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誘導電圧制御装置及びその制御方法 コモンズ 外国出願あり

国内特許コード P110005464
整理番号 248JP
掲載日 2011年8月18日
出願番号 特願2005-196223
公開番号 特開2007-018756
登録番号 特許第4110253号
出願日 平成17年7月5日(2005.7.5)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
登録日 平成20年4月18日(2008.4.18)
発明者
  • 鳥飼 幸太
  • 高山 健
  • 下崎 義人
  • 木代 純逸
  • 荒木田 是夫
出願人
  • 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明の名称 誘導電圧制御装置及びその制御方法 コモンズ 外国出願あり
発明の概要

【課題】加速用誘導加速セルによる一定電圧の加速電圧であっても、あらゆる磁場励磁パターンに同期して、任意の荷電粒子を任意のエネルギーレベルに加速することのできる誘導電圧制御装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】磁場励磁パターンを基に求められる必要な可変遅延時間パターン、及び等価的な加速電圧値パターと、バンチモニター7からのバンチ3の通過シグナル7aを基に可変遅延時間を制御するデジタル信号処理装置8d、及びスイッチング電源5bのゲート信号パターン8aへと変換するパターン生成器8bからなり、制御単位あたりの加速用の誘導電圧のパルス密度を制御する。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


シンクロトロンには、高周波シンクロトロン、誘導加速セルを用いたシンクロトロンがある。高周波シンクロトロンは、入射機器により真空ダクト内に入射した陽子などの荷電粒子を、高周波加速空洞4によって高周波シンクロトロンを構成する強収束を保証する偏向電磁石の磁場励磁パターンに同期した高周波加速電圧を印加して、加速しながら荷電粒子を真空ダクト中の荷電粒子ビームが周回する設計軌道を周回させる円形加速器である。



一方、誘導加速セルを用いたシンクロトロンは、高周波シンクロトロンと加速方法が異なり、誘導加速セルによって誘導電圧を印加して加速する円形加速器である。図13に高周波加速空洞による陽子ビームの加速原理を、図14に誘導加速セルによる陽子ビームの加速原理を示した。



図13(A)は、入射された陽子が数個のバンチ3として高周波シンクロトロン21の設計軌道2を周回している様子を示している。バンチ3は、高周波加速空洞4に到達すると、磁場励磁パターンに同期した高周波加速電圧21aを印加されることにより、所定のエネルギーレベルまで加速される。



図13(B)は、バンチ3とバンチ3に印加される高周波加速電圧21aの関係を示している。横軸tは、高周波加速空洞4内の時間的変化を表している。縦軸vは、高周波加速電圧値である。Vofsは、加速のある瞬間に偏向電磁石の磁場励磁パターンの傾き(時間的変化率)から計算されたバンチ3の加速に必要な高周波加速電圧値21bである。



バンチ3は高周波加速空洞4によって、加速に必要な電圧を偏向電磁石の磁場励磁パターンの傾き(時間的変化率)から計算されたVofs(高周波加速電圧値21b)を印加される。高周波加速電圧21aは、バンチ3の加速に必要な電圧を与える機能と、バンチ3が進行軸方向に拡散することを防止する閉じ込め機能を併せ持っている。



特に、閉じ込め機能を位相安定性と呼ぶことがある。高周波シンクロトロン21で荷電粒子ビームを加速する場合には、前記二つの機能が必ず必要である。前記二つの機能をもつ高周波加速電圧21aの時間帯は限られている。図13(B)のグレーで示した時間帯は加速に利用することができないことがこれまでに分かっている。



ここで位相安定性とは、荷電粒子が高周波加速電圧21aによって進行軸方向への収束力を受けて、個々の荷電粒子がバンチ3化し、そのバンチ3の中を荷電粒子の進行軸方向に往きつ戻りつしながら高周波シンクロトロン21の中を周回することをいう。



また、バンチ3とは荷電粒子が位相安定性を受け、設計軌道2を周回する荷電粒子群のことをいう。



図14(A)は、誘導加速セルを用いたシンクロトロン22によって、従来の高周波シンクロトロン21で加速していた荷電粒子ビームの長さに比べて数倍から10倍の時間幅を持つ、1マイクロ秒にも達するバンチ3(以下、スーパーバンチ3bという。)を加速する様子を示している。この場合、誘導加速セルを用いたシンクロトロン22の陽子ビームが周回する設計軌道2に構造を同じくする誘導加速セルを2台以上配置させる必要がある。



この二つの誘導加速セルの一方はスーパーバンチ3bの閉じ込め機能を与える誘導加速セル(以下、閉込用誘導加速セル23という。)であり、他方は偏向電磁石の磁場励磁パターンに同期して、スーパーバンチ3bの加速に必要な電圧を印加する機能を与える誘導加速セル(以下、加速用誘導加速セル6という。)である。この二つの誘導加速セルによって、シンクロトロン22の運転に必要な閉じ込め機能と加速機能を与える。この二つの誘導加速セルは、通常のバンチ3に対しても同じ機能を与えることができる。



ここで誘導加速セルとは、これまで作られてきた線形誘導加速器用の誘導加速セルと原理的には同じ構造である。誘導加速セルは、内筒、及び外筒からなる2重構造で、外筒の内に磁性体が挿入されてインダクタンスを作る。荷電粒子ビームが通過する真空ダクトと接続された内筒の一部がセラミックなどの絶縁体でできている。



磁性体を取り囲む1次側の電気回路にDC充電器からパルス電圧を印加すると、1次側導体には1次電流(コア電流)が流れる。この1次電流は1次側導体の周りに磁束を発生させ、1次側導体に囲まれた磁性体が励磁される。



これによりトロイダル形状の磁性体を貫く磁束密度が時間的に増加する。このとき絶縁体を挟んで、導体の内筒の両端部である2次側の絶縁部にファラデーの誘導法則にしたがって誘導電場が発生する。この誘導電場が加速電場となる。この加速電場が生じる部分を加速ギャップという。従って、誘導加速セルは1対1のトランスであるといえる。



誘導加速セルの1次側の電気回路にパルス電圧を発生させるスイッチング電源を接続し、前記スイッチング電源を外部からオンおよびオフすることで、加速電場の発生を自由に制御することができる。



図14(B)は、誘導加速セルによってスーパーバンチ3bを閉じ込め、及び加速する様子を示している。横軸tは、スーパーバンチ3bが閉込用誘導加速セル23に到達した時間を基準にした誘導電圧の発生タイミング、及び誘導電圧を印加する長さ(以下、印加時間という。)である。



なお、加速用誘導加速セル6に印加される誘導電圧の発生タイミングと印加時間は、閉込用誘導加速セル23と1/2の周回時間24のズレがある。縦軸vは誘導電圧値である。Vofsは、加速のある瞬間に磁場励磁パターンの傾き(時間変化率)から計算されたスーパーバンチ3bの加速に必要な加速電圧値9kである。



ここで誘導電圧とは、誘導加速セルによって、荷電粒子に印加させる電圧である。閉込用誘導加速セル23で印加する誘導電圧をバリアー電圧といい、特に荷電粒子ビームの頭部に印加するものを負のバリアー電圧23a、荷電粒子ビームの尾部に印加するものを正のバリアー電圧23bという。スーパーバンチ3bである場合も同じである。



その結果、閉込用誘導加速セル23においては、高周波加速空洞4と同様にバンチ3に位相安定性を与えることができる。しかし、1つの誘導加速セルのみでは、荷電粒子ビームの加速は行えないので、別に加速用誘導加速セル6が必要になる。



加速用誘導加速セル6で印加する誘導電圧を加速用の誘導電圧といい、特に荷電粒子ビームの全体に印加するものを加速電圧9a、加速用誘導加速セル6の磁気的飽和を回避するための誘導電圧をリセット電圧9bという。スーパーバンチ3bである場合も同じである。



なお、リセット電圧9bは、閉込用誘導加速セル23においては、正のバリアー電圧23bに該当するが、正のバリアー電圧23bがバンチ3の尾部に印加されバンチ3の閉じ込めに利用されるに対して、リセット電圧9bは、荷電粒子ビームが存在しない時間帯(グレーで示した時間帯)に磁気的飽和を回避させるためだけに印加させる。



ここで閉じ込めとは、荷電粒子ビームを構成する荷電粒子が、必ず運動エネルギーのばらつきを持っているために必要となる機能である。運動エネルギーのばらつきは、荷電粒子ビームが設計軌道2を1周した後、同じ位置へ到達する時間の違いをもたらす。この時間差は閉じ込めを行わない限り、周回を重ねるごとに大きくなり、荷電粒子ビームは設計軌道2の全体に渡って拡散してしまう。



荷電粒子ビームの頭部および尾部に、負および正バリアー電圧23a、23bが印加されるようにすると、エネルギーが過剰で周回が早まった荷電粒子には負のバリアー電圧23aによってエネルギーが失われエネルギー不足な状態なり、エネルギーが不足して周回が遅れた荷電粒子には正のバリアー電圧23bによってエネルギーが与えられてエネルギー過剰な状態になる。



これにより、周回が速い粒子は周回が遅れ、逆に周回が遅れた粒子は周回が早まる。結果として荷電粒子ビームを進行軸方向のある領域に局在させることができる。この一連の働きを荷電粒子ビームの閉じ込めと呼ぶ。



従って、閉込用誘導加速セル23の機能は、従来の高周波加速空洞4の閉じ込めの機能だけを分離したものと等価である。



閉込用とは、入射装置より誘導加速セルを用いたシンクロトロン22に入射された荷電粒子ビームを、誘導加速セルによる所定のバリアー電圧よって、別の誘導加速セルで誘導加速できるように一定の長さのバンチ3まで縮めたり、その他種々の長さの荷電粒子ビームに変える機能と、加速中のバンチ3に位相安定性を持たせる機能を有しているとの意味である。



加速用とは、バンチ3を形成後にバンチ3の全体に、加速用の誘導電圧を与える機能を有しているとの意味である。



図14(C)は、閉込用誘導加速セル23の閉じ込め機能のみを示している。図14(D)は、加速用誘導加速セル6の加速機能のみを示している。横軸t(a)は、スーパーバンチ3bが閉込用誘導加速セル23に到達した時間を基準にした、バリアー電圧の発生タイミングと印加時間である。横軸t(b)は、スーパーバンチ3bが加速用誘導加速セル6に到達する時間を基準にした、加速用の誘導電圧9の発生タイミングと印加時間である。その他、記号は図14(B)と同じ。



誘導加速セルを用いたシンクロトロン22による加速では、原理的には、リセット電圧9bの印加時間(グレーで示した時間領域)を除いては加速として使用することができることとなる。このように加速に使用できる時間帯を大幅に増すことによって、高周波シンクロトロン21では、原理的に不可能であったスーパーバンチ3bも加速することが可能となると考えられている。

【非特許文献1】日本物理学会誌 vol.59,No.9(2004)p601-p610



このようにバリアー電圧によっても、高周波加速電圧21aと同様に陽子ビームを閉じ込めることが可能となった。他方、加速するためには、別の加速装置が必要であるが、陽子や特定の加速可能な荷電粒子であれば、高周波加速空洞4からなる加速装置であってもよい。また、高周波加速空洞4によって陽子ビームを閉じ込め、加速用の誘導電圧9によって加速するような構成であってもよい。



既に、発明者等は高エネルギー加速器研究機構(以下、KEKという。)の陽子高周波シンクロトロン21(以下、12GeVPSという。)内に加速用誘導加速セル6を設置し、高周波加速空洞4と加速用誘導加速セル6とを組み合わせることにより、一定間隔で発生させる加速用の誘導電圧9によって、運動エネルギー5億電子ボルトで入射された陽子ビームを80億電子ボルトまで加速することに成功している。



ここで電子ボルトとは、電圧の単位であるボルトに電子の単位電荷を乗じたものを1電子ボルトとして与えられるものである。1電子ボルトは、1.602×10-19ジュールに等しい。

【非特許文献2】Phys.Rev.Lett.Vol.94,No.144801-4(2005).

産業上の利用分野


本発明は、誘導加速セルを用いたシンクロトロンにおいて、加速用の誘導電圧をシンクロトロンを構成する偏向電磁石の磁場励磁パターンに同期させ、荷電粒子を加速するための誘導電圧制御装置及びその制御方法に関する。



ここで荷電粒子とは、元素の周期表のある種の元素が一定の正または負の電価状態にあるイオンおよび電子に始まる「電荷を持った粒子」の総称をいう。また、荷電粒子には、化合物、タンパク質などの構成分子数の大きな粒子も含む。

特許請求の範囲 【請求項1】
誘導加速セルを用いたシンクロトロンにおいて、磁場励磁パターンを基に計算される理想的な可変遅延時間パターンに対応する必要な可変遅延時間パターンを格納し、前記必要な可変遅延時間パターンに基づき可変遅延時間シグナルを生成する可変遅延時間計算機と、荷電粒子ビームが周回する設計軌道にあるバンチモニターからのバンチの通過シグナル、前記可変遅延時間計算機からの可変遅延時間シグナルを受けて、可変遅延時間に相当するパルスを生成する可変遅延時間発生器と、磁場励磁パターンを基に計算される理想的な加速電圧値パターンに対応する等価的な加速電圧値パターンを格納し、前記可変遅延時間発生器からの可変遅延時間に相当するパルスを受けて、加速用の誘導電圧のオンオフを制御するパルスを生成するオンオフ選択器と、前記オンオフ選択器からのパルスを受けて、パターン生成器に適したパルスであるゲート親信号を生成し、可変遅延時間の経過後に出力するゲート親信号出力器からなるデジタル信号処理装置、及び前記ゲート親信号を加速用の誘導加速セルを駆動するスイッチング電源のゲート信号パターンへと変換するパターン生成器とからなる加速用の誘導電圧の発生タイミングを制御することを特徴とする誘導電圧制御装置。

【請求項2】
誘導加速セルを用いたシンクロトロンにおいて、磁場励磁パターンを基に計算される理想的な可変遅延時間パターンに対応する必要な可変遅延時間パターンを格納し、前記必要な可変遅延時間パターンに基づき可変遅延時間シグナルを生成する可変遅延時間計算機と、荷電粒子ビームが周回する設計軌道にあるバンチモニターからのバンチの通過シグナル、前記可変遅延時間計算機からの可変遅延時間シグナルを受けて、可変遅延時間に相当するパルスを生成する可変遅延時間発生器と、磁場励磁パターンを基に計算される理想的な加速電圧値パターンに対応する等価的な加速電圧値パターンを格納し、前記可変遅延時間発生器からの可変遅延時間に相当するパルスを受けて、加速用の誘導電圧のオンオフを制御するパルスを生成するオンオフ選択器と、前記オンオフ選択器からのパルスを受けて、パターン生成器に適したパルスであるゲート親信号を生成し、可変遅延時間の経過後に出力するゲート親信号出力器からなるデジタル信号処理装置、及び前記ゲート親信号を加速用の誘導加速セルを駆動するスイッチング電源のゲート信号パターンへと変換するパターン生成器により、同種類の任意の荷電粒子で構成される荷電粒子群を任意のエネルギーレベルに加速するために制御単位の加速用の誘導電圧のパルス密度を制御することを特徴とする誘導電圧の制御方法。

【請求項3】
誘導加速セルを用いたシンクロトロンにおいて、前記シンクロトロンを構成する偏向電磁石からの磁場強度であるビーム偏向磁場強度シグナル、及び設計軌道上の荷電粒子ビームの周回周波数を基に可変遅延時間をリアルタイムで計算し、前記可変遅延時間に基づき可変遅延時間シグナルを生成する可変遅延時間計算機と、荷電粒子ビームが周回する設計軌道にあるバンチモニターからのバンチの通過シグナル、前記可変遅延時間計算機からの可変遅延時間シグナルを受けて、可変遅延時間に相当するパルスを生成する可変遅延時間発生器と、前記シンクロトロンを構成する偏向電磁石からの磁場強度であるビーム偏向磁場強度シグナルを基に加速電圧値をリアルタイムで計算し、前記可変遅延時間発生器からの可変遅延時間に相当するパルスを受けて、加速用の誘導電圧のオンオフを制御するパルスを生成するオンオフ選択器と、前記オンオフ選択器からのパルスを受けて、パターン生成器に適したパルスであるゲート親信号を生成し、可変遅延時間の経過後に出力するゲート親信号出力器からなるデジタル信号処理装置、及び前記ゲート親信号を加速用の誘導加速セルを駆動するスイッチング電源のゲート信号パターンへと変換するパターン生成器により、同種類の任意の荷電粒子で構成される荷電粒子群を任意のエネルギーレベルに加速するために制御単位の加速用の誘導電圧のパルス密度をリアルタイム制御することを特徴とする誘導電圧の制御方法。
産業区分
  • 原子力
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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