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局所電界分布可視化方法とその装置

国内特許コード P110004623
整理番号 K029P26
掲載日 2011年7月25日
出願番号 特願2010-502901
登録番号 特許第5346918号
出願日 平成21年3月13日(2009.3.13)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
国際出願番号 JP2009054901
国際公開番号 WO2009113670
国際出願日 平成21年3月13日(2009.3.13)
国際公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
優先権データ
  • 特願2008-064682 (2008.3.13) JP
  • 特願2008-081187 (2008.3.26) JP
発明者
  • 藤田 淳一
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 局所電界分布可視化方法とその装置
発明の概要 試料2の近傍に形成される局所電界の分布を可視化するものであり、試料2の近傍に形成された局所電界を通過する1次電子線1を局所電界により偏向させ、偏向した1次電子線1の軌道の下流側に設けた検出素子から生成放出した2次電子を2次電子検出器6で検出し、その検出した信号による画像を、試料2を走査して得られる走査電子線画像と合成することにより、前記局所電界の分布を多階調で可視化する。これにより、通常の電子線走査光学系を用いて、局所電界分布を1度の画像走査で多階調的に、かつリアルタイムで求めることができる局所電界分布可視化方法が提供可能となる。
従来技術、競合技術の概要


局所電界を可視化することは、ナノ構造体としての固体デバイス、CNT(カーボンナノチューブ)トランジスタ、発光素子、電子放出素子、あるいはより実際的にはLSIの故障診断解析やゲート部位の欠陥等などの性能、機能の評価、故障解析にとって重要な手がかりを与えるものとして期待されている。
このようなナノ構造体の開発や解析にとって重要性が高まりつつある局所電界を可視化する方法としては、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いた局所電界可視化方法が報告されている(非特許文献1)。図11にその方法の概念図を示す。先端のとがった導電性プローブに、陽極を対向配置し、電圧を印加すると、プローブ先端には非常に強い局所電界が誘起される。プローブが導電性である場合、プローブ全体は同一電位である。プローブが電界中に置かれたとき、すなわち空間に電位勾配が存在するときでも、プローブの電位は全体が同一電位とならなくてはならない。このために、プローブ先端にみかけの電荷が誘導され、プローブ全体が同一電位になるように調整される。つまり、電位が印加されたプローブ先端にはこの見かけの電荷によって、先端近傍で非常に強い電界である局所電界が形成されることになる。この強い局所電界中を走査透過電子顕微鏡の1次電子線が通過すると、その軌道は大きく偏向される。つまり、1次電子線の軌道の偏向は、プローブ先端に誘起された点電荷とのクーロン力によって電子軌道が偏向された散乱、すなわちRutherford散乱と考えることができる。



このために走査透過電子顕微鏡の透過像には、電子線が散乱されて、筐体下部に設置された電子線検出器(STEM検出器)からそれて、散乱を受けた領域では検出信号が出てこないために、プローブ先端を囲むように黒い領域が出現する。



Rutherford散乱では、電子は双曲線軌道を描く。無限遠からの軌道は点電荷に対し一定の距離b(衝突径数)をもって近づく。その後、点電荷とのクーロン相互力で軌道が曲げられ、偏向する。ここで衝突径数bは次式で表される。



【数1】




上記式中、eは素電荷、zeはプローブ先端に見かけ上誘起された点電荷、mは電子質量、εは真空の誘電率、vは1次電子線の速度、θは散乱角である。



この散乱の結果、1次電子線は電子線検出器の外に軌道がそれて、黒い影が形成される。画像の完全に黒い部分、つまりプローブや電極の黒さを与える輝度と同じレベルの黒さの部分を抽出すれば、走査電子が完全に電子線検出器の外側にずれるほどに偏向を受けた領域が特定される。もちろん走査透過電子顕微鏡はコントラストと輝度の調整が任意に可能であり、明視野像中の最暗部が飽和していないことが前提となる。



プローブ先端と陽極とを、図12(a)に示すように10μmのギャップを置いて配置し、258Vの電位を与えたときに観測されるプローブ先端の黒い領域から、プローブと同じレベルの輝度を抽出した結果が図12(b)に示す白い円領域である。この円領域内に入射した1次電子線はすべて電子線検出器の外にそれているわけで、このときの円領域の半径1.5μmが衝突径数bとなる。散乱角θは電子線検出器の半径とプローブ先端との距離で決まり、円領域の境界上での電界Eは次式で表される。



【数2】




相対論適用外の低加速の1次電子線を用いた場合には電界Eは次式で表される。



【数3】




ここで、Vは1次電子線の加速電圧である。



この関係式を用いることにより、電子散乱によって出現した黒い影の大きさから、散乱角を求めることが可能となり、影の縁での局所電界強度を求めることができる。
【非特許文献1】
J. Fujita et al. “In-situ Visualization of Local Field Enhancement in an Ultra Sharp Tungsten Emitter under a Low Voltage Scanning Transmission Electron Microscope” Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) 498-501

産業上の利用分野


本発明は、局所電界分布可視化方法とその装置に関し、より詳しくは、電子線走査光学系を用い、試料の近傍に形成される局所電界の分布を多階調でリアルタイムに可視化する技術に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
電子線走査光学系において、試料の近傍に形成される局所電界の分布を可視化する方法であって、
前記試料の近傍に形成された局所電界を通過する1次電子線を前記局所電界により偏向させ、偏向した1次電子線の軌道の下流側に設けた検出素子から生成放出した2次電子を2次電子検出器で検出し、その検出した信号による画像を、試料を走査して得られる電子線走査画像と合成することにより、前記局所電界の分布を多階調で可視化することを特徴とする局所電界分布可視化方法。

【請求項2】
前記試料が突出部を有し、該突出部の近傍に前記局所電界が形成されることを特徴とする請求項1に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項3】
前記試料に電位を付与することを特徴とする請求項1または2に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項4】
前記検出素子として、一定間隔離間して設けられた複数の線状部よりなるグリッド構造を持つ検出素子を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項5】
前記検出素子として、2組の複数の線状部よりなるグリッド構造が互いに直交して設けられた検出素子を用いることを特徴とする請求項4に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項6】
前記検出素子として、基板上にグリッドが形成され、前記グリッドは金属元素で構成され、前記グリッドの構成元素と前記基板の構成元素とは1次電子線の衝撃に対する2次電子発生効率が異なるものである検出素子を用いることを特徴とする請求項4または5に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項7】
前記グリッドがAl、CuまたはAuから構成された検出素子を用いることを特徴とする請求項6に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項8】
前記グリッドにバイアス電圧を印加することを特徴とする請求項6または7に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項9】
前記グリッドに印加するバイアス電圧の強度を調整することにより、前記局所電界の分布を表す画像のコントラストを調整することを特徴とする請求項8に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項10】
前記検出素子を構成するグリッド線をそれぞれ個別にA/D変換手段と接続し、前記A/D変換手段からの信号に基づいて、前記局所電界による1次電子線の散乱角を検出することを特徴とする請求項2ないし9のいずれか一項に記載の局所電界分布可視化方法。

【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の可視化方法によって、前記試料の局所電界の分布特性を評価することを特徴とする局所電界分布特性の評価方法。

【請求項12】
試料の機械的歪み又は動作の局所電界への依存性を評価することを特徴とする請求項11に記載の局所電界分布特性の評価方法。

【請求項13】
電子線走査光学系において試料の近傍に形成される局所電界の分布の多階調での可視化可能とする装置であって、少くとも、(a)試料への1次電子線の走査照射部、(b)この走査照射部の下方に設けた電子線検出器、(c)試料に形成された局所電界により偏向された1次電子線の検出素子、(d)1次電子線の検出素子から生成放出された2次電子を検出する2次電子検出部、(e)2次電子検出部からの信号の画像変換部、(f)電子線検出器からの信号の画像変換部、(g)前記画像変換部(e)(f)からの画像を合成表示する画像合成表示部とを有していることを特徴とする局所電界分布可視化装置。

【請求項14】
前記試料が突出部を有し、該突出部の近傍に前記局所電界が形成されることを特徴とする請求項13に記載の局所電界分布可視化装置。

【請求項15】
前記試料に電位を付与する電位付与部を設けたことを特徴とする請求項13または14に記載の局所電界分布可視化装置。

【請求項16】
前記検出素子(c)は、一定間隔離間して設けられた複数の線状部よりなるグリッド構造を持つ検出素子であることを特徴とする請求項13ないし15のいずれか一項に記載の局所電界分布可視化装置。

【請求項17】
前記検出素子(c)は、2組の複数の線状部よりなるグリッド構造が互いに直交して設けられた検出素子であることを特徴とする請求項16に記載の局所電界分布可視化装置。

【請求項18】
前記グリッドにバイアス電圧を印加するグリッドバイアス電圧印加部を有していることを特徴とする請求項16または17に記載の局所電界分布可視化装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ ナノ製造技術の探索と展開 領域
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