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油脂分解性微生物及びそれを用いた油脂含有廃水の処理方法

国内特許コード P120007769
整理番号 WASEDA-692
掲載日 2012年7月5日
出願番号 特願2007-061109
公開番号 特開2008-220225
登録番号 特許第4566207号
出願日 平成19年3月9日(2007.3.9)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発明者
  • 木野 邦器
  • 由井 浩
  • 町田 憲繁
  • 西沢 頼母
出願人
  • 学校法人早稲田大学
  • 株式会社 アオバ・オーガニクス
発明の名称 油脂分解性微生物及びそれを用いた油脂含有廃水の処理方法
発明の概要

【課題】ラード分解能を有するし、かつ低温環境下においても優れた油脂分解能を有する新規微生物及びそれら微生物が産生する酵素の提供。
【解決手段】油脂分解性酵素分泌能及びラード分解能を有する、16SリボソームRNA遺伝子が特定の塩基配列を有する油脂分解性シュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.) WU-ML1株(受領番号;NITE AP-324)及び該WU-ML1株と同等の油脂分解性酵素分泌能及びラード分解能を有するその変異体。該WU-ML1株又はその変異体が細胞外に分泌する油脂分解性酵素。WU-ML1株若しくはその変異体及び/又は該WU-ML1株が産生する油脂分解性酵素を用いて油脂含有廃水を処理することを特徴とする油脂含有廃水の処理方法。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


廃油と環境問題;
レストラン、食堂、ホテル、給食センター、病院などの業務用の厨房を有する事業所等では大量の油脂や油などが使用され、それらの大量の油脂や油などが廃油として廃棄されている。これら廃油は、通常では分解されにくく、環境汚染の原因となるばかりでなく、排水管等に付着蓄積した油脂は悪臭やパイプ詰まりの原因となる。
油脂や油などの廃油が混入した廃水は、古くは海洋投棄や焼却などの方法で処理されてきた。しかし、廃水の海洋投棄は、公害や河川や海洋の汚染の原因となり、社会問題化してきて、現在では、油脂や油などの廃油を含む廃水を海洋投棄することは法律で禁止されている。一方、廃油の焼却処理も、大気汚染の原因となるだけでなく、地球温暖化の大きな原因の1つである炭酸ガスの排出の観点からも問題がある。



廃水浄化とグリストラップ;
そのような背景のもとに、昭和51年の建設省告示1597号「廃水トラップ・阻集器設置基準」により、飲食店、学校給食、病院、社員食堂、老人ホーム、食品加工工場等は、油脂分などの廃油を含む廃水の排出にあたっては油脂の阻集器であるグリストラップの設置が義務づけらた。
グリストラップは、厨房から廃水や残渣を一時溜めておく装置であり、いわば「油」や「ゴミ」を集める阻集器である。集まったゴミと油脂分及び沈殿汚物(スカム)は、分離して、金網、ひしゃく等で除去する構造となっており、毎日1回のバスケット清掃、1ヶ月に1回のグリス、残渣等の除去、数ヶ月に1回のトラップ内部の清掃が必要である。
厨房から廃棄された油脂を含む廃水はグリストラップに流れ込み、ここで油脂が分離、蓄積され、さらに浄化槽、二次槽を経て、定められた基準以下の水質(下道に流せる水の基準値)に処理されてから、浄化槽を経て下水へ放流される。
グリストラップは、廃水が流れ込む入り口とグリストラップ内の廃水を排水管や浄化槽などに排出する廃水口を有し、槽内が3槽ないし4槽に区切られていて、廃水の滞留時間を長くすることによって、廃水中の油脂などの廃油がグリストラップ内に捕捉されるような構造を有する貯水槽である。第1層には金網カゴが設けられ、ここで大きなゴミを分離する。第2層は、油脂分と汚物の分離を担い、ここで油脂分は上部の水面付近に浮上し、小さなゴミや汚物スカムは水中に浮遊するか低部に沈殿する。第3層の下方に配水管が設けられ、ここから油脂分・沈殿物を含まないある程度浄化された水が下水道へと排出される。グリストラップ内に浮遊した油脂分及び沈殿物の処理は、ポンプによって槽内の油脂分・スカムを吸引し、分離機で油と水に分離した後産業廃棄物として廃棄または焼却される。
このようにグリストラップそれ自体には、油脂などの廃油を廃水から分離収集するという物理的な機能は保持しているが、生物学的あるいは化学的に油脂などの廃油などを分解するという機能は有していない。
しかしながら、この装置では、廃水中に処理能力以上の油脂が含まれていた場合、処理能力が追いつかず、排水管内にスカム状態に付着・腐敗してして、悪臭、害虫発生の原因等となるばかりか、排管詰まりを生じて装置そのものの機能が停止して、油分が河川などにたれ流され、更に大きな公害問題を引き起す原因となる。
そこで、グリストラップの性能を向上すべく、様々な工夫が提案され、実用化されている。例えば、以下のとおりである。
(1)フィルターなど特殊な備品や器具を利用する方式
(2)オゾンを用いる方法
(3)酵素を利用して油脂分を分解する方式
(4)好気性の油脂分解性微生物を利用して油脂分を分解する方式
(5)好気性微生物の成長を促進するためのエアレーションポンプを併用する方法
なお、エアレーションは、油脂の分解の過程でアンモニア、硫化水素等悪臭を放出する嫌気性微生物の増殖を抑制し、酸素を必要とする好気性菌である油脂分解性微生物を増殖させるための処理である。



微生物の利用;
生物学的廃水処理方法において使用される微生物としては、例えば、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、バチルス属(Bacillus)、バークホルデイア属(Burkholderia)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)などに属する多くの菌株などが報告されている。
このうちシュードモナス(Pseudomonas)属細菌は、環境に広範囲に生息し、種々の有機物分解に関与している細菌として知られているが、中には油脂分解酵素を生産する菌種もある。油脂分解酵素生産菌株としては、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas
pseudoalkaligenes)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas
alkaligenes)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas
fragi)等が挙げられる。



より具体的には、油脂分解技術に関連するシュードモナス属(Pseudomonas)細菌について、以下のような報告がなされている。
(a)高い油脂分解能力を有するシュードモナス属に属する菌体であって、15℃~55℃の範囲で生育でき、動物性油脂、植物性油脂、および遊離脂肪酸に対する分解能力を有することを特徴とする高機能油脂分解菌(特許文献1参照)。
(b)細胞外に分泌されない膜結合型の油脂分解酵素を産生し、16SリボソームRNA遺伝子が配列表の配列番号1に記載の部分塩基配列を有するシュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) AQ-T5株(FERMP-17554)又はその突然変異体(特許文献2参照)。
(c)鉱物油を分解することができるシュード
モナス(Pseudomonas)属菌(特許文献3参照)。
(d)4~40℃の範囲の温度で生育することができるシュードモナス
デニトリフィカンス(Pseudomonasdenitrificans)株であって、油脂分解能力、及び脱窒能力を有することを特徴とする、高機能脱窒油脂分解菌(特許文献4参照)。
(e)高い油脂分解能力を有するシュードモナス属に属する菌体であって、15℃~55℃の範囲で生育でき、動物性油脂、植物性油脂、および遊離脂肪酸に対する分解能力を有することを特徴とする高機能油脂分解菌(特許文献5参照)
(f)10~37℃において油脂を分解
することができるシュードモナス属に属する微生物(特許文献6参照)。
(g)油脂含有廃水の処理方法において、処理槽にシュードモナスセパシア
LM2-1(Pseudomonas cepacia LM2-1)株もしくは油脂分解能を有するその突然変異体、又はそれらの培養物を添加することを特徴とする油脂含有廃水の処理方(特許文献7参照)。
(h)浮上濾材に包括固定する微生物として、界面活性剤に対して分解性能を示すシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)NO.AES053株(微工研菌寄第13230号)を用いた方法(特許文献8参照)。
(i)トルエンを分解する能力を有する新規微生物シュードモナス・プチダSH-2992株(FERM P-13564)(特許文献9参照)。
(j)シュウドモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)SK0401株(微工研菌寄第13231号)及びアシネドバクター・エスピー(Acinetobactor sp.)SK0402A株(微工研菌寄第13232号)として、それぞれ寄託されている食用油脂に対して分解性能を持つ微生物(特許文献10参照)。
(k)シュードモナス属に属し、高いリパーゼ生産能力を有するシュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) S10-071 株(特許文献11参照)。
これら油脂分解性微生物は、廃油中に、粉末として散布したり、液状として点滴したりして使用される。
しかし、これらの微生物を用いた文献記載の技術は、微生物を単独で使用して廃水中の油脂分を分解するものであるが、その分解能は必ずしも使用者の要求を十分満たすものとは言えず、とりわけ冬季あるいは寒冷地における分解能、ラードに対する分解能の点では未だ不十分であり、さらなる改良の余地があるものであった。
なお、上記(b)に開示されるAQ-T5株又はその突然変異体は、膜結合型の油脂分解酵素を産生する点で、本発明の微生物とは異なるものである。



油脂分解性酵素(リパーゼ)の利用;
上記のとおり、物理化学的方法の他に油脂含有廃水を微生物が産生する酵素によって処理する方法も知られている。この他にも、油脂含有廃水に油脂分解性酵素(リパーゼ)を添加して廃水中の油脂を加水分解することも知られている。例えば、シュードモナス
セパシア(Pseudomonas cepacia)S16-019B株(微工研菌寄第12574 号)により生産されるリパーゼの使用が報告されている(特開平5-123170)。
かかる油脂分解酵素としてのリパーゼとしては、動物由来または植物由来のものはもとより、微生物由来のリパーゼも知られている。このうちで、微生物由来リパーゼとしては、例えば、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium) 属、カンジダ
(Candida) 属等の起源のものが挙げられる(特許文献12参照)。
しかし、これらリパーゼについても、上記微生物の場合と同様、その分解能は必ずしも使用者の要求を十分満たすものとは言えず、とりわけ冬季あるいは寒冷地における分解能、ラードに対する分解能の点では未だ不十分であり、さらなる改良の余地があるものであった。



依然として残る問題点;
レストラン、食堂、ホテル、給食センター、病院などの業務用の厨房を有する多くの事業所などから排出される廃水には、それぞれに特徴があり、これらの廃水を効率よく処理するためには、かかる廃水に対応した微生物処理が必要である。また、微生物製剤に関しては、熱湯の廃水や殺菌力の強い洗剤によって微生物がが死滅したり増殖力が低下したりするために、これに対する対策も必要である。
また、通常の温度で、通常の油脂分解能を有する微生物や酵素は多く知られているが、冬季あるいは寒冷地での低温条件下でも十分な分解能を有し、固化しやすいがゆえに分解が困難なラードに対しても満足のいく分解能を有する微生物や酵素は知られていなかった。
ちなみに公知の微生物製剤314も通常の温度で通常の動植物オイルに対しては満足し得る油脂分解能を有しているが、冬季若しくは寒冷地等の低温条件下における分解能、及びラードに対する分解能の点では必ずしも満足し得るものではない。ラードの微生物による分解の困難性、及び低温化での油脂の分解の困難性については、下記のとおりである。



ラード分解の困難さ;
ラードは様々な料理に用いられ、廃水水中に含まれるラードの量も決して無視できるものではない。しかし、ラードは、分子量が大きいいために微生物によって分解され難いだけでなく、融点が低いためにグリストラップ内で固体として存在し、水中に溶解乃至懸濁しないため、微生物による分解を一層困難なものとしている。油脂分解性微生物やそれら微生物が産生するリパーゼについては上記のとおり様々な報告がなされているが、ラードを満足に分解し得る微生物やリパーゼに関する報告は殆どなされていない。
例えば、石川県工業試験場の「平14年度研究報告Vol.52」では、以下のように、微生物によるラード分解の困難性について次のように述べている(非特許文献1参照)。
「本研究では,生物的油処理装置(バイオリアクター)を2種類考案し,市販油3種類と廃油の微生物分解を試みた。その結果,微生物は曝気した装置内において27℃、72時間でオリーブオイル3000ppmを92%分解した。エンジンオイル3000ppmでは、同一条件で97%分解した。また、めっき工場から排出された廃油は約65%分解された。しかし、ラードはほとんど分解されなかった。」



低温環境における油脂分解活性の問題;
上記グリストラップは、冬季あるいは寒冷地においても十分な効果を発揮しなければならないが、公知の多くの微生物は、冬季あるいは寒冷地において活性が低下し、十分な分解性能を維持できなかった。とりわけ、ラードは、このような低温条件下では固化して、分解が困難であった。
このように、ラード分解能及び低温環境下での分解能については、さらなる改良の余地があるものであった。




【特許文献1】特開2003-116526

【特許文献2】特開2001-178451

【特許文献3】特開2005-313159

【特許文献4】特開2005-117973

【特許文献5】特開2003-116526

【特許文献6】特開2000-270845

【特許文献7】特開平11-47789

【特許文献8】特開平7-222988

【特許文献9】特開平6-277045

【特許文献10】特開平6-153922

【特許文献11】特開平5-304949

【特許文献12】特開2004-113238号公報

【非特許文献1】石川県工業試験場「平14年度研究報告Vol.52」

産業上の利用分野


本発明は、厨房等から排水される廃水中に含まれる動植物性油脂を効率よく分解することが可能な新規な油脂分解性微生物及び該微生物が産生する油脂分解性酵素、並びに該油脂分解性微生物又は該微生物が産生する油脂分解性酵素を用いた油脂含有廃水の処理方法に関する。
より具体的には、特にラード等の動物性油脂に対して優れた分解活性を有し、低温においても優れた分解活性を有する新規シュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.)WU-LM1、該微生物が細胞外に分泌産生する油脂分解性酵素、並びに該油脂分解性微生物又は該微生物が産生する油脂分解性酵素を用いた油脂含有廃水の処理方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】油脂分解性酵素分泌能及びラード分解能を有する、16SリボソームRNA遺伝子が配列表の配列番号1に記載の部分塩基配列を有する油脂分解性シュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) WU-LM1株(受託番号;NITE P-324)又は該WU-LM1株と同等の油脂分解性酵素分泌能及びラード分解能を有するその変異体。
【請求項2】
請求項1に記載のシュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) WU-LM1株若しくはその変異体及び/又は該シュードモナス
エスピー(Pseudomonas sp.) WU-LM1株若しくはその変異体を培養した油脂分解性酵素を含む上清又はその濃縮物を用いて油脂含有廃水を処理することを特徴とする油脂含有廃水の処理方法。

【請求項3】
油脂含有廃水がラードを含む廃水である請求項2に記載の油脂含有廃水の処理方法。

【請求項4】
更に界面活性剤を併用することを特徴とする請求項2又は3に記載の油脂含有廃水の処理方法。

【請求項5】
シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.) WU-LM1株又はその変異体を10乃至20,000倍に希釈して使用することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の油脂含有廃水の処理方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 処理操作
  • 衛生設備
  • 廃水処理
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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