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導入遺伝子のサイレンシングを回避する方法

国内特許コード P120007655
整理番号 185
掲載日 2012年6月14日
出願番号 特願2003-078202
公開番号 特開2004-283067
登録番号 特許第3731054号
出願日 平成15年3月20日(2003.3.20)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
登録日 平成17年10月21日(2005.10.21)
発明者
  • 松岡 雅雄
  • 赤坂 甲治
出願人
  • 国立大学法人京都大学
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 導入遺伝子のサイレンシングを回避する方法
発明の概要

【課題】ウイルスベクターの発現を安定化させるための新たな方法を提供することが、本発明の課題である。
【解決手段】本発明により、導入遺伝子と共に、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを導入することを特徴とする、導入遺伝子のサイレンシングを回避する方法が提供された。更に本発明により、導入遺伝子のサイレンシングを回避するために、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを当該導入遺伝子と共に導入することを特徴とする、遺伝子の導入方法が提供された。更に本発明により、ベクターのサイレンシングを回避するために、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを当該ベクターに導入することを特徴とする、ベクターの作製方法が提供された。ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを有するウイルスベクターは、サイレンシングを回避することができるために、本発明は遺伝子治療において有用な新たな手段を与えるものである。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要
遺伝子治療は遺伝子を導入することによって病気を治すという治療方法であって、将来の医療技術として注目を集めている。遺伝子治療の技術によれば、例えばある遺伝子の異常によってその遺伝子の機能が損なわれるために疾患が生じている場合において、患者に正常な遺伝子を導入することにより、その疾患を治療することが可能であると考えられる。遺伝子治療の方法の一つとして、患者の細胞を採取して体外で目的の遺伝子を導入した後、再移植する手法(ex vivo法)がある。この方法を用いてアデノシン・デアミネース欠損症の遺伝子治療が行われて社会的にも大きな注目を集めた。遺伝子治療のもう一つの方法は遺伝子直接導入法(in vivo法)であり、例えばHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の殻蛋白質(env)とgag遺伝子の一部を組み込んだベクターをHIV感染者に投与することなどが試みられている。
【0003】
ところで、遺伝子治療の実用化において最も鍵となる技術は遺伝子の導入方法である。遺伝子を導入するための手段は、ウイルスベクターを用いたものと非ウイルスベクターを用いたものに大別することができる。ウイルスベクターを用いた方法はウイルスの感染性を利用したもので、導入効率という点で優れているために、実際の遺伝子治療ではウイルスベクターがより多く用いられている。なお、ウイルスベクターにはいくつかの種類があって必要に応じて使い分けられている。現在使用されているウイルスベクターの例として、具体的には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターやレンチウイルスベクターなどを挙げることができる。
【0004】
レトロウイルスのゲノムDNAは宿主染色体に組み込まれるために、組み込まれたDNAは安定して次世代へ伝えられる。よって、レトロウイルスベクターは遺伝子を運ぶ運搬体として信頼性が高く、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入系は疾患の永続的な治療法を与える可能性がある。なお、代表的なレトロウイルスベクターにはマウス白血病ウイルスのような単純レトロウイルスがある。また、アデノウイルスベクターは、DNAウイルスであるアデノウイルスに由来するベクターであり、これまでの遺伝子治療で2番目に汎用されている遺伝子導入系である。アデノウイルスベクターは、受容体を介したエンドサイトーシスによって細胞に侵入するために導入効率が高く、かなり大きな遺伝子を導入できるという利点も有する。また、HIVはレンチウイルスに含まれるが、レンチウイルスはマクロファージやリンパ球が感染する複雑なレトロウイルスである。レンチウイルスは上記のレトロウイルスとは異なって、神経細胞、筋肉細胞、幹細胞等の非分裂細胞に導入することができるという利点を有する。また、レンチウイルスは発現がレトロウイルスより安定しているという特徴を有し、遺伝子疾患の長期にわたる治療において使用するのに適していると考えられている。
【0005】
一方非ウイルスベクターによる方法は感染の危険がないために、安全性という点でウイルスベクターより優れている。ウイルスベクターにおいては、典型的にはウイルスの複製に必要とされるいくつかの遺伝子を欠損させて、その場所に治療のための遺伝子を挿入する。そのために、投与されるウイルスベクターは感染性を失っているが、内因性のレトロウイルスと組み換えを起こした結果として、ウイルスが増殖能を取り戻す可能性を否定することはできない。よって、ウイルスベクターを用いない導入方法が検討されており、そのような試みの例としては、リポソームを用いた方法、粒子照射による直接注入や受容体を介したエンドサイトーシスを用いた方法などを挙げることができるが、まだ実用の段階には至っていない。
【0006】
ところで、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療において導入された遺伝子の発現効率に関与する因子としては、発現効率が宿主内における導入された位置に関係するポジション効果や、後生的(epigenetic)変化によって発現効率が低下するといういわゆるサイレンシングなどが挙げられる。サイレンシングの現象のために、宿主体内に治療の目的で遺伝子を導入しても長期的には遺伝子の発現が抑制されてしまう。遺伝的な疾患については生涯にわたっての治療が必要であることを考えると、上記のサイレンシングは遺伝子治療の大きな障害となっていた。この遺伝子サイレンシングが起こる機構はまだ解明されていないが、DNAのメチル化やヒストン修飾のような現象が関係している可能性が示唆されている。
【0007】
ところで近年、異なった制御を受ける遺伝子の間の仕切りとして働くDNA配列である、クロマチンインスレーターの存在が明らかとなってきた。種々のインスレーターがショウジョウバエや、ニワトリ、マウス、ヒトなどの脊椎動物において見出されているが、これらのインスレーターには共通した2つの作用があると言われている。その一つはエンハンサーとプロモーター間に置かれた際に、エンハンサーの作用を阻害する活性である。なお、エンハンサーとはプロモーターの転写活性を強める働きを有する特異的な配列であるが、インスレーターはその様なエンハンサーの機能を遮断すると言われている。
【0008】
もう一つのインスレーターの働きはポジション効果を抑制する効果である。ポジション効果とは、その遺伝子が導入された染色体上の位置によって転写効率が変化するという現象であるが、そのポジション効果の原因となっている周囲の転写環境の影響をインスレーターは抑制する。上記の理由により一対のインスレーターによって挟まれた領域は宿主の染色体の環境から単離されることになり、それによって導入された遺伝子はポジション効果から防御され、その遺伝子が発現する際の独立性を保証するといわれている。よって、これまで述べてきたインスレーターの特性を考えると、ウイルスベクターにインスレーターを導入することにより、効率的かつ安定な遺伝子発現を達成できる可能性がある。
【0009】
これまでに最も検討がなされてきた脊椎動物のインスレーターは、ニワトリβグロビン遺伝子座の制御部位から得られたcHS4インスレーターである。モロニーマウス白血病ウイルス(moloney-murine leukemia virus : MoMLV)に由来するレトロウイルスベクターに導入されると、cHS4インスレーターは、導入した遺伝子をポジション効果から保護するという知見がRivellaらにより報告されている(非特許文献1)。しかし、遺伝子を送達するウイルスベクターとしての実用性を考えると、cHS4インスレーターが活性を有する細胞の型は限られるという欠点があった。よってウイルスベクターの有効性を高めるための新たな手段が、更に必要とされていた。
【0010】
【非特許文献1】
Rivella S et al.,“The cSH4 insulator increases the probability of retroviral expression at random chromosomal integration sites.” J.Virol. 2000; 4679-4687
産業上の利用分野
本発明は、導入遺伝子と共に、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを導入することを特徴とする、導入遺伝子のサイレンシングを回避する方法に関する。更に本発明は、導入遺伝子のサイレンシングを回避するために、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを当該導入遺伝子と共に導入することを特徴とする、遺伝子の導入方法に関する。更に本発明は、ベクターのサイレンシングを回避するために、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを当該ベクターに導入することを特徴とする、ベクターの作製方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 導入遺伝子と共に、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターをヒトの生体以外に導入することを特徴とする、導入遺伝子のサイレンシングを回避する方法。
【請求項2】 ウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行なうことを特徴とする、請求項1記載のサイレンシングを回避する方法。
【請求項3】 前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである、請求項2記載のサイレンシングを回避する方法。
【請求項4】 前記ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターが、アンチセンスの方向で導入されている、請求項1ないし請求項3のいずれか一つの請求項記載のサイレンシングを回避する方法。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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