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高機能複合材料およびその製造方法 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P110004913
整理番号 P20050521-01
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2008-523622
登録番号 特許第5366193号
出願日 平成19年5月30日(2007.5.30)
登録日 平成25年9月20日(2013.9.20)
国際出願番号 JP2007060962
国際公開番号 WO2008004386
国際出願日 平成19年5月30日(2007.5.30)
国際公開日 平成20年1月10日(2008.1.10)
優先権データ
  • 特願2006-155736 (2006.6.5) JP
発明者
  • 大森 守
  • 橋田 俊之
  • 木村 久道
  • 大久保 昭
  • 井上 明久
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 高機能複合材料およびその製造方法 コモンズ 新技術説明会
発明の概要

【課題】機械的性能、電気伝導性および電磁波吸収性に優れた新規な高機能複合材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の第1のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶から成るセラミックス多結晶体と、複数のカーボンナノチューブ2と複数の第2のアルミナ-マグネシア系セラミックス3の結晶とが絡み合った構造のナノ複合体1とを有している。ナノ複合体1は、セラミックス多結晶体の内部に分散されている。また、セラミックス多結晶体とナノ複合体1とを含む全体の高機能複合材料の組成は、0.1~90mass%のカーボンナノチューブと、99.9~10mass%のアルミナ-マグネシア系セラミックスとから成り、アルミナ-マグネシア系セラミックスはアルミナ99.8~0.5mass%とマグネシア0.2~99.5mass%とから成っている。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


アルミナ-マグネシアを原料とするセラミックスは、その価格が安いため、工業的に広い範囲で利用されている。これらのセラミックスは、金属に比べて耐熱性および耐酸化性に優れている。また、電気を流さない絶縁性であり、誘電性であるため、少ないながら電磁波の吸収は可能である。アルミナ-マグネシアおよびその化合物は、耐食性にも優れている。これらのセラミックスは、金属に比べて靭性が小さく、材料としての信頼性に欠け、応力の付加により簡単に破壊する。このため、靭性を大きくできれば適用範囲が格段に広がり、さらに金属のような電気伝導性が付与された複合材料、あるいは電磁波の吸収性能に優れた複合材料が開発されれば、従来のセラミックスの使用範囲を超えた利用が可能になる。



カーボンナノチューブは、1991年に発見された材料である(例えば、非特許文献1参照)。この材料は、アスペクト比の大きい微細なチューブ構造のナノ繊維である。化学的性質は、ほぼ黒鉛材料に類似している。カーボンナノチューブは、他の材料に比べて強度および弾性率が非常に大きく、多層カーボンナノチューブの弾性率は1800GPaであり(例えば、非特許文献2参照)、単層カーボンナノチューブの強度は45GPaである(例えば、非特許文献3参照)と報告されている。



このカーボンナノチューブの機械的強度特性を利用した材料の開発の一つとして、カーボンナノチューブを使った複合材料、あるいはそれを固化した材料の開発が盛んに行われている。これらの複合材料において、その合成が室温あるいはそれに近い温度で行われる場合、すなわち高分子を使ってカーボンナノチューブから複合材料を合成する時には、大きな問題は生じない。しかし、金属あるいはセラミックスを使う場合には、高温で合成が行われるため、二つの材料の間の熱膨張差によって生じる残留応力が問題になる。カーボンナノチューブは、温度を上げてもほとんど膨張しない(例えば、非特許文献4参照)。これに対し、カーボンナノチューブと複合化させる金属やセラミックスの熱膨張係数は、4x10-6/K ~20x10-6/Kとかなり大きく、そのためにカーボンナノチューブとこれらの物質との間には、大きな残留応力が発生する。残留応力の小さな材料を作らないと、実用的な工業材料への応用は不可能である。さらに、針状のカーボンナノチューブは、微粒子に比べてマトリックス中に均一に分散するのが困難であり、特にカーボンナノチューブの割合が多くなると、この均一分散はいっそう困難になり、これまでに優れた複合材料は製造されていない。



カーボンナノチューブとアルミナーマグネシア系セラミックスとの複合材料の合成は、アルミナ単身とマグネシア単身とについて行われてきた。主には、カーボンナノチューブとアルミナ粉とを混合し、それを原料にして焼結する方法である。この方法での出発原料となるアルミナ粉の粒径は、200ナノメートル以上であり、焼結後には通常1000ナノメートル以上に大きくなる。カーボンナノチューブは、アルミナ結晶の粒内か、その粒界に分散されている。このような分散状態でも、アルミナ-単層カーボンナノチューブ複合材料の靭性値は、単層カーボンナノチューブを10vol%添加した時、アルミナ単身に比べて3倍大きくなったと報告されている(例えば、非特許文献5参照)。しかし、その後の研究で、この靭性の改善は誤りで、このアルミナ-単層カーボンナノチューブ複合材料の靭性は、アルミナ単身とほとんど変わらないことが証明されている(例えば、非特許文献6参照)。機械的性質が改善された例として、アルミナの微粉と、10vol%の多層カーボンナノチューブとを混合して得られた複合材料の靭性値は、アルミナ単身のそれに比べて24%増加しているとの報告がある(例えば、非特許文献7参照)。



アルミナ粉末を用いる同じ手法で、アルミナの電気抵抗値の低減を目的にした材料開発がある(例えば、特許文献1参照)。ここでは、0.1vol%のカーボンナノチューブの添加で、電気抵抗は1013から106(Ω・cm)のオーダーまで減少している。アルミナ粉とは異なる原料として、アルミナの前駆体にブトキシアルミニウム(Al(C4H9)3)を使い、それをアルコールに溶解し、多層カーボンナノチューブを加えて混合し、水を添加してブトキシアルミニウムを加水分解し、乾燥してから非酸化性雰囲気で1250℃に仮焼してカーボンナノチューブとアルミナとの混合粉体を作製し、それを焼結している。得られた混合粉体のアルミナの粒径は、500ナノメートル以上に成長しており、それを焼結して得られた複合材料中のアルミナの粒径は、1000ナノメートル以上と大きくなり、カーボンナノチューブは、アルミナの粒内に分散すると同時に、塊となって粒界に存在している。この複合材料の靭性は、カーボンナノチューブを1.5vol%添加したもので最大になり、アルミナ単身のそれより1.1倍大きくなっているにすぎない(例えば、非特許文献8参照)。



以上述べた方法では、出発原料である粉体の結晶径は大きく、複合材料中のアルミナの結晶を500ナノメートル以下に制御するのは困難である。アルミナとマグネシアとからそれぞれの単身のナノ複合材料の製造についても報告がされている(例えば、特許文献2参照)。そこでは、原料にはアルミナとマグネシア粉とがそれぞれ単身で使われている。この方法により結晶成長させないでナノ複合材料を製造するためには、製造条件を厳密に制御する必要があり、それによる製造コストの上昇は避けられない。アルミナ粉以外の原料の使用に関し、水酸化アルミニウムについての言及も見られる。(例えば、特許文献3参照)。しかし、純粋の水酸化アルミニウムから得られる複合材料においては、アルミナの結晶径が20マイクロメートル以上に大きく成長し、強度が大きく低下し、高性能の複合材料を製造するのは困難である。



アルミナの熱膨張係数は8x10-6/K、スピネル(Al2O3.MgO)の熱膨張係数は11x10-6/K、マグネシアの熱膨張係数は13x10-6/Kである。これらの熱膨張係数は、カーボンナノチューブのそれと比べて大きく、アルミナ-マグネシア系セラミックス多結晶体中にカーボンナノチューブが存在すると、焼結温度から室温への冷却中にアルミナーマグネシア系セラミックスは収縮し、カーボンナノチューブは収縮しないため、大きな残留応力が発生し、複合材料の靭性と強度とが小さくなり、実用材料としての応用が困難になる。また、アルミナ-マグネシア系セラミックスの粒界に存在するカーボンナノチューブは、破壊のクラックの進展を阻止する機能が小さく、先に述べたカーボンナノチューブ-アルミナ複合材料の報告に見られるように、靭性と強度とは大きくなっていない。その原因は、複合材料の製造のために、セラミックス粉とカーボンナノチューブとをスラリー状態で混合すると、カーボンナノチューブが凝縮し、カーボンナノチューブの凝縮体中にセラミックス粉体の原料が進入しにくいため、生成した複合材料中ではカーボンナノチューブが塊で存在するようになるためである。




【非特許文献1】S. Iijima, “Helical Microtubules of Graphite Carbon”, Nature, 1991, 354, p.56-58

【非特許文献2】M. M. J. Treacy and T. W. Ebbesen, “Exceptionally High Young’s Modulus Observed for Individual Carbon Nanobtubes”, Nature, 1996, 381, p.678-680

【非特許文献3】D. A. Walters, L. M. Ericso, J. Casavant, J. Liu, D. T. Colbert, K. A. Smith and R. E. Smalley, “Elastic Strain of Freely Suspended Single-Wall Carbon Nanotube Ropes”, Appl. Phy. Lett., 1999, 74, 25, p.3803-3805

【非特許文献4】Y. Maniwa, R. Fujiwara, H. Kira, H. Tou, H. Kataura, S. Suzuki, Y. Achiba, E. Nishibori, M. Takata, M. Sakata, A. Fujiwara and H. Suematsu, “Thermal Expansion of Single-Walled Carbon Nanotube (SWNT) Bundles: X-ray Diffraction Studies”, Phys. Rev. B, 2001, 64, p.241402-1-3

【非特許文献5】G. -D. Zhan, J. D. Kuntz, J. Wan and A. K. Mukherjee, “Single-Wall Carbon Nanotubes as Attractive Toughening Agents in Alumina-Based Nanocomposites”, Nature Mater., 2003, 2, p.38-42

【非特許文献6】X. Wang, N. P. Padture and H. Tanaka, “Contact-Damage-Resistance Ceramic/Single-Wall Carbon Nanotubes and Ceramic/Graphite Composites”, Nature Mater., 2004, 3, p.539-544

【非特許文献7】R. W. Siegel, S. K. Chang, B. J. Ash, J. Stone, P. M. Ajayan, R. W. Doremus and L. S. Schadler, “Mechanical Behavior of Polymer and Ceramics Matrix Nanocomposites”, Scripta Mater., 2001, 44, p.2061-2064

【特許文献1】特開2004-244273号公報

【非特許文献8】C. B. Mo, S. I. Cha, K. T. Kim, K. H. Lee and S. H. Hong, “Fabrication of Carbon Nanotube Reinforced Alumina Matrix Nanocomposite by Sol-Gel Process”, Mater. Sci. Eng., 2005, A 395, p.124-128

【特許文献2】特表2004-507434号公報

【特許文献3】特開2004-256382号公報

産業上の利用分野


本発明は、実用的なセラミックスとして重要なアルミナとマグネシアとからなるアルミナ-マグネシア系セラミックスと、カーボンナノチューブとからなる複合材料であり、セラミックスにカーボンナノチューブを複合化させることにより、従来のセラミックスの性能を改善し、さらに新規な機能を持たせた高機能複合材料およびその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
複数の第1のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶から成るセラミックス多結晶体と、
複数のカーボンナノチューブと複数の第2のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶とが絡み合った構造のナノ複合体とを有し、
カーボンナノチューブを4~85mass%、アルミナを0.2~95mass%、マグネシアを1~27mass%含み、
前記ナノ複合体は前記セラミックス多結晶体の内部に分散されており、
前記第2のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶は、グレインサイズが200nmより小さいことを、
特徴とする高機能複合材料。

【請求項2】
前記カーボンナノチューブは、平均長さが1000nmより長く、平均太さが100nmより細いことを、特徴とする請求項1記載の高機能複合材料。

【請求項3】
前記第2のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶は、グレインサイズが前記第1のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶のグレインサイズより一桁小さいことを、特徴とする請求項1または2記載の高機能複合材料。

【請求項4】
前記ナノ複合体は前記第1のアルミナ-マグネシア系セラミックス結晶のグレインサイズより大きいことを、特徴とする請求項1、2または3記載の高機能複合材料。

【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、非晶質カーボンナノチューブおよびカーボンナノロッドのうちの1種または2種以上の混合物から成ることを、特徴とする請求項1、2、3または4記載の高機能複合材料。

【請求項6】
カーボンナノチューブ4~85mass%、アルミナ0.2~95mass%、マグネシア1~27mass%となるよう、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)と水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)とを含むアルミナ-マグネシア系セラミックスと、カーボンナノチューブとを水あるいはアルコール類の溶媒に入れ、スラリー状にして3~180分間混合し、この混合物から前記溶媒を除去した後、非酸化性雰囲気中において1050℃~1800℃の温度範囲で5分から5時間かけて焼結することを、特徴とする高機能複合材料の製造方法。

【請求項7】
前記焼結を行うための前処理として、前記混合物から前記溶媒を除去した後、非酸化性雰囲気中おいて300℃~900℃の温度範囲で5~60分間仮焼して分解脱水することを、特徴とする請求項6記載の高機能複合材料の製造方法。

【請求項8】
無加圧焼結法、ホットプレス法または放電プラズマ焼結法により前記焼結を行うことを、特徴とする請求項6または7記載の高機能複合材料の製造方法。
産業区分
  • 窯業
  • 無機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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