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発振素子アレーの発振位相制御装置及びその制御方法 コモンズ

国内特許コード P110004839
整理番号 07-004JP00
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2007-134625
公開番号 特開2008-289098
登録番号 特許第4724864号
出願日 平成19年5月21日(2007.5.21)
公開日 平成20年11月27日(2008.11.27)
登録日 平成23年4月22日(2011.4.22)
発明者
  • 田中 久陽
  • 増形 惣
出願人
  • 国立大学法人電気通信大学
発明の名称 発振素子アレーの発振位相制御装置及びその制御方法 コモンズ
発明の概要

【課題】複数の発振器から構成される発振器アレーのビームの指向性を、容易に制御できるようにする。
【解決手段】同一の所定の発振周波数で発振する複数の発振素子1を電磁的にアレー状に結合した発振器アレーと、発振器アレーの一方の端に位置する発振素子1Aに対して、発振器アレーが同期する周波数範囲から外れ、かつ、発振周波数より大きな周波数の同期信号を印加し、また、発振器アレーの他方の端に位置する発振素子1Bに対して、発振器アレーが同期する周波数範囲から外れ、かつ、発振周波数より小さな周波数の同期信号を印加する同期信号注入手段とから、発振器アレーの発振位相制御装置を構成する。そして、発振器アレーの少なくとも端に位置する発振素子1A,1Bを除く複数の発振素子1を有効として出力を得る。
【選択図】図3

従来技術、競合技術の概要


ミリ波あるいはミリ波以上の高周波信号を発生する電子デバイス(発振素子、発振器等)は、それ自体が微細な構造のため、本質的に、1つ1つの出力パワーが小さい。したがって、多数の発振器を集積することにより、出力パワーを合成することが必要となる。そのため、高周波の発振器を1次元あるいは2次元アレー状に配置して複数の発振器の合成出力パワーを得ることが提案されている。



このように、複数の発振器を配置して、隣接する発振器間を何らかの方法(例えば、電磁気的結合)により相互作用させたシステムは多くの分野で応用が知られている。その例として、ミリ波のビーム走査回路、あるいはロボテクスにおける運動パターンジェネレータ(CPG:Central Pattern Generator)が広く知られている。運動パターンジェネレータにこのシステムを応用することにより、例えば爬虫類や魚類のような動き、鳥類や昆虫の羽ばたきのような動きを再現することができる。



しかしながら、アレー状に配置した発振器間の発振信号の位相差にばらつきがある場合、十分な合成出力パワーを得ることができない。したがって、各発振器間において発振信号の位相差を同期させる必要がある。



例えば、アレー状に配置した発振器(以下、「発振器アレー」という。)を用いたアンテナシステム等においてビームの指向性(ビームパターン)の制御を行う際、隣り合う発振器の発振位相差をある所望の一定値とする必要がある。例えば図8に示すようなN個の発振器101が配置されてなる1次元発振器アレーの場合、各発振器から出力されるビーム103の間に一定の位相差が実現されると、破線で示すように等位相面104が定まり、この等位相面104に対して垂直な方向のときにビームの強度が最大となる。そこで、各発振器の発振位相を制御することにより、このビームの指向性を制御することができる。



従来、大別して2種類の発振器の制御手法が知られている。1つ目は、各発振器101を個別に制御して、その全ての発振位相を別々に操作することにより、ビームの指向性を制御する手法(従来技術(1))である。



2つ目は、1次元発振器アレーの中の少数の発振器101(例えば、発振器アレー両端の発振器101)のみを制御して、全体の発振器の発振位相を自律的に制御する手法(従来技術(2))である。



ここで、従来技術(2)について図9を参照して詳細に説明する。図9は、従来技術(2)の1次元発振器アレーの発振位相制御装置の構成図である。図9に示すように、従来技術(2)の発振位相制御装置は、N個(2個以上)の自励式の発振器101で構成された1次元発振器アレーと、自励式の発振器101のそれぞれに接続されたN本のアンテナを有する。図9では記載を省略してあるが、破線部分の領域には、それぞれにアンテナ102と接続した複数の発振器101が配置してある。この従来技術(2)で1次元発振器アレーのビーム指向性を制御するためには、1次元発振器アレー内の全ての発振器が相互作用により引き込み同期(相互注入同期)を達成している必要がある。



図9に示す1次元発振器アレーの発振位相制御装置おいて、左端からi番目(iは自然数)の発振器の発振位相θiの時間変化を示した式は、動作方程式と呼ばれている。この図9に示す従来技術(2)のi番目の発振器の動作方程式は、ある条件下において以下に示すような微分方程式で与えられることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。i番目の発振器の自然発振位相の時間変化(=dθ/dt)をθiの上にドットを付けて表すと、次式となる。



【数式1】


で表される。



ここで、θ,ω,Aはそれぞれi番目の発振器の発振位相、自然角速度、発振振幅を表わしている。また、κ,Φはそれぞれ、発振器間の相互作用の強さと遅延に対応する定数で、各発振器及び発振器アレーの構成によってその値が決定される。いま発振器間の結合は通常Φ~0となるように調整可能であるので、以降Φ=0となる場合について記述する。



従来技術(2)のシステムにおいて、各発振器が出力する発振信号に遅延がないものと考え、式(1)左辺の遅延に関する定数Φ=0と仮定する。さらに、発振位相θを正規化することにより発振器間の相互作用の強さに関する定数κ=1となる。



ところで、この従来技術(2)では、定常状態のとき全ての発振器間において均一な発振位相差θ-θi+1≡Δφを得ることを目的としている。そのため、通常、全ての発振器の発振周波数及び発振振幅の特性は均一にする必要がある。したがって、発振器101の自然角速度ω及び発振振幅Aを定数とみなせる。ここでは、自然角速度ω=Ω、発振振幅A=1とする。これらの条件を式(1)に適用することにより、以下のように簡略化することができる。



【数式2】




従来技術(2)では、式(2)-1,3において、ω=Ω+Δω,ω=Ω-Δωとなるように1番目の発振器101とN番目の発振器101の自然周波数(すなわち自然角速度)を調整することが本質的である。Δωは、発振器アレー両端に位置する発振器101の自然角速度ω,ωの、i番目の発振器101の自然角速度Ωに対する変位(変位量ともいう。)である。定常状態において得られる発振器間の位相差Δφ(=θi-θi+1)は、どの発振器間においても常に等しい。そこで、一番簡単な式(2)-3を用いて定常状態における発振器間の位相差Δφの求め方を説明する。



まず、簡略化のため、式(2)-3の右辺にθ=φ+Ωtを代入し、θからφへの座標変換を行う。前述したように、1次元発振器アレーは定常状態において、任意の発振器101と隣接する発振器101との位相差は常に一定となっており、時間による位相差の変化を考えなくてよい。つまり、φは、時間的に変化しない定数である。ここで、θ=φ+Ωtの両辺を時間について微分すると、φは定数であるので、dθ/dt=Ωとなる。式(2)-3を座標変換した式の左辺にdθ/dt=Ωを代入することにより、隣接する発振器間の位相差Δφと角速度の変位Δωの関係を示す式(3)が求まる。



【数式3】




ここで、式(3)における位相差Δφと角速度の変位Δωの関係を、図10に示す。縦軸が位相差Δφを表しており、横軸が角速度の変位Δωを示している。図10中、破線で囲まれた領域(|Δω|<1)は引き込み領域と呼ばれ、従来技術(2)において角速度の変位Δωがこの領域内の値をとるとき、発振器アレーの各発振器は、引き込み同期状態となる。また、従来技術(2)において、引き込み領域以外(|Δω|>1)は同期はずれ領域であり、このとき、発振器アレーの各発振器は同期しない。



従来技術(2)において発振器アレーの発振位相の制御を実現するには、隣接する発振器101が互いに引き込み同期状態にあることが重要である。つまり、図10の位相差Δφと角速度の変位Δωの関係図に示す引き込み領域内に角速度の変位Δωを設定しなければならない。すなわち、発振器アレー両端に位置する発振器の角速度の変位Δωの絶対値が1より小さくなることが必要条件である。



そして、隣接する発振器101間の位相差Δφに基づいて各発振器101が出力する発振信号の等位相面が求められ、発振器アレーのビームパターン(ビーム指向性)が決定される。



以上の式変形から、従来技術(2)は、発振器アレーの両端に位置する発振器の発振周波数(角速度)を適切な値に設定することにより、発振器アレー両端の発振器以外の隣り合う発振器の位相差Δφを制御し、ビームの指向性を制御するものであるということが理解できる。




【非特許文献1】P. Liao and R. A. York, “A New Phase-Shifterless Beam-Scanning Technique Using Arrays of Coupled Oscillators”, IEEE Trans. Microwave Theory Tech., special issue on quasi-optical techniques , October 1993, vol. MTT-41, pp. 1810-1815.

産業上の利用分野


本発明は、発振素子アレーを構成する発振素子の発振位相を制御する発振素子アレーの発振位相制御装置及びその制御方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
ほぼ同一の所定の発振周波数で発振可能な複数の発振素子を電磁的にアレー状に結合した発振素子アレーと、
前記発振素子アレーの一方の端に位置する発振素子に対して、前記発振周波数より大きく、かつ各発振素子が同期する周波数範囲から外れた周波数の外部同期信号を注入し、また、前記発振素子アレーの他方の端に位置する発振素子に対して、前記発振周波数より小さく、かつ各発振素子が同期する周波数範囲から外れた周波数の外部同期信号を注入する同期信号注入手段と、を有し、
前記発振素子アレーの少なくとも端に位置する前記発振素子を除く複数の発振素子を有効として出力を得る、
ことを特徴とする発振素子アレーの発振位相制御装置。

【請求項2】
前記発振素子アレーのうち有効とされた複数の発振素子(以下、「有効発振素子」と称す。)の自然角速度をΩ、前記有効発振素子の自然角速度に対する前記発振素子アレー端に位置する発振素子の角速度の変位量を±Δω、前記発振素子アレー端に位置する発振素子に印加される変調信号をAinjsin(Ω±Δω)tとしたとき、隣接する有効発振素子間の位相差Δφが、
Δφ=sin-1(Ainj/2Δω)
で表され、ただし、|Δω|>1に選定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発振素子アレーの発振位相制御装置。

【請求項3】
前記有効発振素子はそれぞれ個別にアンテナ装置と接続しており、前記有効発振素子の出力に基づいて前記アンテナ装置の指向性を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発振素子アレーの発振位相制御装置。

【請求項4】
複数の発振素子を電磁的にアレー状に結合して発振素子アレーを配し、
各発振素子の発振周波数を所定の周波数に選択し、
前記発振素子アレーの一方の端に位置する発振素子に対して、前記発振周波数より大きく、かつ各発振素子が同期する周波数範囲から外れた周波数の外部同期信号を注入し、
同時に、前記発振素子アレーの他方の端に位置する発振素子に対して、前記発振周波数より小さく、かつ各発振素子が同期する周波数範囲から外れたる周波数の外部同期信号を注入し、
前記発振素子アレーの少なくとも端に位置する発振素子を除く複数の発振素子を有効として出力を得る、
ことを特徴とする発振素子アレーの発振位相制御方法。
産業区分
  • 伝送方式
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2007134625thum.jpg
出願権利状態 権利存続中


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