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発振器の内部機構の推定方法、推定プログラム及び推定装置 コモンズ

国内特許コード P110004861
整理番号 08-038JP00
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2008-320113
公開番号 特開2010-147599
登録番号 特許第5407088号
出願日 平成20年12月16日(2008.12.16)
公開日 平成22年7月1日(2010.7.1)
登録日 平成25年11月15日(2013.11.15)
発明者
  • 田中 久陽
  • 菊地 淳弘
  • 宮崎 紀子
出願人
  • 国立大学法人電気通信大学
発明の名称 発振器の内部機構の推定方法、推定プログラム及び推定装置 コモンズ
発明の概要

【課題】発振器の位相雑音や注入同期特性等の内部機構に関する情報をより簡易に且つ精度良く推定する方法を提供する。
【解決手段】まず、発振器に周波数の引き込み現象が生じる周波数範囲内の種々の周波数を有する交流信号をそれぞれ発振器に注入して、周波数毎に発振器と交流信号との発振位相差を求める。次いで、周波数毎の発振位相差及び交流信号の各周波数と発振器の自然周波数との差に基づいて、フーリエ級数で表される発振器のインパルス感度関数の交流成分のフーリエ係数を算出する。また、直流信号を発振器に注入して、発振位相差の時間変化率を求める。次いで、測定した発振位相差の時間変化率に基づいて、インパルス感度関数の直流成分のフーリエ係数を算出する。次いで、算出された交流成分及び直流成分のフーリエ係数を用いてインパルス感度関数を算出する。そして算出したインパルス感度関数を用いて発振器の内部機構を推定する。
【選択図】図7

従来技術、競合技術の概要


現在、携帯電話等の小型の電子機器に内蔵されている発振器は、低電力で動作し且つ微細なデバイス、例えば、サブマイクロ領域のサイズを有するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成されるものが多い。



また、近年、CMOS等を用いたより高周波(数GHz~数十GHz)の発振器の開発及び実用化が喫緊の課題となっている。この課題において、本質的な障害の一つになっているものが、デバイスの微細化にともなって、内部のノイズ、ゆらぎの影響が大きくなり、発振器の位相雑音(位相ジッタ)が増大することである。



しかしながら、発振器を用いる無線システムにおいて、発振器の発振位相の安定性を確保することは必要不可欠である。そのため、従来、発振器の位相雑音の生成メカニズムを推定(理解)するための技術や、位相雑音を低減するための設計技術等が種々提案されている(例えば、非特許文献1、2参照)。



非特許文献1では、発振器の位相雑音の生成メカニズムを推定するために、CMOS発振器を含む一般の発振器の内部機構を示す関数として、インパルス感度関数(ISF:Impulse Sensitivity Function)という周期関数を定義している。インパルス感度関数は、発振器に微小なインパルス電流が注入された際に、これにより引き起こされる発振位相の僅かなシフト量と、微小インパルス電流の注入のタイミングとの関係を示す関数である。このインパルス感度関数を用いれば、発振器内に存在するノイズが、どの様に発振器の発振位相のゆらぎに変換されるかを評価することができる。



図14及び図15に、発振器の発振位相のシフト量と微小インパルスの注入タイミングとの関係を示す。図14(a)及び図15(a)は、発振器の出力信号(電圧)の波形図であり、図14(b)及び図15(b)は、微小インパルス(電流)の波形図である。



図14(a)は、発振器の出力波形70の振幅が略最大(波形の傾きが0付近)となる時間tに微小インパルス72を発振器に注入した際の、発振器の出力波形の変化の様子を示している。このようなタイミングで、微小インパルス72を注入すると、出力波形71の振幅は、注入時に元の出力波形70より大きくなるが、その後、振幅は時間と共に徐々に減衰し、出力波形71は注入前の出力波形70に戻る。このような場合には、位相シフト量はゼロとなる。



図15(a)は、発振器の出力波形70の振幅が最小(出力波形70の谷の部分)となる時間から振幅がゼロとなる時間までの間で且つ波形の傾きが比較的大きい時間tに微小インパルス74を発振器に注入した際の、発振器の出力波形の変化の様子を示している。このようなタイミングで微小インパルス74を注入すると、図15(a)に示すように、注入後の出力波形73は、注入前の出力波形70に戻らず、発振器内に位相シフトが発生する。すなわち、図14及び15に示すように、微小インパルスの注入タイミングによって、発振器の位相シフト量が変化する。



そこで、発振器の出力波形の1周期Tに渡って、微小インパルスの注入タイミングを種々変えて、そのタイミング毎に位相シフト量を測定すると、図16に示すような時間tに対する位相シフト量の変化特性75が得られる。この変化特性75が、インパルス感度関数(ISF)であり、この関数は、図16に示すように、周期関数(Γ(ωt):ωは発振器の角周波数)となる。



そして、図16に示す特性からインパルス感度関数Γ(ωt)が得られれば、ある時刻tにおける発振器の発振位相のゆらぎφ(t)(発振器本来の発振位相からの差分)は、インパルス感度関数Γ(ωt)と発振器内部ノイズn(t)との積を時刻tまで積分することにより求めることができる。すなわち、ある時刻tにおける発振器の発振位相のゆらぎφ(t)は、下記式(1)で求めることができる。



【数1】



例えば、CMOSリングオシレータにおいて、発振器の内部ノイズn(t)が1/f成分(f=ω/2π:発振器の発振周波数)を含むホワイトノイズである場合には、上記式(1)により、発振位相のゆらぎφ(t)(位相雑音)が1/f成分を生成することが従来明らかにされている。また、非特許文献1では、上記式(1)を利用して、位相雑音を低減したCMOS発振器が設計されている。



また、非特許文献1に記載の技術分野以外では、例えば物理の分野においてもインパルス感度関数(ISF)に関する様々な技術が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。非特許文献2では、インパルス感度関数の適用対象を生体振動子(ペースメーカーニューロン)とし、生きた状態で生体振動子のインパルス感度関数を実験的に求めている。非特許文献2では、生体振動子の内部ノイズとして、他のニューロンからの周期的注入信号i(ωt)を想定している。そして、非特許文献2では、上記式(1)中のノイズn(t)の代わりに、周期的注入信号i(ωt)を用い、最終的には、下記式(2)に示す位相雑音φ(t)の微分方程式を導出している。



【数2】



なお、上記式(2)中のφext(t)は、周期的注入信号i(ωt)の発振位相のゆらぎである。また、上記式(2)中のω及びωは、それぞれ生体振動子(発振器)の自然角周波数及び周期的注入信号i(ωt)の角周波数である。



上記式(2)で注目すべき点は、上記式(2)がマイクロ波発振器の分野で古くから知られているAdlerの方程式を一般化した式になっており、後述する注入同期(周波数の引き込み現象)を記述する基本方程式となっていることである。



さらに、従来、微小インパルスの代わりに微小ノイズを発振器に注入して、その応答の統計的性質からインパルス感度関数を導出する手法も提案されている(例えば、非特許文献3参照)。



【非特許文献1】A. Hajimiriand T. H. Lee:“A general theory of phase noise in electrical oscillators”,IEEE J. Solid-State Circuits,Vol. 33,pp. 179-194,Feb. 1998【非特許文献2】R. F. Galan, G. B. Ermentrout,and N. N. Urban:“Efficient estimation of phase-resetting curves in real neurons and its significance for neural-network modeling”,Phys. Rev. Lett. 94,158101,2005【非特許文献3】G. B. Ermentrout, R. F. Galan, and N. N. Urban:“Relating neural dynamics to neural coding”,Phys. Rev. Lett. 99,248103,2007.

産業上の利用分野


本発明は、発振器の位相雑音や外部信号に対する特性等の内部機構を推定する方法、推定プログラム及び推定装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
発振器の内部機構を推定する方法であって、
前記発振器に周波数の引き込み現象が生じる周波数範囲内の種々の周波数を有する交流信号をそれぞれ前記発振器に注入して、周波数毎に前記発振器と前記交流信号との発振位相差に関する情報を求めるステップと、
前記周波数毎の前記発振位相差に関する情報、及び、前記交流信号の各周波数と前記発振器の自然周波数との差に基づいて、フーリエ級数で表される前記発振器のインパルス感度関数の所定次数までの交流成分のフーリエ係数を算出するステップと、
直流信号を前記発振器に注入して、前記発振位相差の時間変化率に関する情報を求めるステップと、
測定した前記発振位相差の時間変化率に関する情報に基づいて、前記インパルス感度関数の直流成分のフーリエ係数を算出するステップと、
算出された前記交流成分及び直流成分のフーリエ係数を用いて前記インパルス感度関数を推定するステップと、
を含む推定方法。
【請求項2】
前記発振位相差に関する情報が、前記発振位相差の時間平均値である
請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
さらに、
前記発振位相差に関する情報を求めるステップの前に、前記引き込み現象が生じる周波数範囲内の所定周波数を有し且つ所定振幅を有する交流信号を前記発振器に注入して、前記引き込み現象が生じるか否かを判定するステップと、
前記判定ステップで、前記発振器に前記引き込み現象が生じない場合、前記交流信号の振幅を、前記引き込み現象が生じる範囲の振幅に増大させるステップと、
前記振幅を増大させた前記交流信号の周波数を前記引き込み現象が生じる周波数範囲内で種々変化させて前記発振器に注入して得られる、周波数毎の前記発振位相差に関する情報と、前記振幅を増大させた前記交流信号の各周波数と前記発振器の自然周波数との差との関係に基づいて、前記所定振幅を有する交流信号を前記発振器に注入した際の前記発振位相差に関する情報と、前記所定振幅を有する交流信号の周波数及び前記発振器の自然周波数間の差との関係を推定するステップとを含み、
前記交流成分のフーリエ係数を算出するステップでは、前記推定された、前記所定振幅を有する交流信号を前記発振器に注入した際の前記発振位相差に関する情報と、前記所定振幅を有する交流信号の周波数及び前記発振器の自然周波数間の差との前記関係に基づいて、前記発振器のインパルス感度関数の所定次数までの交流成分のフーリエ係数を算出する
請求項2に記載の推定方法。
【請求項4】
前記発振位相差の時間変化率に関する情報が、前記発振位相差の時間変化率の時間平均値である
請求項1~3のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項5】
コンピュータ装置に実装して所定の処理をコンピュータ装置に実行させるプログラムであって、
発振器に周波数の引き込み現象が生じる周波数範囲内の種々の周波数を有する交流信号をそれぞれ前記発振器に注入して、周波数毎に前記発振器と前記交流信号との発振位相差に関する情報を求める処理と、
前記周波数毎の前記発振位相差に関する情報、及び、前記交流信号の各周波数と前記発振器の自然周波数との差に基づいて、フーリエ級数で表される前記発振器のインパルス感度関数の所定次数までの交流成分のフーリエ係数を算出する処理と、
直流信号を前記発振器に注入して、前記発振位相差の時間変化率に関する情報を求める処理と、
測定した前記発振位相差の時間変化率に基づいて、前記インパルス感度関数の直流成分のフーリエ係数を算出する処理と、
算出された前記交流成分及び直流成分のフーリエ係数を用いて前記インパルス感度関数を推定する処理と、
をコンピュータ装置に実行させるプログラム。
【請求項6】
発振器の内部機構を推定する装置であって、
直流信号、または、前記発振器で周波数の引き込み現象が生じる周波数範囲内の種々の周波数を有する交流信号をそれぞれ生成し、該生成された各信号を前記発振器に注入する可変信号源と、
各周波数の前記交流信号を前記発振器に注入して得られる周波数毎の前記発振器及び前記交流信号間の発振位相差に関する情報、前記交流信号の各周波数と前記発振器の自然周波数との差、及び、前記直流信号を前記発振器に注入して得られる前記発振位相差の時間変化率に関する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記発振位相差の時間変化率に関する情報に基づいて、フーリエ級数で表される前記発振器のインパルス感度関数の直流成分のフーリエ係数を算出し、前記記憶部に記憶された前記発振位相差に関する情報、並びに、前記交流信号の各周波数及び前記発振器の自然周波数間の差に基づいて、前記インパルス感度関数の所定次数までの交流成分のフーリエ係数を算出し、且つ、算出された前記直流成分及び交流成分のフーリエ係数を用いて前記発振器のインパルス感度関数を推定する演算部と、
を備える推定装置。
国際特許分類(IPC)
画像

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JP2008320113thum.jpg
出願権利状態 登録


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