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幹細胞の培地及び培養方法

国内特許コード P120007567
整理番号 23484
掲載日 2012年5月21日
出願番号 特願2013-004088
公開番号 特開2013-099345
登録番号 特許第5721111号
出願日 平成25年1月11日(2013.1.11)
公開日 平成25年5月23日(2013.5.23)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
優先権データ
  • 特願2006-257780 (2006.9.22) JP
  • 特願2007-118183 (2007.4.27) JP
  • 0710095.1 (2007.5.25) GB
発明者
  • 笹井 芳樹
  • 渡邉 毅一
出願人
  • 国立研究開発法人理化学研究所
発明の名称 幹細胞の培地及び培養方法
発明の概要 【課題】ES細胞等の幹細胞の培養に有効な新規方法論及び新規培地を提供する。
【解決手段】ヒトES細胞を含む胚性幹細胞(ES細胞)などの幹細胞が、ROCK阻害剤を含む培地中で培養され、必要に応じて無血清である幹細胞培地が、ROCK阻害剤を含む。
【選択図】図1-1
従来技術、競合技術の概要



ES細胞は、パーキンソン病等の中枢神経疾患及び糖尿病に対する細胞移植における細胞ソースとして有力な候補である。ES細胞の研究では、現在のところ、マウスES細胞が一般に用いられているが、臨床応用を視野に入れると、ヒトES細胞を用いずに研究及び開発を行うことが必要である。しかしながら、ヒトES細胞は、細胞培養において、マウスES細胞よりも細胞死を起こし易い。





例えば、ヒトES細胞の維持培養での植え継ぎでは、フィーダー細胞又は基質から細胞塊を酵素処理又は機械的剥離によって一旦浮遊させ、それをピペッティングにより小細胞塊に分離し、次いで、新しい培養皿に植える。しかし、ヒトES細胞は、通常の細胞株及びマウスES細胞と比較して、不十分な剥離及び分散を経て、多くの細胞は生き残らない。ヒトES細胞は分裂が非常に遅く、分化しやすいことから、未分化性を維持しつつヒトES細胞を培養するためには多くの時間的、人的労力を必要とする上、再現性のある結果を得るには技術的修練が必要とされる。その上、植え継ぎにおける細胞死により回収率が低下することは、ヒトES細胞を用いた研究及び開発での障害となっている。さらに、遺伝子操作過程の際にはヒトES細胞をクローン化する必要があるが、ヒトES細胞を単一細胞に均一的に分散させた場合、細胞死及び増殖停止が非常に起こりやすくなり、ヒトES細胞におけるクローン化効率は、結果として1%以下とされている。





さらに、ヒトES細胞を分化させるために、ヒトES細胞をフィーダー細胞から剥離した小細胞塊又は単一細胞として分散し、次いで基質又は特定のフィーダー細胞上に蒔き、分化誘導培地で培養する。この過程は非常に効率が悪い。さらに、胚様体培養法、本発明者らが開発したSFEB(Serum-free Floating culture of EmbryoidBodies-like aggregates)法(国際公開第2005/123902号及びWatanabeら, Nature Neuroscience 8, 288-296 (2005))では、一旦細胞を単一細胞に解離させてから細胞塊を形成させることを要するが、このような方法論をヒトES細胞に適用する場合、多数の細胞が細胞死を起こす。さらに、ヒトES細胞の場合、完全に単一分散させない場合(小細胞塊から培養する場合)であっても高頻度で細胞死が起こるという問題がある-Frischら, Curr. Opin. Cell Biol. 13, 555-562 (2001))。したがって、ヒトES細胞の培養のための改良された方法論の開発が望まれる。





Rho-associated coiled-coilキナーゼ(ROCK:GenBankアクセッション番号:NM_005406)は、Rho GTPaseの主たるエフェクター分子の1つであり、血管収縮及び神経軸索伸展等の生理現象を制御していることが知られている(Rientoら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 4, 446-456 (2003))。ROCK阻害剤としては幾つかの化合物が知られている(例、Ishizakiら, Mol. Pharmacol. 57,976-983 (2000)及びNarumiyaら, Methods Enzymol. 325,273-284 (2000))。ROCKの阻害により細胞死が制御されるという少数の報告(Minambresら, J. Cell Sci. 119, 271-282 (2006) 及びKobayashiら, J. Neuros

ci. 24, 3480-3488 (2004))があるものの、ROCKの阻害がアポトーシスを促進するという報告(Rattanら, J. NeurosciRes. 83, 243-255 (2006) 及びSvobodaら, Dev Dyn.229, 579-590 (2004))もあり、アポトーシス制御におけるRho/ROCKの役割は未だ確立されていない(Rientoら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 4, 446-456 (2003))。





PacaryE.ら, J. Cell Science 119 (13) pp 2667-2678より、CoClが、間葉系幹細胞のニューロンへの分化を誘導することや、ROCK阻害がこの作用を促進することが知られている。しかし、ROCK阻害剤含有培地中でのES細胞等の幹細胞の培養については何ら報告されていない。

産業上の利用分野



本発明は、胚性幹細胞(ES細胞)等の幹細胞の培養方法、該幹細胞の培地及びそれらの使用を提供する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト多分化能性幹細胞をROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤で処理することを含む、生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながら、ヒト多分化能性幹細胞培養する方法。

【請求項2】
ヒト多分化能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項1記載の方法。

【請求項3】
ヒト多分化能性幹細胞が分散している、請求項1又は2記載の方法。

【請求項4】
分散したヒト多分化能性幹細胞が、単一ヒト多分化能性幹細胞であるか、又は凝集したヒト多分化能性幹細胞である、請求項3記載の方法。

【請求項5】
ヒト多分化能性幹細胞を分散させること、並びにヒト多分化能性幹細胞をROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤で処理することを含む、請求項1~4のいずれか記載の方法。

【請求項6】
ヒト多分化能性幹細胞の分散前に、ヒト多分化能性幹細胞をROCK阻害剤で処理する、請求項5記載の方法。

【請求項7】
ヒト多分化能性幹細胞の分散後に、ヒト多分化能性幹細胞をROCK阻害剤で処理する、請求項5又は6記載の方法。

【請求項8】
ROCK阻害剤が、Y-27632、Fasudil又はH-1152である、請求項1~7のいずれか記載の方法。

【請求項9】
ヒト多分化能性幹細胞を接着培養又は浮遊培養で培養する、請求項1~8のいずれか記載の方法。

【請求項10】
(a)ヒト多分化能性幹細胞の純化又はクローン化、(b)ヒト多分化能性幹細胞の遺伝子改変株の製造、あるいは(c)浮遊培養による神経細胞の製造のために用いられる、請求項1~9のいずれか記載の方法。

【請求項11】
神経細胞が前脳神経細胞である、請求項10記載の方法。

【請求項12】
ト多分化能性幹細胞からの分化細胞の製造方法であって、該方法は、ROCK阻害剤の存在下において、未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養し、ヒト多分化能性幹細胞の生存率及び/又は増殖能を改善すること、及び生存率及び/又は増殖能が改善されたヒト多分化能性幹細胞から分化細胞を誘導することを含む、方法。

【請求項13】
ヒト多分化能性幹細胞からの分化細胞の製造方法であって、該方法は、ROCK阻害剤の存在下において、生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養し、ヒト多分化能性幹細胞の分化効率を向上させること、及び分化効率が向上したヒト多分化能性幹細胞から分化細胞を誘導することを含む、方法。

【請求項14】
ROCK阻害剤の存在下において、生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養することにより得られる、ヒト多分化能性幹細胞及びROCK阻害剤を含む、細胞調製物。

【請求項15】
ヒト多分化能性幹細胞が分散している、請求項14記載の細胞調製物。

【請求項16】
ROCK阻害剤を含む、生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞培養するための培地。

【請求項17】
基礎培地及びROCK阻害剤を含む、請求項16記載の培地。

【請求項18】
無血清である、請求項16又は17記載の培地。

【請求項19】
ROCK阻害剤を含む培地において生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養することを含む、クローン化効率又は継代効率を促進するためのヒト多分化能性幹細胞の培養方法。

【請求項20】
ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養することを含む、ヒト多分化能性幹細胞培養におけるコロニー形成の促進方法。

【請求項21】
ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞を培養することを含む、ヒト多分化能性幹細胞培養におけるクローン化効率又は継代効率の改善方法。

【請求項22】
請求項19~21のいずれか記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、フィーダー細胞、フィーダー細胞抽出物、及び/又は血清の非存在下で培養される、方法。

【請求項23】
請求項19~22のいずれか記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、サブクローニング又は継代の前に、ROCK阻害剤の存在下で培養される、方法。

【請求項24】
請求項23記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、サブクローニング又は継代の前に少なくとも1時間、ROCK阻害剤の存在下で培養される、方法。

【請求項25】
請求項19~24のいずれか記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、サブクローニング又は継代の後、ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながら培養される、方法。

【請求項26】
請求項25記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、少なくとも12時間、ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながら培養される、方法。

【請求項27】
請求項26記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、少なくとも2日間、ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながら培養される、方法。

【請求項28】
請求項25記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、少なくとも1継代の間、ROCK阻害剤の存在下で生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながら培養される、方法。

【請求項29】
請求項19~28のいずれか記載の方法であって、ROCK阻害剤がその後培地から除去される、方法。

【請求項30】
請求項29記載の方法であって、ROCK阻害剤が12時間後に除去される、方法。

【請求項31】
請求項29記載の方法であって、ROCK阻害剤が2、4は6日間後に除去される、方法。

【請求項32】
請求項29記載の方法であって、ROCK阻害剤が少なくとも1継代の後除去される、方法。

【請求項33】
ヒト多分化能性幹細胞をROCK阻害剤に接触させることを含む、培養物におけるヒト多分化能性幹細胞の生存の改善方法。

【請求項34】
ヒト多分化能性幹細胞を分散させることを更に含む、請求項33記載の方法。

【請求項35】
分散の前及び/又は後に、ヒト多分化能性幹細胞をROCK阻害剤に接触させる、請求項34記載の方法。

【請求項36】
請求項33~35のいずれか記載の方法であって、培養物が浮遊状態で分散したヒト多分化能性幹細胞又はヒト多分化能性幹細胞の塊を含む、方法。

【請求項37】
請求項33~36のいずれか記載の方法であって、培養物が低密度のヒト多分化能性幹細胞を含む、方法。

【請求項38】
請求項33~37のいずれか記載の方法であって、培養物がクローン密度のヒト多分化能性幹細胞を含む、方法。

【請求項39】
請求項33~38のいずれか記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が少なくとも12時間、ROCK阻害剤の存在下で維持される、方法。

【請求項40】
請求項39記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、少なくとも2日間、ROCK阻害剤の存在下で維持される、方法。

【請求項41】
請求項39記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞が、少なくとも1継代の間、ROCK阻害剤の存在下で維持される、方法。

【請求項42】
請求項33~41のいずれか記載の方法であって、ROCK阻害剤がその後培地から除去される、方法。

【請求項43】
請求項42記載の方法であって、ROCK阻害剤が12時間後に除去される、方法。

【請求項44】
請求項42記載の方法であって、ROCK阻害剤が2、4は6日間後に除去される、方法。

【請求項45】
請求項42記載の方法であって、ROCK阻害剤が少なくとも1継代の後除去される、方法。

【請求項46】
請求項19~45のいずれか記載の方法であって、ヒト多分化能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、方法。

【請求項47】
請求項19~46のいずれか記載の方法であって、ROCK阻害剤がY-27632、Fasudil又はH-1152である、方法。

【請求項48】
ROCK阻害剤を含む、ヒト多分化能性幹細胞の生存を改善するための剤。

【請求項49】
分散処理によるヒト多分化能性幹細胞の低生存率を改善するための剤である、請求項48記載の剤。

【請求項50】
ヒト多分化能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項48又は49記載の剤。

【請求項51】
ROCK阻害剤がY-27632、Fasudil又はH-1152である、請求項48~50のいずれか記載の剤。

【請求項52】
ヒトES細胞の培養方法であって、該方法が以下工程:
(I)培養物中で、多分化能性状態でヒトES細胞を維持する工程;
(II)少なくとも1度、ヒトES細胞を継代する工程;
-培地がフィーダー、血清及び血清抽出物を含まないように、培地から血清、血清抽出物を除去する工程並びにフィーダーを除去する工程;並びに
(III)その後、ROCK阻害剤の存在下で、多分化能性状態でヒトES細胞を維持する工程;を含む、方法。

【請求項53】
工程(I)におけるヒトES細胞の維持がフィーダー上で行われる、請求項52記載の方法。

【請求項54】
請求項52又は53記載の方法であって、ヒトES細胞が、血清、血清抽出物及び/又はフィーダーの除去の前に、ROCK阻害剤の存在下で培養される、方法。

【請求項55】
ヒトES細胞のトランスフェクト集団を得る方法であって、該方法が以下工程:
-選択マーカーをコードするコンストラクトで、ヒトES細胞をトランスフェクトする工程;
-ヒトES細胞を蒔く工程;
-ROCK阻害剤の存在下で、生存を改善し及び/又は未分化状態でヒトES細胞を培養する工程;及び
-選択マーカーを発現する細胞を選択する工程;
を含む、方法。

【請求項56】
請求項55記載の方法であって、ROCK阻害剤の存在下で、選択マーカーを発現するヒトES細胞をサブクローニングする工程をさらに含む、方法。

【請求項57】
血清及び血清抽出物を含まない、生存を改善しながら及び/又は未分化状態を維持しながらヒト多分化能性幹細胞培養するための培地であって、以下:
-基礎培地;
-ROCK阻害剤;及び
-鉄輸送体、を含む、培地。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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