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脈理を有する材料の漏洩弾性表面波速度と化学組成比および線膨張係数との関係を求める方法、およびその関係を使ったTiO2-SiO2ガラスのTiO2濃度測定方法および線膨張係数測定方法 コモンズ

国内特許コード P110004888
整理番号 P20050209
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2005-263339
公開番号 特開2007-078384
登録番号 特許第4825972号
出願日 平成17年9月12日(2005.9.12)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
登録日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明者
  • 櫛引 淳一
  • 荒川 元孝
  • 大橋 雄二
  • 鈴木 光二
出願人
  • 学校法人東北大学
発明の名称 脈理を有する材料の漏洩弾性表面波速度と化学組成比および線膨張係数との関係を求める方法、およびその関係を使ったTiO2-SiO2ガラスのTiO2濃度測定方法および線膨張係数測定方法 コモンズ
発明の概要

【課題】超音波材料特性解析装置によりTiO2-SiO2ガラスを評価するために必要となる漏洩弾性表面波速度と化学組成比や線膨張係数との間の正確な関係を求める方法を与える。
【解決手段】脈理面に対して垂直な基板面を有する試料およびそれと隣接したCTE測定試料板を用意し、化学組成比やCTEを測定する領域と同じ領域を、LSAWの伝搬方向を脈理面に平行として、LSAW速度を測定する。同じ領域に対して化学組成比を測定する。またCTE測定試料板に対してCTEを測定する。これらのLSAW速度と化学組成比やCTEより、それらの間の正確な関係を得る。
【選択図】図8

従来技術、競合技術の概要


極端紫外線露光 (Extreme Ultra-Violet Lithography: EUVL)は超集積回路を大量生産するための次世代半導体製造技術として有望視されている。この露光装置は反射光学系となり、フォトマスクや光学ミラー用基体材料として、CTE が所望の温度(例えば、マスク基板に対して22±3℃)において±5 ppb/K以下となる究極的な超低膨張ガラスが要求されている[非特許文献1]。現在、いくつかのガラスメーカーにより、EUVLグレードのガラスの開発が行われている。



そのガラスの開発、作製プロセスやロット間の品質管理を行うためには、CTE特性を高精度に解析することが重要である。従来の評価法には、線膨張計によりCTEを直接測定する方法[非特許文献2]と化学組成比、縦波音速、屈折率[非特許文献1]などの測定により間接的にCTEを求める方法がある。しかし、測定精度が不十分である、基板厚さ方向の平均的な特性の測定しか行えずEUVLで重要となる表面近傍の評価が行えない、などの問題があり、いずれもEUVLグレードのガラスの評価に適用できない。



CTEの新しい評価技術として、超音波材料特性解析装置([非特許文献3]、[非特許文献4])を用いた方法が開発されている。この評価技術は上記課題を克服できる可能性がある。とりわけ集束超音波を用いた定量計測法(V(z)曲線解析法[非特許文献3])が有効である。これは、水を負荷した試料表面に励起される漏洩弾性表面波(LSAW)の位相速度(VLSAW)を計測することにより材料評価を行う。本手法によれば、非破壊・非接触的にガラス基板表面の特性分布の高精度測定が可能である。計測のためには、点集束超音波ビーム(PFB)と直線集束超音波ビーム(LFB)が使用できるが、ここでは、LFB超音波材料特性解析装置をとりあげて説明を進める([非特許文献3]、[非特許文献4]参照)。



LFB超音波材料特性解析装置によるLSAW速度の測定方法と測定システムは文献([非特許文献3]、[非特許文献4])に詳しい。LFB超音波材料特性解析装置は、LFB超音波デバイスと試料間の相対距離zを変化させたときに得られるV(z)曲線を解析することにより、水/試料境界を伝搬する漏洩弾性波の伝搬特性を求めることができる。図1は、超音波トランスデューサ1とLFB音響レンズ2とから成る超音波デバイスとガラス試料3系の断面図であり、計測の原理を示すものである。水中における焦点を原点Oxyとして座標軸を図に示すようにとる。超音波トランスデューサ1により励振した平面超音波を、LFB音響レンズ2によりくさび状に集束し、水カプラ4を介してガラス試料3表面に照射する。試料を焦点面5より超音波デバイス側へ近づけた場合、ガラス試料3からの反射波のうち、超音波トランスデューサ1の出力に支配的に寄与する成分は、音響レンズ2の開口面の効果により近似的に図1に示すP0、P1の経路をとる成分のみとなる。P0の成分は試料からの直接反射成分であり、P1の成分は、LSAWの励振臨界角θLSAWでガラス試料3に入射し、ガラス試料3表面をLSAWとして伝搬する成分である。トランスデューサ出力V(z)は、これら2つの成分の干渉波形として得られる。V(z)曲線解析モデル(非特許文献5)において近似的に次式のように表される。
V(z) = VI(z)(LSAW) + VL(z) (1)
ただし、
VL(z) = VL'(z) + ΔVL(z) (2)
ここで、VI(z)(LSAW)はLSAWの干渉成分であり、VL(z)は超音波デバイスの特性を反映した成分である。また、ΔVL(z)は漏洩弾性波が励振されない試料(例えばテフロン(登録商標))のVL'(z)に対するVL(z)のずれである。VI(z)(LSAW)をV(z)曲線解析法に基づいて抽出し[非特許文献3]、その干渉周期ΔzLSAWを求め、次式(3)のΔzに代入してLSAW速度VLSAWを求める。
【数式1】


ここで、fは超音波周波数、VWは水中の縦波音速である。VWは、V(z)曲線測定時に熱電対により測定される水カプラ温度から[非特許文献5]により得ることができる。
このように、LFB音響レンズと試料の相対距離zを変化させたときのトランスデューサ出力V(z)曲線を測定・解析することによりLSAW速度VLSAWが求められる。図2Aに、市販のTiO2-SiO2ガラス試料(C-7972, Corning社製)に対して、超音波周波数fを225 MHzとして測定したV(z)曲線を示す。V(z)曲線解析法[非特許文献3]に基づいて解析することにより、図2Bに示すようなスペクトラム分布が最終的に得られる。図2Bのスペクトラム分布のピーク波数から干渉周期Dz を求め、式(3)に代入して、LSAW速度を求める。



V(z)曲線に寄与するLSAWが試料表面上を伝搬する領域(超音波測定領域;WxD)は、集束方向の幅(LSAW伝搬距離)をW、非集束方向の幅をDとすると、Wは2|z|tan θLSAWLSAWはLSAWの臨界角であり、θLSAW = sin-1VW/VLSAW)とzの関数で表され、Dは非集束方向の実効的なビーム幅であり、超音波デバイスの動作パラメータに依存する。ここで用いる200 MHz帯の超音波デバイスの音響レンズは、曲率半径が1 mm、集束方向のトランスデューサの幅が1.73 mm、非集束方向のそれは1.50 mmであり、この場合、Dは約900 μmとなる。f = 225 MHzで測定された図2Aより、C-7972に対してLSAWの解析に用いることができる最大の|z|は約275 μmであり、Wは最大で280 μmとなる。また、基板深さ方向に対してはLSAWの一波長程度の領域の特性が反映され、VLSAW = 3308 m/s、 f = 225 MHzのとき、約15 μmとなる。



LFB超音波材料特性解析装置を周期的な脈理が存在する材料に適用する場合、試料内に脈理に対応した音響特性の分布が存在するため、一般に測定位置により測定値が異なる。周期的な脈理を有するTiO2-SiO2ガラスに対して、図3Aに示すようなガラスインゴット6から、図3Bと図3Cのように、脈理面に対して基板面が平行な試料(z軸に対して垂直)と垂直な試料(z軸に対して平行)を切り出して測定したLSAW速度に対する検討が行われている[非特許文献6]。この結果、脈理面に対して基板面が平行な試料(図3B)の場合、基板表面の切り出し位置によってLSAW速度測定値が大きく変化する。また、脈理面は完全な平面ではなく一般には曲面なので、測定位置によってもLSAW速度測定値は大きく変化する。一方、脈理面に対して基板面が垂直な試料(図3C)に対しては、LSAWの伝搬方向によりLSAW速度の大きさとその分布は見かけ上異なって測定される。これは試料面上の脈理周期(ここでは約160μm)と超音波測定領域との関係に依存している。LSAWの伝搬方向を脈理面と垂直にした場合には、Wが脈理周期と同程度であるため脈理を反映してLSAW速度が周期的に変化し、その正確な周期を測定できる。LSAWの伝搬方向を脈理面と平行にした場合には、Dが脈理周期よりも十分大きいため局所的な脈理による影響のない十分平均的なLSAW速度値を捉えることができ、基板試料面上の特性分布を測定できる。



ガラスの化学組成量が変化することによりガラスの様々な物理量(物理定数)が変化する。例えばLSAW速度が単位量変化したときのある物理量または化学量の変化量は、その物理量又は化学量に対するLSAW速度の感度と定義される。化学組成量の異なるガラスA及びBの線膨張係数とLSAW速度をそれぞれCTEA, VLSAWA及びCTEB, VLSAWBとすると、線膨張係数に対するLSAW速度の感度は(CTEA-CTEB)/(VLSAWA-VLSAWB)で表され、分解能はLSAW速度の測定精度にこの感度を乗算して得られる。同様にして、密度、特定成分(例えばTiO2)の濃度、あるいは他の物理量に対するLSAW速度の感度及び分解能が定義できる。
TiO2-SiO2ガラスのCTEは、TiO2濃度により調整できる。また、LSAW速度はTiO2濃度の変化に対して線形に変化する[非特許文献7]。したがって、LFB超音波材料特性解析装置を用いてCTEの精密な評価を行なうためには、LSAW速度とCTEとの間の関係はもちろん、LSAW速度とTiO2濃度との間の正確な関係を求める必要がある。これまで、音響ファイバ用のガラス材料の実験的検討という観点から、TiO2濃度の変化に対するLSAW速度の感度が-0.065 wt%/(m/s)と求められた[非特許文献7]。また、市販TiO2-SiO2ガラス(C-7971, Corning社製)と合成石英ガラス(C-7980, Corning社製)の化学組成比とLSAW速度を比較することにより、TiO2濃度の変化に対するLSAW速度の感度を-0.058 wt%/(m/s)と求めた([非特許文献8]、[非特許文献9])。しかし、このときには脈理による不確かさが含まれているため、EUVLグレードのガラスのためのCTE評価という観点では不十分と考えられる。

【非特許文献1】K. E. Hrdina, B. G. Ackerman, A. W. Fanning, C. E. Heckle, D. C. Jenne and W. D. Navan, "Measuring and tailoring CTE within ULE glass," Proc. SPIE, Emerging Lithographic Technologies VII, ed. R. L. Engelstad (SPIE--The International Society for Optical Engineering, Bellingham, WA, 2003) Vol. 5037, pp. 227-235.

【非特許文献2】V. G. Badami and M. Linder, "Ultra-high accuracy measurement of the coefficient of thermal expansion for ultra-low expansion materials," Proc. SPIE Emerging Lithographic Technologies VI, ed. R. L. Engelstad (SPIE--The International Society for Optical Engineering, Bellingham, WA, 2002) Vol. 4688, pp. 469-480.

【非特許文献3】J. Kushibiki and N. Chubachi, "Material characterization by line-focus-beam acoustic microscope," IEEE Trans. Sonics Ultrason., Vol. SU-32, pp. 189-212 (1985).

【非特許文献4】J. Kushibiki, Y. Ono, Y. Ohashi, and M. Arakawa, "Development of the line-focus-beam ultrasonic material characterization system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 49, pp. 99-113 (2002).

【非特許文献5】W. Kroebel and K.-H. Mahrt, "Recent results of absolute sound velocity measurements in pure water and sea water at atmospheric pressure," Acustica, Vol. 35, pp. 154-164 (1976).

【非特許文献6】櫛引, 荒川, 大橋, 鈴木, 丸山, "脈理のある超低膨張ガラス評価のためのLFB超音波材料解析システム用標準試料とその音響特性," 信学技報, Vol. US2005-4, pp. 19-26 (2005).

【非特許文献7】C. K. Jen, C. Neron, A. Shang, K. Abe, L. Bonnell, and J. Kushibiki, "Acoustic characterization of silica glassses," J. Am. Ceram. Soc., Vol. 76, pp. 712-716 (1993).

【非特許文献8】J. Kushibiki, M. Arakawa, Y. Ohashi, K. Suzuki, and T. Maruyama, "A promising evaluation method of ultra-low-expansion glasses for the extreme ultra-violet lithography system by the line-focus-beam ultrasonic material characterization system," Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 43, pp. L1455-L1457 (2004).

【非特許文献9】J. Kushibiki, M. Arakawa, Y. Ohashi, K. Suzuki, and T. Maruyama, "A super-precise CTE evaluation method for ultra-low-expansion glasses using the LFB ultrasonic material characterization system," Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 44, pp. 4374-4380 (2005).

【非特許文献10】K. E. Hrdina, B. Z. Hanson, P. M. Fenn, and R. Sabia, "Characterization and characteristics of a ULE(登録商標) glass tailored for the EUVL needs," in Proc. SPIE, Emerging Lithographic Technologies VI, Vol. 4688, 2002, pp. 454-461.

【非特許文献11】J. Kushibiki and M. Arakawa, "A method for calibrating the line-focus-beam acoustic microscopy system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 45, pp. 421-430 (1998).

【非特許文献12】J. Kushibiki, M. Arakawa, and R. Okabe, "High-accuracy standard specimens for the line-focus-beam ultrasonic material characterization system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 49, pp. 827-835 (2002).

【非特許文献13】J. E. Shelby, Introduction to glass science and technology (The Royal Society of Chemistry, Cambridge, 1997) pp. 78-90.

【非特許文献14】R. B. Greegor, F. W. Lytle, D. R. Sandstrom, J. Wong, and P. Schultz, "Investigation of TiO2-SiO2 glasses by X-ray absorption spectroscopy," J. Non-Cryst. Solids, Vol. 55, pp. 27-43 (1983).

産業上の利用分野


本発明は、超音波材料特性解析装置を用いてTiO2-SiO2超低膨張ガラスを評価する上で不可欠な、漏洩弾性表面波(Leaky Surface Acoustic Wave: LSAW)速度と化学組成比や線膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion: CTE)との間の正確な関係を求める方法およびその関係を使ってTiO2-SiO2ガラスのTiO2濃度および線膨張係数を求める方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
漏洩弾性表面波速度、以下LSAW速度と呼ぶ、と化学組成比および線膨張係数、以下CTEと呼ぶ、との間の関係を求める方法であり、
(a) 化学組成比の異なる少なくとも2つのガラスインゴットのそれぞれから、ガラスインゴットの脈理面に対して垂直な面で試料基板と、それに隣接してCTE測定試料板を切り出す工程と、
(b) 各上記試料基板の予め決めた領域に対して、上記脈理面と平行な方向に伝搬するLSAW速度の測定値を得る工程と、
(c) 各上記試料基板の上記予め決めた領域の化学組成比を測定する工程と、
(d) 各上記CTE測定試料板のCTEを測定する工程と、
(e) 測定した上記LSAW速度と上記化学組成比および上記CTEからLSAW速度の変化量に対する化学組成比の変化量およびCTEの変化量の関係を決定する工程、
とを含むことを特徴とするLSAW速度と化学組成比およびCTEとの間の関係を求める方法。

【請求項2】
請求項1記載の方法において、上記ステップ(c) は上記試料基板及び上記CTE測定試料板の一方の化学組成比を蛍光X線分析法、以下XRF法と呼ぶ、により測定する工程と、上記ガラスインゴットの一部から高周波誘導結合プラズマ-発光分析法、以下ICP-OES法と呼ぶ、により化学組成比を測定する工程と、上記XRF法による測定結果を上記ICP-OES法による測定結果により絶対校正した化学組成比を求める工程とを含むことを特徴とするLSAW速度と化学組成比及びCTEとの関係を求める方法

【請求項3】
請求項1記載の方法において、上記少なくとも2つのガラスインゴットの1つとしてはSiO2が100%である石英ガラスを使用することを特徴とする、LSAW速度と化学組成比およびCTEとの間の関係を求める方法。

【請求項4】
請求項3記載の方法において、上記石英ガラスのCTEとして既知のデータを使用することを特徴とするLSAW速度と化学組成比およびCTEとの間の関係を求める方法。

【請求項5】
TiO2-SiO2超低膨張ガラスのTiO2濃度の測定方法であり、
(a) LSAW速度を測定する工程と、
(b)上記工程(a)で得られたLSAW速度VLSAW[m/s] を使って請求項1記載の方法により求めたLSAW速度と化学組成比の関係を表す次式
C(VLSAW)=0.06006×(VLSAW - 3426.18)
からTiO2濃度C(VLSAW) [wt%]を求める工程、
とを含むことを特徴とするTiO2濃度測定方法。

【請求項6】
TiO2-SiO2超低膨張ガラスの線膨張係数の測定方法であり、
(a) LSAW速度を測定する工程と、
(b)上記工程(a)で得られたLSAW速度VLSAW[m/s] を使って請求項1記載の方法により求めたLSAW速度とCTEの関係を表す次式
CTE(VLSAW) = 4.436×(VLSAW - 3308.95)
から線膨張係数CTE(VLSAW) [wt%]を求める工程、
とを含むことを特徴とする線膨張係数測定方法。
産業区分
  • 試験、検査
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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