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南極産子嚢菌類の産生する不凍タンパク質 新技術説明会

国内特許コード P120006692
整理番号 SHINGI20120224
掲載日 2012年2月24日
出願番号 特願2009-089269
公開番号 特開2010-241697
登録番号 特許第5397848号
出願日 平成21年4月1日(2009.4.1)
公開日 平成22年10月28日(2010.10.28)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発明者
  • 津田 栄
  • 星野 保
  • 肖 楠
  • 工藤 栄
出願人
  • 独立行政法人産業技術総合研究所
  • 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
発明の名称 南極産子嚢菌類の産生する不凍タンパク質 新技術説明会
発明の概要

【課題】培養によって大量提供可能である、かつ不凍活性の高い不凍タンパク質を提供する。
【解決手段】南極産子嚢菌類アンタクトマイセス属のAntarctomyces psychrotrophicusに属する菌類を低温下培養して産生する、糖鎖を有する不凍タンパク質、および該不凍タンパク質を含む凍結防止剤。
【選択図】図4

従来技術、競合技術の概要


不凍タンパク質は極地に生息する魚類、昆虫類、植物、微生物などの多くの生物が産生する低温適応物質として知られている。不凍タンパク質は特異的に氷に吸着しその成長を抑制する。通常、水溶液の融点と凝固点は一致しているが、不凍タンパク質が存在している場合、不凍タンパク質が氷結晶の成長、つまり溶液の凍結を抑制するため、溶液の凝固点が融点以下の温度になる。溶液の融点と凝固点の間に差を生じさせるこの能力は、不凍タンパク質の熱ヒステリシスと呼ばれる。不凍タンパク質はまた、氷の成長抑制と共に氷結晶の形状修飾も起こす。水溶液が凝固点以下の温度において発生する氷核は六方晶型といわれ、六角柱の形である。そして、六方晶型の6つの縦のプリズム面においては、2つの上下の基底面と比べて、氷の成長が100倍早いと言われている。魚類や植物由来不凍タンパク質は氷のプリズム面に優先に吸着し、プリズム面の成長を抑制するが、基底面は抑制を受けないので、上下へ遅れて成長する。そして新しくできたプリズム面にまた不凍タンパク質が吸着する。その結果、氷結晶の上下への成長は少しずつ遅れ、2つの六角錐の底面が張り合わせたようなバイピラミッドの氷結晶が形成される。一方で、昆虫類が体液に分泌する不凍タンパク質は、氷の基底面とプリズム面の両方に吸着することができ、氷は六角柱の形を保ったまま成長が抑制される。氷結晶のプリズム面と基底面では酸素原子間の距離が異なることから、不凍タンパク質が吸着する面の違いは不凍タンパク質の立体構造の違いに由来するものであると考えられている(例えば、非特許文献1)。



不凍タンパク質は、これを溶解した水溶液に対し、1)熱ヒステリシス、2)氷結晶形状制御、3)氷の再結晶阻害等をもたらし、凍結防止効果を有する。通常、水の凝固点と氷の融点は同一であるが、溶液中に不凍タンパク質が存在するとそれが氷結晶と結合するため、水の凝固点が通常より降下する。この時、生じる氷の融点と水の凝固点の差を凝固点降下度という。この凝固点降下度の値が大きい程、凍結防止効果が高いといえる。また、水溶液を急速凍結させると、凍った溶液に無数の氷結晶ができ、溶液を融点以下の温度に放置しておくと、無数の氷結晶が、自由エネルギーを減少するために自発的に表面積を減らし、その結果、氷結晶同士が結合し、さらに大きな氷となる再結晶現象が起きる。氷の再結晶阻害とは、この現象を阻害する効果をいい、この氷再結晶阻害活性が高いほど、凍結防止効果が高いといえる。



アイスクリームや冷凍食品は凍結融解の温度変化により、氷の再結晶が起きやすく、風味が落ちることが問題とされている。しかし、不凍タンパク質が存在すると、これが氷に吸着することでその再結晶を抑制できる。これら不凍タンパク質の性質を利用し、保冷により周囲の水分子が付着再結晶することによって風味や味が損なわれるアイスクリームへ添加することや、細胞や臓器の冷凍保存剤に用いることが提案されている。また、氷スラリーを使用する冷熱供給システム又は冷熱蓄熱システム等における氷の再結晶による配管系の閉塞を解消し得る有効な添加剤としても期待されている。



しかしながら、従来の動物が体内に分泌する不凍タンパク質は大量に入手するには相当分の原料、つまり魚や昆虫が必要となるとともに、複雑な精製過程を経なければならない。また、魚類及び昆虫由来の不凍タンパク質の遺伝子組み換え技術が確立されているが、食品における応用は消費者の反発により実現に至っていない。昆虫由来の不凍タンパク質は熱ヒステリシス活性が魚類より10~100倍強いとされているが、タンパク質の立体構造中ジスルフィド結合が多数存在するため、遺伝子組み換え技術を利用する場合、正しい立体構造と機能を持つタンパク質の収率が低くなってしまう。植物由来不凍タンパク質は今までの研究によると、熱ヒステリシス活性が低いとされている。細菌類においては不凍タンパク質の精製が報告されているが、十分な生産性を持つ菌株は報告されていない。これまでに我々は担子菌類から不凍タンパク質を初めて単離精製し、遺伝子のクローニングより新規な構造を有する不凍タンパク質であることを明らかにした(例えば、非特許文献2)。しかし、凍結乾燥で粉末状態とすることにより、又は常温で、活性を失うなど安定性が低くその利用が制限される。一方、子嚢菌類では不凍タンパク質の存在が報告されているものの、これまで不凍タンパク質が単離・精製されたことはない(例えば、非特許文献3)。このように、現在不凍タンパク質が活躍できる場面が多々あるにもかかわらず、要求に適するものは未だ報告されていない。

産業上の利用分野


本発明は、子嚢菌類由来の新規不凍タンパク質に関する。具体的には、優れた不凍活性を示し、凍結防止剤、氷再結晶阻害剤及び氷点下低温保存剤として有用な不凍タンパク質及びその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
アンタクトマイセス属に属する菌類の産生する不凍タンパク質であって、配列番号1で表されるN末端アミノ酸配列を含む分子量20~30kDaの不凍タンパク質
【請求項2】
糖鎖を有する、請求項1に記載の不凍タンパク質。
【請求項3】
アンタクトマイセス属に属する菌類がアンタクトマイセス・サイクロトロフィクスである請求項1又は2に記載の不凍タンパク質。
【請求項4】
pH2.0~13.0の範囲で不凍活性を示す、請求項1~のいずれか1項に記載の不凍タンパク質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の不凍タンパク質の製造方法であって、該不凍タンパク質を産生する能力を有するアンタクトマイセス・サイクロトロフィクスを低温下培養し、該培養液から不凍タンパク質を回収することを特徴とする、前記不凍タンパク質の製造方法。
【請求項6】
アンタクトマイセス・サイクロトロフィクスが、アンタクトマイセス・サイクロトロフィクス Syw-1株(NITE P-725)である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の不凍タンパク質を含む凍結防止剤。
【請求項8】
アンタクトマイセス・サイクロトロフィクス Syw-1株(NITE P-725)。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2009089269thum.jpg
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) 2012年2月24日(金) 産総研 新技術説明会
ライセンス等を御希望の方又は特許の内容に興味を持たれた方は,下記「問合せ先」まで直接お問い合わせくださいますよう,お願い申し上げます。


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