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部位特異的アミノ酸導入法のための新規な直交化tRNA コモンズ

国内特許コード P110005274
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2005-102868
公開番号 特開2006-280250
登録番号 特許第4406731号
出願日 平成17年3月31日(2005.3.31)
公開日 平成18年10月19日(2006.10.19)
登録日 平成21年11月20日(2009.11.20)
発明者
  • 川井 淳
  • 川上 文清
  • 宍戸 昌彦
  • 大槻 高史
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 部位特異的アミノ酸導入法のための新規な直交化tRNA コモンズ
発明の概要

【課題】部位特異的アミノ酸導入法のための翻訳効率が高く、なおかつ直交性の高いtRNAを提供すること。
【解決手段】tRNAとしての機能を有するRNAであって、特定の2種類の塩基配列からなるRNAまたは当該RNAにおいて一つまたは複数の塩基が置換、欠失、挿入された塩基配列からなるRNAを提供する。
【効果】該RNAを用いることにより、従来法に比べて非天然アミノ酸の部位特異的なタンパク質への導入効率が向上し、高効率な人工タンパク質合成やそれを利用したアッセを行うことができる。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


天然に存在するタンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されており、そのアミノ酸配列はDNAの塩基配列によって規定されている。そのタンパク質をDNAの塩基配列を改変することで、遺伝子工学的手法により目的のタンパク質のアミノ酸配列を任意に組換えて構造を改変するという方法は比較的古くから用いられてきた。しかしながらこの方法では、可能なのはあくまで20種類のアミノ酸からなる配列の組換えであり、20種類のアミノ酸のいずれの構造中にも含まれない任意の機能基をタンパク質分子に導入することは事実上不可能であるため、タンパク質に人工機能を導入する手法としては限界があった。また一方で、タンパク質に任意の機能基を導入する手法としては、タンパク質分子の化学修飾という方法が用いられてきた。しかしこの方法では、タンパク質の特定の位置だけに機能基を導入することは非常に困難であり、そのため予測できない位置への化学修飾によってタンパク質本来の機能が著しく減じてしまう場合があるという問題があった。それに加え、化学修飾による方法ではタンパク質分子内部への機能基の導入を行うことができないといった欠点もあった。



種々の機能側鎖を持つ非天然アミノ酸を合成し、それらを天然のアミノ酸と同様に位置特異的に導入する非天然アミノ酸導入法は、これらの点を改善し、さらにタンパク質の機能をほとんど損なわずにさまざまな機能基を導入できるという点で優れている。天然のアミノ酸のみを用いた組換えタンパク質と比較して、導入した非天然アミノ酸に応じた種々の人工機能を発現することが期待でき、タンパク質の広範囲な機能拡張が可能となる。またさらに化学修飾法と比較しても、機能基を導入する位置を任意に決定することが可能であるため、タンパク質の本来の機能を損なう危険性を大幅に減じることができる。



天然のタンパク質は、前述のように20種類のアミノ酸から構成されており、そのアミノ酸配列は、そのタンパク質をコードしている遺伝子によって規定されている。遺伝子はDNA上の連続した3つの塩基の組み合わせからなる遺伝暗号(コドン)によりアミノ酸を指定している。塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類があり、それらの組み合わせからなる3塩基コドンの総数は4x4x4=64種類であるが、その大半である61種類のコドンは天然の20種類のアミノ酸に割り当てられている。残りの3種類、TAG、TAA、TGAの3種のコドンは終止コドンとよばれ、20種類のどのアミノ酸にも対応せず、タンパク質のアミノ酸配列の終止を規定している。



非天然アミノ酸をタンパク質へ位置特異的に導入するには、それらを指定する専用のコドンが必要となる。しかしながら前述の様に3つの塩基で構成可能な64種類のコドンは、すべて指定する情報が規定されている。



Schultzら(Noren, C.J. et al.(1989)Science,244,182-188、非特許文献1)やChambalinら(Bain,J.D. et al.(1989)J.Am.Chem.Sci.,111,8013-14、非特許文献2)は、終止コドンの一つであるTAGを非天然アミノ酸に割り当てた。タンパク質上の任意の位置のコドンをTAGに置き換え、天然には存在しない、終止コドンTAGに対応するアンチコドンCUAを持つtRNAを合成し、非天然アミノ酸を担持させて非天然アミノ酸を位置特異的に導入するという手法であった。しかしながらこの方法では、非天然アミノ酸の取り込みはタンパク質合成の終了と競合することになり、収率が低下してしまうという欠点があった。さらに、同一のタンパク質の複数箇所に別々の非天然アミノ酸を導入することも、非天然アミノ酸の指定に転用可能な終止コドンの種類数から考えて事実上不可能であった。



非天然アミノ酸の位置を決めるもう一つの手法として、通常の3塩基コドンを拡張した4塩基コドンを用いるという方法がある(Hohsaka, T., et al.(1996)J.Am.Chem.Soc.,118,9779-79、非特許文献3)。この方法では、たとえばCGGGからなる4塩基コドンが、4塩基のアンチコドンをもつ人工的に合成したtRNAによって翻訳されると、非天然アミノ酸が導入された完全長のタンパクが合成される。一方、CGGの3塩基のみに対する3塩基アンチコドンをもつ天然のtRNAによって翻訳されると、その後のコドンの読み枠がシフトし、終止コドンに出会うことによってタンパク質の合成は途中で終止してしまうことになる。このように、4塩基コドンを用いる方法は、64種類存在する通常の3塩基コドンとは事実上独立に非天然アミノ酸を規定できる点が特徴であり、前述の終止コドンを用いる方法とくらべて多種類の非天然アミノ酸を同一のタンパク質分子にそれぞれ位置特異的に導入し、機能発現させることも可能である。実際に、一例としてストレプトアビジンの54位に電子受容基を持つ非天然アミノ酸ニトロフェニルアラニンを、84位に蛍光基を持つ非天然アミノ酸アンスラニルアミドアラニンを導入した変異タンパク質を合成した報告がある(Hohsaka,T., et al.(1999)J.Am.Chem.Soc.,121,12194-95、非特許文献4)。その合成された非天然二重変異タンパク質は予測通り蛍光消光を示した。また更に最近、5塩基コドンも非天然アミノ酸を指定できることが明らかになっている(Hohsaka,T. and Sisido,M.(2000)Nucleic Acids Symp.Ser.44,99-100、非特許文献5)。



一方、部位特異的に非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法において使用されるtRNAとしては、任意の翻訳系においてtRNAとして機能するいずれの配列を持つtRNAも使用することができ、天然由来のtRNAのアンチコドン部位の配列のみを任意に変えたものなどを用いることができる。しかしながら、部位特異的に非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法において使用されるtRNAには、以下の2つの性質が必要とされる:
1)任意の翻訳系において高い翻訳効率(部位特異的に非天然アミノ酸を導入した蛋白質を効率よく合成するために必要である);
2)翻訳系内在性のアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)とは反応しない性質、すなわち高い「直交性」(Orthogonality)(直交性が低いtRNAを用いて部位特異的に非天然アミノ酸を導入したタンパク質の合成を行った場合、非天然アミノ酸を担持させた直交性が低いtRNAは、翻訳系中でその担持させた非天然アミノ酸が消費された後、ARSに認識されることにより、再び別の天然アミノ酸を担持し、非天然アミノ酸を導入すべき位置に天然アミノ酸を導入したタンパク質を誤って合成してしまう恐れがある。)



これまで、酵母由来の配列を改変した人工tRNAや、大腸菌由来の配列を改変した人工tRNA(Murakami, H., et al.(2003)Chem.Biol.7,655-62、非特許文献6)、古細菌由来の配列を改変した人工tRNA(Anderson, J.C. and Schultz, P.G. (2003)Biochemistry,32,9598-608、非特許文献7)などが好適に用いられてきた。



しかしながら、前述のような天然tRNAや人工改変tRNAは、いずれも翻訳効率が低いか直交性が低いかの問題があった。




【非特許文献1】Noren, C.J. et al.(1989)Science,244,182-188

【非特許文献2】Bain,J.D. et al.(1989)J.Am.Chem.Sci.,111,8013-14

【非特許文献3】Hohsaka, T., et al.(1996)J.Am.Chem.Soc.,118,9779-79

【非特許文献4】Hohsaka,T., et al.(1999)J.Am.Chem.Soc.,121,12194-95

【非特許文献5】Hohsaka,T. and Sisido,M.(2000)Nucleic Acids Symp.Ser.44,99-100

【非特許文献6】Murakami, H., et al.(2003)Chem.Biol.7,655-62

【非特許文献7】Anderson, J.C. and Schultz, P.G. (2003)Biochemistry,32,9598-608

産業上の利用分野


本願発明は、人工的に構造を改変したタンパク質を合成する方法に関し、より詳細には、任意のアミノ酸が位置特異的に導入されたタンパク質を合成する方法に関する。また、任意のアミノ酸が位置特異的に導入されたタンパク質、および該タンパク質の利用方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
tRNAとしての機能を有するRNAであって、以下の(1)および(2)からなる群より選択されるRNA:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA、ここで配列番号1における塩基31~34の「nnnn」は任意の塩基からなるアンチコドンである塩基アンチコドンを表;および
(2)配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA、ここで配列番号2における塩基31~34の「nnnn」は任意の塩基からなるアンチコドンである塩基アンチコドンを表

【請求項2】
(1)のRNAが配列番号3に記載の塩基配列からなる請求項1に記載のRNA。

【請求項3】
(2)のRNAが配列番号4に記載の塩基配列からなる請求項1に記載のRNA。

【請求項4】
請求項1~3に記載のRNAを用いて、部位特異的に非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法。

【請求項5】
請求項1~3に記載のRNAから選択される2種以上のRNAを用いて、単一のタンパク質の2箇所以上に部位特異的に非天然アミノ酸を導入する方法。

【請求項6】
請求項1~3に記載のRNAを用いて部位特異的に非天然アミノ酸をタンパク質に導入することを特徴とする、部位特異的に非天然アミノ酸が導入されたタンパク質の製造方法。

【請求項7】
請求項1~3に記載のRNAから選択される2種以上のRNAを用いて単一のタンパク質の2箇所以上に部位特異的に非天然アミノ酸を導入することを特徴とする、部位特異的に非天然アミノ酸が導入されたタンパク質の製造方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
特許内容に関しての問い合せ窓口は岡山大学連携機構知的財産部門です。

技術移転に関しては岡山TLOが窓口になります。


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