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根こぶ病抵抗性アブラナ科植物の作出方法

国内特許コード P120007429
掲載日 2012年5月1日
出願番号 特願2010-211689
公開番号 特開2012-065567
登録番号 特許第5721209号
出願日 平成22年9月22日(2010.9.22)
公開日 平成24年4月5日(2012.4.5)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
発明者
  • 松元 哲
  • 畠山 勝徳
  • 吹野 伸子
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 根こぶ病抵抗性アブラナ科植物の作出方法
発明の概要 【課題】根こぶ病抵抗性遺伝子を単離し、遺伝子組換えおよびマーカー選抜により効率的な根こぶ病抵抗性のアブラナ科植物を作出する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】マップベースクローニングにより単離した根こぶ病抵抗性遺伝子(Crr1)をアブラナ科植物に導入、発現させることにより、根こぶ病抵抗性のアブラナ科植物を作製することに成功した。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



根こぶ病はPlasmodiophora brassicaeによって引き起こされ、国内ではハクサイ、カブ、ナバナ、ノザワナ、ツケナ、キャベツ、ブロッコリーなどアブラナ科野菜と海外ではナタネの土壌伝染性の難防除病害の一つである。発病株は根部がこぶ状に肥大するため養水分の吸収に支障をきたし、著しい生育の遅延や場合によっては枯死にいたる。本病は、一旦発生すると罹病株から大量の休眠胞子が土壌中に放出される。休眠胞子は土壌中に長期間にわたり発芽能力を残したまま存在するため、輪作による軽減効果が期待できず、連作圃場では年々菌密度が高まり、耕種的防除が困難になる点が特徴である。したがって化学合成農薬に頼った栽培かアブラナ科以外の野菜への転作に迫られる。





Brassica rapaに属する結球性のハクサイの遺伝資源の中では根こぶ病抵抗性遺伝子は見出されず、野菜茶業試験場の吉川の精力的な研究により、Siloga、Gerlia、Millan white、77bなどヨーロッパ飼料用カブが有望な抵抗性素材であることが判明した(非特許文献1)。またこれらのヨーロッパ飼料用カブから複数の抵抗性遺伝子が見出されている。根こぶ病菌には病原性に多様性があり、これらを識別する方法として、European Clubroot Differential (ECD)法、Williams法(非特許文献2)などが提唱されてきた。日本においては国内で発生した菌株の病原性を判断する指標(非特許文献3)や入手が容易な品種を用いた分類法(非特許文献4、非特許文献5)が報告されている。





ハクサイの抵抗性品種(Clubroot Resistance;CR品種)の育成に関しては、Brassica.rapaの中から抵抗性の主働遺伝子が見出され、精度の高い抵抗性検定手法の考案、病原性差異を判別できる方法の確立により、野菜茶業試験場から6つのはくさい中間母本が発表されるとともに、民間種苗会社からハクサイの根こぶ病抵抗性品種が育成された。一方で、根こぶ病菌のレース分化と拡散の早さに抵抗性育種が追い付かず、根こぶ病抵抗性品種の抵抗性が失われ、罹病化する事例が多く報告されるようになった。分離された根こぶ病菌株の中には、多くの抵抗性品種に対して加害する、広い宿主範囲をもつ菌株も目立ってきた。そのため抵抗性品種の栽培においても化学合成農薬や根こぶ病軽減を謳う資材の投入がなされている。ネビジンやフロンサイトなどの化学合成農薬の使用は農家に多大の経費や労力の負担を強いている。望まれるのは根こぶ病菌の幅広いレースに対応可能なCR品種の開発である。具体的には導入されている抵抗性遺伝子を複数個に集積することである。しかし従来の根こぶ病抵抗性といった表現型による選抜では、精度や効率性の点で問題がある。さらにキャベツやブロッコリーが属するB.oleraceaでは主働遺伝子が少なく、抵抗性を発揮するには複数の抵抗性遺伝子を集積することが必要であるため、抵抗性品種の育種・育成は極めて困難な作業と考えられている。





社会的に求められているのは、化学合成農薬を使用しなくても栽培可能な抵抗性品種を育成することであるが、上述したとおり、目標の達成のためには技術的に解決しなければならない点が多く存在する。





なおこれまでにアブラナ科植物の根こぶ病については抵抗性遺伝子の単離に関する論文報告はない。また京都府立大の研究グループがヨーロッパ飼料用カブ「Milan White」に由来するCrr3を単離途中で、現在、形質転換による確認を行っていることを把握している。遺伝子組換えによる根こぶ病抵抗性を付与した事例は、ニトリラーゼプロモーターに抗菌性ペプチド(タイワンカブトムシ由来スカラベシン)遺伝子を連結しブロッコリーに導入し抵抗性個体を作出したのみである(特許文献1)。現在の抵抗性品種の育成は、交配選抜育種が主体である。





B.rapaにおける選抜育種を効果的に行うマーカーの開発では、RA1275(非特許文献6)、Crr1、Crr2(非特許文献7)、Crr3(非特許文献8、非特許文献9)、Crr4(非特許文献7)、CRa(非特許文献10、非特許文献11)、CRb(非特許文献12)、CRc、CRk(非特許文献13)などが多くの遺伝子座が報告されている。特許出願等を行っているのは、野菜茶業研究所以外ではルタバカ由来の抵抗性に連鎖するマーカー(特許文献2)である。





野菜茶業研究所におけるCrr1とCrr2に連鎖するDNAマーカーとしてBRMS-173とBRMS-088(以上Crr1)、BRMS-096とBRMS-100(以上Crr2)を開発し、その利用について特許を所得している(特許文献3)。B.oleraceaに関するマーカー開発は主働遺伝子よりも寄与率の比較的小さな遺伝子座の報告があり、近年Nagaoka(2010)らによりpb-Anju-01等のQTLが報告されている(非特許文献14)ものの、育種現場での利用は少ないと推定されている。





さらに過去に、遺伝子組換え技術を用いて根こぶ病抵抗性を付与した植物が育成された例は1件である。これは根こぶ病菌に感染時に特異的に発現される遺伝子のプロモーターと抗菌性のペプチドを機能的に連結しブロッコリーに導入し抵抗性を確認したものであり、プロモーターの利用が特許申請されている(特許文献1)。しかしこのプロモーターと遺伝子セットを導入して得られた植物の発病指数は1.36から1.50であった。また根こぶ病抵抗性遺伝子そのものを使用して遺伝子組換え技術による抵抗性付与は行われていなかった。





ハクサイ類に関する根こぶ病抵抗性選抜用のマーカーは上述の通り多くの報告はあるがどの程度育種現場で使用されているかは不明である。Crr1は4 cM離れたBRMS-173とBRMS-088のほぼ真ん中に位置していることが分かっている。即ちCrr1に連鎖するBRMS-173とBRMS-088の各マーカーはCrr1とはともに2 cM程度離れているため、マーカー座と抵抗性遺伝子座間である一定の確率で組換えが起こることを確認している。このようにマーカー座と抵抗性遺伝子座の間で組換えが生じる可能性が排除できない場合には、遺伝子座を挟み込む2つのマーカーによる選抜や交配後に得られた後代を根こぶ病抵抗性検定により、抵抗性遺伝子の遺伝を確認する必要性がある。





なおCrr1の候補となる遺伝子を絞り込んだ情報がいくつかあるが(非特許文献15~18)、いずれもCrr1であるという証明には至っておらず、配列情報も明らかにされていない。マップベースクローニングにより絞り込んだゲノム領域には複数のORFが存在し、それらのうちどれがCrr1の抵抗性遺伝子であるのか不明であった。またRT-PCRにより発現している遺伝子の全領域を明らかにしようとしたが、増幅されたクローンはすべて同じではなく、どのクローンがCrr1であるかを決定することはできなかった。すべての増幅クローンを比較検討した結果、イントロン部分でのスプライシングがうまく機能していなかった等予見できぬ事態があった。そのため、公開された内容だけではどの部分が遺伝子であるかを理解することは到底できないと考えられた。





以下に本出願の発明に関連する先行技術文献情報を示す。

産業上の利用分野


本発明は、根こぶ病抵抗性遺伝子および該遺伝子を利用して根こぶ病抵抗性のアブラナ科植物を作出する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)から(d)のいずれかに記載の、根こぶ病菌抵抗性を有するポリヌクレオチド;
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:1記載の塩基配列の相補鎖に0.2×SSC、0.1%SDS、65℃の条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。

【請求項2】
植物細胞で発現可能なプロモーター領域の下流に、請求項1に記載のポリヌクレオチドが機能的に結合したベクター。

【請求項3】
請求項2に記載のベクターが導入された形質転換植物細胞。

【請求項4】
請求項3に記載の形質転換植物細胞から再生された、根こぶ病菌抵抗性活性を有する植物体。

【請求項5】
請求項4に記載の植物体の子孫またはクローンである、根こぶ病菌抵抗性活性を有する植物体。

【請求項6】
請求項4または5に記載の根こぶ病菌抵抗性活性を有する植物体の繁殖材料。

【請求項7】
配列番号:1もしくは配列番号:3に記載の塩基配列、または該塩基配列の部分配列もしくは周辺配列を含むDNA領域を検出する工程を含む、被検植物体または被検繁殖媒体の根こぶ病菌抵抗性を判定する方法。

【請求項8】
以下の(i)から(iii)の工程を含む、請求項7に記載の判定方法;
(i)被検植物体または被検繁殖媒体からDNA試料を調製する工程、
(ii)該DNA試料から配列番号:1もしくは配列番号:3に記載の塩基配列、または該塩基配列の部分配列もしくは周辺配列を含むDNA領域を増幅する工程、
(iii)根こぶ病菌抵抗性の植物体または繁殖媒体から、配列番号:1もしくは3に記載の塩基配列、または該塩基配列の部分配列もしくは周辺配列を含むDNA領域を増幅したDNA断片と、工程(ii)において増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程。

【請求項9】
請求項7または8に記載の判定方法により、根こぶ病菌抵抗性遺伝子を有する植物体またはその種子を選抜する方法。

【請求項10】
以下の(i)および(ii)の工程を含む、根こぶ病菌抵抗性活性を有する植物体またはその種子の製造方法;
(i)請求項2に記載のベクターを植物細胞に導入する工程、および
(ii)前記工程(i)においてベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程。

【請求項11】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを植物細胞内で発現させる工程を含む、植物体もしくはその種子に根こぶ病抵抗性活性を付与する方法。

【請求項12】
請求項1に記載のポリヌクレオチド、または請求項2に記載のベクターを植物細胞へ導入する工程を含む、請求項11に記載の方法。

【請求項13】
以下の(a)および(b)の工程を含む、請求項11に記載の方法;
(a)請求項1に記載のポリヌクレオチドを有する植物と他の植物とを交雑させる工程、および
(b)前記ポリヌクレオチドを有する植物体を選抜する工程。

【請求項14】
植物がアブラナ科植物である、請求項7~13のいずれかに記載の方法。

【請求項15】
配列番号:1または塩基配列:3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、被検植物の根こぶ病菌抵抗性活性を検出するためのプライマー。

【請求項16】
配列番号:1または塩基配列:3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、被検植物の根こぶ病菌抵抗性活性を検出するためのプローブ。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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