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架橋芳香族高分子電解質膜とその製造方法、および架橋芳香族高分子電解質膜を用いた高分子形燃料電池 UPDATE

国内特許コード P120006613
整理番号 13503
掲載日 2012年2月9日
出願番号 特願2010-119903
公開番号 特開2011-249093
登録番号 特許第5673922号
出願日 平成22年5月25日(2010.5.25)
公開日 平成23年12月8日(2011.12.8)
登録日 平成27年1月9日(2015.1.9)
発明者
  • 陳 進華
  • 浅野 雅春
  • 前川 康成
出願人
  • 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明の名称 架橋芳香族高分子電解質膜とその製造方法、および架橋芳香族高分子電解質膜を用いた高分子形燃料電池 UPDATE
発明の概要 【課題】イオン導電性と膜の機械強度とを両立させた架橋芳香族高分子電解質膜を製造する。
【解決手段】芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することによりグラフト鎖にスルホン酸基を導入する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


高分子形燃料電池は、そのエネルギー密度が高いことから、電気自動車、家庭用定置及び電子機器の電源として期待されている。この燃料電池においては電解質である電解質膜は最も重要な部材の一つである。高分子形燃料電池においては、電解質膜は両面に電極が接合されており、膜と電極とは実質的に一体構造になっている。このため、電解質膜はプロトンを伝導するための電解質として作用し、また、加圧下においても燃料である水素と酸素を直接接触させないための隔膜としての役割も有する。このような電解質膜としては、長期間作動において高いイオン導電性及び膜バリアー性を保持しなければならない。そのため、高分子電解質膜に、高いイオン導電性及び強い機械強度が要求される。



現在、高分子電解質膜として、デュポン社によって開発されたフッ素樹脂系のパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(登録商標)」等が一般に用いられてきた。しかしながら、「ナフィオン」等のフッ素系電解質膜は、イオン導電性には優れているが、100℃以上の高温での機械強度に劣ること、製造コストが高いこと、などの課題も存在する。
そのため、前記「ナフィオン(登録商標)」等に替わる低コストの電解質膜を開発する努力が行われてきた。本発明と密接関連する放射線グラフト重合法により、フッ素系高分子フィルムにスルホン酸基を導入して高分子電解質膜を作製する方法が、特許文献1、特許文献2、特許文献3に提案されている。フッ素系高分子フィルムは、耐溶媒性が高いため、グラフト溶液又はスルホン化溶液中にフィルムの形状が維持でき、厚みが一様に均一な高分子電解質膜が得られる。また、ポリオレフィン高分子(ポリエチレン又はポリプロピレン)フィルムも耐溶媒性が高いため、放射線グラフト重合法により高分子電解質膜を合成できる(非特許文献1)。これらの放射線グラフト重合高分子電解質膜は、高いイオン導電性を有し、且つ製造コストが低いことから注目されている。



また、本発明と密接に関連する高分子フィルムの放射線架橋では、特許文献4にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの放射線架橋を開示した。放射線架橋PTFEフィルムは耐放射線性が向上すると共に、モノマーの放射線グラフト重合性も向上することが開示されている。例えば、グラフトモノマーとしてスチレンを用いた場合、未架橋のPTFEに比較し、架橋PTFEはグラフト率を著しく増加させることができ、このため未架橋PTFEの2~10倍のスルホン酸基を架橋PTFEに導入できることを開示している。しかし、架橋PTFEの機械強度が低いため(<30MPa)、これを用いて製造された電解質膜の機械強度は不十分であった。



さらに、本発明に密接に関連する芳香族高分子電解質膜は、高い機械強度、低い水素透過性があり、80℃以上の高温低加湿燃料電池への応用が期待されている。特に、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどに代表される芳香族高分子鎖にスルホン酸基を導入した電解質膜などが研究開発の対象となっている。



これらの芳香族高分子電解質膜の製造は、スルホン酸基を有するモノマーからの合成、または、電解質膜の前駆体である芳香族高分子を直接スルホン化してからキャストにより製膜するなどの方法で行われている。いずれも、親水性のスルホン酸基が電解質膜の主鎖骨格に直接接合されるため、芳香族高分子骨格の本来のエンジニアリング特性が大きく失われると共に、疎水性の骨格と親水性のスルホン酸基の間に明瞭なミクロ分離が存在しないため、高いイオン導電性の実現が困難であった。さらに、芳香族高分子電解質膜は、含水性が大きく、化学安定性が低いため、これらの高分子電解質膜を用いて作製した電池においては、電池運転直後から、膜の膨張又は分解による膜の亀裂が起こるため、電池アノードとカソードとの隔離役割がなくなり、この結果、数十時間の短時間運転においても電池性能の大幅な低下が起こる。このような状況から、現在まで、芳香族高分子を用いた電解質膜は市場化されていない。



そこで、芳香族高分子電解質膜に明瞭な親水相と疎水相とのミクロ分離を形成するために、芳香族炭化水素系高分子フィルムにイオン導電性基を導入することができるモノマーを放射線グラフト重合して、芳香族高分子電解質膜を作製する試みがなされている。この方法では、グラフト重合反応を行うための有機溶媒もしくはモノマー溶液に芳香族炭化水素系高分子フィルムを浸漬したり、あるいは、スルホン化反応を行うためのスルホン化溶液にグラフトした芳香族炭化水素系高分子フィルムを浸漬している。しかしながら、この方法では、浸漬処理において芳香族炭化水素系高分子フィルムの形状が著しく変化するため、燃料電池に適用できる電解質膜を得るのは困難であった。



芳香族高分子フィルム基材の高い機械強度を高分子電解質膜に生かすために、本発明者らは、放射線架橋を利用して、電解質膜の基材である芳香族高分子フィルムに充分な放射線架橋を実施した。架橋した芳香族高分子フィルムは、溶媒に対する耐性が高く、スルホン化溶液中では変形しないので、芳香族高分子フィルム基材の骨格に導電性のスルホン酸基が直接付与された電解質膜を得ることができた(特許文献5)。しかしながら、この電解質膜は、基材の骨格がスルホン化されたため、機械強度及び耐加水分解性が不十分であるという問題が残っている。



また、本発明者らは、芳香族高分子フィルムに対してグラフト重合を実施し、そのグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換している(特許文献6)。具体的には、特定溶媒を利用してスチレングラフトしたポリエーテルエーテルケトンフィルムを合成し、該グラフトフィルムを低温低濃度のスルホン化溶液中でスルホン化して電解質膜を得ている。



しかしながら、特許文献6の方法は、グラフト反応、もしくはスルホン化反応中において、フィルム形状が変化してしまい、グラフト率の高い、又は、イオン導電性の高い電解質膜の製造は困難であった。そこで、本発明者らは、特許文献7に開示したように、スルホン化反応による変形を避けるため、直接スルホン酸基又はスルホン酸基に簡単に変換できるスルホン酸エステル基などを有するスチレン系モノマーを放射線グラフトした。その結果、高い機械強度と高いイオン導電性を持つ電解質膜を製造することができた。しかしながら、これらのモノマーはまだ市販されておらず、高価なモノマーという問題が残っている。



また、脂環式炭化水素を含むポリイミド膜のグラフト鎖の一部がスルホン酸基に化学変換されている高分子電解質膜が知られている(特許文献8)。しかしながら、これらの脂環式炭化水素を含むポリイミド基材フィルムは、現在市販されておらず、その生産コストが高いと予想されている。

産業上の利用分野


本発明は、架橋芳香族高分子電解質膜とその製造方法、および架橋芳香族高分子電解質膜を用いた高分子形燃料電池に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、下記グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することにより前記グラフト鎖にスルホン酸基を導入する架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法であって、
前記グラフト重合工程の前に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)、アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)、および、多官能性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを、前記芳香族高分子フィルム基材にグラフト重合することを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
グラフト重合工程:架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーをグラフト重合する工程。

【請求項2】
芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、下記グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することにより前記グラフト鎖にスルホン酸基を導入するとともに、グラフト鎖のアルコキシシラン基を加水分解して前記グラフト鎖間にシラン架橋構造を付与する架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法であって、
前記グラフト重合工程の前に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)、アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)、および、多官能性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを、前記芳香族高分子フィルム基材にグラフト重合することを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
グラフト重合工程:架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、および、アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーとを共グラフト重合する工程。

【請求項3】
前記ビニルモノマー(1)のグラフト重合により形成されたグラフト鎖の芳香環にスルホン酸基を導入するスルホン化反応は、濃度0.2M以下のスルホン化溶液を室温以下の温度で前記架橋芳香族高分子フィルム基材に接触させて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。

【請求項4】
請求項1記載の方法によって製造された、架橋構造が付与されている芳香族高分子フィルム基材にビニルモノマーのグラフト鎖が形成されている架橋芳香族高分子電解質膜であって、前記グラフト鎖にはスルホン酸基が導入されていることを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜。

【請求項5】
請求項2記載の方法によって製造された、架橋構造が付与されている芳香族高分子フィルム基材にビニルモノマーのグラフト鎖が形成されている架橋芳香族高分子電解質膜であって、前記グラフト鎖にはスルホン酸基が導入され、且つ、前記グラフト鎖間にシラン架橋構造が付与されていることを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜。

【請求項6】
前記グラフト鎖は、芳香環を有し、この芳香環に前記スルホン酸基が導入されていることを特徴とする請求項4または5に記載の架橋芳香族高分子電解質膜。

【請求項7】
前記芳香族高分子フィルム基材は、ポリエーテルエーテルケトン構造、ポリエーテルケトン構造、ポリスルホン構造、またはポリイミド構造を有することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の架橋芳香族高分子電解質膜。

【請求項8】
請求項4から7のいずれかの架橋芳香族高分子電解質膜を有する高分子形燃料電池。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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