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レポーター遺伝子産物を発現するHCV全長ゲノム複製細胞、並びに、当該細胞を用いたスクリーニング方法およびスクリーニングキット コモンズ

国内特許コード P110005297
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2006-101483
公開番号 特開2006-325582
登録番号 特許第4009732号
出願日 平成18年4月3日(2006.4.3)
公開日 平成18年12月7日(2006.12.7)
登録日 平成19年9月14日(2007.9.14)
優先権データ
  • 特願2005-133158 (2005.4.28) JP
発明者
  • 加藤 宣之
  • 池田 正徳
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 レポーター遺伝子産物を発現するHCV全長ゲノム複製細胞、並びに、当該細胞を用いたスクリーニング方法およびスクリーニングキット コモンズ
発明の概要

【課題】 レポーター遺伝子産物を発現するHCV全長ゲノム複製細胞、当該細胞を用いたスクリーニング方法、およびC型肝炎治療用組成物を提供する。
【解決手段】 HCV全長ゲノム複製細胞から得られた治癒細胞を親細胞として、レポーター遺伝子配列、選択マーカー遺伝子配列およびHCV全長ゲノム配列を含むRNAを導入することで、レポーター遺伝子産物を発現するHCV全長ゲノム複製細胞が作製できる。当該細胞を用いたスクリーニング方法により得られた物質がC型肝炎治療用組成物の有効成分となる。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


C型肝炎ウイルス(以下「HCV」と記載する)は非A非B型肝炎の原因ウイルスとして1989年に発見同定されたフラビウイルス科に属するRNAウイルスである。HCVは持続感染を成立させるウイルスであることから、HCV感染により引き起こされる肝炎(C型肝炎)は高率に慢性肝炎に移行する。その後、二十数年の経過のなかで肝硬変、そして最終的に肝細胞癌発症に至ることが明らかになっている。



HCV感染者は日本国内で約200万人、世界で約2億人いると推定されている。最近の社会的問題にもなっているフィブリノゲン製剤によるHCV感染という事態からもわかるように、HCVに感染していることを自覚していないいわゆる無症候性キャリアーも多数存在している。現在、日本国内における肝細胞癌による犠牲者は年間約3.5万人となっており、その8割はHCV感染によるものである。また、その前段階である肝硬変においても年間約2万人が犠牲となっている。したがって、HCVは深刻な感染症を引き起こすウイルスであると言える。



現在、C型慢性肝炎に対して単独で抗ウイルス効果を示す治療薬はインターフェロン(以下「IFN」と記載する)のみである。日本国内では1992年からC型慢性肝炎に対するIFN療法が開始され、IFNの投与法の試行錯誤により治療効果にも向上がみられるようになった。しかし、約半数の患者には治癒が望めないことから、IFN療法の限界も明らかになっている。



HCVには多数の遺伝子型が存在しているが、日本国内では1b型が約70%、2a型が約20%、2b型が約10%であり、稀にその他の遺伝子型が見出される。遺伝子型によりIFN治療に対する効果が異なり、2a型や2b型ではIFN治療効果が高い(著効率が50%以上)のに対して、1b型ではIFN治療効果が低いことが知られている。また、ウイルス量が多い患者では、少ない患者よりもIFNが効き難いことが知られているが、1b型にはウイルス量が多い患者が多く、1b型でウイルス量が多い患者の著効率は2~8%と極端に低い。これらの患者群は、いわゆる「インターフェロン抵抗性」あるいは「インターフェロン難治性」と呼ばれている。



著効率を上げることを目的として、近年になって核酸構造類似体で幅広い抗ウイルス活性を示すことが知られていたリバビリン(単独ではC型肝炎には効果がない)とIFNとの併用療法(2001年12月に保険適用認可)やIFNにポリエチレングリコールを結合させてIFNの血中での安定性を高め、かつ腎排泄度を低下させたペグIFNを用いた療法(2003年12月使用認可)が行われるようになっている。



HCVが発見された翌年にはHCVのRNAゲノムの全構造が解明され、約9,600塩基の1本鎖プラス鎖RNAから10種類のHCVタンパク質が産生されることが明らかになっている(図1参照)。前半部のコアとエンベロープからウイルス粒子が産生され、後半部の非構造(NS)領域からHCVゲノムの複製に必須なNSタンパク質が産生される。



ゲノム構造が解明されたことにより、HCV研究は大きく進展したが、中和抗体、ワクチン、特異的抗HCV薬剤の開発については依然として苦戦を強いられている。その最大の理由として、HCVを人工的に増殖させる実験システムの欠如が挙げられる。HCVの発見以後、多くの培養細胞や動物を用いて人工増殖システムの開発が試みられたが、実用的なものは得られなかった。また、HCV感染のモデル動物はチンパンジーのみであり、これに代わる動物は未だ見つかっていない。チンパンジーを薬剤のスクリーニングに用いることは希少性および経済性の観点から現実的でない。



1999年に、上記の問題点をある程度クリアする新しい実験システムとしてHCVレプリコンシステムが登場した(非特許文献1参照)。このシステムでは、HCVゲノムの複製に必須のNS3~NS5B領域とゲノムの両末端からなるHCVサブゲノムが細胞内で複製するようになっており、1細胞あたりのHCVサブゲノムのコピー数は数千というレベルに達する。その後、いくつかの異なるHCV株由来のサブゲノミックHCVレプリコン細胞が樹立されている(例えば、非特許文献2参照)。また、上記レプリコン細胞において、サブゲノミックHCVレプリコンの複製レベルを容易にモニターできるようにする目的で、レポーター遺伝子を組み込んだサブゲノミックHCVレプリコンが導入された細胞が開発されている(非特許文献3~5を参照)。



現在、C型肝炎治療薬の開発においては、多数のモデル動物(チンパンジー)を用いた薬理試験を実施することができないため、上記サブゲノミックHCVレプリコンシステムを用いた薬効評価が必須となっている。



しかしながら、上記サブゲノミックHCVレプリコンシステムでは、HCV構造タンパク質の影響を評価できないという問題を有している。HCV構造タンパク質の1つであるコアタンパク質が宿主の細胞因子に影響を及ぼすことは従来知られている。したがって、実際にHCVに感染したヒト肝臓で生じていることを見ようとする試みには、レプリコンシステムでは不十分である。また、サブゲノミックHCVレプリコンシステムを用いてスクリーニングされたウイルスの複製を抑制する薬剤が、実際にはHCVの複製を十分抑制できない場合もあることが予想される。



そこで、上記サブゲノミックHCVレプリコンシステムの有する問題を解決するために、HCV全長ゲノムRNAの複製システムが開発され、これまでに、3種類のHCV株(N株、Con-1株およびH77株)の全長ゲノムを複製できる細胞(全長HCV RNA複製システム)の樹立が報告されている(非特許文献6~8を参照)。



スタチンは、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤として広く臨床使用されているHMG Co-A還元酵素阻害剤である。最近、スタチンの抗ウイルス作用が報告されており、抗HCV作用についてもいくつかの報告がある。



特許文献1には、アトルバスタチン、ローバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンおよびプラバスタチンの5種類についてサブゲノミックHCVレプリコンシステムを用いて複製抑制効果を検討し、プラバスタチン以外の4種類のスタチンに抗HCV作用が認められたことが記載されている。しかし、全長HCV RNA複製システムを用いて評価したものではないため、構造タンパク質の影響については評価できていない。また、他の抗ウイルス剤(IFN、リバビリン)とスタチンとの併用についても言及されているが、実証データは付されていない。



特許文献2および非特許文献9には、ローバスタチンについて抗HCV作用を検討した結果が記載されている。これらの報告においては、全長HCV RNA複製システムを使用しているが、RNAレベルの評価にはサブゲノミックHCVレプリコンシステムを用いており、全長HCV RNA複製システムではHCVタンパク質の発現抑制を評価しているに過ぎない。



シクロスポリンAは、免疫抑制剤として広く臨床使用されている。シクロスポリンAが抗HCV作用を有することは既に報告されており、その作用機序についても明らかにされている(非特許文献10~13を参照)。

【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0085528号

【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0085529号

【非特許文献1】V.Lohmann, F.Korner, J.Koch, U.Herian, L.Theilmann, R.Bartenschlager, Replication of subgenomic hepatitis C virus RNAs in a hepatoma cell line, Science 285, 110-113 (1999)

【非特許文献2】N.Kato, K.Sugiyama, K.Namba, H.Dansako, T.Nakamura, M.Takami, K.Naka, A.Nozaki, K.Shimotohno, Establishment of a hepatitis C virus subgenomic replicon derived from human hepatocytes infected in vitro, Biochem.Biophys.Res.Commun. 306, 756-766 (2003)

【非特許文献3】E.M.Murray, J.A.Grobler, E.J.Markel, M.F.Pagnoni, G.Paonessa, A.J.Simon, O.A.Flores, Persistent replication of hepatitis C virus replicons expressing the beta-lactamase reporter in subpopulations of highly permissive Huh7 cells, J.Virol.77, 2928-2935 (2003)

【非特許文献4】M.Yi, F.Bodola, S.M.Lemon, Subgenomic hepatitis C virus replicons inducing expression of a secreted enzymatic reporter protein, Virology 304, 197-210 (2002)

【非特許文献5】T.Yokota, N.Sakamoto, N.Enomoto, Y.Tanabe, M.Miyagishi, S.Maekawa, L.Yi, M.Kurosaki, K.Taira, M.Watanabe, H.Mizusawa, Inhibition of intracellular hepatitis C virus replication by synthetic and vector-derived small interfering RNAs, EMBO Rep.4, 602-608 (2003)

【非特許文献6】K.J.Blight, J.A.McKeating, J.Marcotrigiano, C.M.Rice, Efficient replication of hepatitis C virus genotype 1a RNAs in cell culture, J.Virol.77, 3181-3190 (2003)

【非特許文献7】M.Ikeda, M.Yi, K.Li, S.M.Lemon, Selectable subgenomic and genome-length dicistronic RNAs derived from an infectious molecular clone of the HCV-N strain of hepatitis C virus replicate efficiently in cultured Huh7 cells, J.Virol.76, 2997-3006 (2002)

【非特許文献8】T.Pietschmann, V.Lohmann, A.Kaul, N.Krieger, G.Rinck, G.Rutter, D.Strand, R.Bartenschlager, Persistent and transient replication of full-length hepatitis C virus genomes in cell culture, J.Virol.76, 4008-4021 (2002)

【非特許文献9】Jin Ye et al. Disruption of hepatitis C virus RNA replication through inhibition of host protein geranylgeranylation. Proc Natl Acad Sci U S A. Dec 23;100(26):15865-70 (2003).

【非特許文献10】Watashi K, Hijikata M, Hosaka M, Yamaji M, Shimotohno K. Cyclosporin A suppresses replication of hepatitis C virus genome in cultured hepatocytes. Hepatology 38: 1282-1288 (2003)

【非特許文献11】Nakagawa M, Sakamoto N, Enomoto N, Tanabe Y, Kanazawa N, Koyama T, Kurosaki M, Maekawa S, Yamashiro T, Chen CH, Itsui Y, Kakinuma S, Watanabe M. Specific inhibition of hepatitis C virus replication by cyclosporin A. Biochem. Biophys. Res. Commun. 313; 42-47 (2004)

【非特許文献12】Watashi K, Ishii N, Hijikata M, Inoue D, Murata T, Miyanari Y, Shimotohno K. Cyclophilin B is a functional regulator of hepatitis C virus RNA polymerase. Mol. Cell 19: 111-122 (2005)

【非特許文献13】Nakagawa M, Sakamoto N, Tanabe Y, Koyama T, Itsui Y, Takeda Y, Chen CH, Kakinuma S, Oooka S, Maekawa S, Enomoto N, Watanabe M. Suppression of hepatitis C virus replication by cyclosporin A is mediated by blockade of cyclophilins. Gastroenterology 129: 1031-1041 (2005)

産業上の利用分野


本発明は、レポーター遺伝子産物を発現するHCV全長ゲノム複製細胞、当該細胞を用いたスクリーニング方法、およびC型肝炎治療用組成物に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)の全長ゲノムを複製し、かつレポーター遺伝子産物を発現する細胞であって、
レポーター遺伝子配列、選択マーカー遺伝子配列およびHCV全長ゲノム配列を含むRNAが、ヒト肝癌細胞株HuH-7由来のOc細胞(FERM P-20517)に導入されている細胞。

【請求項2】
上記RNAは、さらに外来性のインターナルリボソーマルエントリーサイト(IRES)配列を含む、請求項1に記載の細胞。

【請求項3】
上記RNAのHCVオープンリーディングフレーム配列中に、少なくとも1個のアミノ酸置換を伴う適応変異が含まれている、請求項1または2に記載の細胞。

【請求項4】
上記適応変異がNS3領域内に生じている、請求項3に記載の細胞。

【請求項5】
上記RNAは、5’末端から、HCVのIRES配列、レポーター遺伝子配列、選択マーカー遺伝子配列、外来性IRES配列、HCVオープンリーディングフレーム配列、HCV3’非翻訳配列の順に連結されている、請求項2に記載の細胞。

【請求項6】
抗HCV作用を有する物質をスクリーニングする方法であって、
被検物質を請求項1ないし5のいずれかに記載の細胞と接触させる工程;
レポーター遺伝子産物のレベルを測定する工程;および
上記レポーター遺伝子産物のレベルを、被検物質を接触させないときのレベルと比較する工程
を包含する、方法。

【請求項7】
抗HCV作用を有する物質をスクリーニングするためのキットであって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の細胞を備える、スクリーニングキット。
産業区分
  • 微生物工業
  • 薬品
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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