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広い基質選択性を有する中性アミノ酸トランスポーター及びその遺伝子 コモンズ

国内特許コード P110004615
整理番号 K010P03
掲載日 2011年7月22日
出願番号 特願平11-158571
公開番号 特開2000-342270
登録番号 特許第4326626号
出願日 平成11年6月4日(1999.6.4)
公開日 平成12年12月12日(2000.12.12)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発明者
  • 遠藤 仁
  • 金井 好克
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 広い基質選択性を有する中性アミノ酸トランスポーター及びその遺伝子 コモンズ
発明の概要 広い基質選択性を持ち、輸送系Lの機能を担う、LAT1とは異なる中性アミノ酸トランスポーターの遺伝子及びその遺伝子がコードするポリペプチドである中性アミノ酸トランスポーターの解明。
LAT1のcDNAの翻訳領域の塩基配列を用いてEST(expressed sequence tag)データベースより、LAT1と類似の塩基配列を同定した。その塩基配列のプローブを作製してcDNAライブラリーをスクリーニングし、新規タンパク質をコードする遺伝子をクローニングした。そして、この遺伝子の産物をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させて、この遺伝子の産物が機能を発揮するためには4F2hcが必須であることを解明した。また、発現する機能は、中性アミノ酸輸送系Lに相当するが、LAT1とは異なり広い基質選択性を持つことを確認し、新規な中性アミノ酸トランスポーターLAT2を解明した。
この中性アミノ酸トランスポーターLAT2は、アミノ酸輸送活性化因子4F2hcと共存して、グリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンなどの中性アミノ酸を輸送する(取り込む)。また、L-DOPAを受け入れることから、中性アミノ酸類似の構造を持つ薬物を輸送する広い基質選択性を持つと考えられる。
LAT1が腫瘍細胞型の輸送系L中性アミノ酸トランスポーターであるのに対し、LAT2は非腫瘍細胞型の輸送系L中性アミノ酸トランスポーターである。
具体的に、配列表の配列番号1は、ラット小腸由来の中性アミノ酸トランスポーター(ラットLAT2)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約4.1kbp)を示し、配列番号2にはその翻訳領域にコードされたタンパク質のアミノ酸配列(533アミノ酸)を示す。配列番号3は、ラットの4F2hcのcDNAの塩基配列(1940bp)を示し、配列番号4はそれによって翻訳される蛋白質(527アミノ酸)を示す。配列番号5はヒト腎由来の中性アミノ酸トランスポーター(ヒトLAT2)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約4.2kbp)を示し、配列番号6にはその翻訳領域にコードされたタンパク質のアミノ酸配列(535アミノ酸)を示す。配列番号7は、ヒト胎盤由来の4F2hc(ヒト4F2hc)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約1.9kbp)を示し、配列番号8にはその翻訳領域にコードされたタンパク質のアミノ酸配列(524アミノ酸)を示す。
広い基質選択性を持つ中性アミノ酸トランスポーターLAT2とその遺伝子は、薬物や毒物の細胞膜通過や血液・組織関門通過のインビトロでの解析など、薬物動態や毒物動態の分子レベルでの解明、および細胞膜や血液・組織関門を効率良く透過する薬物や、毒物の透過を抑制する薬物の開発に有用と考えられる。また、腫瘍細胞型トランスポーターでLAT1の抑制薬に細胞増殖抑制効果があることから、LAT1を抑制し、非腫瘍細胞型トランスポーターLAT2を抑制しない化合物を見い出すことにより、副作用の少ない抗腫瘍薬を開発できると考えられる。
従来技術、競合技術の概要
細胞は、栄養としてアミノ酸を常時取り込むことを必要するが、この機能は細胞膜に存在する膜タンパク質であるアミノ酸トランスポーターによって担われている。栄養としてアミノ酸を常時取り込むことがアミノ酸トランスポーターの元来の役割であるが、多細胞生物においてはアミノ酸トランスポーターが組織に組み込まれることにより、その組織の形態的特徴を反映した多彩な機能が賦与されている。例えば、上皮組織における上皮輸送と神経組織における放出された神経伝達物質の回収などが知られている。
アミノ酸トランスポーターは、輸送するアミノ酸の種類に応じて、大きく塩基性アミノ酸トランスポーター、酸性アミノ酸トランスポーター、及び中性アミノ酸トランスポーターに分けられる。塩基性アミノ酸は主にNa非依存性輸送系yやb0,+によって、酸性アミノ酸はNa依存性輸送系XA,Gによって輸送される。多くのアミノ酸が属する中性アミノ酸では、Na非依存性輸送系L、Na依存性輸送系A、ASC及びBが重要であるとされている。
特に中性アミノ酸輸送系Lは、多くの必須アミノ酸の細胞への供給を担当することから、細胞栄養において最も重要な輸送機構のひとつであると同時に、腸管からの吸収、腎尿細管からの再吸収、血液・組織関門の通過においても重要な役割を果たしている。また、中性アミノ酸輸送系Lは、基質選択性が広いことから、中性アミノ酸類似物質もしくは中性アミノ酸類似の構造を有する薬物や毒物を輸送することでも知られていた。
【0003】
中性アミノ酸輸送系Lは、もともとは、腫瘍細胞株で始めて記載され、その後、培養細胞、膜小胞標本、摘出臓器標本もしくは生体内(in vivo)標本を用いて検討されてきた[Christensen, Physiol.Rev.,70,43 (1990)]。中性アミノ酸輸送系Lは、ナトリウム非依存的な、すなわちその機能にナトリウムイオンを必要としないトランスポーターである。その輸送基質選択性や輸送特性は、細胞や組織により多少の差異があることが知られていた。
【0004】
しかし、従来の方法では、中性アミノ酸及びその類似物質の輸送の詳細や、細胞の生存もしくは増殖に対する中性アミノ酸輸送系Lの役割を解析することは困難であり、中性アミノ酸輸送系Lの機能を担う中性アミノ酸トランスポーターの遺伝子を単離して詳細な機能解析を可能とすることが望まれていた。
【0005】
中性アミノ酸トランスポーターとしては、ナトリウム依存的なトランスポーターとして、ASCT1およびASCT2がクローニングされている[Kanai,Curr.Opin.Cell Biol., 9,565 (1997)]。しかし、これらは、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミンを主な基質とするものであり、中性アミノ酸輸送系Lとは基質選択性が異なっている。また、グリシントランスポーターとプロリントランスポーターがクローニングされているが[Amara and Kuhar,Annu.Rev.Neurosci., 16,73 (1993)]、これも中性アミノ酸輸送系Lとは異なる。
【0006】
トランスポーター自体ではないが、アミノ酸トランスポーターの活性化因子であると考えられている膜貫通構造を一回しか持たない二型膜糖タンパク質であるrBAT及び4F2hc(4F2 heavy chain(腫瘍細胞や活性化リンパ球の細胞表面抗原として見出された。))のcDNAがクローニングされており、それらをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させると中性アミノ酸とともに塩基性アミノ酸の取り込みを活性化することが知られている[Palacin,J., Exp. Biol., 196,123 (1994)]。
【0007】
中性アミノ酸輸送系Lの一つのアイソフォームとして中性アミノ酸トランスポーターLAT1がクローニングされた[Kanai, et al.,J.Biol.Chem., 273,23629 (1998)]。LAT1は、補助因子4F2hcと共存することによってのみ機能することが示された。LAT1はNaに依存せず、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジンを輸送する交換輸送活性を示し、以前に腫瘍細胞で記載された輸送系Lの活性と類似の機能特性を示す。LAT1は培養腫瘍細胞株およびヒト悪性腫瘍組織で高発現する。また、LAT1は、グリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニンなどの小型の中性アミノ酸は輸送しない。
【0008】
さらに、中性アミノ酸トランスポーターLAT1の類似蛋白質として、中性アミノ酸及び塩基性アミノ酸を輸送する輸送系yLの機能を有するyLAT1とyLAT2がクローニングされた[Torrents, et al.,J.Biol.Chem., 273,32437 (1998)]。また、yLAT1、yLAT2共に補助因子4F2hcと共存することによってのみ機能することが示された。yLAT1とyLAT2は、中性アミノ酸としてはグルタミン、ロイシン、イソロイシンを主に輸送し、中性アミノ酸に対する基質選択性は狭い。
産業上の利用分野
本発明は、中性アミノ酸及びその類似物質の輸送に関与する新規な蛋白質、それをコードする遺伝子、及びそれを用いた薬物のその遺伝子がコードするタンパク質に関する。また、本発明は、当該タンパク質を用いて被検物質の細胞内への取り込み又は細胞外への放出についての動態を測定する方法、及び当該方法を用いた被検物質のスクリーニング方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 中性アミノ酸トランスポーターであって、中性アミノ酸であるグリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンに対する広い基質選択性を有し、アミノ酸輸送活性化因子4F2hcにより活性化され、配列番号2又は6で示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2又は6で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項2】 促通拡散型の中性アミノ酸トランスポーターである請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】 ヒト又はラット由来である請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項4】 臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求項1~3のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項6】 配列番号1又は5で示される塩基配列、又は、哺乳動物由来であり配列番号1又は5で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る80%以上の塩基配列のホモロジーを有する塩基配列からなり、中性アミノ酸であるグリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンに対する広い基質選択性を有し、アミノ酸輸送活性化因子4F2hcにより活性化されるタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項7】 ヒト又はラット由来である請求項5又は6に記載の遺伝子。
【請求項8】 臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求項に記載の遺伝子。
【請求項9】 請求項5~のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の中のタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミド。
【請求項10】 プラスミドが、発現プラスミドである請求項9に記載のプラスミド。
【請求項11】 請求項9又は10に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞。
【請求項12】 配列番号1又は5で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含み、請求項5~のいずれかに記載の遺伝子を検出するためのプローブとして使用するヌクレオチド。
【請求項13】 配列番号1又は5で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含み、請求項5~のいずれかに記載の遺伝子の発現を変調させるために使用するヌクレオチド。
【請求項14】 請求項1~4のいずれかに記載するタンパク質に対する抗体。
【請求項15】 請求項1~4のいずれかに記載のタンパク質又は当該タンパク質を含有する細胞を用いて、該タンパク質の有する中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力に対する被検物質の基質としての作用を測定する方法。
【請求項16】 輸送活性化因子4F2hcを併用する請求項15に記載の方法。
【請求項17】 被検物質が薬物又は毒物若しくは外来性異物である請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】 請求項15~17のいずれかに記載の方法により、腫瘍細胞型中性アミノ酸トランスポーターLAT1と対比して、請求項1~4のいずれかに記載の非腫瘍細胞型中性アミノ酸トランスポーターにより細胞に取り込まれ易い又は取り込まれにくい物質をスクリーニングする方法。
【請求項19】 腫瘍細胞型中性アミノ酸トランスポーターLAT1には取り込まれ易いが、請求項1~4のいずれかに記載の非腫瘍細胞型中性アミノ酸トランスポーターLAT2には取り込まれにくい物質をスクリーニングする請求項18に記載の方法。
【請求項20】 脳、胎盤もしくは精巣におけるスクリーニングである請求項18に記載の方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ 素過程と連携 領域
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