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熱電変換素子及び熱電変換装置

国内特許コード P110006075
整理番号 S2010-0747-N0
掲載日 2011年12月12日
出願番号 特願2010-195508
公開番号 特開2011-249746
登録番号 特許第5585314号
出願日 平成22年9月1日(2010.9.1)
公開日 平成23年12月8日(2011.12.8)
登録日 平成26年8月1日(2014.8.1)
優先権データ
  • 特願2010-104804 (2010.4.30) JP
発明者
  • 齊藤 英治
  • 内田 健一
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 熱電変換素子及び熱電変換装置
発明の概要 【課題】 熱電変換素子及び熱電変換装置に関し、温度勾配から電力を取り出す際の設計自由度を高める。
【解決手段】 磁性誘電体からなる熱スピン波スピン流発生部材に逆スピンホール効果部材を設け、前記熱スピン波スピン流発生部材の厚さ方向に温度勾配を設けるとともに、磁場印加手段により前記逆スピンホール効果部材の長手方向と直交する方向且つ前記温度勾配と直交する方向に磁場を印加して前記逆スピンホール効果部材において熱スピン波スピン流を電圧に変換して取り出す。
【選択図】 図1
従来技術、競合技術の概要



近年、地球温暖化対策としてクリーンエネルギーの必要性が叫ばれており、このようなクリーンエネルギー源として熱電効果の応用が期待されている。その一例として、火力発電所や工場或いは自動車の廃熱・排熱をゼーベック効果素子を利用して電力に変換することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。





しかし、現在のゼーベック効果素子の効率は十分ではなく、クリーンエネルギー源としての実用化に際してはさらなる熱電変換効率の高効率化が必要である。





現在のゼーベック係数が互いに異なる2種類の金属による異種金属接合を用いたゼーベック効果素子の熱電変換効率の指標となる性能指数Zは、ゼーベック係数をS、電気伝導度をσ、熱伝導率をκとすると、

Z=S×(σ/κ) ・・・(1)

と表される。また、起電力Vの発生方向は温度勾配▽Tと平行方向になる。





この場合、ゼーベック係数S、電気伝導度σ及び熱伝導率κは全て物質固有の値であるので、性能指数Zも物質固有の値となり、高効率の熱電発電を実現するためには性能指数Zの高い熱電変換素子が必要になる。そして、性能指数Zを高めるためには新規な物質の開発が必要であった。





一方、現在の半導体装置等のエレクトロニクス分野において利用されている電子の電荷の自由度に代わるものとして、電子が電荷以外に有するスピンという自由度、即ち、スピン角運動量の自由度を利用したスピントロニクスが次世代のエレクトロニクス技術の担い手として注目を集めている。





このスピントロニクスでは電子の電荷とスピンの自由度を同時に利用することによって、従来にない機能や特性を得ることを目指しているが、スピントロニクス機能の多くはスピン流によって駆動される。





スピン流はエネルギーの散逸が少ないため、効率の良いエネルギー伝達に利用できる可能性が期待されており、スピン流の生成方法や検出方法の確立が急務になっている。





なお、スピン流の生成方法としては、スピンポンピングによるスピン流が提案されており(例えば、非特許文献1参照)、スピン流の検出方法についても、本発明者等により逆スピンホール効果(ISHE)によるスピン流の検出方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。





図12は、逆スピンホール効果の説明図であり、試料中に純スピン流Jを注入すると、逆スピンホール効果により純スピン流Jの方向と垂直方向に電流Jが流れる。この逆スピンホール効果を利用することによって、試料の端部に電位差Vが発生するので、この電位差Vを検出することによって、純スピン流Jの流れの有無の検出が可能になる。





しかし、上述のゼーベック効果を利用した熱電変換においては、式(1)からわかるように、電気伝導度σが高い物質を用いると性能指数Zが大きくなる。しかし、金属の場合には、電気伝導度σが高い物質は熱伝導率κも高いため、電気伝導度σ向上による性能指数Z向上の効果は熱伝導率κにより相殺されてしまうという問題がある。





そこで、本発明者は、NiFe等の磁性体とPt等のスピン軌道相互作用の大きな金属との接合を利用したスピン-ゼーベック効果素子を提案している(例えば、特許文献2参照)。このスピン-ゼーベック効果素子においてはNiFe等の磁性体において温度勾配により発生した熱スピン流をPtとの界面でスピン交換を行い、交換により発生した純スピン流により純スピン流の方向と垂直方向に流れる電流を磁性体の両端において電圧として出力するものである。





これは、磁性体、特に、強磁性体の場合には、外部磁場を印加した状態で温度勾配を与えると、アップスピン流とダウンスピン流に差ができて熱的にスピン流が発生することを見いだした結果を利用したものである。





この場合の性能指数Zは、スピン-ゼーベック効果素子の熱電変換能をS、逆スピンホール部材の電気伝導率をσ、磁性体の熱伝導率をκ とすると、

Z=S×(σ/κ) ・・・(2)

と表される。この場合の性能指数では、従来の性能指数と異なり、分子の電気伝導率と分母の熱伝導率はそれぞれ異なる物質が担うため、素子の材料選択をすることによって性能指数を大幅に変えることができる。





但し、この場合には、起電力Vの発生方向は、逆スピンホール効果を利用しているので温度勾配▽Tと垂直方向になる。スピン-ゼーベック効果素子の熱電変換能Sは温度勾配▽Tに垂直な方向の長さに比例するので、従来のゼーベック効果素子に比べて、試料サイズにより性能指数Zを変調することができるという特徴がある。即ち、試料のサイズを温度勾配▽Tに垂直な方向の長さが長くなるように構成することによって、長さに比例した起電力Vを得ることができる。





スピン流は物理的な保存量ではないため、このような熱スピン流変換を利用することによって、温度勾配を与えるだけでスピン流を連続して取り出すことができ、したがって、熱起電力も連続して取り出すことができる。





しかし、このスピン-ゼーベック効果素子においては、熱スピン流発生部材に熱伝導率κの大きい金属を用いており、したがって、起電力Vを増大させるために試料のサイズを大きくすると均一な温度勾配▽Tを設けることが困難になってしまう。よって、現状では、全金属系スピン-ゼーベック効果素子を用いて工業的に利用可能な熱電変換素子を実現することは困難である。





そこで、本発明者は、熱スピン流発生部材として、金属の代わりにYIG等の熱伝導率の小さな磁性誘電体を用いたスピン-ゼーベック効果素子を提案している(例えば、特許文献3参照)。ここで、図13を参照して、磁性誘電体を用いたスピン-ゼーベック効果素子を説明する。





図13は、磁性誘電体を用いたスピン-ゼーベック効果素子の概略的斜視図であり、磁性誘電体層51上にストライプ状の非磁性導電体52,53を設ける。この状態で、矢印の方向に外部磁界Hを印加するとともに、均一な温度勾配▽Tを設けることによって、素子の高温側及び低温側に位置する磁性誘電体/非磁性導電体界面にそれぞれ逆符号の純スピン流Jが流れる。常電導体52,53に注入された純スピン流Jは、電子相対論効果によって温度勾配▽Tに直交する方向の電流に変換され、高温側に設けた非磁性導電体52と低温側に設けた非磁性導電体53に互いに逆向きの熱起電力VISHEが発生する。即ち、逆スピン-ホール効果による起電力は、注入された純スピン流Jとスピンの偏極方向(磁性誘電体の磁化方向M)の外積方向に発生する。





磁性誘電体51としては、FeやCoを含むものであれば何でも良いが、実用的には、入手が容易で且つスピン角運動量の散逸の小さいYIG(イットリウム鉄ガーネット)やイットリウムガリウム鉄ガーネット、即ち、一般式で表記するとYFe5-xGa12(但し、x<5)を用いる。また、逆スピンホール効果部材となる非磁性導電体52,53としては、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、或いは、f軌道を有する元素のいずれかを用いることが望ましい。これらの元素はスピン軌道相互作用が大きいので、磁性誘電体51との界面において、熱スピン波スピン流と純スピン流の交換を高効率で行うことができる。





図14は、スピン波スピン流の説明図であり、図14に模式的に示すように、スピン波スピン流とは、スピンが平衡位置の周りで歳差運動し、その位相の変化が波としてスピン系を伝わっていくものであり、熱スピン波スピン流とは位相変化が熱により生起されたものをいう。スピン波スピン流の特徴は、伝導電子型の純スピン流のスピン拡散長が数nm~数百nmであるのに対して、数mm或いは数cm以上の長距離に亘って伝播可能であることであり、これは様々な実験によってすでに確認されている(例えば、非特許文献3参照)。





この熱スピン波スピン流-純スピン流交換においては、磁性誘電体中において温度勾配により発生した熱スピン波スピン流が金属電極中のスピンと交換されて金属電極中に純スピン流が生起され、この純スピン流により電流が生じ、この電流により金属電極の両端に熱起電力VISHEが発生する。

産業上の利用分野



本発明は、熱電変換素子及び熱電変換装置に関するものであり、特に、素子の設計自由度を高める構成に特徴のある熱電変換素子及び熱電変換装置に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
磁性誘電体からなる熱スピン波スピン流発生部材に逆スピンホール効果部材を設け、前記熱スピン波スピン流発生部材の厚さ方向に温度勾配を設けるとともに、磁場印加手段により前記逆スピンホール効果部材の長手方向と直交する方向且つ前記温度勾配と直交する方向に磁場を印加して前記逆スピンホール効果部材において熱スピン波スピン流を電圧に変換して取り出す熱電変換素子。

【請求項2】
前記磁性誘電体が、フェリ磁性誘電体、強磁性誘電体或いは反強磁性誘電体のいずれかからなる請求項1記載の熱電変換素子。

【請求項3】
前記磁性誘電体がフェリ磁性誘電体或いは強磁性誘電体からなるとともに、前記磁場印加手段が前記磁性誘電体に接してその磁化方向を固定する反強磁性層である請求項1または2に記載の熱電変換素子。

【請求項4】
前記磁性誘電体が、ガーネットフェライト、スピネルフェライト、或いは、六方晶フェライトのいずれかからなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。

【請求項5】
前記磁性誘電体が、YFe5-xGa12(但し、0≦x<5)からなるガーネットフェライトである請求項4に記載の熱電変換素子。

【請求項6】
前記磁性誘電体が、MnZn1-xFe(但し、0<x<1)からなるスピネルフェライトである請求項4に記載の熱電変換素子。

【請求項7】
前記逆スピンホール効果部材が、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、f軌道或いは3d軌道を有する遷移金属元素、若しくはそれらの合金のいずれか、または、前記各材料とCu、Al、或いは、Siとの合金のいずれかからなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱電変換素子。

【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の熱電変換素子を複数個、磁化方向が互いに反対になるように交互に配置するとともに、熱起電力が直列接続になるように前記逆スピンホール効果部材の端部を互いに接続した熱電変換装置。

【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の熱電変換素子を複数個、磁化方向が互いに同じ向きになるように配置するとともに、熱起電力が直列接続になるように前記逆スピンホール効果部材の端部を互いに接続した熱電変換装置。

【請求項10】
磁性誘電体からなる熱スピン波スピン流発生部材の両面もしくは片面に逆スピンホール効果部材を設けて熱電変換要素を構成し、複数の前記熱電変換要素を非磁性絶縁体を介して積層するとともに、熱起電力が直列接続になるように前記逆スピンホール効果部材の端部を互いに接続し、前記熱電変換要素の積層方向に温度勾配を設けるとともに、磁場印加手段により前記逆スピンホール効果部材の長手方向と直交する方向且つ前記温度勾配と直交する方向に磁場を印加して前記逆スピンホール効果部材において熱スピン波スピン流を電圧に変換して取り出す熱電変換装置。

国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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