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細胞膜透過型ホウ素ペプチド

国内特許コード P120007746
整理番号 S2012-0052-N0
掲載日 2012年7月2日
出願番号 特願2011-230059
公開番号 特開2013-087098
登録番号 特許第6009154号
出願日 平成23年10月19日(2011.10.19)
公開日 平成25年5月13日(2013.5.13)
登録日 平成28年9月23日(2016.9.23)
発明者
  • 道上 宏之
  • 松井 秀樹
  • 北松 瑞生
  • 王 飛霏
  • 富澤 一仁
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 細胞膜透過型ホウ素ペプチド
発明の概要 【課題】細胞膜を透過し細胞内、とりわけ核に局在する細胞膜透過型ホウ素製剤を提供すること。
【解決手段】細胞膜透過ペプチドおよびホウ素化合物を含む細胞膜透過型ホウ素ペプチド。細胞膜透過ペプチドは、たとえばTATまたはアルギニン9~13残基が連続したアミノ酸配列であり、ホウ素化合物は、たとえばメルカプトウンデカハイドロドデカボレートである。細胞膜透過ペプチドおよびホウ素化合物を含む細胞膜透過型ホウ素ペプチドは、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤などと組み合わせてホウ素製剤とすることができる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)とは、ホウ素化合物自体には、毒性や腫瘍抑制効果は無いが、ホウ素を含んだがん細胞に対して中性子を照射すると、細胞内でアルファ崩壊と呼ばれる核分裂反応がおこり、腫瘍を殺傷するというものである。この際の腫瘍殺傷効果は、ホウ素を含んでいる細胞レベルで起こるものであり、正常細胞にホウ素が入っていなければ、がん細胞のみを細胞レベルで殺すことができる次世代のがん治療法である。現在、ホウ素製剤を使用した粒子線癌治療は、臨床研究段階であり、2種類のホウ素製剤が検討されている。それは、1個のホウ素原子に対してアミノ酸のフェニルアラニンが結合したBPA(ホウ素フェニルアラニン)と12個のホウ素からなる分子であるBSH(メルカプトウンデカハイドロドデカボレート)の二剤であり、具体的にはいずれも難治性疾患である悪性脳腫瘍、頭頚部がん、悪性黒色腫などの疾患を対象に行われている。



今後、BNCTががん治療として確立されれば、他のがんに対しても行われる可能性は非常に高い。その中において、中性子源とならびホウ素化合物は治療効果を決める上で最も大事な要素である。つまり、ホウ素が細胞に取り込まれていない場合、中性子を照射しても影響は無いため、腫瘍に対して、特に腫瘍細胞の内部にホウ素を導入することは、治療の成果を上げるために最も大事なことである。



また、BNCTでは、理論上、ホウ素化合物を選択的にがん細胞内部へ導入することができれば、周囲の正常組織に対しては影響を与えることなく、がん細胞のみを選択的に殺傷することができる。この際、細胞の外延や細胞膜近くにホウ素化合物が留まり、細胞内部へと充分に局在化できなければ、周りの正常組織・細胞にも影響を与えることになる。このため、ホウ素化合物を目的とする細胞内に局在させることも望まれている。



ここで、現在臨床研究で用いられている、BSHによるBNCTは、がん組織や悪性腫瘍組織などの腫瘍血管は脆弱な構造であるため、その部分においてホウ素製剤が正常部分と比較して多く漏出することを利用し、その漏出部分に対して中性子照射を行うことによりホウ素中性子補足反応を起こし癌や腫瘍を殺傷するものである。しかしながら、BSHには細胞膜透過能がないため、細胞と細胞の間の細胞組織間に局在してしまい、がん細胞などに対しての腫瘍殺傷効果が充分に高くないという問題がある。



また、前述のBPAは、メラニンの生成のためにフェニルアラニンやチロシンが細胞中に強く取り込まれることを利用した黒色皮膚がん治療のための薬剤であり、水溶性の向上等の改良がなされている(特許文献1)。BPAは、分裂する細胞であれば、正常細胞でもがん細胞でも細胞内へと取り込まれるが、腫瘍細胞の方がアミノ酸の取り込みが盛んなため、正常細胞に比較して腫瘍細胞へたくさん取り込まれるという性質を利用している。この方法では、正常細胞にもホウ素製剤が取り込まれてしまうこと、およびがん細胞でも分裂していない細胞には取り込まれないことなどの問題がある。



標的細胞にターゲッティングする試みとしては、ホウ素化合物とホルモン類似体(リガンド)との複合体を用い、該ホルモンに対する細胞内受容体を有する細胞に特異的にターゲッティングする方法(特許文献2)や、腫瘍細胞特異的抗原に結合する抗体を含む結合対を投与し、任意にはその非腫瘍部分における結合対の相補的な構成物とホウ素原子を含む接合体を投与することからなる、腫瘍細胞にホウ素原子をターゲッティングする方法(特許文献3)が試みられている。



さらに、腫瘍細胞中のホウ素の濃度を正常な組織中の濃度に対して高めることを目的として、多孔性のシリコンにホウ素を組み込んだホウ素含有治療用組成物も開示されている(特許文献4)。



薬剤を特異的に体内に送達できるビヒクルとして、ヒアルロン酸および/またはポリエチレングリコールが結合したカチオン化ゼラチンとセンダイウイルス由来のベクターなどのウイルスエンベロープベクターを組み合わせたビヒクルを用いてホウ素含有化合物を封入して使用する方法も報告されている(特許文献5)。この方法では、実際にはほとんど細胞内へ導入されておらず、実用的なものではない。



このように、現在のところ細胞内においても細胞の中心部に存在する核に局在させることができるようなホウ素製剤は一切報告されていない。



一方、細胞膜を通過するシグナルペプチドとして、これまでHIV-1 Tatなどのアルギニンを多く含む塩基性ペプチドが知られている。また、アルギニンが複数個連続したアミノ酸配列を有するペプチドが生体膜透過シグナル配列として機能し、細胞膜透過性を有することが報告されている(特許文献6)。



しかしながら、これらのペプチドをホウ素化合物の細胞内への送達に使用するという試みはこれまで一切なされていない。

産業上の利用分野


本発明は、がん治療に用いるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における、ホウ素含有化合物に関する。より具体的には、細胞膜透過シグナルペプチドおよびホウ素化合物を含む細胞膜透過型ホウ素ペプチドおよびそれを含むホウ素製剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
細胞膜透過ペプチドおよびホウ素化合物を含む細胞膜透過型ホウ素ペプチドであって、細胞膜透過ペプチドが、アルギニン9~13残基が連続したアミノ酸配列からなるペプチドまたはTAT(配列番号1)であり、ホウ素化合物が、ホウ素フェニルアラニン、またはチオール基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アジド基、ハロゲン基およびリン酸基からなる群より選択されるアミノ酸と結合可能な官能基を有するホウ素クラスターである細胞膜透過型ホウ素ペプチド。

【請求項2】
前記ホウ素化合物が、メルカプトウンデカハイドロドデカボレートである請求項1記載の細胞膜透過型ホウ素ペプチド。

【請求項3】
細胞膜透過ペプチド1分子に対してメルカプトウンデカハイドロドデカボレート1~8分子を含む請求項2記載の細胞膜透過型ホウ素ペプチド。

【請求項4】
核内に集積されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞膜透過型ホウ素ペプチド。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞膜透過型ホウ素ペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含むホウ素製剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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