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Tol1因子のトランスポザーゼ及びそれを用いたDNA導入システム 外国出願あり

国内特許コード P120006627
整理番号 NU-0192
掲載日 2012年2月14日
出願番号 特願2008-549271
登録番号 特許第5320546号
出願日 平成19年12月6日(2007.12.6)
登録日 平成25年7月26日(2013.7.26)
国際出願番号 JP2007073565
国際公開番号 WO2008072540
国際出願日 平成19年12月6日(2007.12.6)
国際公開日 平成20年6月19日(2008.6.19)
優先権データ
  • 特願2006-335786 (2006.12.13) JP
  • 特願2007-253321 (2007.9.28) JP
発明者
  • 古賀 章彦
  • 濱口 哲
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
  • 国立大学法人 新潟大学
発明の名称 Tol1因子のトランスポザーゼ及びそれを用いたDNA導入システム 外国出願あり
発明の概要

Tol1因子のトランスポザーゼ及びその用途を提供することを課題とする。(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質又は(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し、且つTol1因子を転移させる酵素活性を有するタンパク質からなるTol1因子のトランスポザーゼが提供される。また、当該トランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む発現コンストラクトが提供される。さらに、(a)トランスポザーゼ遺伝子を欠損したTol1因子に目的のDNAが挿入された構造のドナー要素と、(b)上記トランスポザーゼ、又は上記ポリヌクレオチドを含むヘルパー要素と、を含むDNA導入システムが提供される。

従来技術、競合技術の概要


DNA型転移因子は、生物のゲノムを構成する反復配列の一種であり、脊椎動物のゲノムにも大量に存在する。ただし、脊椎動物のDNA型転移因子は、転移活性を失って残骸となったものがほとんどである。転移の直接の証明がなされている、脊椎動物のDNA型転移因子は、ゼブラフィッシュのTzf因子 (Lam WL, Lee TS, Gilbert W (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93: 10870-10875.) とメダカのTol2因子(Transposable element of Oryzias latipes, no. 2)(Koga A, Suzuki M, Inagaki H, Bessho Y, Hori H. (1996) Transposable element in fish. Nature 383: 30)のみである。



Tol1因子は、メダカのゲノムに100~200コピー存在するDNA型因子である(Koga A, Sakaizumi M, Hori H (2002) Zoolog Sci 19: 1-6.(非特許文献1))。この因子は、完全なアルビノの体色を示す突然変異体のチロシナーゼ遺伝子に挿入している断片として発見された(Koga A, Inagaki H, Bessho Y, Hori H (1995) Mol Gen Genet 249: 400-405.(非特許文献2))。チロシナーゼは、黒色素メラニンの生合成に必須の酵素である。その後にみつかったTol2では、転移活性は容易に証明された。これとは異なり、Tol1因子は、エクシジョンやインサーションを直接検出することができなかったため、すでに転移活性を失った因子であると当初は考えられた。最初にチロシナーゼ遺伝子の中で見つかったコピーに加えて、他のコピーも単離して調べたが、遺伝子とみられる構造はなかった(Koga A, Inagaki H, Bessho Y, Hori H (1995) Mol Gen Genet 249: 400-405.(非特許文献2))。このことも、すでに転移活性を失った因子であると考えられた理由である。
2001年、アルビノのサブ系統の一つとして、体に部分的に着色のある個体、すなわちモザイク着色の個体が見出された。この個体を分析した結果、Tol1因子が体細胞でその挿入部位から抜け出すことが証明された(Tsutsumi M, Imai S, Kyono-Hamaguchi Y, Hamaguchi S, Koga A, Hori H (2006) Pigment Cell Res 19: 243-247.(非特許文献3))。抜けるという現象が起こることは、Tol1は転移活性を失っていないDNA型転移因子であることを意味する。しかしながら、この因子の染色体へのde novo挿入が観察されたことはない。また、転移酵素(トランスポザーゼ)も見つかっていない。
ところで、転移因子は遺伝子工学的手法や分子学的手法に利用される。例えば、突然変異誘発、遺伝子、プロモーター、エンハンサー等のトラッピング、遺伝子治療等への転移因子の利用・応用が期待されている。メダカのゲノムに存在する因子としてみつかったTol2因子は、このような応用にすでに供されている(Koga A, Hori H, Sakaizumi M (2002) Mar Biotechnol 4: 6-11.(非特許文献4)、Johnson Hamlet MR, Yergeau DA, Kuliyev E, Takeda M, Taira M, Kawakami K, Mead PE (2006) Genesis 44: 438-445.(非特許文献5)、Choo BG, Kondrichin I, Parinov S, Emelyanov A, Go W, Toh WC, Korzh V (2006) BMC Dev Biol 6: 5.(非特許文献6)、特開2001-218588号公報(特許文献1))。Tol2因子の他にも、サケのゲノムにある残骸から人工的に再構築したSleeping Beauty 因子(Ivics Z, Hackett PB, Plasterk RH, Izsvak Z (1997) Cell 91: 501-510.(非特許文献7)、特表2001-523450号公報(特許文献2))、カエルから同様に再構築したFrog Prince 因子(Miskey C, Izsvak Z, Plasterk RH, Ivics Z (2003) Nucleic Acids Res 31: 6873-6881.(非特許文献8)、特表2005-527216号公報(特許文献3))、昆虫から単離したpiggyBac因子(Wu SC, Meir YJ, Coates CJ, Handler AM, Pelczar P, Moisyadi S, Kaminski JM (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103: 15008 ?15013.(非特許文献9))が遺伝子導入等へ利用されている。これらの因子は転移頻度が高いという特徴をもつ。この特徴は、遺伝子工学的手法や分子生物学的手法への利用・応用を考えた場合、極めて重要である。Tol1についても、本発明者らが発見したメダカでは着色している細胞の数が多いため、転移頻度が高いと推測される。

【特許文献1】特開2001-218588号公報

【特許文献2】特表2001-523450号公報

【特許文献3】特表2005-527216号公報

【非特許文献1】Koga A, Sakaizumi M, Hori H (2002) Zoolog Sci 19: 1-6.

【非特許文献2】Koga A, Inagaki H, Bessho Y, Hori H (1995) Mol Gen Genet 249: 400-405.

【非特許文献3】Tsutsumi M, Imai S, Kyono-Hamaguchi Y, Hamaguchi S, Koga A, Hori H (2006) Pigment Cell Res 19: 243-247.

【非特許文献4】Koga A, Hori H, Sakaizumi M (2002) Mar Biotechnol 4: 6-11.

【非特許文献5】Johnson Hamlet MR, Yergeau DA, Kuliyev E, Takeda M, Taira M, Kawakami K, Mead PE (2006) Genesis 44: 438-445.

【非特許文献6】Choo BG, Kondrichin I, Parinov S, Emelyanov A, Go W, Toh WC, Korzh V (2006) BMC Dev Biol 6: 5.

【非特許文献7】Ivics Z, Hackett PB, Plasterk RH, Izsvak Z (1997) Cell 91: 501-510.

【非特許文献8】Miskey C, Izsvak Z, Plasterk RH, Ivics Z (2003) Nucleic Acids Res 31: 6873-6881.

【非特許文献9】Wu SC, Meir YJ, Coates CJ, Handler AM, Pelczar P, Moisyadi S, Kaminski JM (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103: 15008-15013.

産業上の利用分野


本発明はトランスポゾンの転移を触媒する酵素(以下、トランスポザーゼ)及びその利用に関する。詳しくは、本発明はメダカ由来のトランスポゾンTol1因子(Transposable element of Oryzias latipes, no. 1)のトランスポザーゼ及びそれをコードするポリヌクレオチド、当該トランスポザーゼを利用したDNA導入システム及びDNA導入法、並びに当該システムなどに用いられるDNA導入キット等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(c)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質からなる、Tol1因子のトランスポザーゼ:
(a)配列番号1で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ配列番号10~12のいずれかで示されるDNAからなるTol1因子を転移させる酵素活性を有するタンパク質。

【請求項2】
以下の(a)~(c)からなる群より選択されるいずれかの塩基配列からなる、Tol1因子のトランスポザーゼをコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(b)配列番号1、配列番号3又は配列番号4で示される塩基配列;
(c)(b)の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、又は(b)の塩基配列を基準として1~40個の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列であって、且つ配列番号10~12のいずれかで示されるDNAからなるTol1因子を転移させる酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。

【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む発現コンストラクト。

【請求項4】
前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを更に含む、請求項3に記載の発現コンストラクト。

【請求項5】
下流側で前記ポリヌクレオチドに連結したポリA付加シグナル配列又はポリA配列を更に含む、請求項3又は4に記載の発現コンストラクト。

【請求項6】
(a)トランスポザーゼ遺伝子を欠損したTol1因子に目的のDNAが挿入された構造のドナー要素と、
(b)請求項1に記載のトランスポザーゼ、又は請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むヘルパー要素と、
を含む、DNA導入システム。

【請求項7】
前記Tol1因子が、配列番号5で示される逆方向反復配列を5’側末端部に備え、且つ配列番号6で示される逆方向反復配列を3’側末端部に備える、請求項6に記載のDNA導入システム。

【請求項8】
前記Tol1因子が、以下の(a)又は(b)のDNAからなる、請求項6に記載のDNA導入システム:
(a)配列番号10~12のいずれかで示される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号10~12のいずれかで示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、又は(a)の塩基配列を基準として1~10個の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、且つ配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するトランスポザーゼが末端に結合するDNA。

【請求項9】
前記Tol1因子が、配列番号10で示される塩基配列の内、5’末端から数えて158番目の塩基から1749番目の塩基までを少なくとも欠失させることによって得られる、5’末端側DNA及び3’末端側DNAからなる、請求項6に記載のDNA導入システム。

【請求項10】
前記Tol1因子が、配列番号21で示される塩基配列からなるDNAと、配列番号22で示される塩基配列からなるDNAとからなる、請求項6に記載のDNA導入システム。

【請求項11】
前記Tol1因子の5’末端及び3’末端に標的部位重複配列が連結されている、請求項8~10のいずれかに記載のDNA導入システム。

【請求項12】
前記標的部位重複配列が配列番号13~15のいずれかで示される配列からなる、請求項11に記載のDNA導入システム。

【請求項13】
前記目的のDNAが遺伝子である、請求項6~12のいずれかに記載のDNA導入システム。

【請求項14】
前記ドナー要素が、トランスポザーゼ遺伝子を欠損したTol1因子に目的のDNAが挿入されたベクターであり、
前記ヘルパー要素が、請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクターである、請求項6~13のいずれかに記載のDNA導入システム。

【請求項15】
ヘルパー要素である前記ベクターが、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを更に含む、請求項14に記載のDNA導入システム。

【請求項16】
ヘルパー要素である前記ベクターが、下流側で前記ポリヌクレオチドに連結したポリA付加シグナル配列又はポリA配列を更に含む、請求項14又は15に記載のDNA導入システム。

【請求項17】
ヒト個体を構成した状態の細胞以外の脊椎動物細胞からなる標的細胞に対して、請求項6~16のいずれかに記載のDNA導入システムを導入するステップを含む、DNA導入法。

【請求項18】
前記DNA導入システムによって導入される前記目的のDNAと異なるDNAを、Tol2因子を利用して前記標的細胞に導入するステップを更に含む、請求項17に記載のDNA導入法。

【請求項19】
請求項18に記載のDNA導入法を用いて遺伝子操作された、ヒト個体を構成した状態の細胞以外の細胞に対して、Tol1因子又はTol2因子に対応したトランスポザーゼを供給するステップを含む、ゲノムDNA上の特定DNA部位を転移させる方法。

【請求項20】
トランスポザーゼ遺伝子を欠損したTol1因子をゲノムDNA上に保有する、ヒト個体を構成した状態の細胞以外の細胞に、請求項1に記載のトランスポザーゼ、又は請求項2に記載のポリヌクレオチドを導入するステップを含む、ゲノムDNA上の特定DNA部位を転移させる方法。

【請求項21】
前記Tol1因子に他のポリヌクレオチド配列が挿入されている、請求項20に記載の方法。

【請求項22】
トランスポザーゼ遺伝子を欠損し且つ挿入部位を有するTol1因子を含む発現コンストラクトからなるドナー要素と、
請求項1に記載のトランスポザーゼ、又は請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む発現コンストラクトからなるヘルパー要素と、
を含むDNA導入用キット。

【請求項23】
前記Tol1因子が、配列番号10で示される塩基配列の内、5’末端から数えて158番目の塩基から1749番目の塩基までを少なくとも欠失させることによって得られる、5’末端側DNA及び3’末端側DNAの間に挿入部位が形成された構造からなる、請求項22に記載のDNA導入用キット。

【請求項24】
前記Tol1因子が、配列番号21で示される塩基配列からなるDNAと、配列番号22で示される塩基配列からなるDNAとの間に挿入部位が形成された構造からなる、請求項22に記載のDNA導入用キット。

【請求項25】
前記挿入部位が、種類の異なる複数の制限酵素認識部位からなる、請求項2224のいずれかに記載のDNA導入用キット。

【請求項26】
前記ドナー要素が、トランスポザーゼ遺伝子を欠損し且つ挿入部位を有するTol1因子を含むベクターであり、
前記ヘルパー要素が請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクターである、請求項2225のいずれかに記載のDNA導入用キット。

【請求項27】
ヘルパー要素である前記ベクターが、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを更に含む、請求項26に記載のDNA導入用キット。

【請求項28】
ヘルパー要素である前記ベクターが、下流側で前記ポリヌクレオチドに連結したポリA付加シグナル配列又はポリA配列を更に含む、請求項26又は27に記載のDNA導入用キット。

【請求項29】
トランスポザーゼ遺伝子を欠損したTol1因子に対して、請求項2に記載のポリヌクレオチドが挿入された構造を有する、再構築されたトランスポゾン。

【請求項30】
前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む、請求項29に記載のトランスポゾン。

【請求項31】
下流側で前記ポリヌクレオチドに連結したポリA付加シグナル配列又はポリA配列を含む、請求項29又は30に記載のトランスポゾン。

【請求項32】
請求項2931のいずれかに記載のトランスポゾンを含む、DNA導入システム。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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