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走査型プローブ顕微鏡

国内特許コード P120007828
整理番号 2008-050JP
掲載日 2012年8月1日
出願番号 特願2010-548389
登録番号 特許第5283089号
出願日 平成22年1月14日(2010.1.14)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
国際出願番号 JP2010000164
国際公開番号 WO2010087114
国際出願日 平成22年1月14日(2010.1.14)
国際公開日 平成22年8月5日(2010.8.5)
優先権データ
  • 特願2009-021675 (2009.2.2) JP
発明者
  • 福間 剛士
  • 植田 泰仁
出願人
  • 国立大学法人金沢大学
発明の名称 走査型プローブ顕微鏡
発明の概要

原子間力顕微鏡(AFM)(1)はSPMの一種であり、探針-試料間の相互作用量として共振周波数シフトを検出する。AFM(1)は、相互作用量を一定に保つように探針-試料距離のフィードバック制御を行いながら、距離変調制御を行う。距離変調制御は、探針-試料距離を、フィードバック制御の応答速度より速い距離変調周波数にて変動させる。更にAFM(1)は、探針と試料の相対的な走査を行いながら距離変調制御により探針-試料距離が変動する間に検出される相互作用量を取得し、走査範囲内の広さと探針-試料距離の変動範囲内の厚みを有する3次元空間における相互作用量の分布を検出する。これにより、安定した探針位置制御を行いながら、3次元空間における探針試料間の相互作用の分布を好適に計測できる走査型プローブ顕微鏡(SPM)が提供される。

従来技術、競合技術の概要


走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、鋭くとがった探針(プローブ)を試料に対して近づけて、探針と試料の間に働く相互作用(トンネル電流や相互作用力など)を検出し、相互作用を一定に保つように探針と試料の間の距離をフィードバック制御する(以下、探針と試料の間の距離を探針-試料距離という)。さらに、SPMは、フィードバック制御を維持しながら、探針(または試料)を水平方向に走査する。これにより、探針(または試料)は、試料の凹凸をなぞるように上下する。そして、フィードバック走査の軌跡を水平位置に対して記録することにより、試料表面の凹凸像を得ることができる。



走査型トンネル顕微鏡(STM)は、SPM技術の一つである。図1に示されるように、STMでは、探針-試料間の相互作用がトンネル電流である。STMは、探針と試料間にバイアス電圧をかけて、探針-試料間に流れるトンネル電流を検出し、トンネル電流を一定に保つように探針の垂直位置を制御する。



図2は、探針位置とトンネル電流の関係を示している。図示のように、探針-試料間に流れるトンネル電流は、探針-試料距離の減少に対して単調に指数関数的に増加する。したがって、トンネル電流を一定に保つように試料に対する探針の垂直位置を制御することにより、探針-試料間隔を一定に保つことができる。



次に、原子間力顕微鏡(AFM)について説明する。AFMもSPMの一種である。AFMでは、探針と試料の間に働く相互作用力によって生じる相互作用量を検出する。相互作用量は、カンチレバーの変位量や振動振幅変化量、位相変化量、振動周波数変化量などである。そして、AFMは、検出される相互作用量を一定に保つように試料に対する探針の垂直位置をフィードバック制御する。AFMは、鋭くとがった探針を先端に備えたカンチレバー(片持ち梁)を力検出器として用いる。



図3は、AFMにおける探針位置と相互作用力の関係を示しており、フォースカーブと呼ばれる。図3は、大気中及び真空中で測定されるフォースカーブの典型例である。



図3に示されるように、通常、大気中及び真空中では、探針を試料に近づけたとき、まずはファンデアワールス力と静電気力に起因して引力的相互作用力が働く。さらに探針が試料に近づくと、化学的相互作用力に起因して強い斥力が働き、斥力が引力を上回る。したがって、相互作用力は、探針-試料距離に対して単調には変化しない。



STMとAFMを比べると、STMでは図2に示したようにトンネル電流が探針-試料距離に対して単調に変化する。一方、AFMでは、図3に示したように、相互作用力が探針-試料距離に対して単調には変化しない。そのため、相互作用力によって生じる相互作用量も探針-試料距離に対して単調には変化せず、すべての距離範囲で探針位置を安定にフィードバック制御することは難しい。たとえば、引力的相互作用が支配的な距離領域では、探針が試料に近づくにしたがって引力が強くなることを前提に、探針-試料距離が制御される。このような制御下で、探針が試料に近づきすぎて、斥力が支配的な領域に入ったとする。その場合、相互作用力は距離の変化に対して逆向きの応答を示す。そのため、フィードバック制御が安定に行われず、探針が試料に強く衝突してしまう。



そこで、通常のAFM観察では、安定な制御のために、相互作用量が探針-試料距離に対して単調に変化する距離領域からフィードバックの目標点が選択される。このことは、相互作用量が一定の値をとる等相互作用量面の位置情報しか得られず、その他の相互作用量をとる位置の情報は得られないことを意味する。すなわち、フィードバック目標点以外の情報は得られず、たとえば、図3のフォースカーブの最下点及びその付近の情報は得られない。そのため、従来の一般的なAFM観察では、3次元空間における相互作用力の情報を得るといったこともできない。



図3は、大気中及び真空中の例を示している。しかし、上記の問題は、液中でのAFM観察時により深刻になる。固液界面においては、溶媒分子が層状構造を形成することが頻繁にある。そのため、界面が試料に対して水平な方向だけでなく、垂直な方向にも広がりを持つ。しかしながら、従来のAFM技術は、相互作用量が一定の値をとる等相互作用量面の位置情報しか得ることができない。そのため、界面(より詳細には、界面及びその近傍を含む界面空間)の構造及び物性を十分に理解することはできない。



また、液中観察では、探針の位置制御も容易でないことがある。図4は、水和層などの層状構造が形成された界面におけるフォースカーブの例である。図4は、リン酸緩衝生理食塩水での測定結果であり、探針-試料距離に対する相互作用力の依存性を示している。図4に示されるように、探針が水和層を貫く際に斥力が発生する。また探針が水和層を貫いた後に引力が発生する。このような斥力及び引力などに起因して、フォースカーブが振動的なプロファイルを示す。したがって、一つの相互作用力に対応して、フィードバックに使用可能な複数の探針位置が存在する。安定なフィードバック制御のためには、それら複数の探針位置の一つを制御性よく選択しなければならない。しかし、そのような制御は容易でなく、探針位置の制御性が大きく損なわれてしまう。



上記のように、通常のAFM観察技術では、探針の位置制御の問題があり、そして3次元的な広がりを持つ界面の情報を十分理解できないといった問題があった。これらの問題を解決するために、従来、以下に説明するように、フォースカーブ計測を応用した3次元空間の計測技術が提案されている。



図5を参照すると、従来提案されている3次元計測技術は、XY平面上にアレイ状に配置された多数の測定点でフォースカーブを取得して、3次元空間の相互作用力の分布を測定している。たとえば、図5の左側に示すように、同一のY位置に対して、X位置を少しずつ移動しながら、フォースカーブが測定される。この操作は、XZ平面の相互作用力の分布を反映したXY像を提供できる。さらに、同様の操作が、少しずつY位置をずらしながら行われる。これにより、XYZの3次元の相互作用力分布を計測することができる。



しかしながら、このような従来技術では、2つの動作(各点でフォースカーブを取得する動作と、探針のXY位置を移動する動作)を断続的に組み合わせる必要があり、時間がかかるという問題がある。



また、探針が試料に最も近づく瞬間及び最も離れる瞬間に、大きな撃力が発生する。そのため、様々な機械部品の振動を誘起してしまうという問題がある。



また、フォースカーブの取得時には、表面の凹凸に関係なく、探針が一定のZ位置から一定距離だけ試料に近づけられる。そのため、探針の凹凸や試料の傾きなどによっては、探針が試料に強く衝突してしまい、大きな損傷を与える可能性がある。



上記のような衝突を避けるために、相互作用力が一定の値を超えた瞬間に、探針を試料から引き離すことも考えられる。しかし、そのような引離し制御を組み込むためには、探針移動中に相互作用力を監視し続けなければならない。このような測定中の監視制御は、測定完了後にデータを処理する通常の単純なフォースカーブ測定と比べて複雑である。そのため、測定時間が増大し、その結果、測定中の試料のドリフトの影響が大きくなる。更に、上記の引離し制御は、探針の移動方向が急峻に変わる瞬間に大きな撃力を発生するという問題をも招く。



以上のような問題を避けるため、図5の従来の3次元計測技術の適用範囲は相当に制限されてしまう。実際、従来の3次元計測技術は、非常に長時間かけてフォースカーブを測定してもドリフトの影響を無視することのできる超高真空中の極低温環境下でのAFM観察でのみ利用されてきた。したがって、大気及び液中環境での利用は非常に困難であり、また、室温環境での利用も非常に困難である。



上記のフォースカーブを利用する従来の3次元計測技術は、たとえば、非特許文献1に開示されている。



なお、上述では、AFMを取り上げて、本発明の背景技術を説明した。しかし、同様の要求は、他の種類のSPMでも生じ得る。

産業上の利用分野


本発明は、走査型プローブ顕微鏡に関し、特に、3次元空間における探針と試料の相互作用の分布の計測を可能にする技術に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
探針と、
前記探針と試料との相対的な走査を行うスキャナと、
前記探針の変位を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出された信号に基づいて、前記探針と前記試料の相互作用により生じ前記相互作用の大きさを表す相互作用量を検出する相互作用検出部と、
前記相互作用検出部により検出される前記相互作用量を一定に保つように、前記探針と前記試料の間の距離である探針-試料距離のフィードバック制御を行うフィードバック制御部と、
前記探針-試料距離を、前記フィードバック制御の応答速度より速い距離変調周波数にて変動させる距離変調制御を行う距離変調制御部と、
前記探針と前記試料の相対的な走査を行いながら前記距離変調制御により前記探針-試料距離が変動する間に検出される前記相互作用量から、走査範囲内の広さと前記探針-試料距離の変動範囲内の厚みを有する3次元空間における前記相互作用量の分布を検出する3次元分布検出部と、
を有することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記距離変調制御部は、時間軸に対する前記探針-試料距離を正弦波に沿って変動させることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記フィードバック制御部は、前記スキャナを駆動するための駆動信号を生成し、
前記距離変調制御部は、前記距離変調周波数を有する距離変調信号を生成し、
前記距離変調信号が前記駆動信号に加算されることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記3次元分布検出部が、前記距離変調制御により前記探針が前記試料に近づくときの前記相互作用量の分布と、前記距離変調制御により前記探針が前記試料から遠ざかるときの前記相互作用量の分布とを別々に取得することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記走査型プローブ顕微鏡は原子間力顕微鏡であり、前記探針を含むカンチレバーを有することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
前記原子間力顕微鏡は、周波数変調型の原子間力顕微鏡であり、前記相互作用検出部は、前記カンチレバーの共振周波数シフトを前記相互作用量として検出することを特徴とする請求項5に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項7】
前記距離変調制御による前記探針-試料距離の前記変動範囲内に定められており前記探針-試料距離が増大する所定のドリフト監視位置にて検出される前記相互作用量を、前記相互作用量のドリフトの指標として監視するドリフト監視部と、
前記ドリフト監視部により監視される前記ドリフト監視位置での前記相互作用量に基づいて、前記相互作用量のドリフトをキャンセルするドリフトキャンセル部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】
前記3次元分布検出部により得られる前記3次元空間における前記相互作用量の分布のデータを処理する分布データ処理部を有し、
前記分布データ処理部は、前記探針-試料距離が一定である面上での前記相互作用量の分布を求めることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項9】
前記3次元分布検出部により得られる前記3次元空間における前記相互作用量の分布のデータを処理する分布データ処理部を有し、
前記分布データ処理部は、前記探針-試料距離が異なる複数の面の各々における前記相互作用量の複数の代表値を求めて、前記探針を試料に近づけたときの前記代表値の変化を求めることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項10】
前記3次元分布検出部により得られる前記3次元空間における前記相互作用量の分布のデータを処理する分布データ処理部を有し、
前記分布データ処理部は、前記試料表面に交差する面で前記3次元空間を切断したときの切断面上での前記相互作用量の分布を求めることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項11】
前記3次元分布検出部により得られる前記3次元空間における前記相互作用量の分布のデータを処理する分布データ処理部を有し、
前記分布データ処理部は、前記試料上の異なる複数の位置で、前記試料の表面に交差する線に沿った前記相互作用量の変化を求めることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項12】
走査型プローブ顕微鏡のための観察方法であって、
探針と試料を近づけて、前記探針と前記試料との相対的な走査を行い、
前記探針の変位を検出し、
検出された信号に基づいて、前記探針と前記試料の相互作用により生じ前記相互作用の大きさを表す相互作用量を検出し、
前記相互作用量を一定に保つように、前記探針と前記試料の間の距離である探針-試料距離のフィードバック制御を行い、
前記探針-試料距離を、前記フィードバック制御の応答速度より速い距離変調周波数にて変動させる距離変調制御を行い、
前記探針と前記試料の相対的な走査を行いながら前記距離変調制御により前記探針-試料距離が変動する間に検出される前記相互作用量から、走査範囲内の広さと前記探針-試料距離の変動範囲内の厚みを有する3次元空間における前記相互作用量の分布を検出することを特徴とする、
走査型プローブ顕微鏡のための観察方法。
【請求項13】
走査型プローブ顕微鏡のための観察プログラムであって、
コンピュータに、
探針と試料を近づけて、前記探針と前記試料との相対的な走査を行う処理と、
前記探針の変位を検出する処理と、
検出された信号に基づいて、前記探針と前記試料の相互作用により生じ前記相互作用の大きさを表す相互作用量を検出する処理と、
前記相互作用量を一定に保つように、前記探針と前記試料の間の距離である探針-試料距離のフィードバック制御を行う処理と、
前記探針-試料距離を、前記フィードバック制御の応答速度より速い距離変調周波数にて変動させる距離変調制御を行う処理と、
前記探針と前記試料の相対的な走査を行いながら前記距離変調制御により前記探針-試料距離が変動する間に検出される前記相互作用量から、走査範囲内の広さと前記探針-試料距離の変動範囲内の厚みを有する3次元空間における前記相互作用量の分布を検出する処理と、
を実行させることを特徴とする、
走査型プローブ顕微鏡のための観察プログラム。
産業区分
  • 電子管
  • 電子部品
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 権利存続中
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