出に適するように、前記タンパク質結晶化溶液への入射光の光量を調整する、入射光調整部を備える
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項14】
前記光源から出射される光の強度をモニターする入射モニター光検出部を備える
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項15】
前記タンパク質結晶化溶液は、
タンパク質と、該タンパク質の結晶化剤とを含む
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。

【請求項16】
タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析方法において、
タンパク質結晶化溶液に光を照射し、
前記タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光を測定し、
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度に基づいて、前記タンパク質結晶化溶液の状態を分析し、
前記タンパク質結晶化溶液へ、コリメート光を入射させ、
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光は、前記タンパク質結晶化溶液へ入射する光の透過光に対する散乱角度が1°~10°の前方小角散乱光、又は前記タンパク質結晶化溶液へ入射する光の反射光に対する散乱角度が1°~10°の後方小角散乱光であり、
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を導き、
前記タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルの光路長は1mm以下であり、
結晶化の前段階状態にあるタンパク質凝集体の散乱特性を測定し、
前記コリメート光は、レーザ光源により発生され、広がり角が全角度で1mrad以下であり、垂直入射で前記タンパク質結晶化溶液へ入射され、
導く前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光は、測定する散乱光取込み角度が調整された散乱光のみが取り出され、
分析する前記散乱光の強度は、所定の微小角ずつ回転されて測定された前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光である
ことを特徴とするタンパク質結晶化分析方法。

【請求項17】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光の強度関数又は前記後方小角散乱光の強度関数である
ことを特徴とする請求項16に記載のタンパク質結晶化分析方法。

【請求項18】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から得られる、前記前方小角散乱光の強度の平均値又は前記後方小角散乱光の強度の平均値である
ことを特徴とする請求項16に記載のタンパク質結晶化分析方法。

【請求項19】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する
ことを特徴とする請求項16に記載のタンパク質結晶化分析方法。
国際特許分類(IPC)
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JP2010281562thum.jpg
出願権利状態 登録


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