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高純度乳酸の製造方法

国内特許コード P120007066
整理番号 J125
掲載日 2012年3月26日
出願番号 特願2010-070038
公開番号 特開2011-200161
登録番号 特許第5721162号
出願日 平成22年3月25日(2010.3.25)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
発明者
  • 中西 載慶
  • 徳田 宏晴
  • 本間 裕人
  • 鈴木 三知代
出願人
  • 学校法人東京農業大学
発明の名称 高純度乳酸の製造方法
発明の概要 【課題】生物学的手法を用いた簡便な高純度D-乳酸の生産であって、乳酸溶液中のL-乳酸を選択的あるいは優先的に資化する菌によって、簡便、効率的かつ低コストで高純度D-乳酸の製造方法を提供する。
【解決手段】D-乳酸及びL-乳酸を含む乳酸溶液でL-乳酸資化性菌であるピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)を培養し、該乳酸溶液中のL-乳酸を資化させることによってD-乳酸の純度を高めるL-乳酸除去工程を有することを特徴とする高純度D-乳酸の製造方法によって解決する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要



近年、化石資源の枯渇への危惧や地球環境保全の観点から、生分解性プラスチックに対する関心が高まっており、中でもバイオマスを原料として生産が可能なポリ乳酸系バイオプラスチックが注目されている。





ポリ乳酸のモノマーである乳酸は、光学活性が異なるL‐乳酸とD‐乳酸の2つのエナンチオマーが存在する。どちらかのエナンチオマーのみ、すなわち、L‐乳酸あるいはD‐乳酸でポリ乳酸を合成した場合、ラセミ体であるDL‐乳酸を原料とした場合と比べて、結晶性や延伸性、耐熱性、成型加工性等の優れたポリマーができることがよく知られている。ちなみに、L‐乳酸で合成したポリ乳酸は、ポリ‐L‐乳酸、D‐乳酸で合成した場合は、ポリ‐D‐乳酸という。





ポリ‐L‐乳酸あるいはポリ‐D‐乳酸を合成する場合、その原料モノマーであるL‐乳酸あるいはD‐乳酸の純度が重合度やガラス転移点に大きく影響する。さらに、原料モノマーへの他方のエナンチオマーの混入は、合成されたポリ乳酸の融点を下げることが知られている。そのため、工業用プラスチック素材としてポリ乳酸を使用するためには、ポリ乳酸製造のための原料乳酸の光学純度が高いことが必要となる。





ところで、これまでのポリ乳酸は、人体で生成される乳酸がL‐乳酸であることなどの理由からポリ‐L‐乳酸が主流であった。そのため、その原料となるL‐乳酸生産のための研究やその光学純度を高める研究がなされてきた。例えば、特開平9-121844号公報には、高光学純度のL-乳酸を生産する新規バチルス(Bacillus) sp. SHO-1(FERM P‐15234)を培養し、この培養物から光学純度95%以上のL-乳酸を採取することが開示されている(特許文献1)。





ところが最近になって、ポリ‐L-乳酸とポリ‐D‐乳酸とを混合して得られるステレオコンプレックス型ポリ乳酸が、ポリ‐L‐乳酸あるいはポリ‐D‐乳酸と比較して、その強度や耐熱性の点でさらに優れた特性を有することが見いだされた。例えば、特開2000‐17163号公報には、L-乳酸、D-乳酸及び/又は乳酸以外の共重合成分により構成された非晶性ポリマーを特定の混合重量比で溶融ブレンドした結晶性ポリ乳酸ステレオコンプレックスポリマー組成物が、成形加工性に優れ、低コストで得られる旨が開示されている(特許文献2)。そのため、効率的なD‐乳酸生産方法および光学純度の高いD‐乳酸生産方法の開発が必要となった。





一般的な乳酸の生産方法は、合成法及び発酵法の2つが知られている。合成法は、アセトアルデヒドに青酸を作用させ、生成したシアンヒドリンを加水分解して乳酸を合成する場合と、アセトアルデヒドと一酸化炭素とを高圧下で反応させて合成する場合が知られている。一方、発酵法は、ショ糖、ブドウ糖、デンプン、ジャガイモ等のバイオマス原料を乳酸生産菌によって発酵させて得た乳酸を精製する。





合成法によって合成された乳酸の光学純度は、L‐乳酸:D‐乳酸比が1:1のラセミ体となる。





一方、発酵法においては、発酵に用いる微生物を選択することによってL‐乳酸あるいはD-乳酸の光学純度を高めることができる。例えば、D‐乳酸生産菌を用いることによって、比較的純度の高いD‐乳酸を生産することができる。





また、遺伝子工学的手法によって改変した微生物を用いた高純度D‐乳酸の生産についての研究も行われており、例えば、Ishida, N.らは、高光学純度D‐乳酸の効率的生産を目的として、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を欠損したサッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)にロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides) NBRC 3426株由来のD‐乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入してグルコースからのD‐乳酸生産を試みたところ、光学純度99.9%のD‐乳酸を生産したことが開示されている(非特許文献1、特許文献3)。





ところで、D-乳酸およびL-乳酸のように光学活性の異なる物質を分割する方法には、(1)ラセミ体にキラル化合物(光学分割剤)を作用させてジアステレオマーを形成させ、ジアステレオマー間の物理的な性質、例えば溶解度などの差異を利用して、それぞれのジアステレオマーを分別結晶化した後、得られた単一のジアステレオマーから光学分割剤を取り除くことで目的のエナンチオマーを得る結晶化による光学分割法、(2)不斉要素をもつ固定相を用いたカラムクロマトグラフィーによって、その保持時間の差異を利用して分割する光学分割法、(3)酵素の高い不斉識別能によって一方のエナンチオマーを選択的に反応させる酵素法の3つが知られている。さらに、結晶化による光学分割方法には、優先晶出法、ジアステレオマー法、包接錯体法、優先富化法がある。

産業上の利用分野



本発明は、微生物を用いた高純度D-乳酸の製造方法に関し、詳しくは、D-乳酸及びL-乳酸を含む溶液からL-乳酸資化性菌によってL-乳酸を除去する高純度D-乳酸の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
D-乳酸及びL-乳酸を含む乳酸溶液を調製する乳酸溶液調製工程と、
該乳酸溶液中でL-乳酸資化性菌であるピキア マンシュリカ(Pichia manshurica)LAAM001株(受番号:NITE -902)を培養し、該乳酸溶液中のL-乳酸を資化させることによってD-乳酸の純度を高めるL-乳酸除去工程と、
を有する高純度乳酸の製造方法。

【請求項2】
前記乳酸溶液が、D-乳酸生産菌を培養して得られる乳酸発酵液である、請求項1に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項3】
前記L-乳酸除去工程が、25~40℃、pH2.6~7.0の条件下で振とう培養により実施される、請求項1又は2に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項4】
前記D-乳酸生産菌による乳酸溶液調製工程の終了後、前記L-乳酸資化性菌によるL-乳酸除去工程を実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項5】
前記乳酸溶液調製工程の終了後、前記乳酸溶液を遠心分離する工程を含む、請求項4に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項6】
前記D-乳酸生産菌による乳酸溶液調製工程と、前記L-乳酸資化性菌によるL-乳酸除去工程とを同時に実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項7】
培養開始から24時間経過までは前記D-乳酸生産菌の最適生育条件で培養を実施し、 培養開始から24時間経過後は前記L-乳酸資化性菌の最適生育条件で培養を実施する、 請求項6に記載の高純度乳酸の製造方法。

【請求項8】
前記D-乳酸生産菌の最適生育条件が、35~40℃、pH4.5~5.5の嫌気培養であり、
前記L-乳酸資化性菌の最適生育条件が、30~35℃、pH3.0~3.8の好気培養である、
請求項7に記載の高純度乳酸の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2010070038thum.jpg
出願権利状態 登録


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