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新規セレン含有化合物

国内特許コード P110004670
掲載日 2011年8月2日
出願番号 特願2009-282034
公開番号 特開2011-121914
登録番号 特許第5669056号
出願日 平成21年12月11日(2009.12.11)
公開日 平成23年6月23日(2011.6.23)
登録日 平成26年12月26日(2014.12.26)
発明者
  • 山下 由美子
  • 山下 倫明
  • 藪 健史
出願人
  • 国立研究開発法人水産研究・教育機構
発明の名称 新規セレン含有化合物
発明の概要 【課題】新規セレン含有化合物の提供。該セレン含有化合物の製造法、および該セレン含有化合物を用いる分析手法や抗酸化剤としての該セレン含有化合物の用途の提供。
【解決手段】試料を有機溶媒または水によって抽出し、精製することによって化学式1~4に表される新規なセレン含有化合物を製造した。またこの新規セレン含有化合物を用いる新たな分析方法や抗酸化剤としての用途を見出した。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


セレンは、ヒトにとって必須の微量元素であり、生体内では、酵素やタンパク質の一部を構成し、抗酸化反応において重要な役割を担っている(非特許文献1~2)。セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており(非特許文献3)、日本人が多く摂取するさまざまな魚種の魚肉にも豊富に含まれている(非特許文献1~4)。
特に,マグロ類の血合肉や鯨肉はセレンを最も高濃度に含むことが知られており(非特許文献5~7)、クロマグロにおける各臓器のセレン含量として血液(15.2ppm)、腎臓(8.3ppm)、脾臓(7.6ppm)、表層血合筋(6.1ppm)、真層血合筋(5.9ppm)、心臓表層血合筋(4.4ppm)、肝臓、表層血合筋(4.1ppm)、鰓(2.6ppm)、脳(1.4ppm)、普通筋(0.57ppm)等が調べられている。臓器によっては4ppmを超えるセレンが含まれていることから、これらが有機セレンの供給源として利用可能であることが示されている(非特許文献8)。しかし、このような各臓器に含まれるセレンの生化学的性状は不明であり、また、高純度の抽出物を得ることが困難であるため、有効に利用されていないのが現状である。



食品中のセレンの多くは,タンパク質の構成アミノ酸であるセレノシステイン残基として存在することから、その消化・吸収はタンパク質の吸収と同時に行われると考えられており、消化管からの吸収率は50%以上であると推定されている(非特許文献1)。ヒトの体内には体重1kg当たり約250μgのセレンが存在し、尿中への排泄によって体内での恒常性が保たれている(非特許文献1)。
酵素・タンパク質のセレノシステイン残基は,セレンタンパク質の活性中心のセレノール基に位置している。活性酸素やヒドロペルオキシドの分解除去を担うグルタチオンペルオキシターゼおよびチオレドキシンレダクターゼ、甲状腺ホルモンの生成に関与する5’-ヨードチロニン脱ヨード酵素、血漿中に分布するセレノプロテインP等、いずれのセレンタンパク質も生体抗酸化作用に対して重要な役割を担っている(非特許文献1)。これらの知見から魚肉に高濃度に含まれる有機セレンはグルタチオンペルオキシダーゼ等のセレンタンパク質とその分解ペプチド・アミノ酸であると考えられていた(特許文献1)。



セレンが不足すると、過酸化物による細胞障害が生じることが知られている(非特許文献1)。セレンの欠乏症の一つである心筋症(克山病)は、低セレン地域である中国東北部に見られるが、亜セレン酸塩の投与で発症が予防される(非特許文献1)。また、低セレン地域である中国北部やシベリアの一部の思春期の子供に認められるカシン・ベック症(地方病性変形性骨軟骨関節症)も、セレン欠乏が原因となっている(非特許文献1)。 心臓疾患の罹患率と血液中のセレン濃度を比較した疫学調査から低セレン状態が冠動脈疾患、すなわち狭心症や心筋梗塞と相関するとの報告もある。フィンランド東部はセレン欠乏による心臓血管系疾患の死亡率が高いことが報告されているが、血清中のセレン濃度が45μg/L以下の群で心臓疾患の発症率が高いことが知られている(非特許文献1)。



さらに、筋肉痛、皮膚の乾燥、肝壊死等がセレン欠乏によって生じることが知られている(非特許文献1)。セレン欠乏は、肺がん、大腸がん、前立腺がん、直腸がん、乳がん、白血病等の発がんのリスクを高めることが報告されており(非特許文献1、10)、がんの手術や放射線治療中に1日200μgの亜セレン酸ナトリウムを補充すると細胞性免疫の応答性が増強し、がん細胞に対する細胞性免疫応答を補強されることが報告されている(非特許文献8)。また、セレンはがん細胞のシグナル伝達系に作用して細胞増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を誘導する効果も報告されている(非特許文献11)。そして、1日に100~200μgのセレンは発ガン物質によるDNAの変異や酸化障害を抑制し、がんの進展を抑える効果があること、ただし、上限は400μgであってそれ以上の過剰摂取は有害である可能性が指摘されている(非特許文献12)。このようにセレンは発がん抑制やがんの治療や再発予防に有効であると考えられている。



一方で,セレンの過剰摂取は毒性が強く、爪の変形や脱毛、胃腸障害、神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全等を引き起こすことが知られている(非特許文献1)。
セレンの食事摂取基準は、推定平均必要量が25(20)μg、推奨量が30(25)μg、上限量が450(350)μgに設定されている(数値は成人男性、かっこ内は成人女性)(厚生労働省、平成16年11月22日、非特許文献13)。ただし、30~49歳の男性の推定平均必要量が30μg,推奨量は35μgである(非特許文献13)。また、わが国では、セレン上限量を脱毛と爪の脆弱化と脱落を指標として、中国の湖北省恩施地域の調査より得られた800μg Se/日とし、セレン上限量は100~450 μg Se/日に設定されている(非特許文献13、16)。



近年、セレン欠乏に関わる疾病の予防や治療に無機態セレンおよびセレノメチオニンを有効成分とする有機態セレンを含有するサプリメント剤が利用されている。また、無機セレンを含む培地中で酵母を培養することによって、セレノメチオニンを高濃度に含むセレン含有酵母が有機セレン含有化合物の供給源として利用されている(非特許文献1)。食品、化粧品および飼料のセレン含量を高めるため、セレン含有酵母が利用されている。



また、ヒト、家畜、魚介類等の生体に効率良く利用されるセレンを供給するため、魚肉や内臓等セレン含量が0.5ppmを超える原料から有機セレンを抽出することが可能であり、これらの組織の凍結乾燥や抽出物の濃縮によって、5ppmを超えるセレン含有素材を提供することができ、血合肉から総セレンが18~103.5ppm程度含まれるタンパク質濃縮物および塩酸加水分解物が試作されている(特許文献1)。しかしながら、マグロ類等大型魚・肉食魚の筋肉や内臓には0.5ppmを超える比較的高濃度のメチル水銀が含まれるため、未精製の乾燥粉末、凍結乾燥品、濃縮物、プロテアーゼによる分解物等は比較的高濃度のセレンが含まれるが、メチル水銀もセレンと同時に濃縮されるため、高濃度の水銀も含まれる。また、カドミウムも魚介類の内臓に1ppm以上含まれている。このように魚介類の血合肉や内臓は、有害重金属のメチル水銀およびカドミウムを含む場合があるので、医薬品、食品、飼料等への利用に適さない。そのため、魚介類組織由来の濃縮物・抽出物から有機セレン含有化合物を精製して有害重金属を除去して利用する必要がある。



生体内および食品中のセレンの分析は、硝酸・過塩素酸混液による湿式加熱分解後、2,3-ジアミノナフタレン(DAN)と反応させ、Se(IV)との錯体形成反応により生じる4,5-ベンゾピアセレノール(Se-DAN)の蛍光を利用する方法が報告されている(非特許文献14)。また,HPLCにオンラインで連結したICP-MSを用いて、環境中の無機態および有機態のセレンの分子種同定を行う分析法も報告されている(非特許文献15)。しかし、生体および食品中のタンパク質やアミノ酸を含む有機セレン含有化合物を同時に分析することは知られていない。



なおセレンは工業製品として、光受容体・半導体材料、ガラス、セラミック、プラスチック用の赤~橙色の顔料、ガラス製造における消色剤・消泡剤、冶金添加剤等に利用されている(非特許文献16)。

産業上の利用分野


本発明は新規のセレン含有化合物に関する。さらに、該セレン含有化合物の製造法や、抗酸化剤としての用途、該セレン含有化合物を標準物質として用いる分析方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
化学式1で表されるセレン含有化合物。
[化学式1]


(式中、
Rは水素を表すか、
エルゴチオニル基、グルタチオニル基、システイニル基を表す。)

【請求項2】
化学式4で表されるセレン含有化合物。
[化学式4]



【請求項3】
化学式2または化学式3で表されるセレン含有化合物。
[化学式2]


[化学式3]



【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を標準物質として使用するセレン含有化合物の分析方法。

【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする医薬品。

【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする機能性食品。

【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする栄養補助剤。

【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする食品添加物。

【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする動物医薬品。

【請求項10】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする飼料添加物。

【請求項11】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする化粧品。

【請求項12】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする培地添加物。

【請求項13】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする抗酸化剤。

【請求項14】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とするヘム鉄タンパク質のメト化防止剤。

【請求項15】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を使用したヘモグロビンまたはヘモグロビンと同等の作用を有する酸素運搬体を含む人工血液、輸液製剤または組織保存液。

【請求項16】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を有効成分とする蛍光物質、紫外線吸収物質またはセレン含有化合物の有する蛍光および紫外吸収の化学的特性を付加する化学修飾剤。

【請求項17】
請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物を含むセレン濃縮物。

【請求項18】
化学式1~4のいずれかに表されるセレン含有化合物を有する試料を有機溶媒または水で抽出する工程を含む請求項1~3のいずれかに記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項19】
化学式1~4のいずれかに表されるセレン含有化合物を有する試料を有機溶媒として親水性有機溶媒で抽出する工程を経た後、さらに有機溶媒として疎水性有機溶媒を含む溶媒で抽出する工程を含む請求項18に記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項20】
有機溶媒としての親水性有機溶媒がエタノール、メタノール、アセトンまたはアセトニトリルから選ばれる一種以上であり、有機溶媒としての疎水性有機溶媒がジエチルエーテル,テトラヒドロフラン、シクロヘキサンまたはジクロロメタンから選ばれる一種以上である請求項18または19に記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項21】
化学式1~4のいずれかに表されるセレン含有化合物を有する試料、または、請求項17に記載のセレン濃縮物に含有されるセレン含有化合物のヘム鉄複合体を還元剤で還元し、ヘム鉄を遊離させる工程を含む、請求項18~20のいずれかに記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項22】
還元剤がチオール還元剤である請求項21に記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項23】
セレン濃縮物をイオン交換樹脂によって濃縮する工程を含む請求項18~22のいずれかに記載のセレン含有化合物の製造方法。

【請求項24】
セレン濃縮物をHPLC精製する工程を含む請求項18~23のいずれかに記載のセレン含有化合物の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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