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量子カスケードレーザー素子

国内特許コード P120006440
整理番号 23541
掲載日 2012年1月10日
出願番号 特願2011-169455
公開番号 特開2013-033867
登録番号 特許第5544574号
出願日 平成23年8月2日(2011.8.2)
公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
登録日 平成26年5月23日(2014.5.23)
発明者
  • 平山 秀樹
  • 林 宗澤
出願人
  • 国立研究開発法人理化学研究所
発明の名称 量子カスケードレーザー素子
発明の概要 【課題】 閾値電流密度Jthを低減し最高動作温度Tmaxを高めた量子カスケードレーザー素子を作製する。
【解決手段】 本発明のある態様においては、一対の電極20、30に挟まれている半導体超格子構造100AのQCL構造100を備えるTHz-QCL素子1000が提供される。半導体超格子構造100A(QCL構造100)は、例えば一対の電極間に電圧が印加された際のサブバンド間の電子の遷移により、THz領域の電磁波を放出する活性領域10を備えている。その活性領域10は、交互に積層されたウェル層10Wとバリア層10Bをいくつか含むある厚みの単位構造10Uを繰り返し有しており、ウェル層10Wは、AlAsとGaAsとの混晶であるAlGa1-xAs(ただし、0<x<1)からなる。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要



近年、中赤外領域やテラヘルツ(THz)領域の電磁波を放出する固体光源として、量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser、以下「QCL」という)が注目を集めている。特にTHz領域の電磁波は、光と電波の両方の性質を兼ね備えており、例えば光のもつ高い解像度と、電波のもつ高い透過性とを兼ね備えるとともに、X線などに比べ照射された対象物への影響が少ないという特徴を有している。これらから、THz領域の電磁波は、例えば透過による物質の特定や人体の透視検査といった用途への適用が期待されている。





QCLの放出機構は、典型的には、半導体超格子構造を利用し、例えばウェル(井戸)およびバリア(障壁)の繰り返しの構造を持たせた電子の伝導帯のみのポテンシャルを利用するものである。つまり、QCLでは、半導体超格子構造により生成されたサブバンド間の遷移(intersubband transition)により誘導放出(stimulated emission)を起こさせる。この点で、伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップを跨いで電子とホール(hole)の再結合により電磁波を誘導放出させる従来の半導体レーザーの放出機構とQCLの放出機構は大きく異なる。より具体的には、QCLでは、半導体超格子構造のウェルおよびバリアのポテンシャルを利用し、さらに電圧を印加することにより、そのウェルとバリアの凹凸を有するポテンシャルを半導体超格子構造の厚みの位置に応じ傾斜させる。そして、傾斜して並ぶ凹凸のポテンシャルを利用し、電子の誘導放出を多段階につまりカスケード状に生じさせる。このような遷移を起こさせる半導体超格子構造を実現するためには、電界による傾斜を考慮しウェル層やバリア層の厚みを精密に設計する、バンドの作り込み(band engineering)が必要となる。QCLにおいては、キャリア(電子)が繰り返し誘導放出に利用されるため、キャリアリサイクリングが可能となる。





QCLにおいては、半導体超格子構造をなす材質のエネルギーギャップと無関係な波長を選択しレーザー発振させること(lasing)が可能となり、そして、そのレーザー波長(lasing wavelength)は半導体超格子構造の設計(design)により変更することができる。これらの理由から、これまで固体光源が得られていない波長域であるTHz領域における電磁波の放出がQCLにより実現されている。THz領域のQCL(以下、「THz-QCL」という)は、レーザー発振のための反転分布を実現する方式によりいくつかのタイプに分けられる。THz-QCLの一例は、孤立した準位から連続的になっているミニバンドへ遷移する電子が電磁波を放出する、bound-to-continuumタイプと呼ばれるものである。このタイプのTHz-QCLとして、ミニバンドにおける電子-電子散乱によりレーザー下位準位の電子を緩和させて反転分布が形成され、3.65GHzの発振周波数にて動作するものが開示されている(非特許文献1)。ただし、そのbound-to-continuumタイプのTHz-QCLは、電圧効率が良いものの、設計が複雑であり、LOフォノンの散乱による悪影響が大きく現われる。





別のタイプのTHz-QCLが特許文献1(米国特許第6829269号明細書)に開示されている。特許文献1に開示されるTHz-QCLでは、1段階分の誘導放出において3つの電子のエネルギー準位が利用される。すなわち、レーザー発振のために必須となる上位レーザー準位(upper lasing level)と下位レーザー準位(lower -)との間の反転分布を実現するために、もう一つの電子準位が利用される。特許文献1のTHz-QCLは、誘導放出に関連する上位レーザー準位(|3>、本明細書において「準位L3」という)と下位レーザー準位(|2>、同「準位L2」)と、準位L2よりさらに下位に位置する準位(|1>、同「準位L1」)とを用いる。準位L1は、縦光学フォノン(以下、「LOフォノン」という)を利用して準位L2から電子を引き抜く(depopulation)作用を有している(特許文献1、FIG3等)。以下、この3準位系の方式をLOフォノン散乱アシストタイプと呼ぶ。





LOフォノン散乱アシストタイプのTHz-QCLとして、特許文献1には、誘導放出に関与する活性領域に、1段階分の誘導放出を生じさせるための構造(以下、単に「単位構造」という)を繰り返し配置する半導体超格子構造が開示されている。その単位構造は発光領域と注入領域を含んでいる。その単位構造におけるポテンシャルエネルギーつまりバンドは、発光領域においては発光効率が高まるように作り込まれているのに対し、注入領域においては反転分布の形成を助けるように作り込まれている。これらの設計を実現するために、LOフォノン散乱アシストタイプのTHz-QCLにおける活性領域は、ウェル層がGaAsにより、バリア層がAlGa1-xAsにより作製されている。



産業上の利用分野



本発明は量子カスケードレーザー素子に関する。さらに詳細には、本発明は、テラヘルツ領域の電磁波を放出する量子カスケードレーザー素子に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
一対の電極と該一対の電極に挟まれている半導体超格子構造とを備える量子カスケードレーザー素子であって、
該半導体超格子構造は、前記一対の電極間に電圧が印加された際にTHz領域の電磁波を放出する活性領域を備えており、
該活性領域は、交互に積層されたウェル層とバリア層をいくつか含むある厚みの単位構造を該厚みの向きに繰り返して有しており、
該ウェル層は、AlAsとGaAsとの混晶であるAlGa1-xAs(ただし、0<x<1)からなるものであり、
前記半導体超格子構造の材質は、前記半導体超格子構造の内部に励起されうる縦光学フォノンのエネルギーELOが、上位レーザー準位の最小エネルギー値Eと下位レーザー準位の最小エネルギー値Eとの差であるE32との間で、前記電圧が印加された際に、
LO>kT+E32
を満足する材質とされており、
前記半導体超格子構造は、下位レーザー準位の最小エネルギー値Eと引き抜き準位の最小エネルギー値Eとの差であるE21が、前記電圧が印加された際に、
21<ELO
をさらに満足するように構成されている、ただし、Tは動作温度(単位K)、kはボルツマン定数である、
量子カスケードレーザー素子。

【請求項2】
前記半導体超格子構造の材質は、前記電磁波を放出する動作時の電圧が印加された際に、
LO>kelectron+E32
ただし、Telectronは電子温度(単位K)
を満足するように決定されており、
これにより、前記上位レーザー準位において熱励起された電子が、縦光学フォノンとの間における電子-フォノン散乱により媒介されて前記上位レーザー準位から前記下位レーザー準位へと非発光遷移する確率が低減されている
請求項1に記載の量子カスケードレーザー素子。

【請求項3】
前記半導体超格子構造の内部に励起されうる縦光学フォノンのエネルギーである前記ELOが、該半導体超格子構造の前記ウェル層がGaAsから構成されている場合の縦光学フォノンのエネルギーに比べて大きな値である
請求項1に記載の量子カスケードレーザー素子。

【請求項4】
前記半導体超格子構造が、AlAsからなるエネルギーバリア層
を有するものである
請求項1に記載の量子カスケードレーザー素子。
産業区分
  • 固体素子
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2011169455thum.jpg
出願権利状態 登録
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