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ルテニウム-ジアミン錯体及びこれを触媒とする光学活性アルコール類の製造方法 実績あり

国内特許コード P110004517
整理番号 E027P16
掲載日 2011年7月19日
出願番号 特願平08-284233
公開番号 特開平10-130289
登録番号 特許第3040353号
出願日 平成8年10月25日(1996.10.25)
公開日 平成10年5月19日(1998.5.19)
登録日 平成12年3月3日(2000.3.3)
発明者
  • 碇屋 隆雄
  • 松村 和彦
  • 橋口 昌平
  • 藤井 章雄
  • 野依 良治
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 高砂香料工業株式会社
  • JFEスチール株式会社
  • 武田薬品工業株式会社
発明の名称 ルテニウム-ジアミン錯体及びこれを触媒とする光学活性アルコール類の製造方法 実績あり
発明の概要 【課題】 不斉収率に優れた触媒と、これを用いた反応方法を提供する。
【解決手段】 次式(I)
【化1】
で表わされる光学活性ルテニウム-ジアミン錯体を提供し、これを用いてラセミ体の2級アルコール類あるいはメソ型のジオール類を水素移動反応させて光学活性2級アルコールを製造する。(式中のR1 およびR2 は、アルキル基、アルキル基を置換してもよいフェニル基またはシクロアルキル基、もしくは両者結合して非置換またはアルキル基置換脂環式基、R3 は、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ナフチルスルホニル基、カンファースルホニル基、アルキル基、アルコキシル基、或いはハロゲン原子が置換していてもよいベンゼンスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基が置換していてもよいベンゾイル基を示し、R4 は水素原子又はアルキル基を示し、Xはアルキル基置換を有していてもよい芳香族化合物を示し、mおよびnは同時に0または1である)
従来技術、競合技術の概要


従来より、多くの遷移金属錯体が有機金属反応の触媒として使用されており、特に、貴金属錯体は、高価であるが、活性が高く安定で取扱いが容易であるため、これを触媒として使用する多くの合成反応が開発され、とりわけ不斉錯体触媒をもちいる不斉合成反応の進展は目覚ましく、これまでの手段では効率の悪い有機合成反応の高効率化を実現した報告が数多くなされている。
その中でも、とりわけ、光学活性なホスフィン配位子をつ不斉錯体を触媒とする不斉反応は非常に多く開発され、工業化されているものもある(Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis,Ed., R.Noyori)。ルテニウム、ロジウム、イリジウム等の遷移金属に光学活性な窒素化合物を配位させた錯体には、不斉合成反応の触媒として優れた性能を有するものが多く、この触媒の性能を高めるために、これまでに特殊な構造の光学活性な窒素化合物が数多く開発されてきた(Chem.Rev., Vol.92,1051-1069頁(1992))。
例えば、(1)Tetrahedron Asymmetry, Vol. 6,705-718頁(1995)に記載されている光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミン類又はシクロヘキサンジアミン類を配位子とするロジウム-ジアミン錯体、(2)Tetrahedron, Vol. 50,4347-4354頁(1994)に記載されている光学活性なビスアリールイミノシクロヘキサン類を配位子とするルテニウム-イミド錯体、(3)特開昭62-281861及び特開昭63-119465に記載されているピリジン類を配位子とするイリジウム-ピリジン錯体、(4)特開昭62-273990に記載されている光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミン類又はシクロヘキサンジアミン類を配位子とするイリジウム-ジアミン錯体、(5)J.Am.Chem.Soc., Vol.117,7562-7563頁(1995)、J.Am.Chem.Soc., Vol.118,2521-2522頁(1996)及びJ.Am.Chem.Soc., Vol.118,4916-4917頁(1996)に記載されている光学活性なN-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミンをルテニウム(以下、p-TsNHCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 と記す)に配位させたRuCl〔p-TsNCH(C6 5 )CH(C6 5 )NH2 〕(arene) (クロロ-(N-p-トルエンスルホニル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン)(アレーン)ルテニウム)(arene は置換基を有してもよいベンゼンを示す。)のルテニウム-ジアミン錯体などが報告されている。
しかし、これらの錯体を用いても対象とする反応又はその反応基質によって触媒活性、持続性、光学純度が不十分である等の実際の工業化に当たっては問題のある場合があった。一方、光学活性2級アルコール類は医薬、液晶化合物、天然物合成の不斉合成等で有用な中間体である。従来より、光学活性2級アルコール類を不斉合成する方法としては、1)パン酵母などの酵素を用いる方法や、2)金属錯体触媒を用いてカルボニル化合物を不斉水素化する方法などが知られている。とくに後者の方法においては、これまでにも多くの不斉触媒反応の例が報告されている。例えば、(1)Asymmetric Catalysis In Organic Synthesis,56-82頁(1994)Ed.R.Noyori に詳細に記載されている光学活性ルテニウム触媒による官能基を有するカルボニル化合物の不斉水素化方法や、(2)Chem.Rev.,Vol.92,1051-1069頁(1992)に記載されているルテニウム、ロジウム、イリジウムの不斉錯体触媒による水素移動型還元反応による方法、(3)油化学828-831頁(1980)及びAdvances in Catalysis,Vol.32,215頁(1983)Ed.Y.Izumiに記載されている酒石酸を修飾したニッケル触媒を用いて不斉水素化する方法、(4)Asymmetric Synthesis, Vol.5,Chap. 4(1985)Ed.J.D.Morrison 及びJ.Organomet,Chem.,Vol.346,413-424頁(1988)に記載されている不斉ヒドロシリル化による方法、(5)J.Chem.Soc.,Perkin Trans. 1,2039-2044頁(1985)及びJ.Am.Chem.Soc., Vol.109,5551-5553頁(1987)に記載される不斉配位子の存在下にボラン還元する方法などが知られている。
しかしながら、酵素を用いる方法は比較的高い光学純度のアルコール類を得ることができるものの反応基質の種類に制約があり、しかも得られるアルコール類の絶対配置も特定のものに限られるという欠点がある。また、遷移金属の不斉水素化触媒及び水素移動型還元反応触媒による方法の場合には、原料となるカルボニル化合物が不可欠である。
カルボニル化合物を不斉還元として光学活性2級アルコールを合成するほかに、反応基質によっては、良好な光学純度の得難いもの、還元反応が進行しにくいものなどの場合には、水素移動型還元が可逆的反応であることから、逆反応であるアルコールの脱水素型酸化反応を活用して、予め、ラセミ体の2級アルコールを合成し、光学活性体を合成する方法が知られている(Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis,Ed., R.Noyori)。しかしながら、光学活性2級アルコールを高効率に触媒的に得る方法はいまだ報告されていない。
このため、従来より、光学活性アルコール類を製造するための一般性の高い、しかも高活性な触媒の開発とそれを用いての新しい合成方法の実現が望まれていた。更に、ラセミ体の2級アルコール類あるいはメソ型のジオール類の不斉水素移動反応による高効率速度論的分割法としては、いまだその報告はない。以上のように、不斉合成反応の触媒としてより高い性能を有する触媒を提供するために、これまでに特殊な錯体が多数開発されているが、これらも対象とする基質や反応によって選択性、転換率、触媒活性、光学純度等の面で充分に満足できない場合があった。そこで、この発明は、従来の触媒に比べて高い触媒能を有する錯体を提供し、さらに、医薬等の合成中間体として重要な光学活性アルコール類のより有用な製造方法を提供することを目的としている。

産業上の利用分野


この発明は、各種有機合成反応、特に水素移動型不斉還元反応等の触媒として有用な光学活性ルテニウム-ジアミン錯体と、これを用いた光学活性2級アルコール類の製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式(I)
【化1】
(式中、*は不斉炭素原子を示し,R1 及びR2 は、同一であっても互いに異なっていてもよく、アルキル基、アルキル基を有していてもよいフェニル基またはシクロアルキル基、もしくはR1 及びR2 が一緒になって非置換またはアルキル基置換の脂環式環を形成することを示し、R3 は、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ナフチルスルホニル基、カンファースルホニル基、もしくはアルキル基、アルコキシル基、またはハロゲン原子が置換していてもよいベンゼンスルホニル基、アルコキシカルボニル基、またはアルキル基が置換していてもよいベンゾイル基を示し、R4 は、水素原子またはアルキル基を示し、Xは、アルキル基を置換していてもよい芳香族化合物を示し、mおよびnは、同時に0また1を示す)で表わされる光学活性ルテニウム-ジアミン錯体。

【請求項2】
1 及びR2 が各々フェニル基であるか、一緒になって非置換またはアルキル基置換の脂環式環を形成している請求項1の光学活性ルテニウム-ジアミン錯体。

【請求項3】
ラセミ体の2級アルコール類あるいはメソ型のジオール類を、請求項1の光学活性ルテニウム-ジアミン錯体の存在下に水素移動反応させることを特徴とする光学活性2級アルコール類の製造方法。

【請求項4】
ラセミ体の2級アルコール類が、一般式(II)で表わされるラセミ体の2級アルコール類または一般式(III)で表わされるメソ型のジオール類である請求項3の製造方法。
【化2】
(式中、R5 は、置換基を有してもよい単環または多環の芳香族炭化水素基、もしくは異項原子を含む単環または多環のヘテロ環基、あるいはフェロセニル基を、R6 は、置換基を有してもよい飽和または不飽和の炭化水素基を示し、あるいはR5 とR6 は結合して、置換基を有してもよい、環状ケトンを与える飽和または不飽和の脂環式基を形成する。また、R7 およびR8 は、各々、同じく、置換基を有してもよい飽和または不飽和の炭化水素基を示し、あるいはR7 およびR8 は結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和の脂環式基を形成する。nは1または2である。)
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 野依分子触媒プロジェクト 領域
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