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メタン発酵による排水処理方法及び装置 コモンズ

国内特許コード P110004933
整理番号 121
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2006-213716
公開番号 特開2008-036529
登録番号 特許第4982789号
出願日 平成18年8月4日(2006.8.4)
公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発明者
  • 珠坪 一晃
出願人
  • 独立行政法人国立環境研究所
発明の名称 メタン発酵による排水処理方法及び装置 コモンズ
発明の概要

【課題】本発明は、メタン発酵汚泥(生物膜)に効率的に基質の供給と物理的な攪拌を行える条件を作り出すことで、メタン発酵汚泥の活性や物性(沈降性など)が維持され、メタン発酵に不適な低有機物濃度排水や低温度排水の高効率処理を実現するメタン発酵排水処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなる上昇流嫌気性汚泥床処理装置による有機性排水の処理方法及び装置であって、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に間欠的に流入・循環又は循環流量を増減させるメタン発酵排水処理方法及びその装置。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


人間活動の結果排出される有機性排水の処理は環境保全のために必要不可欠である。これらの排水は比較的低有機物濃度(重クロム酸酸化法による有機物濃度:CODcr,1g/L以下)であり、水温も外気温に左右され10-25℃とメタン発酵微生物の至適温度よりも低いことが知られている。現在、下水や産業排水などの有機性排水の処理は主に好気性微生物の働きを利用した標準活性汚泥法によって行われているが、有機性排水の好気性微生物処理では空気(酸素)の供給が必要である。曝気動力として用いられる電力消
費量は莫大であり日本国内の総電力消費量の0.6%に達している。また、排水の好気性微生物処理では除去有機物の約50%が余剰汚泥(産業廃棄物)に姿を変えており、汚泥発生量の抑制も排水処理システムの開発上重要な課題である。



このような課題を解決する手法として、メタン発酵処理法が知られている。嫌気性微生物の働きを利用したメタン発酵は、酸素供給のための曝気動力が不要のため消費エネルギーが少なく、また菌体の増殖収率が小さいため余剰汚泥の排出が少ない。さらに、有機物分解の結果生じるメタンガス(エネルギー)を回収できる創エネルギー型の排水処理法である。しかしながら、一般的なメタン発酵技術では、増殖速度の遅いメタン生成菌を反応器内に保持するために、20-40日程度の滞留時間(処理時間)を維持する必要があり、メタン発酵処理法は有機物濃度が高い生ごみや余剰汚泥等の処理や一部の産業廃水の処理など濃厚有機性排水処理に用いられるのが一般的であった。



しかし最近の20年ほどの間に、排水の滞留時間(処理時間)とは独立に汚泥(菌体)の滞留時間を制御することで、高濃度の生物量を反応器内に保持し、高速・高負荷で排水の嫌気処理を行おうという新方式の処理システムの開発が行われてきている(非特許文献1参照)。生物の保持方法としては装置内に固定された充填物に微生物を付着保持させる固定床法(例えば、特許文献1参照)、流動粒状担体(砂、粒状活性炭など)に微生物を付着させる流動床法(例えば、特許文献2参照)、微生物の自己造粒体(グラニュール状汚泥)を利用する上昇流嫌気性汚泥床(例えば、特許文献3参照)、膜分離により微生物を保持する処理方法(例えば、特許文献4参照)などがある。特に、嫌気性微生物の自己造粒体であるグラニュール状汚泥(生物膜)を形成させ、装置内に保持する上昇流嫌気性汚泥床(Upflow Anaerobic Sludge Blanket: UASB)による排水処理方法は、その排水処理能力(許容有機物負荷)の高さと安定性から中・高有機物濃度の産業排水を処理対象として多く適用がなされている。



上昇流嫌気性汚泥床(UASB)による嫌気排水処理では、生物膜(グラニュール状汚泥)の形成・維持により、排水と別々の装置内滞留時間で微生物を維持でき装置内に高密度に微生物を集積出来るため、従来、数十日かかった有機性排水の処理時間を数時間にまで短縮できるようになった。



しかしながら、生物膜利用嫌気性処理技術は嫌気性微生物の増殖とそれらの高密度集積体である生物膜の形成が容易な中・高濃度(2-10gCODcr/L)の易分解性有機性排水に限定されており、量的に最も多く排出される低有機物濃度排水(1gCODcr/L以下)への技術の適用は困難とされていた。これは、低有機物濃度条件下では、生物膜の形成、即ち嫌気性微生物の増殖に必要な有機物量の確保ができず、生物膜の崩壊や沈降性の悪化を招き、その結果、嫌気微生物(汚泥)の流失とプロセスの破綻を招いてしまうためである。また、有機物のメタン発酵処理の際に酢酸からのメタン生成反応を担うメタン生成細菌の酢酸に対する基質飽和定数(Ks)は150mgCOD/Lと大きく(例えば、非特許文献2参照)、排水の有機物濃度低下は微生物活性や増殖速度の低下、有機物分解効率の低下を招き、さらに、有機物分解に伴い生成するバイオガス(炭酸、メタン等)の量が少ないため上昇流嫌気性汚泥床法において生物膜の形成・維持に必要とされる汚泥床での物理的撹拌も不足する。



一般的に有機性排水や廃棄物のメタン発酵処理では、装置内(排水)の温度をメタン生成細菌の至適増殖温度である中温度(30-37℃)、高温度(50-65℃)に維持している。しかしながら、低有機物濃度排水のメタン発酵処理では回収可能なメタン量が少なく、多量に排出される低温度の排水(例えば、10-25℃)を加熱するのは費用の面から難しい。さらに低温度排水のメタン発酵処理では、メタン生成微生物の増殖速度や基質分解速度が低下し、装置内に必要量の微生物を保持すること(物性に優れる生物膜の形成・維持)、良好な水質を得ることが困難になる。また低水温下では流入排水の溶存酸素濃度や酸化還元電位が高まり嫌気条件(低い酸化還元電位:-250m~-300mV以下)を要求するメタン生成反応が阻害される等の問題が生じる。また、水温低下により水の粘性が増加するため排水と汚泥(微生物)との接触効率が低下するという問題点もある。



すなわち、これら低有機物濃度排水の無加温処理を対象としたメタン発酵排水処理プロセスを実現するためには、汚泥床への適度な物理的攪拌の付与などにより、メタン生成微生物への効率的基質供給とメタン生成微生物の高密度凝集塊である生物膜の物理的性状(沈降性など)維持を行うことで、菌体の高濃度保持と活性維持を実現することが鍵となる。また流入水の酸化還元電位を低く維持するための方策も必要である。



低有機物濃度排水をメタン発酵処理するために、嫌気処理水を常時循環させ、原水と共に排水流入部より供給する嫌気性グラニュール汚泥膨張床法(Expanded Granular Sludge Bed:EGSB法)の有効性が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この方法では、嫌気処理水を循環させ供給原水と共にメタン発酵槽に供給することで、汚泥床を積極的に流動化させ生物膜と原水(基質)との接触効率を増加させるものである。また、嫌気処理水の供給により、原水の酸化還元電位(ORP)が高い場合(酸素が微量に混入している場合)にも、装置内の嫌気的雰囲気(低ORP条件)を維持しやすいという特徴もある。ここでは、嫌気性汚泥膨張床法を20℃条件下での低濃度排水(0.6-0.8gCODcr/L)の処理に適用したところ、低濃度排水の高速処理を安定的に行うことができた。また、EGSB法が10℃から15℃という低温度条件下における有機性排水処理においても有効であることが知られている(例えば、非特許文献4参照)。



しかしながら、これらのEGSB法による低濃度排水の高速処理では、排水の有機物除去率が50-70%と低いレベルにとどまる等の問題点も明らかになった。また、量的に最も多く排出される、より低有機物濃度の排水(0.1-0.4gCODcr/L)にこの方法を適用する場合、メタン生成微生物の活動に必要な基質濃度が確保できず、保持汚泥の物性悪化(沈降性の悪化)を招くため、低有機物濃度の排水を安定的かつ効率的に処理可能なメタン発酵処理法は確立していない。



さらに、上向流嫌気排水処理装置(UASB法)において排水供給ノズルより間欠的に通常運転の3~5倍の吐出速度で排水供給を行うことで、汚泥床のチャネリングを防止する手段が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかし、この方法は、汚泥床のチャネリングやリアクター下部における過剰有機物供給によるグラニュール汚泥(生物膜)の肥大化防止のために、被処理水の供給速度を速める手段が示されているだけであり、低有機物濃度、低温度というメタン発酵不適排水を効率的に処理するために、グラニュール汚泥を構成するメタン発酵微生物の基質親和性等の微生物学的知見に基づいた適切な基質供給手段は示されていない。



一方、中・高濃度有機性排水の上向流嫌気排水処理装置による処理では高負荷運転を行うと排水流入部の設けられている汚泥床下部での揮発性脂肪酸の蓄積が生じてpHの低下を招き、メタン発酵処理が不安定になる。その解決方法として反応槽の高さ方向の複数箇所から汚泥床部に排水を分配導入し、汚泥床への有機物負荷量を分散させる嫌気排水処理法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この方法では過剰な負荷を分散するための排水処理方法が示されているだけであり、低負荷運転状況(低濃度排水処理)において汚泥床部で微生物に効率的に有機物を与える方法は示されていない。




【特許文献1】特開2005-81238号公報

【特許文献2】特開平9-248591号公報

【特許文献3】特開平5-50089号公報

【特許文献4】特開2000-24661号公報

【特許文献5】特開2003-340487号公報

【特許文献6】特開平11-207384号公報

【非特許文献1】微生物固定化法による排水処理、須藤隆一 著・編、産業用水調査会、p.220-221、1988年初版

【非特許文献2】D J. Batstone et al., Anaerobic digestion model No.1, IWA Publishing, 2002.

【非特許文献3】低有機物濃度排水の高速メタン発酵処理、川崎達也、珠坪一晃、渡辺正孝、大橋晶良、原田秀樹、第39回日本水環境学会年会講演集、p.343、2005年

【非特許文献4】低濃度有機性排水の低温メタン発酵処理、珠坪一晃、川崎達也、第8回水環境学会シンポジウム講演集、p.172、2005年

産業上の利用分野


本発明は、有機性排水を上昇流嫌気性汚泥床処理装置によりメタン発酵処理する排水処理方法と、それに用いる装置に関し、より詳しくは、有機性排水が生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水や、10~20℃の低温度有機性排水を生物学的にメタン発酵処理するのに適した処理方法及びそれに用いる上昇流嫌気性汚泥床処理装置に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなる上昇流嫌気性汚泥床処理装置により10~20℃の低温度有機性排水を処理する方法において、前記有機性排水が生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水であり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うことを特徴とする排水処理方法。

【請求項2】
有機性排水及び/又は嫌気処理水を、メタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から、分配供給及び/又は分配流入・循環させることを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。

【請求項3】
有機性排水に還元剤を投入することを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理方法。

【請求項4】
10~20℃の低温度、かつ、生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水の処理に用いられる処理装置であって、有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための送液管を設けたことを特徴とする上昇流嫌気性汚泥床処理装置。

【請求項5】
有機性排水供給部が、メタン発酵槽の高さ方向の複数箇所に有機性排水を分配供給しうる複数の供給管を有し、該供給管のそれぞれに、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための複数の送液管が接続されていることを特徴とする請求項記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置。

【請求項6】
有機性排水供給部に、還元剤を投入するための還元剤導入部を有することを特徴とする請求項又は記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置。
産業区分
  • 微生物工業
  • 衛生設備
  • 廃水処理
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2006213716thum.jpg
出願権利状態 権利存続中


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