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アルコールを触媒として用いた新規リビングラジカル重合法 実績あり 外国出願あり

国内特許コード P120007665
整理番号 2130
掲載日 2012年6月14日
出願番号 特願2010-511029
登録番号 特許第5697026号
出願日 平成21年2月6日(2009.2.6)
登録日 平成27年2月20日(2015.2.20)
国際出願番号 JP2009052115
国際公開番号 WO2009136510
国際出願日 平成21年2月6日(2009.2.6)
国際公開日 平成21年11月12日(2009.11.12)
優先権データ
  • 特願2008-123817 (2008.5.9) JP
発明者
  • 後藤 淳
  • 福田 猛
  • 辻井 敬亘
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 アルコールを触媒として用いた新規リビングラジカル重合法 実績あり 外国出願あり
発明の概要 安価で、活性が高く、環境に優しいリビングラジカル重合触媒を提供すること。リビングラジカル重合方法のための触媒であって、酸素からなる中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む触媒が提供される。また、アルコール化合物を触媒前駆体として使用することができる。この触媒の存在下で、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合反応させることにより、分子量分布の狭いポリマーを得ることができ、リビングラジカル重合のコストを劇的に低減することができる。本発明は、触媒の低毒性、低使用量、高溶解性、温和な反応条件、無着色・無臭(成形品の後処理が不要)などの利点を有し、従来のリビングラジカル重合方法に比べて格段に環境に優しく経済性に優れる。
従来技術、競合技術の概要



従来から、ビニルモノマーを重合してビニルポリマーを得る方法として、ラジカル重合法が周知であったが、ラジカル重合法は一般に、得られるビニルポリマーの分子量を制御することが困難であるという欠点があった。また、得られるビニルポリマーが、様々な分子量を有する化合物の混合物になってしまい、分子量分布の狭いビニルポリマーを得ることが困難であるという欠点があった。具体的には、反応を制御しても、重量分子平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として、2~3程度にまでしか減少させることができなかった。





このような欠点を解消する方法として、1990年頃から、リビングラジカル重合法が開発されている。すなわち、リビングラジカル重合法によれば、分子量を制御することが可能であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能である。具体的には、Mw/Mnが2以下のものを容易に得ることが可能であることから、ナノテクノロジーなどの最先端分野に用いられるポリマーを製造する方法として脚光を浴びている。





リビングラジカル重合法に現在用いられる触媒としては、遷移金属錯体系触媒が知られている。





遷移金属錯体系触媒としては、例えば、Cu、Ni、Re、Rh、Ruなどを中心金属とする化合物に配位子を配位させた錯体が使用されている。このような触媒は、例えば、以下の文献に記載されている。





特許文献1(特開2002-249505号公報)は、Cu、Ru、Fe、Niなどを中心金属とする錯体を触媒として使用することを開示する。





なお、特許文献1は、その請求項1において、重合開始剤として、有機ハロゲン化物を用いると記載している。この記載は、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒として作用することを意味するものではない。特許文献1の発明においては、遷移金属を中心金属とする金属錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用されている。特許文献1の発明においては、有機ハロゲン化物が、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。





特許文献2(特開平11-322822号公報)は、ヒドリドレニウム錯体を触媒として使用することを開示する。





なお、特許文献2は、その請求項1において、「ヒドリドレニウム錯体およびハロゲン化炭化水素の組み合わせからなるラジカルリビング重合用触媒」と記載している。この記載は、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒として作用することを意味するものではない。特許文献2の発明においては、ヒドリドレニウム錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用されている。特許文献2の発明においては、ハロゲン化炭化水素が、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。その触媒とドーマント種との組み合わせを特許文献2では触媒と記載しているものであって、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒となることを記載しているのではない。





非特許文献1(Journal of The American Chemical Society 119,674-680(1997))は、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジンを臭化銅に配位させた化合物を触媒として使用することを開示する。





なお、非特許文献1は、スチレンの重合の際に1-フェニルエチルブロミドを用いたことを記載している。すなわち、特許文献2の発明においては、臭化銅錯体が、リビングラジカル重合触媒として使用され、1-フェニルエチルブロミドが、本願明細書中で後述するドーマント種として使用されている。





しかしながら、このような遷移金属錯体触媒を用いる場合には、使用量として多量の遷移金属錯体触媒が必要であり、反応後に使用された大量の触媒を製品から完全に除去することが容易でないという欠点があった。また不要となった触媒を廃棄する際に環境上の問題が発生し得るという欠点があった。さらに、遷移金属には毒性の高いものが多く、製品中に残存する触媒の毒性が環境上問題となる場合があり、遷移金属を食品包装材、生体・医療材料などに使用することは困難であった。また、反応後に製品から除去された触媒の毒性が環境上問題となる場合もあった。さらに、導電性の遷移金属がポリマーに残存するとそのポリマーに導電性が付与されてしまって、レジストや有機ELなどの電子材料に使用することが困難であるという問題もあった。また、錯体を形成させないと反応液に溶解しないため、配位子となる化合物を用いなければならず、このために、コストが高くなり、かつ、使用される触媒の総重量がさらに多くなってしまうという問題もあった。さらに、配位子は、通常、高価であり、あるいは煩雑な合成を要するという問題もあった。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点があった(例えば、上記非特許文献1では、110℃において重合を行っている)。





なお、触媒を用いる必要がないリビングラジカル重合方法も公知である。例えば、ニトロキシル系、およびジチオエステル系の方法が知られている。しかし、これらの方法においては、特殊な保護基をポリマー成長鎖に導入する必要があり、この保護基が非常に高価であるという欠点がある。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点がある。さらに、生成するポリマーが好ましくない性能を有しやすいという欠点がある。すなわち、生成するポリマーがその高分子本来の色と異なる色に着色されたものになりやすく、また、生成するポリマーが臭気を有するものになりやすいという欠点がある。





他方、非特許文献2(Polymer Preprints 2005, 46(2), 245-246)および特許文献3(特開2007-92014号公報)は、Ge、Snなどを中心金属とする錯体を触媒として使用することを開示する。





非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒では、ポリマー1kgを重合する際に必要とされる触媒の費用がおよそ数千円になっていた。これに対して、ゲルマニウム触媒においては、約千円程度にまで費用が低減されるので、非特許文献2の発明は、触媒の費用を顕著に低減させるものであった。しかしながら、リビングラジカル重合を汎用樹脂製品等に応用するためには、さらなる低コストの触媒が求められていた。





一般に、遷移金属、あるいは遷移金属元素の化合物が、各種化学反応の触媒として好ましいことが知られている。例えば、J.D.LEE 「無機化学」(東京化学同人、1982年4月15日第1版発行)311頁は、「多くの遷移金属とその化合物は触媒作用をもつ。…ある場合には、遷移金属はいろいろな原子価をとり、不安定な中間体化合物をつくることがあり、また他の場合には、遷移金属は良好な反応面を提供しこれらが触媒作用として働くのである」と記載している。すなわち、不安定な様々な中間体化合物を形成できるなどの遷移金属に特有の性質が、触媒の機能には欠かせないことが当業者に広く理解されていたのである。





そして上述した非特許文献2に記載されたGe、Sn、Sbは遷移金属ではないが、周期表の第4周期および第5周期に位置する元素であって、大きい原子番号を有し、多数の電子および多数の電子軌道を有する。従って、Ge、Sn、Sbにおいては、これらの原子が多数の電子および多数の電子軌道を有することが、触媒として有利に作用していることが推測される。





このような従来技術の各種触媒に関する技術常識によれば、周期表の第2周期および第3周期に位置する典型元素は少数の電子および電子軌道しか有さず、触媒化合物に用いることは不利であり、これらの典型元素を用いた化合物に触媒作用は期待できないと考えられていた。





また、非特許文献3にはリン化合物を用いた触媒が開示されているが、リンと異なる電子配置を有し、リンと顕著に異なる性質を有する酸素を中心元素として用いることについての記載はない。

【特許文献1】

開2002-249505号公報

【特許文献2】

開平11-322822号公報

【特許文献3】

開2007-92014号公報

【非特許文献1】

ournal of The American Chemical Society 119,674-680(1997)

【非特許文献2】

olymer Preprints 2005, 46(2), 245-246, 「Germanium- and Tin-Catalyzed Living Radical Polymerizations of Styrene」、American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry

【非特許文献3】

olymer Preprints 2007, 56(2), 2452「ゲルマニウムおよびリン化合物を用いた新しいリビングラジカル重合」高分子学会、第56回高分子討論会

産業上の利用分野


本発明は、リビングラジカル重合に用いられる高活性触媒およびそれを用いた重合方法に関する。より具体的には、本発明は、酸素を中心元素として有する触媒をリビングラジカル重合に用いる。

特許請求の範囲 【請求項1】
リビングラジカル重合を行う方法であって、
ラジカル開始剤から生じたラジカルと、触媒前駆体化合物とを反応させて活性化ラジカルを生じさせる工程、および
該活性化ラジカルを用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーを重合してポリマーを得る工程を含み、
ここで、該触媒前駆体化合物が、炭素に結合した少なくとも1つの水酸基を含み、
該ラジカル開始剤から生じたラジカルは、該触媒前駆体化合物中の該水酸基から水素原子を引き抜いて、該活性化ラジカルを生じさせ、そして
該活性化ラジカルは、該モノマーの重合反応のリビングラジカル触媒として作用し、
ここで、該リビングラジカル重合反応において炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が使用され、該有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用され、
ここで、該触媒前駆体化合物が以下の式(I)で示されるアルコールまたはフェノールであり、
(OH) (I)
ここで、Rは、置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルケニル基もしくはアルキニル基であるか、または置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
nは正の整数であり、
mは正の整数であり、
ここで、該置換基が、アルキル、アルケニル、アルキルカルボキシル、ハロアルキル、アルキルカルボニル、アミノ基、シアノ基、アルコキシ、アリールまたはアルキル置換アリールであり、
中の炭素鎖は、鎖状構造もしくは環状構造を有し、
が環状構造を有する場合、該環状構造は、アリール環もしくはヘテロアリール環に1つ以上の環が縮合した縮合環状構造であってもよく、ここで、該アリール環もしくはヘテロアリール環に縮合する1つ以上の環状構造は、ヘテロ原子として酸素原子または窒素原子を含むヘテロ環であっても良い、
方法。

【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記水酸基が結合する原子が隣接する原子との間に二重結合または三重結合を有し、該水酸基の水素が引き抜かれた後に生じる活性化ラジカルが該二重結合または三重結合との間の共鳴により安定化される、方法。

【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の方法であって、
ここで、前記式(I)において、
nは1~2の整数であり、
mは1~5の整数であり、
ここで、前記Rの置換基が、アルキル、アルケニル、アルキルカルボニル、シアノ基、アルコキシ、アリールまたはアルキル置換アリールであり、
が環状構造を有する場合、該環状構造は、アリール環もしくはヘテロアリール環に1つの環が縮合した縮合環状構造であってもよく、ここで、該アリール環もしくはヘテロアリール環に縮合する1つの環状構造は、ヘテロ原子として酸素原子または窒素原子を含むヘテロ環である、方法。

【請求項4】
リビングラジカル重合を行う方法であって、
ラジカル開始剤から生じたラジカルと、触媒前駆体化合物とを反応させて活性化ラジカルを生じさせる工程、および
該活性化ラジカルを用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーを重合してポリマーを得る工程を含み、
ここで、該リビングラジカル重合反応において炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が使用され、該有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用され、
ここで、該触媒前駆体化合物が、炭素に結合した少なくとも1つの水酸基を含み、
該ラジカル開始剤から生じたラジカルは、該触媒前駆体化合物中の該水酸基から水素原子を引き抜いて、該活性化ラジカルを生じさせ、そして
該活性化ラジカルは、該モノマーの重合反応のリビングラジカル触媒として作用し、
ここで、該触媒前駆体化合物が、以下:
2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール、2,6-ジメチル-4-シアノフェノール、4-ニトロフェノール、フェノール、ビタミンE、ビタミンC、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、4-t-ブチルカテコール、2-メトキシヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、尿酸、およびモリン水和物
からなる群から選択される、
方法。

【請求項5】
リビングラジカル重合法のための触媒であって、酸素からなる少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子と、該中心元素に結合した炭素原子とを含む化合物からなり、
ここで、該化合物が以下の一般式(Ia)の化合物からなり:
(OX (Ia)
ここで、Rはアルキル、アルキルカルボキシル、ハロアルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
nは正の整数であり、
mは正の整数であり、
はハロゲンである、
触媒。

【請求項6】
請求項5に記載の触媒であって、前記中心元素基が結合する原子が、隣接する原子との間に二重結合または三重結合を有し、該中心元素に結合したハロゲン原子が脱離した後に生じる活性化ラジカルが該二重結合または三重結合との間の共鳴により安定化された構造を有する、触媒。

【請求項7】
請求項5または6のいずれか1項に記載の触媒であって、
ここで、前記一般式(Ia)において、Rはアルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
nは1または2の整数であり、
mは1~5の整数であり、
はハロゲンである、
触媒。

【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の触媒であって、前記ハロゲンがヨウ素または臭素である、触媒。

【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の触媒であって、前記ハロゲンがヨウ素である、触媒。

【請求項10】
請求項5~9のいずれか1項に記載の触媒であって、
前記化合物がハロゲン化酸素、アルコキシハライドあるいはカルボキシルハライド、または、フェノール系化合物中のフェノール性水酸基のHをハロゲンに置換した化合物である、
触媒。

【請求項11】
リビングラジカル重合を行う工程を包含する重合方法であって、該リビングラジカル重合工程が、請求項5~10のいずれか1項に記載の触媒の存在下で行われる、方法。

【請求項12】
請求項1~4および11のうちのいずれか1項に記載の方法であって、触媒濃度が、反応溶液のうちの0.75重量%以下である、方法。

【請求項13】
請求項1~4、11および12のうちのいずれか1項に記載の方法であって、反応温度が、20℃~100℃である、方法。

【請求項14】
請求項1~13のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記リビングラジカル重合反応において炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が使用され、該有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用される、方法。

【請求項15】
請求項1~4および14のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機ハロゲン化物中のハロゲンが結合している炭素に、2つまたは3つの炭素が結合している、方法。

【請求項16】
請求項1~4、14および15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が、以下の一般式(II)を有する化合物であり:
CR (II)
ここで、RおよびRは、独立して、ハロゲン、水素またはアルキルであり、Rはハロゲン、水素、アルキル、アリールまたはシアノであり、Xはハロゲンである、
方法。

【請求項17】
請求項1~4、14および15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が、シリコン基板に固定化された有機ハロゲン化物である、方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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