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沈香の生産方法、及び沈香生成促進剤 コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P120007789
整理番号 H21-055
掲載日 2012年7月17日
出願番号 特願2011-164427
公開番号 特開2013-028677
出願日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成25年2月7日(2013.2.7)
発明者
  • 山本 福壽
  • 板井 章浩
出願人
  • 国立大学法人鳥取大学
発明の名称 沈香の生産方法、及び沈香生成促進剤 コモンズ 新技術説明会
発明の概要

【課題】沈香を生成する能力を有する樹木において、沈香成分の生成蓄積を人為的に促進し、効率的に沈香を製造できる方法を提供する。
【解決手段】植物の傷害応答に関わるシグナル成分に注目し、その特定の組合せにより、沈香成分の生成蓄積を促進する。沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む沈香の生産方法であって、当該沈香生成促進剤が、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む、沈香の生産方法。
【選択図】図3

従来技術、競合技術の概要


沈香とは、香木の一種であり、その小片を加熱すると優美な芳香が漂うことから、古来、薫香料として珍重されてきた。日本においては、香りを聞く香道には欠かせない香木であり、また、例えば高級線香等の原料としても用いられている。また、沈香は、特にアラブ諸国においては、日常生活に、あるいは社交上、不可欠の香料であり、高い市場性を有する。さらに、沈香は、制吐作用、鎮静作用、及び消化作用等を有することが知られており、生薬としても用いられる。



沈香の香気成分は、主にセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類からなることが知られている。セスキテルペン類は揮発性が高く、そのままでも芳香を示すが、クロモン誘導体類は、加熱によって分解することで初めて芳香を示す。同じ沈香と呼ばれる香木であっても、含有するセスキテルペン類やクロモン誘導体類の種類や比率の違いにより、沈香全体としての芳香は異なる。例えば、沈香の中でも高級なものは伽羅として知られているが、伽羅は一般的な沈香よりもセスキテルペン類を多く含み、焚かなくとも芳香を示す。また、香木には、他にも白檀等が知られているが、白檀が油分を多く含有するのに対し、沈香は樹脂成分を多く含有する。



沈香は、ジンチョウゲ科アクイラリア(Aquilaria)属、ギリノプス(Gyrinops)属、及びラミン(Gonystylus)属樹木から採れる。例えば、アクイラリア属樹木は、インドおよび中国からマレー諸島に約15種が分布するとされているが、そのうち、アクイラリア・アガローチャ(A.agallocha)、アクイラリア・クラスナ(A.crassna)、アクイラリア・マラセニス(A.malaccennis)、アクイラリア・シネンシス(A.sinensis)、アクイラリア・ミクロカルパ(A.microcarpa)、アクイラリア・モシュコフスキー(A.moszkowskii)等から沈香が採れるとされ、中でもアクイラリア・アガローチャが有名である。



アクイラリア・アガローチャ等は、樹幹が風雨、病気、害虫等により傷害を受けると、それに応答し、傷害部位において樹脂成分、すなわち沈香の香気成分であるセスキテルペン類やフェニルエチルクロモン誘導体類等が生成蓄積される。このように樹脂成分の生成蓄積が起こった樹木が、倒れ、土中で朽ちた際に、当該樹脂の蓄積した部分は分解されずに残り、それが天然の沈香となる。すなわち、沈香は、様々は外的要因によって生成するものであり、天然の沈香は極めて貴重なものとなっている。また、天然の沈香の生産には、微生物の感染が関わっているとも言われ、植物の病原菌応答シグナルであるサリチル酸の生理作用が沈香成分の生成蓄積に影響を与えている可能性がある。なお、樹脂生産に関与する微生物としては、いわゆるコウジカビであるアスペルギルス(Aspergillus)属真菌類が提唱されているが、その一方で、必ずしも特定の細菌が必要であるというわけではない、との報告もある。



近年、森林伐採等による熱帯雨林の減少により、沈香の採取量が減少している。そのため、アクイラリア属、ギリノプス属、ラミン属樹木は、ワシントン条約(CITES)の附属書IIにおいて絶滅のおそれのある種として指定されており、国際的取引は厳しく制限されている。よって、沈香木の栽培、及びそれらを用いた沈香の人為的生産が強く望まれている。



例えばタイでは、アクイラリア属樹木等の沈香を生産する樹木が、ゴムやヤシと共にプランテーション栽培されている。タイでは、伝統的に、栽培したアクイラリア属等の樹木を釘やドリルで人為的に傷害し、沈香成分の生成蓄積を誘導する試みがなされているが、わずかに沈香成分の生産が認められるだけで、まとまった沈香を生産するには至っていない。このように生産された沈香成分は、乾留により抽出され芳香成分として利用されている。



また、沈香の製造法としては、アクイラリア属樹木において、木部に人為的な傷を形成し、さらに当該傷を空気にさらすことによって沈香成分の生成蓄積を誘導する沈香の製造法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、アクイラリア属樹木において、表面傷は沈香成分の生成蓄積を誘導しないが、深く貫通する傷は、その傷が開かれたままであれば沈香成分の生成蓄積が誘導されることを開示している(特許文献1、段落0050)。また、特許文献1によれば、傷害部に隣接する柔組織をさらに傷害するような化合物、例えば塩化ナトリウム、ギ酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化第一鉄等が沈香成分の生成蓄積の程度を高める可能性が示されている。その一方で、特許文献1には、サリチル酸は、沈香成分の生成蓄積を誘導することはない、と開示されている(特許文献1、段落0056)。



また、アクイラリア属樹木のカルスにサリチル酸を添加することで、あるいは懸濁細胞にジャスモン酸メチルを添加することで、沈香の香気成分のうち、セスキテルペン類の生成が誘導されることが知られている(非特許文献1)。



一方、本発明者らは、ヒノキ科樹木であるヒノキアスナロ(マアテ)およびヒノキにおいて、植物ホルモンとして知られるエチレンを生成するエスレル(登録商標)とジャスモン酸メチルあるいはプロヒドロジャスモンを混合して処理することで、傷害樹脂道の形成が誘導されることを見出している(非特許文献2)。また、マアテにおいては、さらにサリチル酸ナトリウムを混合することで傷害樹脂道の形成が促進されるのに対し、ヒノキにおいては、サリチル酸ナトリウムの混合による傷害樹脂道の形成促進は認められないことが報告されている(非特許文献2)。

産業上の利用分野


本発明は、沈香の生産方法、及び当該方法に用いられる沈香生成促進剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
沈香を生成する能力を有する樹木の幹部又は枝部に形成された傷害部に、沈香生成促進剤を施用する工程を含む沈香の生産方法であって、
前記沈香生成促進剤が、エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む、方法。

【請求項2】
前記エチレン関連化合物が、2-クロロエチルホスホン酸、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、前記ジャスモン酸関連化合物が、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記沈香生成促進剤が、さらに、サリチル酸関連化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
さらに、前記傷害部を形成する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
エチレン関連化合物及びジャスモン酸関連化合物を含む沈香生成促進剤。

【請求項6】
前記エチレン関連化合物が、2-クロロエチルホスホン酸、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸、エチレン、およびプロピレンからなる群より選択され、前記ジャスモン酸関連化合物が、ジャスモン酸メチル、プロヒドロジャスモン、ジャスモン酸イソロイシン、およびジャスモン酸からなる群より選択される、請求項5に記載の沈香生成促進剤。

【請求項7】
さらに、サリチル酸関連化合物を含む、請求項5又は6に記載の沈香生成促進剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2011164427thum.jpg
出願権利状態 審査請求前
参考情報 (研究プロジェクト等) 沈香(じんこう)等、木材抽出成分の人為的生産
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