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芳香族化合物の製造方法

国内特許コード P110004452
整理番号 K056P45-2
掲載日 2011年7月14日
出願番号 特願2010-164070
公開番号 特開2011-001369
登録番号 特許第5305303号
出願日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成23年1月6日(2011.1.6)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
優先権データ
  • 特願2004-033941 (2004.2.10) JP
  • 特願2004-282578 (2004.9.28) JP
発明者
  • 中村 正治
  • 中村 栄一
  • 松尾 敬子
  • 伊藤 慎庫
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 芳香族化合物の製造方法
発明の概要 【課題】多種多様なアルキル基等の様々な置換基を有する芳香族化合物の低毒性且つ経済的な製造方法を提供すること。
【解決手段】鉄触媒およびジアミン化合物存在下、下記式(2)で示される化合物と、下記式(3a)で示される芳香族マグネシウム試薬とを反応させることを特徴とする、下記式(1)で示される芳香族化合物の製造方法により、上記課題を解決する。





[式中、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基又は、C~C10飽和環基若しくは不飽和環基であり、Aは、置換基を有していてもよいC~C20芳香族基又は置換基を有していてもよい複素芳香族基であり、Xは、ハロゲン原子又はスルホン酸エステルであり、Yは、臭素、ヨウ素、塩素、又は炭素アニオン配位子である。]
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


アルキル化芳香族化合物、特に第二級アルキル基を芳香環上に有する一群の芳香族化合物は、医薬や農薬等の化成品中間体、液晶などの原料として有用であることが知られている。
従来、第二級アルキル基を持つ芳香族化合物の位置選択的な製造方法として、ニッケル又はパラジウム触媒存在下で、アルキルマグネシウム試薬とハロゲン化アリール又はアリールスルホン酸エステルとをカップリング反応させる方法が知られていた(Hayashi, T. ; Konishi, M.; Kobori, Y.; Kumada, M.; Higuchi, T.; Hirotsu, K. J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 158-163、Ogasawara, M.; Yoshida, K.; Hayashi, T. Organometallics, 2000, 19, 1567-1571、Doherty, S.; Knight, J.; Robins, E. G.; Scanlan, T. H.; Champkin, P. A. Clegg, W. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5110-5111)。
しかしながら、この方法によれば、複雑な構造を有するホスフィン配位子の添加が必須であり、かつ第二級アルキル基の構造によっては、第二級アルキル基から第一級アルキル基への異性化を伴い目的生成物を高収率で得ることができないという問題があった。また、ニッケル触媒又はパラジウム触媒という毒性の高いあるいは高価な触媒が必要であるという問題があり、医薬や農薬といった毒性の高い試薬を避ける必要がある分野で大量合成への応用ができないという問題があった。



また、ハロゲン化アルキル又はアルキルスルホン酸エステルと芳香族有機金属試薬からアルキル基を有する芳香族化合物を製造する方法として、ジエン配位子存在下パラジウムを触媒としてアルキルスルホン酸エステルあるいはハロゲン化アルキルと芳香族マグネシウム試薬をクロスカップリングさせる方法(Terao, J.; Naitoh, Y.; Kuniyasu, H.; Kambe, N. Chem. Lett. 2003, 32, 890-901)や、ジエン配位子存在下銅やニッケルを触媒としてハロゲン化アルキルと芳香族マグネシウム試薬を触媒的にクロスカップリングする方法(Terao, J.; Ikumi, A.; Kuniyasu, H.; Kambe, N. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5646-5647)も知られている。
その他にも、トリシクロヘキシルホスフィンなどの嵩高いホスフィン配位子存在下、パラジウム触媒によるハロゲン化アルキルと芳香族亜鉛化合物、芳香族スズ化合物または芳香族ケイ素化合物との触媒的なクロスカップリング反応(Zhou, J.; Fu, G. C. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 12527-12530、Tang, H.; Menzel, K.; Fu, G. C. Angew. Chem., Int. Ed. 2003, 42, 5079-5082、Lee, J.-Y.; Fu, G. C. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5616-5617.)も知られている。
しかしながらこれらの方法によって第二級アルキル基を導入する場合、脱離反応などの副反応によりアルケンが生じ、目的生成物が低収率でしか生成しないため、第二級アルキル置換基を有する芳香族化合物の合成には適用できないという問題があった。



また、第二級ハロゲン化アルキルと芳香族有機金属化合物からアルキル基を有する芳香族化合物を製造する方法として、ニッケル触媒を用いた芳香族ホウ素化合物を、第二級ハロゲン化アルキルと触媒的にクロスカップリング反応させるという方法も知られている(Zhou, J.; Fu, G. C. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1340-1341)。この方法によれば、種々の第二級アルキル置換基を有する芳香族化合物が合成可能であるが、やはり毒性の高いニッケルを用いなければならない点などの問題点は解決されていない
また、触媒として廉価であり且つ低毒性の鉄触媒を用いた方法として、ハロゲン化アリールあるいはハロゲン化アルケニル等の不飽和有機ハロゲン化物あるいはアリルリン酸エステル等の求電子剤と、芳香族あるいはアルキルマグネシウム試薬、亜鉛試薬又はマンガン試薬とをクロスカップリング反応させるという方法が知られている(Furstner, A.; Leitner, A. Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 609-612、Furstner, A.; Leitner, A.; Mendez, M.; Krause, H.; J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 13856-13863、米国公開公報2003/0220498)。
この方法で第二級アルキルマグネシウム試薬とハロゲン化アリールから第二級アルキル置換基を有する芳香族化合物を合成することは可能である。しかしながら、第二級アルキルマグネシウム試薬調製時に、カルボニル基、シアノ基など多くの官能基が共存できないことに加えて、収率が50%~60%と低く、多種多様なアルキル化芳香族化合物の製造方法としては適さないという問題があった。またこの方法での反応条件下でハロゲン化アルキルと芳香族マグネシウム試薬を用いた場合、脱離反応等の副反応によりオレフィンの生成が優先し、目的生成物は低収率でしか生成しないという問題があった。



また、触媒量のN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を配位子として有する鉄錯体触媒を用いて、ハロゲン化アルキルと芳香族マグネシウム試薬とのカップリング反応を行う方法が知られている(Martin, R.: Furstner, A.; Angew. Chem., Int. Ed. 2004, 43, 3955-3957.)。しかしながら、この方法によれば、ハロゲン化アルキルとして、塩化物、フッ化物を用いた場合には全く反応が進まないという問題があった。
更に、触媒として三価の鉄アセチルアセトナート錯体を用い、ジアミン配位子を使わず、溶媒をテトラヒドロフラン(THF)からジエチルエーテルに変えた以外は上記と同様の方法でカップリング反応を行う方法も知られている(Nagano, T.; Hayashi, T. Org. Lett. 2004, 6, 1297-1299.)。しかしながら、この方法においても、ハロゲン化アルキルとして、塩化物、フッ化物を用いた場合には全く反応が進まないという問題があった。のみならず、収率は一般に低く、実用的でないという問題もあった。
このため、大量合成が可能であり、かつ安全性の高い方法で多種多様な第一級または第二級アルキル置換基を有する芳香族化合物を高収率で得る方法が望まれていた。

産業上の利用分野


本発明は、芳香族化合物の製造方法に関し、より詳しくは、鉄触媒を用いたハロゲン化アルキル等の脂肪族有機化合物と、芳香族有機金属試薬のクロスカップリング反応による芳香族化合物の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で示される芳香族化合物の製造方法であって、
R-A (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC2~C30アルキル基、置換基を有していてもよいC7~C30アリールアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルケニル基、置換基を有していてもよい(C3~C15シクロアルキル)C1~C15アルキル基、又は置換基を有していてもよいC3~C10飽和環基であって、前記環は、酸素原子又は式-N(B)-で示される基(式中、Bは水素原子、置換基を有していてもよいC1~C10炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC1~C10アルコキシカルボニル基である。)で中断されていてもよく、
Aは、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基又は置換基を有していてもよい複素芳香族基である。]
ジアミン化合物存在下、
下記式(3a)で示される芳香族マグネシウム試薬と、
A-Mg-Y1 (3a)
[式中、Aは上記の意味を有する。Y1は、臭素、ヨウ素、塩素、又は炭素アニオン配位子である。]
下記式(4b)で示される亜鉛化合物とを反応させ、反応混合物を得る工程と、
3-Zn-Z4 (4b)
[式中、Z3およびZ4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、臭素、ヨウ素、塩素、フッ素、又はトリフルオロメタンスルホニル基である。]
鉄触媒存在下、前記反応混合物と、下記式(2)で示される化合物と、
R-X (2)
[式中、Rは上記の意味を有する。Xは、ハロゲン原子又はスルホン酸エステルである。]
を反応させる工程とを含むことを特徴とする、芳香族化合物の製造方法。

【請求項2】
鉄触媒が、鉄塩又は鉄錯体であることを特徴とする、請求項1に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項3】
ジアミン化合物が、2座配位子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項4】
Rが、置換基を有していてもよい第一級アルキル基、又は、置換基を有していてもよい第二級アルキル基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項5】
Aが、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項6】
下記式(1)で示される芳香族化合物の製造方法であって、
R-A (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC2~C30アルキル基、置換基を有していてもよいC7~C30アリールアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルケニル基、置換基を有していてもよい(C3~C15シクロアルキル)C1~C15アルキル基、又は置換基を有していてもよいC3~C10飽和環基であって、前記環は、酸素原子又は式-N(B)-で示される基(式中、Bは水素原子、置換基を有していてもよいC1~C10炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC1~C10アルコキシカルボニル基である。)で中断されていてもよく、
Aは、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基又は置換基を有していてもよい複素芳香族基である。]
ジアミン化合物存在下、
下記式(3c)で示される芳香族リチウム試薬と、
A-Li (3c)
[式中、Aは上記の意味を有する。]
下記式(4b)で示される亜鉛化合物とを反応させ、
3-Zn-Z4 (4b)
[式中、Z3およびZ4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、臭素、ヨウ素、又は塩素である。]
次いで、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ガリウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる一種以上の金属を含むルイス酸金属化合物を反応させ、反応混合物を得る工程と、
鉄触媒存在下、前記反応混合物と、下記式(2)で示される化合物と、
R-X (2)
[式中、Rは上記の意味を有する。Xは、ハロゲン原子又はスルホン酸エステルである。]
を反応させる工程とを含むことを特徴とする、芳香族化合物の製造方法。

【請求項7】
鉄触媒が、鉄塩又は鉄錯体であることを特徴とする、請求項6に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項8】
ジアミン化合物が、2座配位子であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項9】
Rが、置換基を有していてもよい第一級アルキル基、又は、置換基を有していてもよい第二級アルキル基であることを特徴とする、請求項6~8のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項10】
Aが、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基であることを特徴とする、請求項6~9のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項11】
ルイス酸金属化合物が、下記式(4c)で示される金属化合物であることを特徴とする、請求項6~10のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
M(Z1n (4c)
[式中、Mは、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ガリウム、又はアルミニウムであり、Z1は、それぞれ独立して、同一又は異なって、臭素、ヨウ素、塩素、又は炭素アニオン配位子であり、nは2~4の整数である。]

【請求項12】
下記式(1)で示される芳香族化合物の製造方法であって、
R-A (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC2~C30アルキル基、置換基を有していてもよいC7~C30アリールアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC3~C30シクロアルケニル基、置換基を有していてもよい(C3~C15シクロアルキル)C1~C15アルキル基、又は置換基を有していてもよいC3~C10飽和環基であって、前記環は、酸素原子又は式-N(B)-で示される基(式中、Bは水素原子、置換基を有していてもよいC1~C10炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC1~C10アルコキシカルボニル基である。)で中断されていてもよく、
Aは、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基又は置換基を有していてもよい複素芳香族基である。]
ジアミン化合物存在下、下記式(3b)で示される芳香族亜鉛試薬と、
A-Zn-Y2 (3b)
[式中、Aは上記の意味を有する。Y2は、臭素、ヨウ素、又は塩素である。]
下記式(4a)で示されるマグネシウム化合物とを反応させ、反応混合物を得る工程と、
1-Mg-Z2 (4a)
[式中、Z1は、炭素アニオン配位子であり、Z2は、臭素、ヨウ素、又は塩素である。]
鉄触媒存在下、前記反応混合物と、下記式(2)で示される化合物と、
R-X (2)
[式中、Rは上記の意味を有する。Xは、ハロゲン原子又はスルホン酸エステルである。]
を反応させる工程とを含むことを特徴とする、芳香族化合物の製造方法。

【請求項13】
鉄触媒が、鉄塩又は鉄錯体であることを特徴とする、請求項12に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項14】
ジアミン化合物が、2座配位子であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項15】
Rが、置換基を有していてもよい第一級アルキル基、又は、置換基を有していてもよい第二級アルキル基であることを特徴とする、請求項12~14のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。

【請求項16】
Aが、置換基を有していてもよいC4~C20芳香族基であることを特徴とする、請求項12~15のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ 合成と制御 領域
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