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生体親和性インプラントの製造方法 コモンズ 外国出願あり

国内特許コード P110005397
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2009-515228
登録番号 特許第5360660号
出願日 平成20年5月19日(2008.5.19)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
国際出願番号 JP2008059149
国際公開番号 WO2008143219
国際出願日 平成20年5月19日(2008.5.19)
国際公開日 平成20年11月27日(2008.11.27)
優先権データ
  • 特願2007-132708 (2007.5.18) JP
発明者
  • 早川 聡
  • 尾坂 明義
  • 都留 寛治
  • 勝瑞 哲也
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 生体親和性インプラントの製造方法 コモンズ 外国出願あり
発明の概要

基材を熱処理することによってその表面に酸化チタン皮膜を形成してから、酸化チタン皮膜に紫外線を照射して生体親和性インプラントを製造する。このとき、チタン金属又はチタン合金からなる基材を酸化可能気体中で加熱して酸化チタン皮膜を形成する方法と、基材の表面にチタン化合物を含有する液を塗布してから熱処理してゾル-ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成する方法が好適である。これにより、ヒドロキシアパタイトの形成能に優れた酸化チタン皮膜を有する生体親和性インプラントの製造方法が提供される。

従来技術、競合技術の概要


近年、金属製のインプラントが、人工骨や人工歯根など、整形外科や歯科の領域において広く使用されるようになってきている。例えば、変形性関節症や関節リウマチにより関節の機能を失った場合に、人工関節への置換によりその機能を再獲得する治療が一般的となっている。



人工関節の骨への固定方法としては、現在主に二種類の方法が用いられている。一つは、骨セメントと呼ばれる接着剤を骨と人工関節の隙間に充填し、固定する手法である。骨セメントは術中に硬化するために、術後早期からのリハビリの開始が可能になる。しかしながら、骨セメントの充填時に骨髄内へ過度の圧迫を生じたためにショック症状や血圧低下を来す危険性が報告されているために、その利用は年々減少傾向を示している。もう一つの方法は、セメントレス固定と呼ばれている骨セメントを用いない固定方法であり、例えば人工関節の表面に作られた多孔質部への周辺骨の侵入による機械的なアンカー効果で固定するような方法である。この方法は、骨セメントを用いることによる危険性を回避できることから症例が急増している。しかしながら、人工関節が骨に固定されるのに要する時間は、患者の骨の成長速度に依存するために、患者に長期間の安静やリハビリテーションが求められる。



上記セメントレス固定を採用した際の安静期間やリハビリテーション期間を短縮するために、人工関節に骨伝導性を付与する方法がこれまでにいくつか検討されている。その一つは、骨類似成分であるハイドロキシアパタイトを高温で溶射し、人工関節の表面に骨伝導性を付与する手法であり、既に実用化されている。しかしながら、この方法には、溶射のための大がかりな設備が必要なこと、溶射されるアパタイトが高温にさらされるために変性するおそれがあること、形成されたアパタイト層が剥離するおそれがある等の問題点があるとされている。



特許文献1には、チタンを含有する金属基材と、該金属基材の表面に設けられた金属酸化物層とを備え、該金属酸化物層の少なくとも表面にTiOHからなる化学種を有する骨伝導性生体材料が記載されている。このような化学種を表面に有する骨伝導性生体材料は、チタンを含有する金属基材を1000℃以下の温度で熱処理して得られたチタン酸化物層を温度100℃以上、圧力0.1MPa以上の条件で水熱処理することで形成される。このとき、熱処理によって形成される金属酸化物層の好適な厚さは3~10μm程度である。そして、このような構成とすることによって骨伝導性の良好な生体材料が提供される。例えば、特許文献1の実施例1においては、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金に対して、800℃で1時間熱処理をして約5μmの厚さの金属酸化物層を形成し、それをリン酸緩衝液に浸漬して120℃、0.2MPaの条件で水熱処理した試料が、擬似体液中でアパタイト結晶を形成したことが記載されている。しかしながら、800℃もの高温で長時間加熱したのでは、金属基材の強度の低下が避けられない。また、酸化チタン皮膜が厚すぎると、皮膜の剥離も生じやすくなる。一方、上記水熱処理を行わずに金属酸化物層を形成しただけではアパタイト結晶が形成されないことが、特許文献1の比較例2に記載されている。



非特許文献1には、空気中で400℃、1時間熱処理することによって表面に酸化物層が形成されたチタン金属の平板試料を擬似体液に浸漬してアパタイトの形成状態を観察した結果が示されている。このとき、擬似体液を入れた容器はその底面が上に凸の曲面を有するポリスチレン製の容器であり、その上に試料の平板が載置される形で平板試料が浸漬された。すると、試料の上面にはアパタイトが形成せず、下面(容器の底に接触する側)にのみアパタイトの形成が認められた。試料の下面は容器の曲面に接しているのでその隙間は場所によって異なるが、概ね100μm程度の隙間を有するところにおいてアパタイトの形成が容易であった。すなわち、アパタイトの形成が、限られた環境においてのみ可能であることが示されている。



金属などの基材に、アルコキシチタンなどの有機チタン化合物の溶液を塗布し、熱処理する、いわゆるゾル-ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成することができる(例えば非特許文献2参照)。この場合に形成される酸化チタン皮膜の表面には、擬似体液中でヒドロキシアパタイトが形成されることが知られている。しかしながら、基材によってはこの方法によってヒドロキシアパタイトが形成されない場合があった。例えば、基材がステンレス鋼、アルミナあるいはソーダライムガラスである場合には、ゾル-ゲル法で得られた酸化チタン皮膜の表面にヒドロキシアパタイトが形成されないことが知られている(非特許文献3)。これは、これらの基材から酸化チタン皮膜への拡散成分がヒドロキシアパタイトの形成を阻害するためと考えられている。例えば、ステンレス鋼は腐食に強く、人体に対して比較的安全で、しかも加工が容易なので、骨伝導性の良い表面処理が強く望まれている。



非特許文献4には、酸化チタンの粉末を圧縮成形した成形品に水銀ランプの光を照射してから、1.5倍のイオン濃度の擬似体液に浸漬した結果が示されている。その結果、光照射した面には、ヒドロキシアパタイトが形成され、光照射しなかった面にはヒドロキシアパタイトが形成されなかったことが報告されている。しかしながら、その実施例によれば、1.5倍のイオン濃度の擬似体液を用いても、5日間ではヒドロキシアパタイトは形成されず、10日間でようやくヒドロキシアパタイトが形成されるものであって、そのアパタイト形成能は必ずしも十分とはいえないものであった。



非特許文献5には、アナターゼ相を80%、ルチル相を20%含む30nmの酸化チタン粉末を、チタン合金基材上にプラズマスプレーコーティングし、その表面に紫外線照射してから、擬似体液に浸漬した結果が示されている。それによれば、紫外線照射しなかった場合にはアパタイトが形成されなかったけれども、紫外線照射することによってアパタイトが形成されることが記載されている。しかしながら、125Wの高圧水銀ランプで24時間の紫外線照射をしてもアパタイトの形成には4週間もの長時間が必要であり、そのアパタイト形成能は必ずしも十分とはいえないものであった。また、プラズマスプレーコーティングは、大掛かりな設備が必要であるし、立体的な成形品に対して均一な膜厚でコーティングするのが困難である。



非特許文献6には、チタン金属基材の表面をマイクロ・アーク酸化してから、擬似体液中で紫外線照射することによって、その表面にアパタイトを形成することが記載されている。ここで、前記マイクロ-アーク酸化は、チタン金属を陽極として電解液に浸漬し、電圧を印加することによってチタン金属表面を酸化して酸化チタン皮膜を形成する方法である。擬似体液中において、アナターゼ結晶を含有する酸化チタン皮膜を1000Wの水銀ランプで2時間紫外線照射することによってアパタイトが形成されたことが記載されている。しかしながら、擬似体液内で紫外線照射してアパタイトを形成しているので、生体外で予めアパタイト形成させたものを移植するような使用法に限定される。すなわち、体内環境下でのアパタイトの析出に伴う骨との融合を想定していない。また、多孔質の酸化チタン皮膜が形成されるので、成形後の基材の表面形態が変化するし、インプラントの外観が損なわれ、金属光沢も失われる。



特許文献2には、チタン又はチタン合金からなるインプラントの表面を水酸化してから紫外線照射することによって、骨一体化特性を改良することが記載されている。ここで、インプラント表面の水酸化は、チタン又はチタン合金からなるインプラントを酸でエッチングすることによって得ており、酸化チタン皮膜が積極的に形成されているわけではない。また、紫外線は、有機不純物を分解除去するために照射されている。




【特許文献1】特開2003-235954号公報

【特許文献2】特表2005-505352号公報

【非特許文献1】Xiao-Xiang Wang et al、「A comparative studyof in vitro apatite depositionon heat-, H2O2-, and NaOH-treated titanium」、Journal of Biomedical Materials Research、2001年、54巻、p.172-178

【非特許文献2】横尾俊信 他「ゾル・ゲル法により調製したTiO2薄膜の光電気化学的性質」、窯業協会誌、1987年、第95巻、p.150-155

【非特許文献3】T. Shozui et al、「In Vitro Apatite-FormingAbility of Titania Films Depends on Their Substrates」、KeyEngineering Materials、2007年、第330-332巻、p.633-636、TransTech Publications、Switzerland

【非特許文献4】Toshihiro Kasuga et al、「Apatite formation onTiO2 in simulated body fluid」、Journal ofCrystal Growth、2002年、p.235-240

【非特許文献5】Xuanyong Liu et al、「Light-induced bioactiveTiO2 surface」、Applied Physics Letters、2006年、第88巻、013905

【非特許文献6】Yong Han et al、「Photoexcited formation ofborn apatite-like coatings on micro-arc oxidized titanium」、Journal of Biomedical Materials Research、2004年、71巻A、p.608-614

産業上の利用分野


本発明は、基材の表面に酸化チタン皮膜を有する生体親和性インプラントの製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
チタン金属又はチタン合金からなる基材を酸化可能気体中420~790℃で熱処理することによってその表面に厚さが30~1500nmの酸化チタン皮膜を形成してから、該酸化チタン皮膜に紫外線を照射することを特徴とする生体親和性インプラントの製造方法。

【請求項2】
250~420nmの波長の紫外線の照射量が1J/cm以上である請求項1記載の生体親和性インプラントの製造方法。

【請求項3】
水に対する静的接触角が5度以下である請求項1又は記載の生体親和性インプラントの製造方法。

【請求項4】
前記酸化チタン皮膜がルチル型結晶を含む請求項1~3のいずれか記載の生体親和性インプラントの製造方法。
産業区分
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2009515228thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
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