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ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体 コモンズ

国内特許コード P120006526
整理番号 04046JP
掲載日 2012年1月30日
出願番号 特願2007-501565
登録番号 特許第4815610号
出願日 平成18年1月31日(2006.1.31)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
国際出願番号 JP2006301505
国際公開番号 WO2006082798
国際出願日 平成18年1月31日(2006.1.31)
国際公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
優先権データ
  • 特願2005-025153 (2005.2.1) JP
発明者
  • 川原 浩一
  • 中山 仁
  • 倉津 純一
  • 中村 英夫
  • 築城 裕正
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体 コモンズ
発明の概要

本発明の目的は、ミクログリアを抗原としたラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することである。本発明によれば、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその断片が提供される。

従来技術、競合技術の概要


脳神経系はバイオサイエンス最後のフロンティアとして、多くの人の興味を引いている。脳は身体の一臓器にすぎないが、その働きは外界からの情報を集め、処理し、適格な判断の後に筋肉という効果器を用いて発声や行動という形で指令する。さらに身体中に張り巡らされた交感神経系と副交感神経系を介して、内分泌系、血管系等の様々な調節を行っている。このような脳神経系は、主としてニューロンとグリアという 2 種類の性質の異なる細胞からなっている。情報の流れの主役と考えられているのはニューロンであるが、最近はグリア細胞が脳の機能発現に大きく関わっており、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア等のグリア細胞の障害が脳機能障害を引き起こすことも明らかとなっており、その重要性が注目されている。



21世紀に入り医療技術の格段の進歩により、世界的にも高齢化がますます進んでいく傾向にある中、生命科学における最大の課題の一つは、いかにして老化していく脳を守るかという問題である。その中にあって従来の老年期痴呆の主要原因であった血管性痴呆が内科的治療法および予防法の発達により減少したため、アルツハイマー病(Alzheimer's disease : AD)が老年期痴呆の中心になりつつある。AD は脳の老化に伴い発病する難治性の神経変性疾患であるが、近年日本人のライフスタイルの欧米化により発症年齢が若年化している傾向があること、また看護に大きな負担をかけることから、医学的のみならず社会的にも重要な問題となっている。このような現状からも、AD 治療法の確立および治療薬の開発は最も待望されている課題の一つである。AD 患者の脳内で神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度の低下が認められており、現在 AD 治療薬としてアセチルコリン分解酵素阻害剤が実用化されている。これらの治療薬は認知・記憶障害などの臨床症状には有効であるが、あくまで対症療法薬でありAD 病態の進行を阻止することは期待できない。このため現在、AD の病因を解明するとともに、根治性のある治療法の確立を目的とした多くの研究が世界中で精力的に行われている。



AD の病理所見としては脳の萎縮やシナプスの減少に加え、老人斑や神経原繊維変化という異常な構造物が認められる。老人斑や血管アミロイドの形で蓄積するアミロイドβペプチド (Aβ) は、40~42 のアミノ酸からなる不溶性のペプチドである 。Aβはアミロイド前駆体タンパク質 (amyloid precursor protein : APP) からプロテアーゼによる 2 段階の切断を受けて生成され、細胞外に分泌される。Aβの沈着はAD に対する疾患特異性が極めて高いことや、細胞死や神経原繊維変化の出現に先行して生じる AD 最初期の変化であることから、Aβの沈着が AD の病因に深く関わっているとする「アミロイド仮説」は現在多くの研究者の支持を受けている 。



グリア細胞のひとつである「ミクログリア」は、マクロファージ様の性質を持つ中枢神経系の細胞である。その存在は 1919 年の Hortega の発見にさかのぼるが、細胞の機能や起源については今日なお不明な点が残されている。脳の損傷時や AD、パーキンソン病などに代表される神経変性疾患、多発性硬化症、脳梗塞、ウイルス感染や脳腫瘍などの病態時にミクログリアが活性化することが見出され、病態との関連が注目されてきた。たとえば AD においては、広範囲にわたりミクログリアが活性化され、炎症性サイトカイン (IL-1β、IL-6、TNF-αなど) や一酸化窒素 (NO) を産生・放出する。これらの因子が周囲の細胞に作用して、脳内炎症の誘発や Aβの産生と凝集をさらに促進し、神経細胞の変性や細胞死を引き起こすといわれている(Eikelenboom P, Bate C, Van Gool WA, Hoozemans JJ, Rozemuller JM, Veerhuis R, Williams A (2002) Neuroinflammation in Alzheimer's disease and prion disease. Glia 40:232-239)。また最近の培養系を用いた実験から、Aβがミクログリアを病的に活性化しうること、その結果ミクログリアが細胞障害性を発揮することがわかってきた(Meda L, Cassatella MA, Szendrei GI, Otvos L, Jr., Baron P, Villalba M, Ferrari D, Rossi F (1995) Activation of microglial cells by beta-amyloid protein and interferon-gamma. Nature 374:647-650;McDonald DR, Brunden KR, Landreth GE (1997) Amyloid fibrils activate tyrosine kinase-dependent signaling and superoxide production in microglia. J Neurosci 17:2284-2294;及びBarger SW, Harmon AD (1997) Microglial activation by Alzheimer amyloid precursor protein and modulation by apolipoprotein E. Nature 388:878-881)。一方で、不溶化凝集した Aβで刺激したミクログリアから、増殖を促す M-CSF やケモタキシスを誘導するケモカイン類 (IL-8、MCP-1 など) や補体成分 (C3) が産生・放出され、細胞膜上の補体レセプターの発現が上昇する。脳内では、これらの分子によりミクログリアの増殖と老人斑への集積がおこる。老人斑の周辺に活性化ミクログリアが集積していることが以前から報告されており(McGeer PL, Itagaki S, Boyes BE, McGeer EG (1988) Reactive microglia are positive for HLA-DR in the substantia nigra of Parkinson's and Alzheimer's disease brains. Neurology 38:1285-1291)、AD においてもミクログリアが病因に深くかかわっていると疑われている (Giulian D (1999) Microglia and the immune pathology of Alzheimer disease. Am J Hum Genet 65:13-18)。しかし最近になって、老人斑近傍に集積したミクログリアは貪食能が活性化されており凝集 Aβを除去する可能性が指摘されている (Bard F, Cannon C, Barbour R, Burke RL, Games D, Grajeda H, Guido T, Hu K, Huang J, Johnson-Wood K, Khan K, Kholodenko D, Lee M, Lieberburg I, Motter R, Nguyen M, Soriano F, Vasquez N, Weiss K, Welch B, Seubert P, Schenk D, Yednock T (2000) Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer disease. Nat Med 6:916-919;及びWyss-Coray T, Lin C, Yan F, Yu GQ, Rohde M, McConlogue L, Masliah E, Mucke L (2001) TGF-beta1 promotes microglial amyloid-beta clearance and reduces plaque burden in transgenic mice. Nat Med 7:612-618)。



活性化ミクログリアの細胞特性は、増殖能や移動能、貪食能、抗原提示能の亢進に加え、TGF-β、TNF-α、活性酸素やNOなどの神経障害性物質、サイトカイン類、ケモカイン類およびNGF、BDNF、GDNF などの神経栄養因子のように様々な生理活性物質を産生・分泌することである(Raivich G, Bohatschek M, Kloss CU, Werner A, Jones LL, Kreutzberg GW (1999) Neuroglial activation repertoire in the injured brain: graded response, molecular mechanisms and cues to physiological function. Brain Res Brain Res Rev 30:77-105;及びHanisch UK (2002) Microglia as a source and target of cytokines. Glia 40:140-155)。さらには末梢血から脳内に浸潤してきた免疫系細胞と相互作用して免疫反応を調節するとともに周囲のニューロンやグリア細胞にも作用し、炎症や病変部の細胞死または組織修復に重要な役割を担うと考えられている。



このように脳内ミクログリア細胞は、ニューロンの傷害および保護の二面性を持つと考えられているが、その機能およびメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。ミクログリアは多様な作用を示すが、その作用もこれまでは主にミクログリアがマクロファージ様の細胞であるとのとらえ方で説明されてきた。しかし、ミクログリアは脳内において形態的にも機能的にも分化しており、もはや単なるマクロファージといったとらえ方だけでは説明できない。澤田らは、ミクログリアにおける二面性はミクログリアが単一のものではなく、複数の亜集団から成ることによると提唱している (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388;及びKatoh Y, Niimi M, Yamamoto Y, Kawamura T, Morimoto-Ishizuka T, Sawada M, Takemori H, Yamatodani A (2001) Histamine production by cultured microglial cells of the mouse. Neurosci Lett 305:181-184)。すなわち、単一のミクログリアが二面性を示すのではなく、性質の異なるヘテロな細胞集団がそれぞれの作用を示すという考えである。しかしながら、このヘテロ細胞群としての存在とニューロンに対する二面的機能の関連性およびそのメカニズムに関しては、ほとんど明らかになっていない。このような現状から、ニューロンだけではなく、ミクログリアを含めたグリア細胞の機能解明は必須である。



ところで、医学生物学研究に欠くことのできないツールの一つにモノクローナル抗体がある。特に血球細胞に関しては、リンパ球の膜抗原に対するモノクローナル抗体によって、そのサブセットの解析が飛躍的に進んだ。単球・マクロファージには、異なる成熟段階を経るものや分化や活性化状態の異なった様々な細胞群があり、さらに肝の Kupffer 細胞などのように臓器特異的に分化したマクロファージも存在する。すなわち、単球・マクロファージ系細胞を認識するといわれるモノクローナル抗体には、様々な反応を示すものが含まれているとともに、他系統の細胞との交叉を示す抗体も多く存在する。



ミクログリアは他のグリアとは異なり、幼弱期の脳に侵入した骨髄由来の単球を起源とする説が有力である。これを裏付けるようにマクロファージと共通したいくつかのマーカータンパク質を発現していることが知られている (Nakajima K, Kohsaka S (1998) [Microglia: function in the pathological state]. No To Shinkei 50:5-16)。しかし、先にも述べたようにミクログリアはマクロファージと同等の見方では説明できない例も少なくない。それにもかかわらず、現在汎用されているミクログリア用モノクローナル抗体といわれるものは、2、3 の例を除いては腹腔マクロファージや脾細胞を抗原として作製されたものである (Austyn JM, Gordon S (1981) F4/80, a monoclonal antibody directed specifically against the mouse macrophage. Eur J Immunol 11:805-815;Springer T, Galfre G, Secher DS, Milstein C (1979) Mac-1: a macrophage differentiation antigen identified by monoclonal antibody. Eur J Immunol 9:301-306;及びMcKnight AJ, Gordon S (1998) Membrane molecules as differentiation antigens of murine macrophages. Adv Immunol 68:271-314)。したがって、ミクログリアの詳細な機能の解析にはミクログリアを抗原としたモノクローナル抗体を作製することが必要である。

産業上の利用分野


本発明は、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。より詳細には、本発明は、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体、該抗体を産生するハイブリドーマ、並びに該抗体を用いるラットI型ミクログリアの検出方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】ラットI型ミクログリアを特異的に認識し、認識する抗原の分子量が約50~70kDaであり、さらに還元剤の存在下で抗原との反応性を失うことを特徴とする、受託番号FERM BP-10475を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。
【請求項2】ラットII型ミクログリアと反応しない、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識する、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】ヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)と反応しない、請求項1から3の何れかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】ラットニューロン、ラットアストロサイト、末梢のマクロファージ、マウスI型ミクログリア、及びマウスII型ミクログリアとはほとんど反応しないことを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】受託番号FERM BP-10475を有する、請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項7】ラットI型ミクログリアを含む免疫原で免疫された哺乳動物の免疫細胞と哺乳動物のミエローマ細胞とを融合して得られる、請求項に記載のハイブリドーマ。
【請求項8】請求項6又は7に記載のハイブリドーマを培養する工程、及び該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取し精製する工程を含む、請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項9】請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ラットI型ミクログリアの検出方法。
【請求項10】少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、請求項に記載のラットI型ミクログリアの検出方法。
(a)請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【請求項11】請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
【請求項12】少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、請求項11に記載のヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
(a)請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【請求項13】請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を含む、ラットI型ミクログリアを検出するためのキット。
【請求項14】請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を含む、ヒト・オリゴデンドログリオーマを検出するためのキット。
産業区分
  • 有機化合物
  • 微生物工業
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
出願権利状態 権利存続中
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