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健側情報フィードバック型歩行補助装置 新技術説明会

国内特許コード P120006732
整理番号 SHINGI20120110
掲載日 2012年2月28日
出願番号 特願2011-148686
公開番号 特開2013-013579
登録番号 特許第5892506号
出願日 平成23年7月4日(2011.7.4)
公開日 平成25年1月24日(2013.1.24)
登録日 平成28年3月4日(2016.3.4)
発明者
  • 三好 扶
  • 上路 央
  • 松田 敬子
  • 米田 隆志
出願人
  • 国立大学法人岩手大学
発明の名称 健側情報フィードバック型歩行補助装置 新技術説明会
発明の概要 【課題】脳卒中による片麻痺患者を対象とし、健側下肢の関節角度情報を取得し、患側下肢の関節に時間遅れを与えて健側の角度情報をフィードバックして患側下肢の関節角度を位置制御することによって健常者に近い歩容、かつ個人に合った歩容による訓練を可能とする健側情報フィードバック型歩行補助装具を提供すること。
【解決手段】屈曲と伸展とを判断する閾値をあらかじめ設定し、膝関節用角度検出器11Bで検出した膝関節角度が閾値を下回った時刻から、所定の位相だけ遅らせてスレーブ機構20の駆動源21A、21Bを動作させて屈曲を開始させることを特徴とする。
【選択図】 図27
従来技術、競合技術の概要


脳血管障害(Cerebral Vascular accident)とは、脳を灌流する血管または血行動態が病的に変化することによって、頭蓋内で虚血や出血をきたし脳に影響を及ぼす疾患の総称である。特に急激に発症する脳の神経徴候を主体とした症候群を脳卒中(Stroke)と言い、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などに分類される。そして、脳梗塞(Cerebral infarction:脳動脈閉塞による脳実質の液化壊死を生じる状態)、脳出血(Cerebral hemorrhage:脳内動脈の破綻によって起こる出血)、クモ膜下出血(Subarachnoid hemorrhage:脳底部の動脈瘤の破綻によるクモ膜下腔における出血)、一過性脳虚血、高血圧性脳症などがある。
一般的に脳卒中は片側上下肢の運動麻痺、視野の半分が認識できなくなる半側空間無視などの知覚障害を伴うことが多く、高次機能障害(失言症、失行症、失認症)、精神損傷を有することもある。脳卒中片麻痺の回復過程は経時的であり、発症直後は弛緩性麻痺であるが、経時的変化によって痙性麻痺に移行する場合が多い。



脳は、部位によって機能が異なり、運動を司る運動野では機能局在(functional localization)がある。くも膜下出血では、頭痛や意識障害を起こしやすい。また、脳梗塞や、脳出血では、ダメージを受けた脳の部分に応じて、動きにくくなる部分や程度は異なる。片麻痺は、原則としては脳の病変と反対側の上肢と下肢に起こる。麻痺は、下肢より上肢に強く見られることが多いと知られており、中心から近い部分よりも遠い部分の方が強く起こる。
運動麻痺は、運動中枢から筋繊維までの経路のどこかに障害があって、随意的な運動ができない状態である。本質的に全く異なる中枢性麻痺(上位運動ニューロ障害)、末梢性麻痺(下位運動ニューロ障害)がある。
末梢性麻痺は、脊髄の前角細胞から神経筋接合部に至る下位運動ニューロの経路が障害されて起こる。前角細胞の病変であるポリオや、炎症や圧迫・外傷などによる神経根・神経叢・末梢神経障害が原因となる。
中枢性麻痺は、脊髄の前角細胞から神経筋接合部に至る下位運動ニューロには直接的な変化はなく、大脳皮質を中心とする上位の運動統御中枢から前角細胞に至るまでの複雑な運動統合システムのどこかに起こる。脳血管障害による片麻痺は中枢性麻痺にあたる。



脳卒中による片麻痺の発生直後は、弛緩性麻痺が起こり、後に痙性麻痺に移行することが多い。関節を曲げる時に与えられた外力の抵抗が通常より小さい場合を弛緩と言い、大きい場合を痙性と言い、痙性によって反張膝や、内反尖足が起こることがある。反張膝とは、立つ時に膝が通常と反対側に曲がってしまうような状態をいう。また、内反とは、足底が内側にねじれる状態を言い、尖足とは、足首がつっぱり指先しかつかない状態で歩行するような状態をいう。
脳卒中による麻痺は、力が弱くなるのではなく、動かそうとしたときに、特有の収縮パターンが起こることが特徴的である。ある一部の筋肉を動かそうとしても、同時にさまざまな筋肉が動いてしまうことによる特有の運動パターンが麻痺の回復過程で見られ、これを共同運動と言う。また、体のある部位を無理に動かそうと努力しすぎると、ほかの部位にも不随意に姿勢反射が起こることが多く、これは連合運動と呼ばれる。
麻痺側の歩行における遊脚期では足関節に下垂足が見られる。下垂足とは、思うように背屈ができなくなる状態である。また、麻痺側下肢を半円形に振り出すぶん回し歩行が見られる。健側の股・膝関節を補償的に動作することもあり、左右非対称な歩行になる。



過度な安静にしてしまうと、2次的合併症として、褥瘡(床ずれ)や筋萎縮、骨密度の低下などの廃用症候群を発症する。いずれも日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)に支障をきたす。発症する患者は高齢者が多く、高齢者は一般的に体力が低下し、回復力及び回復への意欲などが劣る。このために、必要以上の寝たきりになることによって廃用症候群が発症し、更なる長期的な寝たきり患者となると言った悪循環に陥る。そのため、廃用症候群の予防には、身の回りのことはできるだけ自分で積極的に行うようにすることが必要となる。
ネコやイヌなどの四足歩行を行う脊髄動物では、足踏み反射が見られ、脳幹や脊髄などに存在する中枢パターン発生器(Central pattern generator:CPG)が関係していることが知られている。CPGとは、感覚情報なしに周期的な運動パターンを生成する神経回路網のことをいう。人の歩行に関しても、脊髄回路網にCPGが存在することが示唆されている。CPGを動員するためには、股関節の屈曲、伸展と、足底からの荷重情報が必要である。また、対側脚からの求心性刺激を与えることで脊髄神経回路が賦活し、歩行運動出力の発現に寄与すると考えられている。そのため、非麻痺足(以後、健側)から麻痺足(以後、患側)、もしくは患側から健側へ適切な神経情報入力を与えることで、より円滑な神経出力を誘発できる可能性がある。



脳血管障害による片麻痺患者のリハビリテーションでは日常生活動作を自立的に行えるように訓練を行う。日常生活動作には食事動作、トイレ動作、整容動作、更衣動作、入浴動作、コミュニケーション動作、移動動作があり、更に生活関連動作としては、調理、洗濯、掃除などの動作がある。その中でも移動動作はそれ自体に意味はないが、他の動作を行う上で必要不可欠な動作である。歩行訓練では下肢の振り出し、体重の支持、重心の移動と言った歩行における一連の動作を杖や歩行装具を用いて訓練するが、運動麻痺によって生じる問題から必要に応じて療法士の介助や装具によるサポートが必要となる。片麻痺者の歩行には、健側による補償動作が起きる。神経系の可塑性により、健側は補償動作を行うような神経系が形成され、患側は減退していき筋委縮や骨密度減少を誘引する。



片麻痺者の歩行訓練に焦点をあてた研究においてWernigらによると、杖や歩行器を使用することでかろうじて自立歩行が可能な片麻痺者33名を対象に免荷式歩行訓練BWSTT(Body Weight Support Treadmill Training)を行うことによって、実に25名がこれら歩行補助装具を使用することのない自立歩行を再獲得できたと報告されている。
片麻痺回復促進のための運動療法として、麻痺側の足を理学療法士(PT:Physical Therapist)の手で動かすことで運動を誘発する促通手技と言う方法がある。その中で、成人の脳卒中片麻痺患者に対しては、「ボバース概念に基づく治療(神経学的リハビリテーション)(Neurological rehabilitation based upon the BOBATH concept)」と言う治療法がある。反復時間と人手が必要になるが、軽度であれば促通手技を行ったことで、歩行の左右対称性だけでなく、脳の運動野の活動の左右対称性の向上にも役立った可能性がある。



以上のことより、左右対称に足を動かすように歩行訓練して、股関節を屈曲・伸展させ、足底からの荷重情報を与えることは有効であると考えられる。
脳血管障害による片麻痺に対する治療法の一つに装具療法がある。これは歩行や日常生活活動の向上を図るために早期から運動療法にとり入れられているもので、片麻痺のリハビリテーションにおいては歩行能力の獲得と改善がその大きな目標である。また、装具を利用しながら運動療法を行うことで、運動機能の促進・回復向上につなげることが可能となる。
脳卒中片麻痺の回復過程は弛緩性麻痺から痙性麻痺に移行し、運動パターンは共同運動に支配され歩行障害となる。そのために下肢装具の果たす役割は大きい。
片麻痺患者などにおいて、非麻痺側の正常な機能を用いて、麻痺側のリハビリテーションを行うと言う、いわゆる「マスタスレーブ方式リハビリテーションシステム」は、既に提案されている(例えば特許文献1)。

産業上の利用分野


本発明は、健側下肢の股・膝関節角度情報を基にして、患側のアクチュエータを駆動し、患側下肢の各関節角度を同期して位置制御する健側情報フィードバック型歩行補助装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
健側としてのマスタ機構と、患側としてのスレーブ機構とを有し、
前記マスタ機構には、股関節部に取り付けられた股関節用角度検出器と膝関節部に取り付けられた膝関節用角度検出器とを備え、
前記スレーブ機構は、股関節部を駆動するスレーブ股関節機構部と、膝関節部を駆動するスレーブ膝関節機構部とから構成され、
前記スレーブ股関節機構部及び前記スレーブ膝関節機構部は、それぞれ駆動源及び駆動機構を備えた健側情報フィードバック型歩行補助装置であって、
屈曲動作と伸展動作とを判断する閾値をあらかじめ設定し、
前記膝関節用角度検出器で検出されるマスタ膝関節角度が前記閾値を越えている場合には、前記屈曲動作と判断し、伸展時間Teを「0」とすることで前記スレーブ機構への前記伸展動作の指示を停止し、前記屈曲動作と判断している間は、前記マスタ膝関節角度の最大角度を更新するとともに屈曲時間Tfを計算し、
前記膝関節用角度検出器で検出される前記マスタ膝関節角度が前記閾値以下の場合には、既に得られている直前の前記屈曲時間Tfから前記スレーブ機構に指令する1周期の時間を計算し、前記屈曲時間Tfを「0」とすることで前記スレーブ機構への前記屈曲動作の指示を停止し、前記伸展動作と判断している間は、前記マスタ膝関節角度の最小角度を更新するとともに前記伸展時間Teを計算し、
前記伸展時間Teが前記1周期の時間よりも長いと判断した場合には、装着者が歩行動作を停止したと判断して股と膝の指令角度を「0」とすることで前記スレーブ機構への前記屈曲動作及び前記伸展動作の指示を停止し、
前記屈曲時間Tf、前記マスタ膝関節角度の最大角度、前記伸展時間Te、及び前記マスタ膝関節角度の最小角度から前記スレーブ膝関節機構部への指令角度を1歩単位で計算して出力し、
前記膝関節用角度検出器で検出した前記マスタ膝関節角度が前記閾値を下回った時刻から、所定の位相だけ遅らせて前記スレーブ機構の前記駆動源を動作させて屈曲を開始させることを特徴とする健側情報フィードバック型歩行補助装置。

【請求項2】
前記屈曲時間と、前記マスタ膝関節角度の最大角度とから前記スレーブ膝関節機構部を動作させる角速度を決定し、前記マスタ膝関節角度が前記閾値を下回った後に前記スレーブ機構をフィードバック制御で屈曲・伸展させることを特徴とする請求項1に記載の健側情報フィードバック型歩行補助装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2011148686thum.jpg
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) 2012年1月10日(火) 岩手大学・一関工業高等専門学校 新技術説明会
岩手大学地域連携推進センターでは、岩手大学における知的財産の創出・管理・活用のマネジメントをしております。上記の特許等にご興味がありましたら、下記問い合わせ先にご相談ください。


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